【相次ぐ閉店】インドネシアの小売業とは
2023年時点でインドネシアには2億7,300万人の人口がおり、毎年約150万人ペースで増加しています。また人々の収入も年々増えている状況の中で、インドネシアの小売業は世界的に注目されています。
今回の記事では、インドネシアの小売業の概要と、国内・外資の企業について詳しく解説していきます。
インドネシアの小売業の概要

経済発展が著しいインドネシアですが、小売業の売上は右肩上がりでは成長していません。2020年〜2021年は、新型コロナの影響でマイナス20%前後の数字を記録しました。
2022年には再び強い成長率を記録するも、2023年は世界経済の低迷の影響を受けて伸び悩んでいます。
購買力は上昇も新型コロナの影響で伸び悩む
インドネシアの人々の収入が年々増加していることに伴い、購買力が上昇しています。しかし、前述の通り、新型コロナの影響により2020年〜2021年は大きなマイナスを記録しています。
インドネシアは2021年9月に全土に外出禁止令を出すなど、新型コロナに対して強い規制を敷いてきました。2023年6月にすべての規制が解除されましたが、影響はまだ随所に見られます。
店舗を構える小売業は苦戦
インドネシアのスーパーマーケットや百貨店など、古くからある業態の会社の売り上げは伸び悩んでいます。国内ではまだ一定の知名度と存在感はあるものの、コンビニエンスストアやオンラインショップに押されつつある状況です。
国内に23店舗を構えインドネシア証券取引所に上場するヘロー・スーパーマーケットは、スーパー「ヘロー」事業の売却を発表、スーパー「ハイパーマート」やドラッグストア「ボストン」など計181店舗を運営していたマタハリ・プトラ・プリマも、2017年から6年連続で赤字を計上しており、苦戦している様子がうかがえます。
コンビニエンスストアやオンラインショップが台頭
スーパーマーケットや百貨店など苦戦している店舗がある中で、伸び続けている業態もあります。インドネシアでは、ミニマートと呼ばれるコンビニエンスストアの店舗数は年々増え続けており、年間で5%以上の成長率も維持しています。
また、オンラインショップも売り上げ規模を伸ばしている業態の一つです。新型コロナ禍で一気に普及した勢いをそのままに、Bukalapak、Tokopedia、Go-Jekなどの新興企業は規模を拡大し続けています。
パサール(個人商店)が根強い
インドネシアには、インドネシア語で市場を意味する「パサール」という業態があります。パサールとは、村や集落など小さなコミュニティ内で開かれるマーケットのことで、安い価格で豊富な種類の食品が手に入る点が特徴です。
パサールの多くは個人によって運営されており、440万以上の店舗があるとされています。現金商売であるため具体的なデータはありませんが、インドネシアの小売業の総売り上げの内、少なくない割合を占めていると考えられます。
インドネシアの主な小売店

ここでは、インドネシア国内企業が運営している主な小売店を紹介していきます。
サリナ
サリナはジャカルタの中心地に店舗があり、インドネシアで50年以上の歴史ある百貨店です。2020年から2年ほど大規模な改修工事を行い、2022年3月に営業を再開しました。
店内には、インドネシアの伝統的な生地や織物を販売する店舗が多くあります。インドネシア国内での知名度は高く、流通や不動産、輸出入の事業など広く展開しています。
マタハリ
マタハリは、子供から大人まで幅広い層の衣類や化粧品、家電などを販売している店舗が揃う百貨店です。主要都市のジャカルタやスマランがあるジャワ島を中心に、スラウェシ島やスマトラ島にも展開しています。
インドネシア証券取引所にも上場していて従業員は4万人を超える大規模な百貨店チェーンですが、2020年末には大型店舗6店を閉店するなど、近年は苦戦している様子も見受けられます。
ハイパーマート
ハイパーマートはインドネシア全土に野菜や肉製品、冷凍食品、飲料などを提供するスーパーマーケットのチェーンです。全国70都市に100店舗以上あり、インドネシアの中所得層をターゲットにしています。
ハイパーマートも新型コロナの影響によって大きな影響を受けた会社の一つで、2020年第2四半期には約2,192億5,000万IDR(約21.3億円)※の赤字を計上しました。現在は残った店舗の強化と、オンラインショッピングに注力して再起を図っています。
※2024年6月26日時点のレート
インドネシアに進出している主な日系企業
次に、インドネシアに進出している主な日系企業を紹介していきます。
AEON
AEONは現在インドネシア国内で5つのモールを運営しています。広い敷地に設立されたモールには現地のブランドや世界的なスポーツブランド、日系の飲食店など豊富な店舗があり、幅広い製品の品揃えが充実していることが特徴です。
AEONはタイやマレーシア、ベトナムなど他の東南アジア諸国でも積極的な出店を行っています。インドネシアでは2013年からクレジットカードを発行しており、会員獲得に取り組んでいます。
SEIBU SOGO
日本で関東圏を中心に百貨店を展開しているSEIBU SOGOは、現在インドネシア国内で19の店舗を構えています。インドネシアで店舗が初めて誕生したのは、SOGOが1990年、SEIBUは1996年と長い歴史がある百貨店です。
高所得者向けから一般層向けまで幅広いブランドの店舗があり、インドネシアの人々に広く受け入れられています。
まとめ
インドネシアの小売業は新型コロナで大きな影響を受けたものの、2022年以降は回復基調にあります。しかし、ここ数年で大きな変化があり、百貨店やスーパーマーケットなど古くからある業態の店舗は今も苦戦しています。
インドネシアは2024年8月より首都移転を始め、国として大きな変化を迎えます。今後、新首都のヌサンタラへの出店や流通網の確立を通じて、小売業の新たな成長が期待できるでしょう。