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インドネシアの鉱業の現状と今後

インドネシアの鉱業の現状と今後

天然資源が豊富なインドネシアでは、鉱業は重要な産業の1つです。近年、インドネシア政府は加工貿易に力を入れており、オーストラリアからのリチウムの輸入を増やし、EVバッテリーの生産を強化するなど、鉱業から派生して新たな時代に向けた戦略的な動きが見受けられます。

本記事では、インドネシアの鉱業の概要や政府が行っている施策を紹介していきます。

インドネシアの鉱業

「主要産業」の内容を円グラフにして、鉱業の部分を強調する

インドネシアでは天然ガス、銅、ニッケル、ボーキサイト、錫が多く採れます。特にニッケル生産高の世界シェアは25%と高く、日本やインド、韓国、中国に輸出されています。

ここでは、インドネシアで採掘される鉱物を以下3つに分けて解説します。金属、非金属、エネルギーについてそれぞれ詳しくみていきましょう。

金属

金属の鉱物には、金、銀、銅などを始めとして、ニッケル、鉄、コバルト、マンガン、マグネシウム、アルミニウムなどさまざまな種類があります。インドネシアで採れるものとしては、銅、ニッケル、アルミニウムなどが挙げられます。

ニッケルは、EV自動車で用いるリチウムバッテリーの正極材として需要が増えている鉱物です。インドネシアには世界最大のニッケル埋蔵量があるとされており、スラウェシ島の港には多くの加工工場が並びます。

非金属

非金属とは金属を含まない鉱物のことで、インドネシアから採れるものでは硫黄や石灰石などが挙げられます。

インドネシアには複数の火山があり、多くの天然の硫黄鉱床が存在する国です。採掘された硫黄は国内で精製され、医薬品、合成繊維、農薬の原材料に使われます。

石灰岩は、ジャワ島、バリ島、スラウェシ島など国内各地に鉱床があります。セメント製造、建築資材、鉄鋼生産、肥料製造といった幅広い用途があり、国内で使われるだけでなく国外にも多く輸出されています。

エネルギー

インドネシアでは石炭、石油、天然ガスなどのエネルギー資源も豊富に採れます。世界のランキングでは、石炭輸出量が1位、石油生産量が26位、天然ガス生産量が8位です。

インドネシア国内のエネルギー源は石炭や天然ガスが中心で、化石燃料への依存度が高いです。政府は2030年までに温室効果ガスを29%削減する方針を掲げており、再生可能なエネルギーの割合を増やしていく予定です。

インドネシアの鉱業の現状と課題

インドネシアの鉱業の現状と課題について、政府の施策や過去に起こった事件などを挙げていきます。4項目に分けて、1つずつ詳しく解説していきます。

政府は脱炭素を推奨

インドネシア政府は、2060年までのカーボンニュートラル実現を表明しています。カーボンニュートラルとは、二酸化炭素などの温室効果ガス(カーボン)の排出と吸収を中立(ニュートラル)にすることです。

インドネシアは二酸化炭素を排出する石炭火力への依存度が高いです。そのため、二酸化炭素を排出しない太陽光や水力、地熱、バイオマスなど再生可能エネルギーの発電に注力しています。

インドネシア政府は未加工の鉱石の輸出を規制

インドネシア政府は、採掘された鉱石をそのまま輸出することを禁止する動きを強めています。2020年1月にはニッケル、2023年6月にはボーキサイトの未加工鉱石の輸出が禁止され、2024年からは銅、鉄鉱石、亜鉛、鉛なども追加される予定です。

禁止の背景には、一人あたりのGDPが伸び悩んでいることがあります。政府は、鉱石の加工や最終製品を製造する企業を海外から誘致し、国内の製造業の高価値化を目指していく方針です。

鉱物の加工業を強化

インドネシア政府が加工を強化している鉱物として、主にはニッケル、アルミニウム、銅が挙げられます。

中でもニッケルが用いられるEVバッテリーは、最重要な産業政策の1つです。今後需要が増加すると考えられており、中国、韓国を中心とした企業の大型投資が進んでいます。

違法採掘が横行

鉱山が国内各地に点在するインドネシアですが、劣悪な環境で採掘が行われていることも少なくありません。2013年12月にはグラスバーグ鉱山、2019年にはバガン村にある鉱山で落盤事故が発生しています。

統計ではインドネシア国内の石炭生産量の20%が違法採掘によって賄われているといわれています。近年は中央省庁も監視を強めていますが、山奥や小規模な鉱山までは目が行き届いていないのが現状です。

銅は23年後、石炭は70年後に枯渇する見通し

2021年時点で、インドネシアで鉱業を営むPT LAPI ITB社の担当者は、採掘される銅は23年後、石炭は70年後に枯渇する見通しを述べています。

今後は従来の鉱物の精製事業を促進するとともに、再生可能エネルギーの研究と開発も並行して行っていくことが求められるでしょう。

まとめ

インドネシアは鉱物資源に恵まれた国であり、近年は加工事業を推奨しています。世界的に脱炭素化が進んでいますが、今後も従来の鉱業は国を支える主要な事業であり続けることでしょう。

また、EVバッテリーを最重要な産業政策の1つとして捉えており、大きな発展が期待されています。年々鉱物資源が枯渇に近づく中、インドネシア政府がどのような施策を打ち出していくか注目していきましょう。

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