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(レポート)物流環境激変! 2022年にあるべき姿は? ~アフターCOP26の脱炭素/物流SDGsとDX展望~

(レポート)物流環境激変! 2022年にあるべき姿は? ~アフターCOP26の脱炭素/物流SDGsとDX展望~

物流環境はどう激変したのか

物流環境はSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の世界的な認知拡大に伴い、大きく変化しました。

SDGsは、1945年の国連憲章に端を発する「平和・開発・人権」の流れと、1950年代以降の公害問題に起因する「環境・サステナビリティ」の流れが統合し、2015年に国連総会にて、全会一致で採択されました。

先進国と発展途上国が取り組む「17のゴール、169のターゲット」からなる歴史的な政治文書で、その網羅的な内容から、ここでは「地球と働く人の環境保全」と「環境保全と経済成長の両立」という2つの核心に絞って物流との係りをお話しします。

SDGsは「地球と社会」という経済活動の土台を守る指針であり、新しい市場を創出するビジネスアイデアの宝庫でもあるため、今や企業活動にとって最重要のテーマであると私は確信しています。

またSDGsや社会環境意識の高まりを受けて、ESG投資市場が急拡大しており、運用資産額は2020年ですでに1京円を超えています。
ESG=Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治

TCFD(機構関連財務情報開示タスクフォース)とは

ESG投資の中でも近年、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の活動が注目を集めています。

TCFDとは、各国の中央銀行総裁および財務大臣からなる「金融安定理事会(FSB)」の作業部会で、投資家が適切に投資判断できるようにするため、企業に対して「自社の取り組みが気候に与える影響を開示する」よう求めています。

日本では601社が賛同※しており、TCFDに対応することで企業は信頼が向上し、投資の増加が期待されます。
※2021年11月30日時点

TCFDの中でも物流との係りで重視されるのは、温室効果ガスの排出量です。温室効果ガスの排出の形態によって3つのスコープに分けられており、特にスコープ3「事業者の活動に関連する他社の排出」(サプライチェーン排出量)の開示が強く推奨されています。

これは今後、大企業だけでなく、その取引先である中小物流企業にも温室効果ガス排出量の開示などが求められていくことを意味します。

以上の流れのベースにある巨大な時代変化の潮流としてぜひ認識いただきたいのは、企業の存在理由が、前時代の「利益・株主価値の最大化」から、新時代の「地球環境と人間社会の持続可能性の最大化」へと、大きく変化を遂げたということです。

激変ポイント①地球環境の持続可能化

世界は今や、気候変動危機の回避を最優先課題に置くことで、ほぼ合意しています。

その理由は、気候変動の進行により「ティッピングポイント」と呼ばれる臨界点を超えて大惨事を引き起こすのを回避することが決定的に重要だからです。これを受けて「世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える努力を決意をもって追求する」ことが、11月のCOP26(第26回気候変動枠組み条約締約国会議)の成果文書「グラスゴー気候合意」に書き込まれたことは、エポックメイキングな出来事でした。

世界の平均気温はすでに、産業革命以降1.08度上昇しています。このため陸域における10年に1度の極端な高温の発生頻度は2.8倍に高まっており、もし平均気温が2度上昇すると、同じく5.6倍にまで高まります。

また海面上昇については、現時点で何も対策を行わないと、2050年には北極海の海氷がなくなり、2100年には海面が1.75m上昇すると試算されています。これでは私たちの社会は持続不可能です。

危機回避の道筋

「グラスゴー気候合意」では、危機回避への道筋として、「気温上昇の抑止」のほか、「途上国への資金支援」「石炭火力発電の段階的削減」などを進めることが合意されています。

日本は昨年、「2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減する」という「カーボンニュートラル宣言」を行いました。しかし、資源エネルギー庁の第6次エネルギー基本計画案によると、2030度の電源構成に化石燃料がまだ41%も残っており、これでよいのかはなはだ疑問です。

私は2030年度の上記目標を実現するためには、「再生可能エネルギー供給力の爆速拡大」しかないと考えています。それによって「再生可能エネルギーで物理的・電気電子的に駆動する物流」に転換することが必要なのです。それが不可能ではないことを示してくれたのが、WWF(世界自然保護基金)ジャパンが発表した「脱炭素社会に向けた2050年ゼロシナリオ」でした。綿密なシミュレーションを重ねた結果、「2030年の再エネ比率を約50%に」「2050年には再エネ比率100%にすることが可能」、としています。WWFJホームページで2021年アップデート版のダウンロードが可能ですので、興味のある方はぜひご覧ください。

