税務法務

2026年7月から始まるベトナムの法改正とは

2026年7月から始まるベトナムの法改正とは

ベトナムでは2024年8月の書記長交代以降、法制度の刷新が急速に進んでいます。2025年12月の国会では複数の法案が可決され、2026年7月1日に施行が集中する見通しです。
本記事では、2026年7月から始まる主な法改正のポイントと、日系企業への影響について解説していきます。

2026年7月に法改正が集中する背景

ベトナム共産党は2025年に「法令の制定及び執行の刷新に関する決議」を採択し、法整備のスピードアップを掲げてきました。これを受けて国会では、個人所得税法や投資法など、経済活動に直結する法律の改正が相次いで可決されています。
一連の改正は個別に施行されるのではなく、2026年7月1日という節目に集中する形となりました。税制・投資・行政手続き・労務にまたがる変更が同時に動くため、企業側は複数の改正点を並行して把握する必要があります。

2026年7月から始まる主な法改正

7月から施行される改正には、税制・投資・行政手続き・労務など幅広い分野が含まれます。ここでは特に影響の大きい5つの改正を紹介します。

税率が7段階から5段階に

改正個人所得税法が2025年12月10日に可決され、2026年7月1日から施行されます。累進税率はこれまでの7段階から5段階に簡素化され、中間層の負担が軽減される計算です。基礎控除は月1,100万VNDから1,550万VNDへ、扶養控除は440万VNDから620万VNDへとそれぞれ引き上げられました。
あわせて、暗号資産やEC取引による所得、ゴールドの譲渡益も新たに課税対象へ加わっています。控除額の引き上げにより低中所得層の税負担は軽減される一方、課税対象の範囲は広がる形です。

参入規制の緩和

これまでベトナムでは、特定の業種に外国企業が参入する際、あらかじめ政府の許可を取っておく必要がありました。この「許可が必要な業種リスト」が2026年7月1日から縮小され、対象は198業種から142業種に減ります。
証券、保険、金、石油・ガソリン、不動産、通信、医療、教育などは引き続き許可が必要ですが、物流や情報、一部の専門サービスはリストから外されました。リストから外れた業種では、事業開始後に政府が検査へくることになります。

行政手続きの簡素化

今後M&A(企業買収・合併)に関する行政手続きが簡素化されます。基準額が「3兆VND(約180億円)→6兆VND(約360億円)」の倍に引き上げられたため、今まで政府への手続きが必要だった規模の買収・合併でも、スムーズに進められるケースが増えます。
内務省が管轄する一部の事業(NPO法人や職業紹介など)は、ライセンス発給手続きが停止され、事後監査制へ移行することが示される見込みです。今までは事業を始める前にライセンスの発給を受ける必要がありましたが、7月からはこの手続き自体がなくなり、事業を始めた後に検査を受ける方式に変わります。

ハノイ市でガソリンバイク規制がスタート

2026年7月1日より、ハノイ市中心部を囲む環状1号線の内側で、低排出ゾーンが試験的に導入されます。当初は全面禁止の方針が示されていましたが、市民や業界団体からの要望を受け、一部緩和された形での実施となりました。
区域内では、ガソリンバイクを用いたデリバリーや配車サービスの事業活動も禁止されます。規制対象地域は段階的に拡大される計画で、2028年には環状2号線、2030年には環状3号線、2031年には市内全域へと広がる予定です。

第2子出産時の産休が7カ月に

人口法の改正により、第2子を出産する場合の産休期間が6カ月から7カ月に延長される見通しです。現行制度では第1子・第2子ともに産休期間は6カ月で統一されており、今回の改正は少子化対策として第2子以降の出産を後押しする狙いがあります。
産休期間の延長は、企業にとって人員計画や社会保険料の負担に直結する変更です。2025年7月に施行された新社会保険法に続く労務関連の制度変更として、今後も動向を注視しておくようにしましょう。

法改正による日系企業への影響

複数の法改正が同時に施行されることで、日系企業には実務と事業の両面で影響が生じます。

給与計算の見直しが必要

個人所得税の新税率・控除額に合わせて、給与計算方法や社内システムの更新が必要です。控除額が変わるため、扶養控除の申告内容を改めて確認するようにしてください。
就業規則や給与規程についても、課税と非課税の定義や、扶養家族の申告手続きを見直す作業が発生します。これらは年末調整や確定申告の実務にも影響が及ぶため、早めの準備が求められることになるでしょう。

新規参入、事業拡大のチャンスにも

条件付き業種の削減と行政手続きの簡素化は、ベトナムへの新規進出や事業拡大を検討する企業への追い風にもなります。届出・事後監査制への移行が進むことで、これまでより短い期間での事業開始ができる業種も出てくることでしょう。
ただし、政令や通達レベルの詳細は今後公布されるものも多く、7月1日時点ですべての運用ルールが固まっているわけではありません。引き続き最新の政令・通達の内容を注視することが求められます。

まとめ

2026年7月には、税制・投資・行政手続き・労務にまたがる複数の法改正が同時に施行されます。日系企業にとっては、給与計算や車両運用などの実務対応が求められる一方、規制緩和による新たな事業機会も生まれつつあります。
公布された政令・通達の詳細は今後より具体的な形で発表される予定です。ベトナムは法改正のスピードが速く、施行後に運用ルールが後追いで固まっていくことも珍しくありません。今後企業側は迅速な情報収集と対応が求められるでしょう。

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