インドネシアの景気動向
インドネシアの景気は、新型コロナの往来規制が解除されてから順調に回復しています。ここ2年の間で観光客数は急回復し、輸出入も活発に行われるようになりました。
一方で、2023年末からは世界的な景気の後退や、大統領選を迎えて通貨が不安定になるなど、いくつかの懸念点も残ります。
本記事では、直近のインドネシアの景気動向と今後の展望を解説していきます。
現在のインドネシアの景気動向

インドネシアの株価指数「ジャカルタ総合」過去5年間の推移のグラフを作成
インドネシアの株価は2020年1月のコロナショックを底に直近では上昇傾向で、2024年3月には過去最高値を記録しました。しかし、ここ数ヶ月の短い間だけ見ると大きく下落している状況です。
この下落の理由は、担当大臣の辞任やインドネシアの通貨ルピアの変動が原因とされています。インドネシアは2024年後半の首都移転と新政権誕生を控えており、現在国として重要な局面を迎えています。
インドネシアの2024年前半までの主な景気動向

ここでは、インドネシアの2024年前半までの主な景気動向を解説していきます。
新型コロナの規制解除後は順調に回復
インドネシアのGDPは2022年に5.31%増、2023年には5.05%増を記録しました。国内の消費や投資は順調に回復し、2023年は業界別の伸び率では運輸・倉庫業が13.96%、サービス業が10.52%、宿泊施設・飲食業が10.01%となっています。
経済担当のエディ・プリヨノ大統領副補佐官は、2023年は特に金属産業が伸びており、今後の成長にも期待できると述べています。
貿易黒字を達成も2023年後半はやや失速
2023年、インドネシアの輸出は2,588億2,000万ドル(約41兆4,000億円)※、輸入は2,218億9,000万ドル(約35兆2,000億円)でした。貿易黒字は369億3,000万ドル(約6兆2,000億円)を達成したものの、2022年の544億5,560万ドル(約8兆6,000億円)と比較すると失速した形です。
失速の原因としては主要輸出品である石炭やパーム油、ニッケルの価格が大幅に下落したことがあり、2024年以降の停滞も予想しているエコノミストもいます。
※2024年6月26日時点のレート
大統領選を控えて通貨が不安定に
直近3年間で、インドネシアの通貨ルピアはドルに対して大幅に安値をつけています。2024年6月中旬には、2020年4月上旬以来の安値となる「1ドル=1万6,375ルピア」を記録しました。
原因は2024年2月の大統領選や、首都機能移転開始を目前に担当の長官らが辞任したことによる、政治的な不安があるとされています。
インドネシアの2024年後半以降の景気動向

次に、インドネシアの2024年後半以降の景気動向を解説します。
新政権が誕生
インドネシアでは2024年2月に大統領選が行われ、現国防相を務めるプラボウォ・スビアント氏が大統領、ジョコ・ウィドド現大統領の長男ギブラン・ラカブミン氏が副大統領として当選しました。2024年10月には2名が就任して新政権が誕生する予定です。
新政権は、ジョコ・ウィドド現大統領が率いる政権の方針を支持する意向を示しています。
首都移転が開始
インドネシアではジャカルタへの一極集中を理由に、2024年8月より首都移転が始まる予定で、現在は政府施設の建設が進んでいます。8月の独立記念日の式典は新たな大統領宮殿で行い、首都移転宣言をするとも予想されています。
ただし直近では担当大臣が辞任したことや、10月の新政権誕生と重なるため、首都移転が滞りなく進むかを不安視する声もあります。
海外からの投資が増加
インドネシアへは、シンガポールや中国、香港の企業などからの投資が積極的に行われています。分野としては金属製品や鉱業、化学、医薬品の分野が活発です。
投資場所としては、ジャカルタやバンドンがあるジャワ島が中心で、まだ首都移転先であるカリマンタン島には少ないようです。インドネシアのジョコ・ウィドド現大統領は、6月の式典でも諸外国に対して新首都への投資を呼びかけています。
燃料価格や通貨の変動が懸念材料
インドネシアの輸出品全体として、石炭・石油などの鉱物性燃料が2割ほどの大きな割合を示しています。2022年には燃料価格が上昇し、2023年には落ち着きましたが、その変動が貿易黒字額にも大きな影響を与えました。
政府は加工貿易への転換を測っていますが、依然として鉱物性燃料の輸出割合は大きいです。燃料価格は、2024年の貿易にも大きく影響を与えることになるでしょう。
また、前述の通りインドネシアの通貨ルピアはここ数年で安値をつけています。首都移転を控え、今後も大きく変動する可能性があります。
まとめ
全体として、インドネシア経済の見通しは良好です。しかし、燃料価格や通貨の変動は依然として懸念材料となっています。2024年後半には首都移転と新政権誕生という大きな出来事が控えているので、今後の動向に注目していきましょう。