CREフォーラム レポート
有限会社エイチ・アイ・プランニング

(レポート)脱非効率物流のために避けられないホワイト物流の推進

(レポート)脱非効率物流のために避けられないホワイト物流の推進

現代特有の問題を知る

現代の物流には多くの課題があります。複雑化する道路事情やSCM(サプライチェーンマネジメント)は物流業者にとって大きな悩みですが、健全経営のためには必ず越えなければならないハードルです。

運送であれば、始業点検やルート確認の徹底、また庫内作業ならば「5S」(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)の徹底など、守りの基本体制を整えることで、目まぐるしい変化にも柔軟に対応していく必要があります。

そのためには法令遵守と社内統治が不可欠です。特に1人で乗務するドライバーのために、また少人数で作業する庫内スタッフのために、正しいルールに沿って日常業務を迷わず実行できる現場づくりを成功させましょう。

物流業の中で一番大きな問題は「長時間労働」です。厚生労働省は長時間労働の抑制に向けて、2024年までにドライバーは960時間、庫内作業員は720時間までの残業に抑えようと決めましたが、実態としてはほとんど守られていません。

ドライバーの年間労働時間は約2,600時間で、全産業平均の2,124時間よりもはるかに長時間労働を強いられています。それにもかかわらず、大型トラックのドライバーの年収は約457万円、中型のドライバーは約417万円で、全産業平均の497万円よりも少ないのが実情です。

"人"は企業にとって最大の資産

このような問題を抱える中で、企業が生産性を上げるためには、社員の隠れた才能を引き出してあげることが必要です。幹部の重要な仕事は、社員それぞれの"強み・得意"が成果に結びつくよう人を配置することです。業績向上は現場が叶えるもの。各自が今よりも1割多くの仕事もこなせば、業績は大きく上向きます。人は「組織の最大資産」であることを、もう一度しっかり理解しておきましょう。

そして、人を大切にする経営を行ううえでは「定着重視」に照準をあて、現社員・パート社員がやりがいを感じ、「働き続けたい」と実感できる職場をつくることが重要です。定着のポイントはコミュニケーションによる仲間づくり。仲間意識が持ってもらうことが一番のポイントです。

仕事を阻む問題を発掘する

人材を育てていくことは簡単ではありません。理想と現実の間には必ずギャップがあります。

大事なのは、このギャップを生み出す物事を見つけ出して解決すること。そして解決するために、現状をしっかり分析してKPI、指標を設定し、自分の物差し=測定基準を持つことです。

現場の生産性を上げることは決して簡単ではありません。トラックの場合でいうと、考えるべきことは「時間あたりの生産性」「1台あたりの生産性」「1人あたりの生産性」の3つで、実際に行うことは「5S」です。

特に「整理」、中でも必要人員のレイバーコントロールができているかが重要です。私がコンサルティングを行なってきた経験から述べると、「人が足りない、人が足りない」と言っている物流現場の多くは、「なぜここにこの人数が配置されているか」の計算が曖昧なケースがほとんどです。管理者は1人ひとりの仕事を見て、生産性をしっかりと見極めて、適切な人員を配置しなければいけません。そして社員のモチベーションを上げることが大事です。

仕事を楽しくするには動機が必要

モチベーションを上げる方法には「金銭的な動機付け」「社会的な動機付け」「自己実現の動機付け」などがありますが、何よりも重要なのは「目標を明確にする」ことです。

目標を明確にし、チームで計画を議論し、実行する。それを評価してモチベーションを上げる。このPDCAを回す行為が管理者の役割です。そして1人ひとりの長所を見つけ、本人にきちんと褒めて伝えることが大事。「自分の良さを分かってくれる仲間や上司がいる」と思えると仕事は楽しくなります。
そしてコミュニケーションがしっかり取れている会社は成長し、大きな利益を生み出します。これが「効率化」を進めるうえでまず考えるべきことです。

ホワイト物流とは

人材を育てる環境づくりには、「ホワイト物流」がキーワードとして挙げられます。

ホワイト物流とは、国土交通省が掲げる運動で、「トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化」「女性や60代以上の運転者等も働きやすい、よりホワイトな労働環境の実現」を目的に推進されています。

残念ながら、物流業界の現状は「ホワイト」とは言えません。ほとんどの運送会社ではドライバー自身が荷物の積み降ろしを行い、長時間労働が常態化しています。そしてその結果、労災が非常に多くなっています。厚生労働省による「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」を見てみると、自動車運転従事者が最も多く、全体の4割弱を占めています。

物流業界で慢性化しているトラック運転手の過重労働は、ドライバー数の減少を招き、その穴を埋めるために労働時間はさらに長くなっています。今、働き方改革を行わなければなりません。

そのためにはホワイト物流の推進が不可欠です。現在は国土交通省を主管とし、有識者、荷主・物流事業者の関係団体、労働組合から構成される「ホワイト物流推進会議」が設置され、ホワイト物流の実現に向けて動き始めました。

