ベトナムの脱炭素化とは
近年、脱炭素に向けた動きは世界的に加速しています。ベトナムも例外ではなく、二酸化炭素排出量の少ない再生エネルギー発電を強化し、電気自動車・電動バイクの推進するなど、さまざまな対策を講じています。
しかし、ベトナムはまだ発展途上の国です。投資や技術力が十分でないことに加え、省庁間の縦割りによる情報共有不足が散見され、さまざまな弊害が生じています。
本記事では、現在のベトナムの脱炭素化に向けた動きや、今後の課題をまとめました。
ベトナムの脱炭素化とは
ベトナムの経済が発展する中で電気使用量が増え、近年は車が広く普及していることで、温室効果ガスの排出量は年々増加しています。排出量のグラフを見ると、2012年からの10年間で、2倍以上に増えていることがわかります。
こうした状況を受けて、ベトナム政府は2050年に温室効果ガスの排出をゼロにする目標を発表しました。
ベトナムの脱炭素化の現状
2020年時点で、ベトナムの二酸化炭素排出量はASEANで4番目、温室効果ガスの排出量はASEANで2番目に多いです。これらの原因としては、化石燃料による発電の割合が高く、バイクや車の利用者が増加していることが挙げられます。
次からはベトナムの脱炭素の現状について、詳しく解説していきます。
脱炭素化に取り組んでいる企業の割合は29.4%
2022年時点で、ベトナムに進出している日系企業が、脱炭素化に取り組んでいる割合は29.4%です。アジア・オセアニア地域の平均35.9%を大きく下回っており、国別では下から2番目になります。
数字が低い理由として、脱炭素に向けた意識が低いことに加え、コストがかかるため優先度が劣るといった意見が多くありました。しかし「今後取り組む予定がある」と答えた企業は39.7%で全体としては7割弱が脱炭素に関心を寄せているため、今後の発展は期待できるといえるでしょう。
再生可能エネルギーの割合は年々増加
再生可能エネルギーの割合は年々増加
ベトナムでは、太陽光や風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーの割合が年々増加しています。2022年時点での発電割合は以下の通りです。
・水力:35%
・石炭:39%
・火力:13%
・再生可能エネルギー:13%
再生可能エネルギーの多くは太陽光によるものです。近年は工場や港湾周辺の倉庫の上部にソーラーパネルを設置して、予備の電気として発電をすることが増えています。
ベトナムの脱炭素化の課題
続いて、ベトナムの脱炭素化の課題について詳しく解説していきます。
電力供給量が不足
ベトナムでは、2020年〜2022年の間で年間10%〜15%のペースで電力使用量が増えています。2023年の夏にはハノイ市やホーチミン市で計画停電が実施され、工場の稼働が止まり、オフィスビルでは突如エレベーターが停止するなど、さまざまなトラブルが発生しました。
2024年は暑さがやや和らいでいて、大規模な停電は実施されていません。ただし、電力供給量は増え続ける見込みであり、政府や民間企業による対策が求められています。
担当省庁間の連携不足による懸念
ベトナムの省庁はそれぞれ独立して活動している縦割りであり、連携や情報共有が不足して、進捗が遅れるケースが多いです。脱炭素という大きな課題に向けての旗振り役がおらず、足並みが揃わないことの懸念が残ります。
脱炭素化に向けて、天然資源環境省や商工省、財政省、計画投資省、科学技術省など複数の省庁が関わる見込みです。政府が示す、2050年に温室効果ガスの排出ゼロの目標を達成するためには、省庁間の連携の抜本的な改革が必要となるでしょう。
供給インフラへの投資
ベトナムはまだ発展途上国に分類される国であり、脱炭素化実現のためには、他国からの投資や技術支援が必須です。
経済発展を遂げるベトナムで、近年は脱炭素に関連した事業を展開する企業が多く進出しています。日系の会社で、工場の屋根にソーラーパネルを設置して行う太陽光発電は双日、港湾地域に風力タービンを置いて行う風力発電は住友商事が有名です。
ベトナムの脱炭素化の今後
最後にベトナムの脱炭素化の今後について解説していきます。
25年から公共交通のグリーン化を推進
ベトナムの首都であるハノイ市の人民委員会は、2025年から公共交通機関のグリーン化を進め、バスは新規と買い替え時に電気もしくはグリーンエネルギー車両にする方針を打ち出しました。
ただし、2024~33年の10年間に8兆3,000億ドン(約498億円)の財源が必要です。毎年どのように財源を確保するかが、今後の課題になると考えられます。
2050年までに温室効果ガス排出ゼロを目指す
2021年11月にベトナム首相ファム・ミン・チン氏は、2050年までに温室効果ガス排出ゼロ(カーボンニュートラル)を目指す意向を発表しました。温室効果ガス排出ゼロとは、温室効果ガスの排出量と吸収・除去量を差引ゼロにすることです。
2023年12月には、東京電力ホールディングスとベトナム電力公社が基本合意書の締結を行い、相互での協力を目指していく方針を発表しています。
まとめ
近年ベトナムでは、脱炭素化に向けた動きが見られます。2050年までに温室効果ガス排出ゼロを目指していますが、省庁間の連携や投資・技術力不足が懸念として残ります。
政府の示す目標達成に向けて、脱炭素化に向けた動きは、より盛んになると考えられます。ベトナムにおいて、日系企業は今後多くのビジネスチャンスを見出すことができるのではないでしょうか。