ベトナムの2025年の景気展望
メトロや高速道路の開通、地方部では空港が開港するなど、ベトナムの街並みは年々進化を遂げていますが、国内の景気はここ数年芳しくありません。特に2023年、2024年は不動産会社幹部の逮捕を起因とした内需の停滞を受け、新型コロナが沈静化して経済活動が復調した2022年と比較すると成長ペースに若干の鈍化が見られます。
本記事では、ベトナムの2025年の景気展望を解説していきます。今後、ベトナムでのビジネスを検討している人は、ぜひ記事を確認してみてください。
ベトナムの2025年の景気動向とは

ベトナムのGDP成長率は、新型コロナが落ち着いた2022年に8.12%と大幅に上昇し、2023年は5.05%、2024年は7.09%と堅調に推移しています。
しかし、国内経済がすべて順調というわけではありません。2022年には、地場不動産会社タンホアンミンの会長が逮捕され、不動産開発と建設業を手がけるフックソングループ幹部の収賄事件を発端に、多くの企業が営業停止に追い込まれました。
不動産業界の事件は建設業や製造業へも波及し、北部ではバクニン省とバクザン省、南部ではビンズオン省、ホーチミン市で多くの失業者が出ています。
その影響もあり、2023年と2024年のベトナム経済は、GDP成長率が示すほどの好材料に恵まれませんでした。しかし、2025年にはこうした懸念が一巡し、再び力強い成長が期待されています。
ベトナムの2025年までの景気動向

ここでは、2025年までのベトナムの景気動向について、より具体的に解説していきます。
2024年はGDP成長率7.09%を記録
2024年のベトナムのGDP成長率は7.09%でした。この数字は、同年のタイ「2.6%」マレーシア「5.3%」インドネシア「5.0%」など東南アジア諸国と比較しても、もっとも高い数字です。
ベトナムは2025年以降の5年間も「約5%〜6%」の堅調な成長が見込まれています。そうした見込みの背景には、 輸出需要の拡大や不動産市場の回復などがあります。
米国向けの輸出が拡大
米国はベトナム最大の輸出国であり、2024年には総輸出額1,195億149万ドル(前年比23.2%増)を記録しました。2023年末には、景気後退の影響で2024年内の輸出減少が懸念されていましたが、結果として大きく回復を遂げています。
輸出製品別では、コンピュータ部品や電子製品、機械設備や木材、木製品に大きな伸びが見られます。
建設業や製造業が市場を牽引
2024年、業種別では以下の3つ「鉱工業・建設業:8.24%」「製造業:9.83%」「サービス業:7.38%」が力強い伸びを記録し市場を牽引しました。伸び率は2024年の第一四半期から期を追う度に加速しており、投資拡大を後押ししていることがうかがえます。
一方で、農林水産業では3.27%の成長にとどまりました。これには、付加価値や生産性の低さ、また2024年9月にベトナム北部へ直撃した台風「ヤギ」による被害が影響していると考えられます。
ベトナムの2025年以降の景気動向

次に、ベトナムの2025年以降の景気動向を解説していきます。
米国による関税圧力の懸念
2025年1月にトランプ大統領が就任して以降、米国は貿易赤字国に対しての関税圧力を強めています。貿易赤字1位のメキシコや2位のカナダからの輸入品に対する関税が上昇する中で、同3位のベトナムにも飛び火する可能性があります。
ベトナムの製造業はGDPの約24%を占める重要な産業であり、米国へは、衣類や履物、機械設備やコンピューター部品を輸出しています。もしベトナムからの輸入品にも追加関税が課された場合、国の貿易収支に大きな影響を与えることになるでしょう。
不動産市場回復への期待
2023年〜2024年の不況の原因となった不動産市場の停滞は、2025年以降に改善の動きがみられます。不動産幹部逮捕による裁判は継続中ですが、摘発が一巡し営業を再開する企業も増えてきている状況です。
また、2024年には外国人によるハノイの集合住宅購入は2800戸に急増しています。不動産市場が低迷する中でもハノイの物件価格は伸び続けており、2025年以降に市場のさらなる活性化が期待されています。
公共投資の拡大
ベトナム政府は、2025年に過去最高の公共投資予算となる791兆ドン(約4.8兆円)を設定しました。前年比16.8%となる予算は、高速鉄道の開通、港湾や空港の新設、都市部の地下鉄の開業など、主にインフラプロジェクトへ用いられる予定です。
ベトナム政府は、2025年に8%以上のGDP成長率を目標としています。公共投資の拡大によって、国内産業の発展や海外からの直接投資の増加が見込まれています。
まとめ
2025年のベトナムは不動産業界の懸念が払拭され、米国向けの輸出も拡大の見込みがあるなど、経済成長を後押しする明るい材料が多く目立ちます。また、建設業や製造業の成長も力強く、今後の投資環境にも期待が持てるでしょう。
一方で、米国による関税圧力の懸念は残ります。輸出の依存度が高いベトナム経済にとって、海外の規制による影響は無視できません。今後は国内市場の活性化や、貿易の多角化が成長の鍵となるでしょう。