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株式会社野村総合研究所

(レポート)野村総合研究所 フィジカルインターネット~その本質と日本での動向~

(レポート)野村総合研究所 フィジカルインターネット~その本質と日本での動向~

フィジカルインターネット構想とは

はじめに、フィジカルインターネットの実現に向けた、基本的な考え方をご紹介します。

1.フィジカルインターネットは、究極の「オープンな共同物流機構」であり、「物流資産の最大稼働効率」を目指す

「資産」は倉庫やトラック、人的資産などを指します。これらのアセットの最大稼働を目指します。

2.フィジカルインターネットでは、「物流分野の産業構造の変革」が期待される

インターネットは「OSI(Open Systems Interconnection)」という通信プロトコルが使われています。これに類比し、フィジカルインターネットでは「OLI(Open logistics Interconnection)」の7階層モデルが提唱されています。

長期的に見た場合、フィジカルインターネットによって物流産業は「水平型の階層サービスの統合によって構成される構造」への変化が予想され、その結果、オムニチャネルリテイリングへの対応や、高度なSCM業務が可能となると思われます。

3.フィジカルインターネットでは、「各種先端技術の活用が容易になる」と期待される

各種AIの導入による最適化や、高速道路での自動運転、マテハンへのロボット導入といった先端技術を縦横無尽に使える環境づくりが期待されます。

4.フィジカルインターネットの実現には、民間企業のビジネスモデル転換と併せた、「政策的な標準化」が効果的である

標準化には、PI(Physical Internet)コンテナなどの輸送容器をユニット化する「一貫パレチゼーション」や、荷主の業種横断型の企業間連携のIT標準(物流EDI、共通事業所コード、事業所マスタ)、データ連携方式の共通標準(IDS、スマートコントラクト、ブロックチェーン)などのアイデアがあります。

5.業種横断の「オープンなプラットフォーム」は、「国際貿易物流における共同輸配送業務」が先行した成功モデルである

共同輸配送の例として、国際貿易物流における海上コンテナの配送が挙げられます。船会社が自社のコンテナだけでなく、他社のコンテナも含めて共同で配送を行っており、さまざまなサービスが階層構造的に提供されています。この仕組みを陸上物流に適応するのがフィジカルインターネットです。

6.国際物流市場では、オープンなプラットフォームは既に複数存在し、急成長を遂げている

7.国内物流市場におけるデジタル化の閉塞の原因は、荷主業種別EDI(電子データ交換)と考えられる

荷主業種別EDIを、「業種ごとで共通化する」ことが効果的だと考えています。

8.国内物流市場において、業種横断のEDIを実現するには国際標準(EDI、GS1他)の導入が効果的と考えられる

●国内物流の問題認識

国内物流においては、下記のような厳しい状況にあり、それを解決するためにフィジカルインターネットがあります。

・深刻なドライバー不足
・幹線トラックの積載効率、物流センターなどの物流資産稼働率は低い
・ITやIoT、AI・最適化アルゴリズムの活用余地は莫大
・首都圏物流問題の解決は巨大都市ソリューション開発の絶好の機会

●フィジカルインターネットの定義

まず少し前の定義をお話ししたいと思います。
「企業や業種の壁を越えて物流アセットをシェアし、流れを統合すること」
これが初期の着想でした。

ところが昨年行った日米欧三局のシンポジウムで、ジョージア工科大学のMontreuil教授は次のように述べています。

・物流の各レイヤーごとにコネクトされた状態
・企業間の通信プロトコルがカプセル化、モジュラー化され、標準化されている状態
・それは物理的なものに対する人々の需要を満たすため、実現可能で効率的かつ持続可能な状態にするためにあるもの

フィジカルインターネットを説明する際によく例えられるのが、私たちが普段使っているデジタルインターネットです。
デジタルインターネットでは、発信者が出したデジタル信号が複数の「パケット」に分割して格納され、それが複数のルーターを経由して受信者に伝送されます。

一方、フィジカルインターネットでは、パレット等の「規格化された容器」に詰められた貨物が、各種の物流センターを経由して目的地まで運ばれます。これら2つの類似点は、伝送対象が「ユニット」に分割され、それが運ばれるネットワークが複数階層で構成されていることです。

伝送対象は、ネットワーク上でバケツリレーのように途切れることなく、目的地へと運ばれます。またラストワンマイルでは、共同輸配送を行うことで効率化を図ります。

さらには、物流センターを「オープン・クロスドックセンター(OCDC)」として複数企業で共同配送・シェアすることで、トラックの輸送距離を短くし、配送効率を高めることができます。

●フィジカルインターネットの実現によるビジネス展開

ビジネスとして展開するとこうなるのではないか、ということで私なりに次のようにまとめてみました。
フィジカルインターネットが実現することで、物流サービスの産業構造が多階層のプラットフォームサービスで再設計され、以下のようなビジネスが展開されるでしょう。

