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(レポート)物流SDGs! ~「地球と人の環境保全」で物流を持続可能に~ L-Tech Lab

(レポート)物流SDGs! ~「地球と人の環境保全」で物流を持続可能に~ L-Tech Lab

SDGsと物流SDGs

日本企業はCSR/SDGsをどうとらえているか ~PwCあらた、ハコベルの調査結果から

2020年末にPwCあらたが行った「コーポレートサステナビリティ調査」によると、日本企業のCSR/SDGsについての認識は、
 「操業における環境負荷削減」(51.0%)
 「コーポレートガバナンスの強化」(43.2%)
 「ダイバーシティの推進」(34.9%)
など、いまだ第一世代、第二世代の捉え方をしています。

日本企業はCSR/SDGsをどうとらえているか
出典:PwCあらた有限責任監査法人「コーポレートサステナビリティ調査020」、2020年12月から

日本企業はCSR/SDGsをどうとらえているか
出典:PwCあらた有限責任監査法人「コーポレートサステナビリティ調査020」、2020年12月から

CSR……Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任
SDGs……Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標

また、CSR自体の認知度を業種別に見てみると、通信、商社、銀行などの業種はCSRの認知度が高く、陸上輸送、小売などは極めて認知度が低いことがわかりました。

次に、ラクスルのハコベル事業本部が、荷主企業や運送会社に対して「SDGs達成に向けた取組状況」をアンケート調査したところ、
「SDGsの意味および重要性を理解し、取り組んでいる」と答えた企業は35.6%、
「取り組みたいと思っている」と答えた企業は38.6%、
「取り組んでいない」と答えた企業は22.8%でした。

一方、同調査でSDGsゴール8 「働きがいも経済成長も」に示された「人間的な雇用(働きがいのある人間らしい雇用=ディーセント・ワーク)」に関して、取組の進捗状況を聞いた質問では、「分からない」が31.7%、「まだ着手していない」が28.7%と合わせて6割を占め、取り組みが進んでいない実態が明らかになっています。

SDGs/物流SDGsって、いったいなに?

ここで改めて「SDGs」と「物流SDGs」について考えてみましょう。

「SDGs」とは、2015年の国連サミットで採択された、持続可能で「誰一人取り残さない」よりよい世界を2030年までに達成することを目指す国際目標です。

具体的には「17のゴール・169のターゲット」から構成されていますが、日本国内の議論は「地球環境(資源・気候)」に矮小化されている感があります。

実際にはSDGsには図の通り、きわめて幅広い分野のゴールが掲げられています。そのうち私が「物流SDGs」の切り口で申し上げたいのは、CO2削減など環境保全テーマに加えて、非正規労働者やドライバーを含む「働く人」の労働環境保全(格差・貧困の撲滅、ホワイト物流、人の尊厳を確保すること=ディーセント・ワーク)にもっと注目しよう、ということです。

物流をディーセント・ワークに

日本の現実 ~非正規労働者と「アンダークラス」~

物流SDGsのゴールのひとつ【ゴール8:働きがいも経済競長も】は、「すべての人々にとって、持続的でだれも排除しない持続可能な経済成長、完全かつ生産的な雇用、働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)を促進する」ことを目標に掲げています。

ところが日本の雇用の実態はどうか。日本の非正規労働者は、1992年の約992万人から、2017年には約1740万人と、25年間で1.75倍に増えました。

このうち「アンダークラス」(パート主婦を除く非正規雇用労働者)は913万人おり、就業人口(6340万人)全体の14.4%、つまり7人に1人に及んでいます。しかしさらに厳しい層がある。それは166万人の無業者と115万人の完全失業者で、これを加えた広義の意味だと、日本のアンダークラスは全体で約1200万人に達している。これは大変な事態ではないでしょうか。

格差拡大の回避策 ~賃金格差の縮小/所得の再分配/ベーシックインカム~

アンダークラスがこれ以上拡大すれば、日本国民の経済格差はさらに拡大し、市場縮減・GDP下押し圧力となり、社会の治安も損なわれ、「日本のアメリカ化」(分断・極端な格差による社会騒乱などアメリカの悪い一面だけを見た場合)というディストピアを招くことになりかねません。格差拡大を回避する施策としては、「賃金格差の縮小」と「所得の再分配」が有効であると考えられます。

