CREフォーラム レポート
アクア株式会社

(レポート)ハイアールアジアグループのロジスティクス戦略

ハイアール・グループのアジア地域を統括するアクア株式会社

ハイアール・グループのアジア地域を統括するアクア株式会社

ハイアール・グループは7年連続(2015年12月末時点)白物家電世界ブランドシェアNo.1の家電ブランドグループです。中国は青島に本社を置き、他ブランドとの合併・買収によって事業規模と事業内容を拡大し、冷蔵庫や洗濯機等の大型白物家電において、7年連続世界ナンバーワンのシェアを誇っています。日本においては、パナソニック傘下の三洋電機の白物家電事業を買収し、三洋電機の「AQUA」ブランドを継承いたしました。

このハイアール・グループの中で、日本とインドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシアの6カ国のアジア地域を統括するのが、私たちアクア株式会社です。

「3C」で進めていくロジスティクス戦略

アクア株式会社は、アジア地域を統括する立場として、アジア全体としてのロジスティクス戦略を考えなければなりません。そこで私は、「3C」というコンセプトを打ち出しました。3つの「C」とは、「Central Management(セントラルマネジメント)」、「Collaboration(コラボレーション)」、「Change(チェンジ)」のことです。この3つを意識することによって、1社あるいは1国で完結せずに、他社あるいは他国と協力して、より効率的に物流戦略を推進していけると考えています。

セントラルマネジメント(個別最適からアジア最適へ)

今まで、それぞれの国でそれぞれに適した事業を行ってきた会社に対して、他国から来た者がいきなり改革を行おうとしても、当然反発が起きます。各国に納得して動いてもらうためには、まず具体的な提案をして、実行し、成果を出すことが必要になってきます。

私が1つ目の「C」であるセントラルマネジメントの具体的な施策として行ったのは、海上輸送における「Asian bid」でした。海上輸送に関しては、各国が個別に業者交渉をしていたので、取り扱う荷量の少ないフィリピンやマレーシアは、入札の場面で強い交渉力がありませんでした。そこでまず、日本とフィリピン、マレーシアの3カ国で一括交渉をすることにしました。そうすれば、荷量が増大し、入札で私たちに有利な交渉ができるようになります。実際、私たちはこのようにして億単位の成果を上げることができました。その後は、残りの3カ国、インドネシア、タイ、ベトナムも含めたハイアール・グループのアジア全体で「Asian bid」を行っています。

ただ、セントラルマネジメントを行うにあたって、注意しなければならない点が1つあります。海上輸送においては、アジア全体として動くことができましたが、各国の国内輸送では、それぞれ事情が異なるので、個別に行っていった方がよいのです。個別最適で行う部分と、アジア最適で行う部分を明確に分けることが肝要になってきます。

コラボレーション(コンテナラウンドユース・共同配送)

2つ目の「C」は、コラボレーションです。私たちは、コンテナラウンドユースや共同配送においてコラボレーションを実施しています。

従来の海上コンテナ輸送では、輸入者と輸出者は別々のコンテナを使って港と倉庫の間をそれぞれ1往復ずつしていました。そこを輸入者と輸出者が協力し、輸入者が倉庫に荷物を降ろして空になったコンテナに輸出者が荷物を積んで港へ運ぶことで、2往復が1往復で済むようになります。これを「コンテナラウンドユース」といいます。

私たちは国内のみならず、海外でもコンテナラウンドユースを実施、(株)東芝と協力して、フィリピンでコンテナラウンドユースを行っています。マニラ港と各々の倉庫の間で個別にやっていた輸送を一括して行うことで、トレーラーの回送距離を減らすことができ、それによって、CO2の削減、輸送費のコストダウンが可能になりました。

もう1つ、私たちが取り組んでいるコラボレーションは「共同配送」です。通常は、量販店A社に対して、複数の企業がそれぞれのトラックで配送しますが、企業同士が協力して、ある地点で荷物を集約し、1台のトラックでA社に共同配送します。共同配送も、海外においてはまず(株)東芝と協力してフィリピンで行いました。マニラの中心部にある東芝さんの倉庫にまず私たちの荷物を転送し、そこから(株)東芝の荷物と私たちの荷物を同じトラックに載せてお客様に届けます。こうすることで、輸送費コストやCO2の削減が実現できました。

とはいえ、コンテナラウンドユース、共同配送とも、実際には短期で大幅なコスト低減効果が表れるものではありません。ただ、CO2削減につながるという意味では、社会的意義が非常に大きいものであると考えています。

チェンジ(受け身の物流から攻めの物流へ)

「3C」の最後の「C」はチェンジです。物流スキーム自体のチェンジ、また私たちの意識のチェンジを指します。輸入した商品をコンテナから降ろし、いったん自社の倉庫に入れて、そこから顧客に輸送するのが、これまでの物流スキームでした。しかし私たちは、この輸送過程を効率化するために、コンテナから荷物を降ろして倉庫に保管する作業を省略し、商品の入ったコンテナごと顧客に直送するという取り組みを始めました。ただし、それを行うためには、現地でコンテナに商品を積む前に顧客のオーダーをまとめなければならないので、営業担当者との調整が必要になってきます。

物流は、「営業や工場から指示された通りにやればいい」と受け身になりがちですが、例えば「顧客直送」というような具体的な施策を物流の側から提案して、それを実現できるように積極的に営業に働きかけていくという「攻めの物流」が、これからは重要になってきます。したがって、受け身になりがちな私たち自身の意識もチェンジしていかなければなりません。

日本のロジスティクスの未来に対する提言

自社のロジスティクスを効率化したいのであれば、「他社と協力して日本全体のロジスティクスを効率化させなければならない」と私は考えています。先ほどお話しした「コンテナラウンドユース」ですが、1年半取り組んできた中で、成果と苦戦の両方がありました。苦戦している大きな原因は、企業間を取り持つ仲介者があまりおらず、また確立されたプラットフォームがまだないことにあります。物流業者の中にはプラットフォーム構築に向けて動かれているところもあるかもしれませんが、その場合、自分の顧客しか利用できないプラットフォームを作るとしたら将来的には意味がありません。これからの日本のロジスティクスに必要なのは、誰もが利用できる開かれたプラットフォームなのです。

さまざまな企業と繋がり、コラボレーションしながら、1企業の利益のためだけでない、コンテナラウンドユースのプラットフォーム構築を始めとする新たな物流スキームを作っていくことができれば、それはやがて「日本覚醒」にも繋がっていくと、私は考えています。

講師紹介

アクア株式会社
オペレーションマネジメント本部 品質バリューチェーン マネジメントグループ
Director 白濱 領一 氏

アクア株式会社
オペレーションマネジメント本部 品質バリューチェーン マネジメントグループ
Director 白濱 領一 氏

2003年 京都大学 経済学部卒
2003 ~ 2008年 トヨタ自動車 生産部品物流・中国事業
2008 ~ 2009年 プライスウォーターハウスクーパースコンサルティング
2009 ~ 2014年 デロイトトーマツコンサルティング
2014年 ~ 現在 アクア株式会社

募集要項

イベント名 第24回CREフォーラム|「ハイアールアジアグループのロジスティクス戦略」
日時 2016年 5月27日(金) 14:30開場 15:00開始 16:40終了
会場 虎ノ門ツインビルディング西棟地下1階
東京都港区虎ノ門2-10-1
参加対象者 荷主企業 様、物流会社 様
参加費/定員 無料/70名限定 (定員数を超えた場合、申し込み期限前でも終了する場合があります)

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティング部
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5572-6604

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