CREフォーラム レポート
ヤマト運輸株式会社

(レポート)ヤマトグループが進める 第3のイノベーション

ヤマトグループの概要

ヤマトグループの概要

ヤマトグループの中核であるヤマト運輸は、1919年にトラック運送会社として創業しました。2016年3月末時点でグループ全体の社員数は196,582人、2015年度の営業収益は1兆4,164億円です。

宅急便事業を中心的なサービスとしており、1日に約500万個の荷物を取り扱っています。500万個の荷物をお預かりし、それをお届けしているということは、弊社のセールスドライバーは、1日に合わせて約1,000万人のお客様と直接お会いしているということになります。これからデジタル社会がますます進んでいく将来においても、お客様とのリアルな接点を持っているということが、私たちの強みであり、資産になっていくと考えています。

ヤマトグループが実現してきた2つのイノベーション

ヤマトグループは2019年に創業100周年を迎えますが、その歴史の中で2つのイノベーションを実現してきました。

第1のイノベーションは路線便です。複数のお客様の荷物を積み合わせて、東京・横浜間を運行する路線事業を1929年に日本で最初にスタートしました。それまで、主に鉄道の仕事だった中長距離の物流を、トラック業者が始めたことは画期的なことでした。

第2のイノベーションは、1976年に開始した日本初の宅急便サービスです。これにより、小口荷物を好きなところに手軽に送れるという新しいライフスタイルが日本に定着していきました。

第3のイノベーション「バリュー・ネットワーキング」構想

路線便、宅急便に続く第3のイノベーションとしてヤマトグループが現在進めているのが、「バリュー・ネットワーキング」構想です。従来の物流は、製造・販売などと異なり、単なるコストとして捉えられてきました。しかし私たちは、物を動かす過程の中でさまざまな付加価値を付けることで、物流をコストではなく価値を生み出す手段に進化できるのではないかと考えました。この考えに基づいて生まれたのが「バリュー・ネットワーキング」構想です。

4つのネットワークの革新による「バリュー・ネットワーキング」構想の実現

そこで私たちは、「バリュー・ネットワーキング」構想の実現に向け、4つのネットワークの革新に取り組んできました。

1つ目は、次世代ターミナルとしての「ゲートウェイ」の整備です。2013年に厚木ゲートウェイ、2016年に中部ゲートウェイを整備し、2017年には関西ゲートウェイが稼働します。最新鋭のマテハン機器(仕分け機器類)による徹底的な自動化によって、集荷した荷物を深夜にまとめて輸送する従来のオペレーションから、荷物をゲートウェイ間で日中より多頻度輸送するオペレーションに進化させることで、コストを抑制しながら、東京・名古屋・大阪という主要都市間の当日配達を実現していきます。

2つ目は、海外との結節点となる総合物流ターミナル、羽田クロノゲートです。羽田クノロゲートは、陸・海・空のあらゆる輸送モードへアクセスできる最高の立地に付加価値機能を一体化した、日本最大級の物流ターミナルとして2013年に稼働しました。ここでは在庫を滞留させずに、物が流れる過程の中で、クロスマージ(異なる荷主から集荷した荷物を発送先別に集約して同梱すること)、医療機器の洗浄・メンテナンス、機器の修理、保税・スピード通関、オンデマンド印刷・封入など、お客様のニーズに対応するさまざまな価値を付加しながら、国内と海外のネットワークをスピーディーにつなぎます。

3つ目は、沖縄国際物流ハブです。アジア各都市へ4時間以内でアクセスできる絶好の立地と24時間通関によって、アジアへの最短翌日配達を実現しました。2015年11月には沖縄グローバルロジスティクスセンター・サザンゲートも稼働し、保税エリアでの緊急パーツセンターの運用によるアジア全域での在庫の圧縮や、製品の最終工程の提供によるメイド・イン・ジャパン製品のアジア向けのスピード物流を支援しています。

4つ目は、アジアにおける小口輸送ネットワークの構築です。2000年の台湾を皮切りに、現在はシンガポール、上海、香港、マレーシア、タイで宅急便事業を展開しています。

日本の再生とは、ものづくりの再生です。1次産業、2次産業のコスト競争力を生み出す原資は物流にあると私たちは考えています。これまで製造業者や生産者は、製造コストや人件費の削減に注力してきました。しかし、部品の調達や出荷後のコストコントロールにはさまざまな課題が残されています。その課題に応えることが、「バリュー・ネットワーキング」構想による物流の最適化なのです。

「バリュー・ネットワーキング」構想を支える6つの改革エンジン

「バリュー・ネットワーキング」構想という第3のイノベーション。これを実現させるためには、6つのエンジンが重要だと私たちは考えています。

1つ目は、「止めない物流」です。スピード輸送と付加価値を一体化した羽田クノロゲート、沖縄サザンゲート、各ゲートウェイの本格稼働により、ネットワークの中でさまざまな付加価値を付けることで、滞留時間の少ない「止めない物流」が実現できます。

2つ目は、クラウド型のネットワークです。“必要なときに必要な分だけ、まとめて預かり、最適化しながら複数箇所に届けられる”ヤマトグループのネットワークを活用すれば、自社物流の固定費を抑制しながら事業の拡大が図れます。

3つ目は、シームレスにリンクするクロスボーダー・ネットワークです。ヤマトグループの強みである日本国内のきめ細かいネットワークと、ASEAN、東アジア、欧米の小口集配ローカルネットワークを独自のロジスティクス機能と国際フォワーディングで統合マネジメントすることで、シームレスでスピーディーなクロスボーダー物流が可能になります。

