ベトナムのガソリンバイク規制とは
ベトナムのバイクの保有台数は約7,700万台(2024年9月時点)、保有率は約77%で、世界的にも割合の高い国です。ベトナムを訪れた際に、道を走るバイクの多さに圧倒された人も多いのではないでしょうか。
登録されている7,700万台の9割以上はガソリンバイクです。しかし、近年ベトナム政府は電動バイクの利用を推進しており、一部地域でガソリンバイクを規制することを発表しました。
本記事では、ベトナムのガソリンバイク規制について解説していきます。
ハノイ市で始まる段階的な規制の概要
2026年7月1日よりハノイ市の環状1号線で、時間帯によってガソリンバイクの通行(または乗り入れ)が禁止されます。ハノイ市の環状1号線とは、街の中心地にあるタイ湖の北端からギータム通りを下り、統一公園の南側からキンマー、タイ湖の西側までを結ぶルートです。
この規制は、以下の通り段階的に拡大することを予定しています。
2028年1月1日以降:環状1号線内の全域と環状2号線
2030年1月1日以降:環状3号線内の全域
2031年1月1日以降:状況に応じて追加区域を指定
環状3号線内の範囲は広く、2030年にはハノイ市内の主要エリアほとんどが規制される見込みです。規制地域内ではガソリンバイクに加えて、3.5t以上のガソリン燃料トラックや、一定の排出基準に満たない車も対象になります。
ベトナムのガソリンバイク規制による影響
ベトナムでは近年電動バイクが普及し始めているとはいえ、ガソリンバイクの台数はまだ圧倒的に多いです。そのため、規制は人々の生活に大きな影響を及ぼすことが予想されています。ここでは、ベトナムのガソリンバイク規制による具体的な影響を解説していきます。
市民の間では賛否の意見が分かれる
ガソリンバイクの規制について、市民の間では賛成派と反対派の意見が分かれています。賛成派の意見には「排気ガスによる大気汚染の改善につながる」「大気汚染によって1,000万人以上が影響を受けており、対策は必須」などが挙げられます。
一方で反対派の意見には「規制区域からの乗り継ぎ交通手段が不十分」「電動バイクの走行可能距離が短い」「買い替え資金がない」などがあります。全体としては、整備実施の準備が不十分である、と指摘する反対派の方が多い状況です。
充電ステーションの設置が進む
電動バイクのインフラ環境が整っていないという現状を受けて、ベトナム政府は充電ステーションの設置を進めています。2025年9月、電動バイク市場でトップシェアを誇るビンファストの子会社「V-GREEN」は、ハノイ市内に約1000基が充電できる国内最大のEV充電ステーションを開設しました。
しかし、将来的な需要に向けたカバー率はまだ1割未満である上に、充電インフラは都市部に集中している状況です。また、過去には充電中の発火による大規模な火災も発生しており、安全面への懸念も残ります。
政府より購入時の補助金を提案
ベトナム政府は、電動バイクの買い替え時に補助金を出す方針を打ち出しています。ハノイ市民は20%(最大500万ドン)、貧困層に近い世帯は80%(最大1,500万ドン)、貧困世帯へは100%支給(最大2,000万ドン)の補助金が受け取れる見込みです。
他にも、分割払い購入時のローンの金利30%を補助、新車登録料の50%減額、学生や大学生、工業団地の労働者が利用する公共交通機関の運賃無料化など、さまざまな施策が行われます。こうした点からも、ベトナム政府が本腰を入れて電動バイクを普及させようとしていることがわかります。
シェア一位の「ビンファスト」をはじめとする国内外メーカーの動向
国内ナンバーワンのシェアを誇るビンファストは、2026年2月に高級・スポーツタイプなど、合計7車種をリリースすることを発表しました。ビンファストは2025年に合計406,453台の電動バイクを販売しており、今後も生産能力を強化していく予定です。
ビンファスト以外の国内メーカーは「Selex Motors」「Dat Bike」、外資では「YADEA」「ホンダ」「ヤマハ」「LG Energy Solution」などが挙げられます。今後電動バイクの需要増加の可能性が高く、さらに市場が活発化するとみられます。
現段階ではハノイ市のみで実施
現状規制が予定されているのは、ハノイ市の環状一号線内に限られます。中心部の大気汚染対策を目的とした措置であり、対象エリアも限定的です。
ホーチミン市で全面的な規制が導入される見込みはありませんが、一部地域ではガソリンバイクの新規登録を認めないという施策が行われています。国全体で電動バイクを推進する方針が明確に示されており、将来的にはホーチミン市でも規制が行われる可能性が高いとみられます。
ベトナムのガソリンバイク規制による日系企業への影響
ガソリンバイクのメーカーであるホンダやヤマハは、ベトナム国内で大きなシェアを抱えており、今回の規制による影響は非常に大きいと考えられます。ここでは、日系企業への具体的な影響について解説していきます。
シェア8割を占めるホンダは打撃
ベトナムのガソリンバイクのシェアは、ホンダが約80%、ヤマハは約15%です。規制によって今後ガソリンバイクの販売台数は低迷すると予想されており、部品メーカーも含めて今後ベトナム市場で苦戦することが予想されています。
近年では、ホンダやヤマハも電動バイクの開発を進めています。2022年にヤマハは「ヤマハNEO'S」、2025年には「ICON E」の販売を始めていますが、地場メーカーや専業EV企業が先行しており、シェアは限定的です。
日本企業側は異議申し立てを実施
2025年10月、日系企業は日本大使館を通じて、ハノイで予定されているガソリンバイク規制についてベトナム政府へ正式に申し入れを行いました。日系企業側は雇用や産業への影響を懸念し、見直しや条件の緩和を求めています。
しかし、ベトナム政府は規制を実施する姿勢を崩していません。2026年から段階的に実施される規制は、今後さらに強化される可能性があります。
まとめ
今回のガソリンバイク規制は、大気汚染対策という課題解決を目的とする一方で、ベトナムバイク市場の構造が変わる転機ともいえます。都市部から段階的に進む規制は、電動化への流れを一気に加速させる可能性があるでしょう。
この背景には、電動バイク分野で台頭する国内メーカーの競争力を高めたいという政府の思惑が感じられます。外資メーカー中心だった市場構造がどう変化するのか、今後の動向が注目されます。