インドネシアの新政権の動き
インドネシアでは、2024年10月にプラボウォ氏・ギブラン氏による新政権が誕生しました。新政権誕生から半年以上が経過し、政策の発表や省庁数の増加、金利の引き下げなど、さまざまな動きが見られます。
本記事では、インドネシアの新政権の概要や現在までの動き、今後の展望を解説していきます。
インドネシアの新政権とは

2024年2月14日に行われた大統領選を経てプラボウォ氏・ギブラン氏による新政権が発足。大統領のプラボウォ氏は前政権で国防相を務めた人物で、ギブラン氏はジャワ島中部ソロ市の前市長でジョコ前大統領の長男です。
ジョコ前大統領は2014年から2024年の10年間在任し、国民の支持率は80%前後を維持していました。新政権を決める選挙では合計3組が立候補しましたが、ジョコ前大統領が支持したプラボウォ氏・ギブラン氏のペアが当選を果たしています。
新政権は、ジョコ前大統領によるバックアップや、プラボウォ氏の朗らかで可愛いイメージを打ち出したことが功を奏し、国民の期待度が高い状態が続いています。
インドネシアの新政権の動き

ここでは、インドネシアの新政権が発足してから現在までの動きを紹介していきます。
省庁数は34から48に大幅増加
2024年10月21日、インドネシアのプラボウォ大統領は閣僚任命式を実施し、省庁数が48に増えたことを発表しました。前政権では34だった大臣のポストは53に増えて東南アジア最大となり「もっとも太った内閣」が誕生したと報じられています。
インフラ・地域開発担当調整省、食料担当調整省、社会強化担当調整省などが新設され、特定の分野に絞ったより細かい政策の実現が期待されています。一方で規制の複雑化や、管理コストの増大を懸念する声もあります。
「2045 ⻩⾦のインドネシア」の夢を掲げる
「2045 ⻩⾦のインドネシア」とは「建国100周年の2045年までに高所得国・先進国になる」という、ジョコ政権時に掲げた目標のことです。新政権でもこの目標を引き継いでおり、毎年+5%の成長を維持できれば達成できる見込みです。
インドネシアでは人口ボーナス期にあり、近年は概ね5%前後の成長を記録しています。しかし、2002〜2023年平均の成長率は1.4%であることに加え、生産年齢人口(15〜64歳)の伸びは鈍化が見込まれており、実現は厳しいという見方もあります。
モノからヒトへの投資へ
インドネシア政府は、従来の設備やインフラといったモノではなく、ヒトへの投資強化を掲げています。具体的な政策は以下の通りです。
・無料栄養⾷プログラム
・無料健康診断プログラム
・学校給⾷や健康診断の無償化
インドネシアは人的資本指数(平均就学年数と教育のリターンに基づき算出)が、2019年時点でASEAN10カ国中で7位でした。インドネシア政府は、高い成長率達成のためには生産性向上が不可欠という考えのもとで、将来的に競争力のある労働市場を実現しようとしています。
政策金利の引き下げを実施
2025年1月、インドネシア政府は政策金利を0.25%引き下げ、5.75%にすると発表しました。この引き下げの背景には、インフレ率が2024年12月時点で1.57%と落ち着いていて、ルピアのレートが安定していることが挙げられます。
この引き下げによって市場が活発化し、さらなる経済成長につながることが期待されています。
インドネシアの新政権の今後
今後、政府の財政運営や政策にどのような影響を及ぼすかが注目されます。
貧富の差の拡大
インドネシアの2023年3月時点での貧困率は9.36%であり、今後はさらに貧富の差が広がることが見込まれています。
ジョコ政権では貧困層をターゲットにした社会保障・社会扶助プログラムの強化で貧困率が10%を下回り一定の効果を得ました。しかし、中間層は2018年に23.0%を記録していましたが2024年3月時点で17.2%に低下し、一方で中間層予備軍は2014年から2023年の間で約8%増加。この背景には賃金上昇を上回るインフレが継続して消費支出が拡大したことが挙げられます。こうした事実は貧富の差が広がっていることを示しており、政府は中間層の回復を促す政策が求められています。
まとめ
就任から100日経過(2025年1月)時点のプラボウォ大統領の支持率は80.9%で、国民の大多数に支持されています。これは1月より開始した学校の無料給食が支持された形であり、同時期のジョコ大統領の支持率65.1%と比較しても高い数字です。
一方で現在掲げている目標の達成は疑問視されていることに加え、権力が一極集中する「民主主義の後退」への懸念も残ります。今後は国民の支持を維持しつつ、持続的な成長と民主主義の健全性をどのように両立させるかが課題となるでしょう。