4つ目は、グローバルに広がるコールドチェーンです。小口保冷輸送の国際クール宅急便は、香港、台湾、シンガポール、マレーシアに加え、今後もカバーエリアを拡大していきます。高品質なグローバルコールドチェーンを提供し、さらに保冷宅配便サービスに関する国際標準化のプロジェクトを推進し、日本の高度な保冷品質を世界に発信していきたいと考えています。

5つ目は、物流の「見える化」です。クロスボーダー物流でも、送り手・受け手はもちろん、輸送に関わる全ての関係者に物流の見える化を提供することで、最新のITを駆使した出荷から到着までのシームレスな物流管理を実現できます。

6つ目は、「+(プラス)デマンド・チェーン」視点の物流最適化です。宅急便で培った受け手の立場で考えるという思想に基づき、供給側のニーズだけでなく、需要側・調達側のニーズも満たす「+デマンド・チェーン」視点の物流ソリューションを提供していきます。

これら6つのエンジンを有機的に組み合わせて、業種・事業規模を問わない物流の最適化を目指していきたいと考えています。

「スピード」×「品質」×「コスト」 ~「バリュー・ネットワーキング」構想が目指すもの~

物流の価値を決めるのは、「スピード」「品質」「コスト」です。従来これらは足し算で評価されてきましたが、これからは掛け算で考えなければなりません。3つのうち1つがゼロになると全体がゼロに、マイナスになると全体がマイナスになってしまいます。「バリュー・ネットワーキング」構想が目指すのは、「スピード」と「品質」を向上させながら、「コスト」も合理化していく物流だと考えています。

生活インフラ企業としての社会的責任 -地域活性化の取り組み「プロジェクトG(Government)」

第3のイノベーションである「バリュー・ネットワーキング」構想に加えて、私たちが最近注力しているのが「プロジェクトG」という地方自治体などと連携した地域活性化の取り組みです。これは、日々日本全国できめ細かく活動しているヤマトグループとして、少子高齢化や自然災害、地域経済の低下などの日本の社会的な課題を解決していくお手伝いができないかと考え、スタートしたプロジェクトです。

例えば青森県黒石市では、一人暮らし高齢者向けの行政の刊行物を月に1回配達するサービスを行っています。そして、その際に得られた高齢者の在宅状況の情報やヒアリング内容を行政にフィードバックし、高齢者を見守るお手伝いをするという取り組みを行っています。

お客様の変化に呼応できる変化力 ~「サービス向上」+「生産性向上」~

ヤマトグループは、お客様の利便性向上のために、さまざまなサービスを打ち出し、その品質を高める取り組みをしてきましたが、それと同時に社内の生産性を向上させることも必要だと考えています。

宅配における年間の再配達時間は1.8億時間といわれています。これは9万人の労働に相当し、またCO2排出量も42万トンの増加になります。私たちは、「時間帯お届けサービス」や、日時・受取場所の変更サービス、コンビニ受取り、宅配ロッカー設置などの事業を始めています。これらの仕組みにより、お客様が好きな時間に好きな場所で荷物を受け取ることが可能になり、お客様の利便性が向上すると同時に、再配達の減少にもつながっていくと考えています。

お客様からいただくさまざまな「ありがとう」 ~働きがいを実感する瞬間~

最初にも述べましたが、ヤマトグループの大きな強みは、お客様とリアルな接点があることです。お客様から直接、さまざまな「ありがとう」の言葉をいただくことで、社員は働きがいを持つことができます。

例えば、あるドライバーはこんな体験をしました。ある日、老夫婦にビデオとビデオデッキを届けた際に、ビデオをつないでくれないかと頼まれました。いきなりのお願いだったので、ドライバーは戸惑いましたが、お宅に上がり、ビデオデッキを接続し、ビデオを再生しました。映し出されたのは赤ちゃんと若いご夫婦の映像でした。それは娘さんからのビデオテープだったのです。それを見た老夫婦は何度も、何度もドライバーにお礼を言ってくれたそうです。

このような貴重な体験は、社員のモチベーション向上につながります。一人ひとりの社員がヤマトグループで働く意義を実感してもらうことは何より大切だと考えます。なぜなら、本日ご紹介した「バリュー・ネットワーキング」構想がいかにすばらしいものであったとしても、それを実現する弊社のセールスドライバーがお客様に本当に気持ちのよい応対ができるかどうかが、私たちの一番重要な生命線だからです。

希望ある未来の実現を目指して

ヤマトグループは、「お客様の満足」「社会の満足」「社員の満足」「株主の満足」という4つの満足を創造し、最大化することを企業理念として掲げています。どこにお住まいであっても、誰であっても、豊かな生活を送ることができるという、希望を持てる未来の実現を目指して、私たちはこれからも活動していきたいと考えています。

講師紹介

ヤマト運輸株式会社
常務執行役員関西支社長 北村 稔 氏

ヤマト運輸株式会社
常務執行役員関西支社長 北村 稔 氏

1983年(昭和58年) ヤマト運輸株式会社 入社
2009年(平成21年) ヤマト運輸株式会社 埼京主管支店 主管支店長
2011年(平成23年) ヤマト運輸株式会社 執行役員北信越支社長
2015年(平成27年) ヤマト運輸株式会社 常務執行役員
2016年(平成28年) ヤマト運輸株式会社 常務執行役員関西支社長

募集要項

イベント名 第1回 CREフォーラム in 大阪|『ヤマトグループが進める 第3のイノベーション』
日時 2017年 2月10日(金) 15:00開場 15:30開始 17:00終了
会場 ENDO堺筋会議室
大阪府大阪市中央区備後町1-7-3 ENDO堺筋ビル2階
参加対象者 荷主企業 様、物流会社 様
参加費/定員 無料/100名限定 (定員数を超えた場合、申し込み期限前でも終了する場合があります)

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー リーシング第二事業部
メール:
cre_osaka@cre-jpn.com
電話:
06-6225-3161

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