CREフォーラム レポート
西濃シェンカー株式会社

(レポート)西濃シェンカー グローバルで求められるロジスティクスと人材

グローバル企業とは何か

グローバル企業とは何か

なぜ「インターナショナル」ではなく、「グローバル」と言うのでしょうか。インターナショナルには「国際」「国際的」という日本語訳がありますが、グローバルには決まった訳語がありません。インターナショナルとは様々な国があり、それらの国同士あるいは国と国との関係を指します。

グローバルとは〝国と国〟という概念を取り除き、地球を一つの塊として見る世界観です。つまり、どこの国でも同じようなプロセスや流れを作り、国というものを超えて展開していこうというのがグローバルです。例えば、輸出先が世界130カ国あるメーカーはグローバル企業ではなく国際企業です。取引があるということではなく、130カ国が同じプロセスで動いているというのがグローバル企業になります。

プロセスの標準化

グローバル企業の原理・原則は、グローバルなフレームワークとローカルなデプロイメントです。つまりグローバルに捉えローカルで行動しようという考え方です。今の時代はシステムのインターフェースを行うため、1カ所で構築したら横に展開し、どこの国でも同じ手順で流れるというようにプロセスを標準化しています。ここで大切なのは、人事制度で英語を公用語にすること、国によって違う法制度や規制を守ること、ダイバーシティ・マネジメントなどです。フレームワークとして設ける共通部分と、ローカルに合わせる部分をいかに組み合わせるかというのが、グローバル企業が重視してきたことです。つまり、ローカルなデプロイメントを変えることで、どこの国に進出しても対応できるようになるのです。

物流業界のグローバル化

インターネットの発展によって情報交換が非常に速くなりサプライチェーンの考え方が生まれました。生産地の最適化が起こり、海外でどんどん物が作られるようになると物流業者も海外に進出し、「どこの国でも同じサービスを」というニーズから、ロジスティクス業界もグローバル化に突き進んでいきました。物流部門を持つメーカーも、ロジスティクスのアウトソース化が進み、在庫管理まで含める3PLという形に進化し、情報管理や情報処理能力がより求められるようになってきました。物を動かすことから情報の管理へ進化していく──つまり、トランスポートからソリューションへと進化していったのです。自分たちで複数のフォアダーや同業者をマネジメントしながら、その中で最適なものをシステムとして統合化するといったことが今求められていると感じています。今後システム構築力やデータ分析力に特化することが重要だと思われます。

人材育成に力を入れる

先日、出席した海外の会議で「人材の確保」がテーマに挙げられていました。近年ロジスティクス業界においても「タレント・ウォー」と言われており、人材が足りないのは日本だけの問題ではありません。最近よくグローバル企業の人事が使う言葉が「タレント・マネジメント」です。タレント・マネジメントとは、将来組織が必要とする才能のある人材を必要量確保していくマネジメント・メカニズムです。人材確保の方法には、外部採用や内部育成がありますが、現在はハイブリッド(外部採用+内部育成)が主流となっています。

一般的に人を評価するときに使われるのが、実績と将来性──いわゆるパフォーマンスとポテンシャルです。ポテンシャルというのは、スキルとやる気だと考えます。この実績と将来性を軸にして人材を使い分けることができます。実績もやる気もある人には仕事を任せ挑戦させる。実績はあるがやる気が足りない人にはコーチングやメンタリングなどを行い、やる気が出るように促す。また、やる気はあるが実績がない人にはさらに仕事をチャレンジさせる。実績もやる気もない人は、行動を細かく指示するマイクロ・マネジメントが必要となります。一人ひとりをきちんと評価・分類し、それに沿った形でトレーニングを行い、人材を育てていくことが重要だと思います。

また、厳しい時代になってくると大切なのは実行力です。実行力はリーダーシップにかかってきます。よいリーダーがいて初めて実行できるというのが今の考え方です。リーダーとマネージャーの違いですが、様々な考え方があります。例えば、マネージャー(管理者)と話す場合、マネージャーが何を重要だと思うかが大事ですが、リーダーと話す場合は、私に何が重要になるかを考え実行に移すことを指南してくれることが重要になります。リーダーとマネージャーを分類するときに非常にわかりやすい考え方だと思います。

多様性を重視する

グローバル企業では、「ダイバーシティ・マネジメント」も重要な要素です。なぜダイバーシティ──多様性が重要かというと、ここまで成熟したマーケットでは、「アイデアだけでは事業はできない」「頑張るだけでは大きな成果は生まれない」「1つの軸だけではよいものが生まれない」からです。やはり、見方を変える多様性が必要となります。〝違い〟とは〝間違い〟でありません。違いは“違い”と捉え、その立場に立った見方をするというのが、ダイバーシティの原点です。

さらに「ダイバーシティ」+「インクルージョン」は、一人ひとりの存在価値を認めるという活動で、多くの会社の中でも取り上げられていることだと思います。日本は特に遅れていると言われますが、私どもは女性の活用はもちろん、ダイバーシティ活動を通して障がい者支援も行っています。

