経済

ベトナムにおける人件費と人材確保の動向

ベトナムにおける人件費と人材確保の動向

現在ベトナムは人口ボーナス期にありますが、上級職や専門職種の人材不足に悩む企業が増えています。多くの日系企業では、人材を育てて将来的に現地の人材で会社を回したいと考えているものの、人件費の高騰や離職率の高さがあり、なかなかうまくいっていない現状があります。

今回の記事では、近年のベトナムにおける人件費と人材確保の動向を解説していきます。

ベトナムにおける人件費と人材確保の動向

ベトナムの最低賃金は年々上昇傾向です。国内ではインフレが進んでいますが、それ以上の割合で賃金は増加しています。2023年から2024年にかけては、最低賃金が約6%の上昇に対し、国内の物価上昇率は約3.24%の上昇でした。

また、工場のライン工は景況によっては集まりづらいこともあり、マネージャーや管理職については慢性的に不足しています。特に高度な技術を持つ優秀な人材は外資企業で取り合いになっており、今後もさらに給与が高騰する可能性があります。

人件費

ベトナム政府は、毎年地域ごとの最低賃金を設定します。ハノイ市やホーチミン市が含まれる地域1で、2024年7月1日に発効予定の最低賃金は、月収で「496万ドン(約29,760円)」です。改訂前の数字は「468万ドン(約28,080円)」で約6%上昇しました。

また、役職ごとでは以下の金額が月収の目安になります。

役員:8,000万ドン〜1億ドン(約48万円〜約60万円)
部長:4,000万ドン〜6,000万ドン(約24万円〜約36万円)
課長:2,500万ドン〜4,000万ドン(約15万円〜約24万円)

上記の金額は、あくまで日系を含む外資企業の数値です。ベトナムでは企業や業界によって、日本以上に給与が異なることは覚えておく必要があります。

人材確保

ベトナムに進出している日系企業で、人材不足に直面している割合は製造業で「39.8%」、非製造業で「42.7%」でした。4割前後の企業が人材不足を感じている状況ですが、6割近い割合のマレーシアやシンガポールと比較すると、良好な数値といえます。

しかし、人材不足が深刻と感じている職種で、マネージャーなどの管理職は「67.1%」、法務や経理、エンジニアなどの専門職は「61.7%」と、高い割合を記録しています。

ベトナムにおける人件費と人材確保の課題

ここでは、ベトナムにおける人件費と人材確保の課題を解説していきます。

景況悪化により求人数が低下

ベトナムは新型コロナ沈静化による景気回復で、2022年には求人が大幅に増加しました。しかし、2022年末に不動産企業の幹部が相次いで逮捕されたことに始まり、建設業や製造業など市場全体が低迷しています。特に2023年7月〜9月は、前年と比較して求人数は62%減少しました。

2024年に入っても雇用市場は厳しい状況が続いています。回復は2024年後半以降が見込まれています。

雇用形態の変化

近年のベトナムでは、働き方の多様化が見られます。Grabやbeの配車アプリの運転手や、shopeeやFacebookを利用したオンラインショップなど、自分で働く時間をコントロールできる仕事につく人が増えています。

特に若者を中心に現場作業は嫌われる傾向にあり、1,000万VND(約6万円)の比較的高い給与を提示しても、人が集まらない工場もあるようです。

高齢化が進む

ベトナムは毎年約100万人の人口が増えていますが、すでに高齢化が進んでいます。2040年には人口ボーナスが終わるといわれており、その後は急速に高齢化が進む見込みです。

今後必ず訪れる高齢化社会へ向けて、労働生産性の向上が求められています。

人件費は年々高騰

本記事でも紹介しているように、ベトナムの人件費は年々上昇しています。JETRO(日本貿易振興機構)の調査では、ベトナムでの企業経営上の問題点で「従業員の賃金上昇」を選んだ企業の割合が75.2%で、全体の1位となっています。

社員との昇給交渉では、毎年の物価上昇率が引き合いに出されることが少なくありません。物価上昇率を最低限の昇給ラインとし、プラスアルファでパフォーマンスによる割合が上乗せされるイメージです。

昇給交渉で望むような結果が得られなかったため、転職をする人も多いです。

近年は円安が進む

ベトナムに進出している日系企業は、大きく「ベトナムで事業を展開」「日本向けの製品を現地で生産・開発」の2種類に分けられます。近年はベトナムドンに対しても円安が進んでおり、ベトナム国内向けの事業を行なっていない会社は厳しい状況に置かれています。

特に税の優遇措置を受けられるEPE(輸出加工企業)や、ITのオフショア開発企業への影響は大きく、今後撤退が増えてくる可能性があります。

まとめ

世界的にベトナムの経済成長に注目が集まる一方で、人件費が高騰し高度な人材を確保しづらくなっている現状があります。日系企業にとっては、円安が大きな負荷になっており、今後さらに状況が厳しくなるかもしれません。

今後の進出を検討している企業は、為替変動や景況、雇用市場などさまざまな観点から分析することが求められます。

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