インタビュー
生活協同組合ユーコープ

減少する店舗の物流ネットワークを再編

減少する店舗の物流ネットワークを再編

統合マネジメント本部 生産物流・業務改革担当 岡崎 淳 氏

売上規模についてお聞かせください。

岡崎 2016年3月段階の供給高は全体で1,740億円、宅配事業1,102億円 店舗事業624億円 その他事業で14億円となります。

高齢化の波で宅配市場への他業者の参入はありますか。

岡崎 潜在的利用者数は増えていく傾向にあると思われますが、利用金額がお客様の数に見合うほどは伸びないだろうと見ています。生協の組合員様の平均購買金額は1回につき4,500円~5,000円となりますが、実際毎週のお買い上げは見込めません。1回につき組合員(お客様)に5,000円前後お買い上げいただけないと物流コストの採算がとれないのではないでしょうか。

ネットスーパーが盛んに言われている一方で、撤退する会社も見られます。儲けが出ないもっとも大きな要因は物流コストが壁となるからです。撤退されたのは倉庫型ネットスーパーを始めたスーパーさんです。店舗型ならお店でピッキングし、配送も近場だけであれば大きなコストもかけずにできますが、いったん物流センターを構えてしまえば莫大な固定費がかかります。

おひとり当たりの買い物点数に変化は見られますか。

岡崎 平均点数は13.28点で前年比98.97%と微減の状態です。私が生協に入った当初は17~18点のお買い上げがあり7,000円程度の売上もありました。今後もこのまま減少すると予想されるなか、日常的なものなど新しいものでプラスアルファを考えていかないといけないと考えています。

近年の生協組合員のニーズについて。

岡崎 生協の古い店舗はスーパーと違い、わかりにくい場所に位置しているため、通りすがりに入っていただくことは困難です。組合員さんは生協の宅配をご利用いただきながら近隣のスーパーにも通われている形態も多く、組合員さんの生活を豊かにすることを目的にさまざまなサービスのご提供を開始しました。組合さんにヒヤリングしたところ、ネットスーパー型で幅広いメニューを持つお弁当、それを早いタイミングで届けてほしいとの声が多数ありました。

そこで新商品として「夕食宅配マイシィ」というお弁当宅配サービスを開始、ユーコープの基準に基づいた食材をバラエティ豊かで飽きのこない味付けで当日調理し、急速冷却・盛り付けしてお届けしています。管理栄養士がカロリー・塩分・栄養バランスを監修し、幅広い年代の方の食生活をサポートしながら、ご自宅のレンジで温めればすぐにお召し上がりいただけます。

夕食宅配マイシィは神奈川・静岡・山梨を対象に28拠点から宅配を行い、14億円の供給高があります。ただ我々の衛生基準をクリアできるお弁当屋さんがなかなかないため、他のエリアまで拡大することはなかなか難しい。※2016年現在28拠点、伊豆エリアと浜松の山間部がお届けできないエリアです。 また新宅配カタログ 「DOSA-TTO(ドサット)はプロ仕様・業務用の大容量規格の冷凍商品を中心としたカタログとして、四半期に1回発行を行い、単価が安いもののまとめ買いのニーズにご対応いただいています。

各セットセンターの役割について教えてください。

岡崎 セットセンターは<座間食品>、<沼津生鮮>、<森の里要冷>、<座間非食品>、<相川農産>の5拠点を構えています。

座間食品(神奈川県座間市)ではピースソータ2系統に、DPS(デジタルピッキングシステム)がぶら下がる複合ラインで賞味期間等に基づくロット管理を行い、トレーサビリティも実現しています。沼津生鮮(静岡県沼津市)は昼間に宅配向けの集品を行い、深夜帯には店舗向けの要冷商品の仕分けを行うことでスペース効率を向上させています。森の里要冷(神奈川県厚木市)では館内を5℃で管理、13.56MHzのRFIDを採用し消費期限等に基づくロット管理を行い、誰に、どの日付の商品を届けたのかという情報も追跡できる仕組みを導入しました。座間非食品(神奈川県座間市)ではケース自動倉庫を用いて、1規格1,400~1,700アイテムの集品、愛川農産(神奈川県愛甲郡)ではケース自動補充装置を活用し、産地(県単位)別のロット管理を行っています。

2009年から2011年までの間にほとんどのセンターで庫内システムのリニューアルが完了しています。

生協のロジスティクスについての課題を教えてください。

岡崎 2014年は輸送コストの全国的な値上げラッシュがあり、ユーコープでも軽油代価格・最低賃金の上昇に伴う物流委託料の値上げ要請に対応したため運営費は増加しています。ドライバー不足が背景にあるため、私たちも答えざるを得ない状況にあります。神奈川は東京と匹敵するほどの最低賃金が高いエリアで、都内に物流センターはあまりありませんから、ある意味全国で一番高い人件費をお支払している地域でもあります。

また圏央道が完成したこともあり、県内は物流センターが林立しています。そのため、パートの人を集めるのに苦労していますね。その対策として時給アップを考えたいようですが荷主からの委託料はそれほど上げられないので困っているようです。

ドライバー不足についてはいかがですか。

岡崎 昨今の物流業界の流れを見ると、車両を減らすことを考えないといけない段階にきているのではないでしょうか。ユーコープでは配送を委託業者さんに一任していますが、積載率向上と車両の回転数を高め、車両台数を削減させる方策を検討中です。例えば8割の積載のトラックがあれば、残り2割を5台で埋めることができれば、1台不要となります。容器を可能な限り小さく軽くして、過積載にならないような工夫を検討しています。

食品に欠かせないドライアイスについては?

岡崎 生協の中でも冷凍庫がないデポがあることは珍しいのですが、神奈川県には冷凍庫がない配送センターがいくつかあります。土地代が高かったり、広い敷地が取れなかったりなどが要因となります。

現在は夜間、セットセンターでドライアイスを容器に入れたものをデポに出荷しています。冷凍品を冷凍のまま、組合員さんにお届けするにはドライアイスを欠かすことができないのですが、CO2の問題もあり、一昨年から各生協さんでドライアイスを減らしていこうという動きが見られます。

近年ドライアイスを製造するメーカーさんが削減し、供給量も減少しています。ドライアイスは化学製品を作る際の副産物としてできるもので、国内で化学製品を作る工場が減少の一途を辿っていることが要因のようです。

この先、日本で大量生産できる保証はありませんし、韓国など外国から輸入しようとしても、他の国も同じような状況に陥るものと見ています。長い目で見た場合、ドライアイスを使わない方法を模索しない限り、事業として成立しなくなる可能性もあります。

今後の展望について。

岡崎 全盛期の供給高は2,000億円を超えていましたが、現在1,770億円まで下がっていることの要因は店舗閉店をしたことによる供給減となります。店舗への物流の仕組みは当時のままのため、こじんまりした数量に見合った物流を再編しないといけないと考えています。そこで私が事業管理部 物流・構造改革担当として構想を練り、2016年からの3か年中期計画を作成している最中です。

ドライバー不足と同様に物流センターの人手不足は深刻で、パートの時給は1,000円の声を聴き始めています。センター設計時には間接費も含めての目安として、1,400円より高くなる場合は機械化を考えた方がいいと考えていましたが、そろそろ機械化も検討する時期ではないでしょうか。一番のニーズは省人化ができるような集品方法です。アイテム拡大についてはマテハン機器の導入も考えています。

全ての生協さんでもアイテム拡大を目指していますが、そうなると少量多品種にもなってしまう。そこで大切なのは物流効率化です。いかに集品効率を高めることができるか、これからもアンテナを張っていきたい。


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