コミュニケーションとしての英語

グローバル企業で必要な人材の大きな資質は、コミュニケーション能力や異文化理解力です。自社がドイツ系の会社になってドイツ人に言われたのが、「自分たちドイツ人だって英語はうまくはないが、コミュニケーションで必要だから勉強しているのだ」ということでした。「日本人が〝英語ができない〟と言うのは学ばない言い訳だ」と。ビジネス目的なら、英単語1500語(中学2年程度)くらい知っていれば十分なのだそうです。話すときは、話す内容をきちんと理解し、それを英語に訳してコミュニケーションをするクセを作るとよいでしょう。文法の間違いは気にしないことです。聞いていてわからなかったら聞き返すこと。あるいは「in other words」など、別の言い方を促すのもよいでしょう。

コミュニケーションとは送り手から受け手に情報を渡すことですが、脳で言語化するとき、あるいは耳に入って理解するときに、自分の考えをベースにしたバイアスがかかるため、実際に自分が伝えたい3割5分くらいしか相手は理解していないそうです。特に外国人あるいは異文化間であればなおさらです。相手はすべてを理解していなくて当たり前という前提でコミュニーションをとるとよいと思います。

デジタル化の先にあるもの

現在、様々なものが新しく開発され、ロジスティクス業界でも環境が大きく変わってきています。日本の場合、やはり大きいのはマルチチャンネルとeコマースです。問屋や販売代理店、POSなど伝統的なものよりも、B to B、B to Cのオンライン、ウェブサイトといったeコマースが非常に増えてきています。そこで、サプライチェーンの構築を行ったのがamazonです。在庫管理の徹底、入庫情報の正確さ、翌日納品の最大化、倉庫内コストの低減を行い、業績を上げました。中でも私たちの業界に大きく関わってくるのが、翌日納品の最大化です。早く届けること=キャンセル率の低下となります。今後はDCの設置場所の最適化を図り、どれだけの時間でどれだけの消費圏に届けられるのかといった分析が必要になってきます。

さらにデジタル化時代となり、データを集めて情報にし、それをうまく知識化したのがやはりamazonです。キーワードとなるのは、IOTやAIです。すなわちインターネットを経由し、機械と機械を情報で繋ぐというテクノロジーのことです。日本には技術のベースはあるので、これらを組み合わせていくことで何か新しいものができるだろうと思います。今までと同じ考えや行動を繰り返していても違う結果は望めません。そのことを認識するのが、今この時代に必要なことだと思います。

ルーラル・アーバン・リンケージ──地方と大都市を繋ぐ

日本の大都市圏と地方都市圏のGDPやガバナンスの指数によると、大都市圏は一人あたりの生産性が非常に高く地方都市は低いとされています。理由としては、地方都市では集積が遅れる、場所から場所への無駄な距離が多いなどが挙げられるでしょう。

「日本再生」のカギとなるのが、物流も含めた都市と地方のネットワーク化です。物流拠点の効率的配置や資産の有効活用などによる生産性の向上が、成長のキーになると考えられています。日本は一人当たりの人件費が高いため、付加価値や効率をいかに向上させていくかが重要です。メーカーの手法がもっと物流業界に入ってくれば、GDPはより上昇していくでしょう。日本は2020年に東京オリンピックを迎えます。オリンピックをきっかけにして、2020年以降も残せるものを作っていこうという流れがあります。この流れを大切にしていけば日本はけっして沈むことはない。また、それがグローバルなモデルになっていくのではないかと思っています。

講師紹介

西濃シェンカー株式会社
専務執行役員 伊藤 公昭 氏

西濃シェンカー株式会社
専務執行役員 伊藤 公昭 氏

大学卒業後、日系企業にて通関士として従事した後、 国際フォワーダー、ロジスティクス業界でのキャリアをスタート。 営業、マーケティング、経理、IT部門等を経験後1998年より、日本で米系グローバル企業のコントラクト・ロジスティクス、3PL事業を立ち上げ、2004年よりBAXGLOBAL社の日本法人社長を務めた。

DB SCHENKERによる合併以降は、西濃シェンカーの専務執行役員として、グローバル企業向け日本の3PL事業と日系企業の三国間輸送ビジネスを発展させるととともに、日本でヨーロッパ系、米系、日系がひとつになった会社の企業風土を背景として、日本のグローバル企業のさきがけを目指し、人材開発、社員教育などに力を入れている。

募集要項

イベント名 第23回CREフォーラム|「グローバルで求められるロジスティクスと人材」
日時 2016年 4月22日(金) 14:30開場 15:00開始 16:40終了
会場 虎ノ門ツインビルディング西棟地下1階
東京都港区虎ノ門2-10-1
参加対象者 荷主企業 様、物流会社 様
参加費/定員 無料/70名限定 (定員数を超えた場合、申し込み期限前でも終了する場合があります)

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティング部
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5572-6604

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