1.物流不動産提供サービス
2.OCDCの機能(庫内サービス)提供
3.OCDC間の幹線輸送サービス
4.OCDCから大都市内部の小口配送サービス(+ラストワンマイル配送)
5.顧客フロントで物流サービス(=全体コーディネーション)行うシステムインテグレータ≒3PL)

このようなレイヤー構造を束ねていく中でフィジカルインターネットが実現するのではないかと思います。

そのためには、EDI、GS1、ブロックチェーン、スマートコントラクト、IDSといった標準化議論が有効だと考えます。
また国際物流の領域では既にオープンなプラットフォームサービスが台頭してきていますが、国内でも複数のスタートアップ企業が要素ソリューションの開発をはじめています。

●フィジカルインターネットは、究極のオープンな共同物流機構

1.物流関連資産のオンデマンド型シェアリングサービス

物流関連資産の稼働率とサービスレベルの格段の向上が必要です。その実現には「どこに倉庫を置き、どうトラックを走らせるか」など、ネットワークの設計・計画・実行を統合し、計画的かつリアルタイムにダイナミックな最適化を図り続ける必要があります。現状では既に、AIの進化により巨大な最適化モデルは実現しています。

2.新技術の応用可能性が拡大

高速道路での自動運転の導入や、ラストワンマイル物流を分離して新しい技術を適用することが可能になってくると思います。

3.もちろん一朝一夕には難しい。しかし「人手不足は深刻、待ったなし!」

上記のように、技術やソリューションはある程度揃っています。その上で必要なのは「政策的な標準化」です。PI(Physical Internet)コンテナなどの輸送容器をユニット化する「一貫パレチゼーション」や、「スマートコントラクト」など荷主の業種に依存しない企業間連携のIT標準化、EDI(電子データ交換)、事業所マスタの同期化、IDS、ブロックチェーンなどデータ連携の共通標準化が必要となります。

●国際貿易物流領域におけるオープンなプラットフォームの台頭

国際貿易物流においては既にオープンなプラットフォームが存在しています。国際貿易物流は複雑な業務であり、1990年代に「EDIを共通化して世界中で使えるようにしよう」という議論が行われました。

その結果、Descartes Systems社が、国際標準のEDIを活用した企業間のネットワーク基盤、Global Logistics Services Networkを提供しました。

またシンガポールにある世界最大級の港湾ターミナルオペレーター・PSA International社は、アジアだけでなく、ヨーロッパと米州まで事業を展開し、16か国・約40の港湾でターミナルオペレーションを受託中。クラウド上に、スケーラブルなシステムを構築しています。

●日本の物流産業のデジタル化の課題

一方で日本はどうでしょうか。日本の物流はサービス水準は世界一、しかしIT投資は遅れ、生産性は低いという状態です。
物流産業は、全産業と接点を持つネットワーク型のインフラ産業として極めて重要な産業である。と言えます。
日本の物流産業におけるデジタル化の根本的な課題は「荷主の業種別VANに物流事業者が参加できていないこと」です。
これは、帰り荷を含め、運ぶ可能性のある荷主の業種のEDIに全て加入しておくことが、運輸事業者の視点からはコストが大きく、経済性の点で合理性に乏しいためです。


この課題を解決するためには、やるべきことが2つあります。

・業種横断での荷主とのEDIメッセージ
既にグローバルに活用されている国際標準のEDIメッセージ群を活用、既存の格安のクラウドソリューションをそのまま活用することが有効です。

・業種横断の事業所コードの整備・運営
事業所コードを発番してユニークネスを担保し管理・保守運営する組織を作り、いわば「事業所のマイナンバー」として管理すれば、デジタル化はかなり円滑に進むと考えられます。

●首都圏物流問題の解決は2030年までに

フィジカルインターネット自身は2040年までのロードマップを引いていますが、日本の場合は2030年までに首都圏の物流問題を解決していかなければならないと思います。
皆さん、ぜひともご協力お願いします。

講師紹介

株式会社野村総合研究所
主席研究員 藤野直明 氏

株式会社野村総合研究所
主席研究員 藤野直明 氏

1986年に野村総合研究所入社。政府や自治体への政策研究、企業の業務改革などに携わる。日本オペレーションズリサーチ学会フェロー、オペレーションズ・マネジメント&戦略学会理事、ロボット革命協議会インテリジェンスチーム・リーダー、早稲田大学大学院客員教授他、大学、大学院での社会人向け講義も行っている。 著書に「サプライチェーン経営入門」(日本経済新聞社:中国語翻訳も出版)、「サプライチェ-ン・マネジメント 理論と戦略」(ダイヤモンドハーバードビジネス編集部)

募集要項

イベント名 フィジカルインターネット~その本質と日本での動向~
日時 2021年2月17日(水) 16:00~17:00
会場 オンライン受講 (参加費無料)
参加対象者 荷主・物流企業 様
参加費/定員 100名

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティングチーム
担当:
佐藤(サトウ) 瀧川(タキカワ)
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5572-6604

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