今後期待される動きは、企業による「物流の改善に向けた自主行動宣言の提出・実施」、国民の「サービスの見直しへの理解と協力」、物流事業者による「物流の改善提案の実施」「運転者の労働条件・労働環境の改善への取り組み」などです。

以下は、企業に向けた「自主行動宣言」の記載事項と自主行動宣言です。賛同いただける場合は、ホワイト物流推進運動のポータルサイトから様式をダウンロードし、自主行動宣言を作成し、電子メールで事務所までご提出ください。

物流の改善の取組例

物流を改善する取組事例を見てみましょう。

1. 予約受付システムを導入し、長時間の荷待ちを改善
A社に納品された荷物は、先着順で積込・積降しが行われていました。しかしA社の荷受け処理能力やトラックバース数には限界があり、納品車が集中していました。A社は予約受付システムを導入することでこれを解決しました。

2. パレットを活用し、積込・積降しの負担を軽減
B社のトラックは、大量のダンボールを手積み・手降ししていました。これがトラック運転者にとっては重労働で、荷主企業にとってはリードタイムが長くなる要因になっていました。これをパレットを活用し、事前にすべて積み、パレットで全部降ろすことで改善しました。

3. 発荷主からの入出荷情報の事前提供で、荷待ちを改善
C社では、荷主企業の受注締切後から配車まで2時間しか設定されておらず、適切な配車を行える時間的余裕がありませんでした。そこで荷主企業から入出荷情報を事前提供してもらうことで、適切に配車を行えるようになりました。

4. リードタイムを延長し、適切に配車を行えるように
D社では、当日深夜0時受注締切、翌日午前配達を行ってしました。その結果、夜間や早朝の積込み作業による作業遅延が発生し、適切に配車ができなくなっていました。そこで当日配達を止め、リードタイムを延長することで適切に配車を行えるようになりました。

標準的運賃設計

「ホワイト物流」の実現に向けて貨物自動車運送事業法の一部が改正されました。中でも重要なのは「標準的な運賃の告示制度の導入」です。

標準的な運賃は上記のように設定されています。実運送事業者が走った時の原価に基づいて計算されており、決して高いわけではありませんが、実際のトラック運送事業者が利益を確保するために必要です。

残念ながら、トラック運送事業者は、実際にはこの「標準的な運賃」はもらえていません。したがって、顧客の荷物をひとつの倉庫にまとめるなど効率化を図っていく必要があります。3PL(サードパーティー・ロジスティクス)を始めとする新しいスタイルが出てくる中、持つべき知識を取捨選択して改善に取り組んでいきましょう。

物流現場で指導すべきこと

物流業界の中でも、課題が多いのは「人の問題」です。いかに社員のモチベーションを上げて生産性を上げるか。それには管理者も「自分も一緒に成長していこう」という気持ちを持たなければいけません。そして現場では以下の指導を心がけましょう。

・仕事の連絡・報告も含めた活発なコミュニケーションを推進する
・顧客第一主義を徹底させる
・安全教育を徹底し、事故ゼロを皆で目指す
・物流品質向上のためのマニュアル作り
・挨拶の徹底や地道な5S活動を必ず続ける

収益が上がってる企業に行って感じるのは、「挨拶がしっかりしている」「5Sがしっかりできている」など基本的なことです。しかし、ここに課題解決のポイントがあるのではないかと考えています。

世界はいま、長期間の感染症災害に疲弊しています。物流業界も多くの企業が苦しい業務を続けていますが、明けないありません。目標を見失わず、社員と皆で力をひとつにして耐え抜きましょう。

講師紹介

有限会社エイチ・アイ・プランニング
代表 岩﨑 仁志 氏

有限会社エイチ・アイ・プランニング
代表 岩﨑 仁志 氏

福岡県出身 西南学院大学文学部英文学科卒業。
日本YMCA、タイムライフブックスなどを経て大手外資系企業にてマーケティング責任者として活躍後、物流業界に転じ、専門紙の執行役員を歴任、その後、大手製造・流通企業に対し物流ソリューションのコンサルを行うと同時に、数多くの物流企業の経営指導にあたってきた。
経営戦略・SCMソリューション・3PL分野のエキスパートとして、数多くの企業の「経営戦略構築」に携わり非常に高い評価を得ている。
日本3PL協会 日本3PL管理士講座コーディネータを務めるほか、国際物流総合研究所 代表主席研究員など歴任、現在は同社の主催するジャパントラックショー顧問。物流経営塾を主催し若手経営者の育成にも尽力している。

募集要項

日時 2021年10月27日(水) 16:00~17:00
会場 オンライン受講(Zoom)
参加対象者 荷主・物流企業 様
参加費/定員 参加費無料 / 定員100名

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティングチーム
担当:
立原(タチハラ)
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5570-8048

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