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インドネシアの養殖事業の課題と新しい取り組み

インドネシアの養殖事業の課題と新しい取り組み

インドネシアの海岸線は約81,000kmと日本の約35,000kmの2倍以上の長さがあり、養殖に適した環境があります。エビや魚の養殖はインドネシアの重要な産業である一方で、自然破壊や環境への悪影響も指摘されてきました。

本記事では、インドネシアの養殖事業の概要や課題、IT技術を用いた取り組みなどをまとめていきます。

インドネシアの養殖事業の概要

島国であるインドネシアは、広く海面に面しており養殖に適しています。養殖物の中でもっとも多いのはティラピア(Tilapia)で、続いてエビ(Shrimp)、ナマズ(Catfish)と続きます。エビは有名ですが、意外と白身魚も多いことがわかります。

従来のインドネシアの養殖業は、伝統的な方法で行う漁業がほとんどであったことから、魚種も限られ、生産性も低いレベルに留まっていました。しかし、最近では日本のODAやITの技術を用いた取り組みにより事業の効率化が進み、少しずつ種類も増えています。

インドネシアの養殖の種類

ここでは、エビ、魚、真珠といったインドネシアの主な養殖物を紹介します。それぞれ詳しく見ていきましょう。

エビ

エビはインドネシアの主力の養殖物の一つです。日本が輸入している水産物のうち、エビは10.8%、エビ調理品は4.2%であり、その内の約15%がインドネシアからのものです。

インドネシアには国内全体にエビの養殖池があり、主に西ヌサトゥンガラ州や西ジャワ州で盛んです。種類はブラックタイガー、バナメイエビなどがあり、中国、アメリカ、日本を中心に輸出されています。

インドネシアではティラピアやナマズを始め、鯉、パンガシウスなどさまざまな魚が養殖されています。2012年には日本の大手製鋼会社である日東製鋼が、インドネシアの養殖会社LSPと共同で、ハタとバラムンディの養殖技術に関する研究開発を始めました。

また、数年前には「ピカラ」と呼ばれる熱帯産のウナギの稚魚が、インドネシア各地で豊富に獲れることがわかり、養殖が盛んに行われるようになりました。

インドネシア人の魚の消費量は2021年に55.37kg/人と年々増加しており、すでに日本の数字を大幅に上回っています。

真珠

インドネシアでは、数十年前から真珠の養殖が行われてきました。仕事の数が限られるインドネシアの田舎では、現在でも真珠の養殖が重要な収入源となっていることも少なくありません。

2020年には新型コロナのパンデミックにより生産高は減少しましたが、2022年以降は驚異的な数値で需要が回復し、中国、韓国、インドなどからの注文が増えているようです。

インドネシアから日本への輸出状況

インドネシアから日本への輸出は、天然ガスや石炭、れん炭、石油などの燃料や、金属鉱などが中心で、食品の割合は高くありません。1990年代までは魚介類の割合が高い時期もありましたが、2000年代以降は工業化が進み、輸送用機器や電気機器の割合が上がってきています。

日本へ輸出される食品は、エビやパンガシウスが中心です。震災から11年が経過した2022年7月には、インドネシアが日本産の食品の輸入規制を全面的に撤廃し、両国間でさらに輸出入が活発になることが期待されています。

インドネシアの養殖事業の課題

近年は世界各国の支援やIT化により技術革新が進んでいる一方で、いまだに非効率的で環境に悪影響を与える方法で漁業を営んでいることもあります。

例えば、海洋資源が豊富な西ヌサトゥンガラ州は爆弾漁法が有名なことで知られています。爆弾漁法はダイナマイト漁とも呼ばれ、水中で爆発物を爆破させ、その衝撃波で浮かんできた魚を収穫する方法です。この漁法では浮袋が破裂して海底に沈んでしまう魚も多くいることや、サンゴも死滅してしまうなど、環境に大きな悪影響を及ぼします。

また、数年前まではエビを生育し養殖する池を作るためにマングローブが伐採され、面積が年々減少していました。この状況を重く捉えたWWF(世界自然保護基金)によりマングローブの再生プロジェクトが始動し、2021年6月までに15万1,283本、23.6ヘクタールが回復しており、現在も活動は続いています。

ITを用いた取り組み

ここでは、eFisheryやMycroFishといったインドネシアの養殖産業でのITを用いた取り組みを挙げていきます。それぞれ詳しく解説します。

eFishery

eFisheryとは、2013年にインドネシア第4の都市バンドンで設立されたMultidaya Teknologi Nusantaraが提供する水産プラットフォームです。このプラットフォームでは、管理者のスマートフォンと連携して、遠隔地でも養殖池で自動で餌を与えられるシステムを提供しています。

また、エビや魚の養殖業者向けのマーケティング支援や、金融システムの構築も行っています。

2020年にはアラブ首長国連邦の政府系ファンドやソフトバンク・ビジョン・ファンドなどから合計1億800万ドル(約162億円)を調達しました。eFisheryはインドネシアの養殖業の課題を解決し、業態全体の底上げを促すプロジェクトとして注目されています。

MycroFish

MycroFishとは養殖池が最適な酸素濃度、酸性度、温度を維持するための養殖システムで、ジョグジャカルタ特別州のスタートアップであるBanooが提供しています。

かつて養殖業者は、気候変動によって水質が悪化し、魚が大量死することに悩まされてきました。大量死によって不健康な魚や有毒な廃棄物が発生し、インドネシア全体の環境悪化にもつながります。

そうした課題がある中、MycroFishによって養殖池の水質をリアルタイムかつ遠隔で監視できるようになりました。このシステムにより、生産性が42%以上も改善された事例もあるようです。

まとめ

豊富な海洋資源に恵まれたインドネシアは、養殖事業が盛んな国です。エビや魚を中心にさまざまな養殖物が世界中に輸出されています。

近年では環境破壊や水質汚染などの課題解決に向けてITを用いた取り組みが行われています。インドネシア国内でも魚介類の消費量が伸びる中、スタートアップ企業が行う取り組みは、今後も世界中から注目されることになるでしょう。

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