◯賃金格差の縮小
・均等待遇の実現……同一労働同一賃金
・最低賃金の引き上げ……1500円へ(高卒男子の平均初任給レベル)
・正規雇用者の労働時間短縮でワークシェアリング

◯所得の再分配
・累進課税の強化
・相続税の強化
・資産課税の導入……個人が所有する金融資産への課税
・デジタル税……GAFAM等グローバルプラットフォーマー
・ロボット税……導入企業
・生活保護制度の実効性確保……だが日本では最低生活費1カ月分以上の預貯金があると受けられず、捕捉率は2割(欧州は6-9割)
・ユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)……ただし「食うために働く必要がない世界」で、「生きがい・やりがい」は確保できるのか?議論の余地あり。 

尊厳・人間らしさ棄損の回避策 ~物流ディーセント・ワーク(働き甲斐のある人間らしい雇用)の実現~

待遇以外にも、ディーセント・ワーク実現のためには「働きがいのある雇用」を実現しなければなりません。物流DX(デジタルトランスフォーメーション)が進展し、物流作業が「誰でもできる化」されると、仕事の「やりがい・誇り」は賃金と合わせ逓減されてしまうからです。

そこで私は、UX(顧客体験)とEX(従業員体験)を以下のように直結させること/評価することが大事だと考えています。

①企業としてより良い顧客体験価値を生み出すサービスと、その実現に必要な現場プロセス、システムを設計する。

②サービスを体験し満足した顧客の声を吸い上げ、非正規を含む全従業員に共有可能な仕組みを構築する。

③同時に、「頑張った分を評価し、報いる仕組み」を仕込むこと。コストのかからない表彰顕彰からでもよい⇒できれば時給アップにつなげたい。具体性・公平性・透明性がポイント。

こうして「こんなに早く、時間通りに届けてくれて助かった!」「丁寧な梱包で、箱を開けて嬉しかったです!」「ドライバーさんがいつも笑顔で、挨拶をしっかりしてくれるね」など、お客さまの声が従業員に直接届く仕組みにすることが重要です。

非正規従業員も含めて、仕事を「ジブンゴト」にする企業風土を生み出せれば、それが内なる「ESG(社会的責任投資)経営」になるでしょう。

物流グリーントランスフォーメーション(物流GX)

経産省他「グリーンイノベーション推進会議」が描く全体像

SDGsの17のゴールのうち、【ゴール7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに】【ゴール13:気候変動に具体的な対策を】の答えとなるのが、物流グリーントランスフォーメーション(物流GX)です。

具体的な取り組みには、エネルギー関連産業における「洋上風力発電」や「アンモニア燃料」、輸送・製造関連産業における「EV・FCV・次世代電池」や「データセンター・省エネ半導体」などがあり、多くが物流産業にも関係しています。

経産省他「グリーンイノベーション戦略推進会議 (2020/12/21 会議④資料) が示す注力分野

経産省他「グリーンイノベーション戦略推進会議 (2020/12/21 会議④資料) が示す注力分野

再生可能エネルギー供給の劇的な拡大がマスト

なかでも再生可能エネルギーの供給能力の劇的な拡大は重要です。Yahoo! JAPANが、2023年度中にデータセンターなど事業活動で利用する電力の100%再生可能エネルギー化の早期実現を目指す「2023年度 100%再エネチャレンジ」を宣言するなど、一部企業は取り組みを開始しています。

しかし現状は、再生可能エネルギーは約20%程度しか広まっておらず、エネルギー政策の根本転換が必要だと考えます。

物流GX実践・チャレンジメニュー

今すぐ再生可能エネルギーを何割も拡大することはできませんが、現状で物流業界がすぐできることは何でしょうか。基本的な方向は「CO2と廃棄物の排出削減で環境負荷低減」を進めることです。

①物流共同化/協働化……トラック荷台の積載率(現状40%前後)を向上させ、使用車両台数、便数の削減を図る
②モーダルシフト……海運、鉄道による低炭素物流の利用拡大
③トラック、船舶等のEV化/水素活用
④使用電力等を再生可能エネルギーに転換
⑤機材・設備・車両のシェアリング/共同・循環利用
⑥紙類、資材ほかの廃棄物削減
⑦過剰品質からの脱却

