CREフォーラム レポート
一般社団法人 TAPAアジア

(レポート)TAPAフードディフェンスとサプライチェーンセキュリティ

海外と日本のセキュリティ意識の違い

海外と日本のセキュリティ意識の違い

2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催されるにあたって、テロ対策のみならず、物流のセキュリティ対策も重要度を増してきています。欧米ではいくつかの物流関連セキュリティ規格が確立され、実施されていますが、日本ではまだ物流セキュリティの国際規格の普及が進んでいません。

その理由のひとつには、欧米と日本のセキュリティに対する認識の違いがあると思います。たとえば、ATMの設置場所や銀行の建物、構造を欧米と比べても、日本の場合は、安全性への配慮が不十分です。また、アメリカでは100を超えるセキュリティ専門学校があるのに対し、日本にはセキュリティ関連の大学や専門学校がほとんどない状況で、セキュリティ教育の面でも遅れをとっています。

企業がグローバル化し、国外への輸送も増えている現代においては、日本の物流業界もセキュリティに対する意識を変える必要があります。

TAPA(Transported Asset Protection Association)とは

物流セキュリティを高めるひとつの手段として、「国際規格の認証を取得する」ことが考えられます。私が今、日本支部代表理事を務めているTAPAは、世界に普及している国際物流セキュリティ規格の認証機関です。

TAPAは、1997年にアメリカで、ハイテク製品の保管・輸送中の紛失・盗難などによる損失防止を目的に、非営利団体として設立されました。電子機器や精密機械メーカーを中心に、輸送会社や警備会社、損保会社などで構成されており、倉庫・保管施設および輸送におけるセキュリティレベルを審査し、認証を与える活動を行っています。

認証の対象となる製品は、電子機器・ハイテク機器に始まり、最近では食品・医薬品、貴重品およびブランド品などの高付加価値商品へと広がっています。

TAPAはアメリカで設立されて以後、ヨーロッパ・中東・アフリカ、オセアニア・アジア、南米でも支部がつくられ、2007年には日本支部が創設されました。

2つのTAPA認証(TAPA-FSR/TAPA-TSR)

TAPA認証には、TSR(Truck Security Requirements)とFSR(Facility Security Requirements)の2種類があります。TSRの対象はトラックで、FSRの対象は倉庫・保管庫です。

トラック配送時に関する規格であるTSR要求事項においては、車両の施錠、位置情報、夜間の駐車条件といったセキュリティが求められています。

ヨーロッパでは、TSRの認証を取得していない輸送業者は大手企業からの仕事の受注が難しいので、TSR認証が非常に普及しています。しかし、日本では輸送中での商品の盗難はありますが、車両本体の盗難がほとんどないので、トラックに対するセキュリティ意識が低く、今のところ、TSRはあまり普及していません。

倉庫・保管庫に関する規格であるFSRにおいては、100以上あるセキュリティ要求項目を満たすことが求められます。具体的には、フェンスの高さ、監視カメラの個数・角度、入退室の管理、敷地内への車両のアクセスなどの基準が設けられています。

そして、TAPA-FSRは、主に書類上で審査する従来のISO規格とは異なり、書類審査のほかキュリティ機器等のオペレーションの実地審査を行います。施設へのアクセス(フェンスの高さ)、警報アラームの作動状況、監視カメラのコマ数及び録画状況など、実際に現場で審査するのです。実際に使われている機器の作動状況を審査するので、実用面においても信頼性のある規格だといえます。

TAPAフードディフェンス(食品防御)-非日常的な攻撃に対する防御

日本の物流セキュリティ向上のため、FSR、TSRというTAPA認証制度の周知と取得の促進を図ることに加えて、ここ数年来私たちTAPA日本支部が力を入れている活動が、TAPAフードディフェンス認証事業の促進です。私たちが食品に目を向け始めたきっかけは、2008年に起きた中国製冷凍ギョーザ事件です。食品は消費者の口に直接入るものなので、食品に異物や毒物が混入されると中毒症状を引き起こし、さらには死亡に至るおそれがあります。電子部品(半導体など)が倉庫から1億円相当分盗まれたとしても、それはお金で補てんすることができますが、人命はそうはいきません。

そこで、TAPA日本支部は、異物・毒物の混入などの非日常的な攻撃を前もってディフェンスするための基準、「TAPA Food Defense Security Requirements」(TAPA-FDSR)を作成しました。

食品攻撃の2つのパターン

毒物混入などの食品攻撃には2つのパターンがあります。外部からの暴力的侵入・破壊による攻撃と、組織内の従事者等による攻撃です。

日本における食品攻撃のほとんどは、後者の内部の人間による犯行です。それを防ぐには、製造現場はもとより、倉庫内においても監視カメラを設置し、モニターにて従業員の動きをしっかりとチェックすることが求められます。

TAPA-FDSRの対象と防御措置

TAPA-FDSRの対象となるのは、食品・医薬品の盗難・すり替え・差し込み、有害物質などの危害異物混入・汚染、偽装・虚偽表示等の犯罪です。

これらの行為に対する防御措置としては、保安システムや不審行動通報システムなどシステムによる防御、従事者・部外者などをチェックする人に対する防御、セキュリティ設備・機器などのフィジカル(物理的)セキュリティによる防御などがあります。

これらの防御措置を遂行するにはお金がかかります。したがって、予算の決定権を持つ経営トップ自らがリーダーシップをとってセキュリティチームをつくり、食品防御体制を構築していく必要があります。

TAPA普及と物流業界の発展

日本は安全な国であるという思い込みが強いため、日本のセキュリティ体制の構築は諸外国から遅れをとっています。日本の物流が国際競争力をつけていくためにも、物流セキュリティの向上は必須となってきます。このような状況下、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックを大いなる契機として、物流におけるセキュリティのレガシーが構築されることを期待します。

私たちTAPA日本支部は、今後もTAPA物流セキュリティの普及啓発および体制整備を推進し、国際物流および、日本における商品の物流工程における品質・安全性の確保を図り、物流業界の発展に寄与していきたいと考えています。

講師紹介

一般社団法人 TAPAアジア 日本支部
理事長 浅生成彦 (あそうなりひこ) 氏

一般社団法人 TAPAアジア 日本支部
理事長 浅生成彦 (あそうなりひこ) 氏

昭和44年 早稲田大学卒業後、大手海運会社及び外資系航空会社に勤務
昭和60年 株式会社日本技術情報研究所設立・代表取締役に就任
現在まで30年間海外における医療・環境・セキュリティ等の調査に携わり、特にセキュリティ分野ではコーディネーター・団長としての渡航歴が多い
平成19年 TAPAアジア日本支部を創設、代表理事に就任、現在に至る
主に内外の物流セキュリティの普及活動をはじめ、テレビ番組のコメンテイター、リスク管理セミナーの講師として啓蒙活動に励む
【所属学会】ASIS(全米産業セキュリティ学会)、(一社)日本安全保障・危機管理学会、等

募集要項

イベント名 第32回CREフォーラム|「TAPAフードディフェンスとサプライチェーンセキュリティ」
日時 2017年 3月24日(金) 14:30開場 15:00開始 16:40終了
会場 虎ノ門ツインビルディング西棟地下1階
東京都港区虎ノ門2-10-1
参加対象者 荷主企業 様、物流会社 様
参加費/定員 無料/70名限定 (定員数を超えた場合、申し込み期限前でも終了する場合があります)

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティング部
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5572-6604

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