持続可能社会への未来展望

都市の安全/災害時の緊急支援物資を民の力・共助で配備、配給・・・「G72災害支援プロジェクト」

SDGsのひとつに、【ゴール11:住み続けられるまちづくりを~都市の安全】があります。これを支援する取り組みとして、「G72災害支援プロジェクト」を紹介します。これは大規模災害においてもっともクリティカルな初動72時間における被災者の命をつなぐため、人が72時間生きられる飲食材や日用品をワンパックに収納した「G72 BOX」を作り、全国に配備する活動を進めているものです。

災害時の緊急支援物資を民の力・共助で配備、供給・・・「G72災害支援プロジェクト」
G72 BOXには 1 人が 72 時間 生き抜ける飲食材、日用品を収納

災害時の緊急支援物資を民の力・共助で配備、供給・・・「G72災害支援プロジェクト」
G72 BOXには 1 人が 72 時間 生き抜ける飲食材、日用品を収納

「グローバル・グリーン・ニューディール」(ジェレミー・リフキン)が描く未来

「グリーン・ニューディール」とは、「地球温暖化阻止のため自然エネルギーへの転換などのグリーン化施策を進め、公共投資によって新たな雇用や経済成長を生み出そうとする」政策ですが、近年、ジェレミー・リフキン氏は「グローバル・グリーン・ニューディール」 という概念を打ち出しました。

これは「再生可能エネルギーをスマートグリッド化し、かつグローバルに展開」する方策を通じ、「①通信のインターネット」に加えて「②エネルギーのインターネット化(地球規模でのシェア)」「③物流・ロジスティクスのインターネット(≒フィジカルインターネット)」を実現し、「循環経済(サーキュラーエコノミー)」「共有経済(シェアリングエコノミー)」社会を目指そうという構想です。

SDGs/ESG経営を駆動するものは何か?

さて、こうしたSDGs/ESG経営を駆動するものは何でしょうか。動機にはふたつの類型があると思います。

ひとつは、ESGに資する企業以外からは投資を引き上げる、という投資家や世間の声に押され、受動的に「自社と利益・儲けの維持拡大」という短期的な欲望で駆動する「<B>欲望駆動型」です。

もうひとつは、「企業ビジョンそのものにSDGsを一体化」し、持続可能な社会の実現を能動的に目指す「<A>パーパス駆動型」です。

ここで私からの問いかけです。動機は<B>のように何であれ、SDGs/ESGに資するなら、それでいいのでしょうか? 私利の追求、欲望で駆動された行動が、結果として本当に世界を救うのでしょうか?

アダム・スミスは『国富論』の中で、「自利心に導かれた個別の事業家が、社会全体の利益を考えることなく、自分の安全と効率性を追求し行動した結果、全体として効率的な投資が実現され、適切な資源配分がなされる」と語りました。

一方でスミスは、『道徳感情論』の中で、「人には客観的に善悪を判ずる正義感、同感力があり、抑制された私益の追及で社会のバランスは成立する」とも明記し、道徳の大切さを強調しました。
これらを踏まえ、私もこれからのSDGs/ESG経営はどうあるべきか、皆さんと一緒に考えていければと思っています。

講師紹介

エルテックラボ L-Tech Lab 
代表 菊田一郎 氏

エルテックラボ L-Tech Lab 
代表 菊田一郎 氏

1982年、名古屋大学経済学部卒業。流通研究社で90年より月刊「マテリアルフロー」編集長、2012年より「アジア・シームレス物流フォーラム」企画・実行統括、2017年より代表取締役社長。2016年より大田花き㈱ 社外取締役(現任)。

2020年6月に独立、L-Tech Lab(エルテックラボ、物流テック研究室)代表として著述、取材、講演、アドバイザリー業務を軸に活動開始。同6月より㈱日本海事新聞社顧問、同後期より流通経済大学非常勤講師。
著書に「先進事例に学ぶ ロジスティクスが会社を変える―メーカー・卸売業・小売業・物流業 18社のケース」(白桃書房、共著)、「物流センターシステム事例集Ⅰ~Ⅵ」(流通研究社)、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」(中央職業能力開発協会、11年・17年改訂版、共著)など。

募集要項

日時 2021年4月21日(水) 16:00~17:00
会場 オンライン受講 (参加費無料) 
参加対象者 荷主・物流企業 様
参加費/定員 100名

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティングチーム
担当:
立原(タチハラ) 佐藤(サトウ)
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5572-6604

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