さて再エネ電力の供給拡大と合わせ、その電力の供給システムや送配電ネットワーク、IoT機器、蓄電設備、データ保存装置、機器保守管理システム、そしてこれらを管理するエネルギーマネジメントシステム(EMS)などから構成される「スマートグリッド」で送配電し、電力を共有可能にする必要があります。一方、地域ではエネルギー・電力の地産地消を可能にする「マイクログリッド」を立ち上げ、双方を連携させることで、全国の送配電ネットワークを完成させなければなりません。

再生可能エネルギーの1つの切り札として期待されているのが「洋上風力発電」です。「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」は昨年末、洋上風力発電量を2030年までに1000万kWh、40年までに3000万~4500万kWh(大型火力・原発45基分)とする導入目標を掲げました。しかしそれでは2030年目標達成には不十分で、私は環境破壊の危険もある広大な土地でなく、住宅や建物や駐車場の屋根スペースを活用した太陽光発電の小規模分散型ネットワークを爆速で拡大していくことが、極めて有効な打ち手ではないかと考えています。

脱炭素チャレンジ開始事例

脱炭素への取り組みを始めた企業事例をいくつかご紹介します。

・Zホールディングス(ヤフー)
2023年度中にデータセンターなど事業活動で利用する電力の100%再生可能エネルギー化でRE100加盟の早期実現を目指す「2023年度 100%再エネチャレンジ」を宣言。中核企業であるYahoo! JAPANにおいて、気候変動や地球温暖化の原因となっている温室効果ガスの排出削減を目指しています。

・センコー、エフビットコミュニケーションズ、日本ユニシス
3社合同で、太陽光発電による「PPAモデル」で再生可能エネルギー活用の最大化に向けたスキームを構築。センコー岐阜羽PDセンターに大規模太陽光発電設備を導入、余剰電力を電力小売事業の電源として有効活用を目指します。

・アスクル
本社・物流センター・子会社を含めたグループ全体における電力使用量の57%を再生可能エネルギーに切り替えました。

・ホンダ
主要部品メーカーに対し、CO2排出量を2019年度比で毎年4%ずつ減らし、2050年に実質ゼロにするよう要請。

・テスラ
2016年、南太平洋の米領サモアのタウ島に大型蓄電池「パワーパック」60基と太陽光パネル5328枚を設置し、「島ごと再エネ社会」の実現を目指しています。

・ライオン、キユーピー、JPR
3社それぞれ片道手配で行っていた運行を、共同物流に変更。同時に海運モーダルシフトも実現しました。

・NEXT Logistics Japan
アサヒグループホールディングス、江崎グリコ、日清、ニチレイなどの荷主と物流各社の協働を開始。物流ボトルネックである東名阪間の幹線輸送において、「25m級ダブル連結トラックで、1人で3台分(ゆくゆくは1人で6台分)の荷物を共同輸送する」という新たな幹線輸送スキームを事業化しました。

東西のクロスドック拠点で荷主各社の荷物を集約してトラックに合積み。実証実験で進化を続け、従来約40%だった積載率が第一目標の70%に近づきました。幹線~支線をトータルでコントロールすることで、省人化・効率化・CO2低減を目指します。

以上をまとめると、輸入不要、調達・物流コストゼロの再生可能エネルギーへとEX(Energy Transformation)を起こすことで、日本は年間20兆円前後におよぶ化石資源の輸入費用を大幅に削減でき、その削減分を再エネ発電システムの構築に投資し、座礁資産からの転換と雇用も吸収して経済成長と環境保全を両立させ、自立したサステナブル社会へとトランスフォームできる。それによって「エネルギー安全保障」「国家的安全保障」のレベルを飛躍的に向上できる、と私は考えています。

激変ポイント②働く人の環境保全

2023年度から労働基準法改正にともない、月60時間超の時間外割増賃金率が25%から50%に引き上げられ、中小企業に適用されます。また2024年度からは、自動車運転業務の時間外労働が、上限年960時間に規制されます。ドライバーの過酷な労働環境と待遇が改善されるのは歓迎すべきことである一方、人口減少は今も進展しています。現在はコロナ禍で落ち着いているドライバー不足がアフターコロナには再燃必死であることに加えて、1人の労働可能時間が減少することで、物流供給力不足は極めて深刻な局面を迎えることが予想されます。

この問題に対応するためには、「労働生産性の向上」「運送事業者の経営改善」「適正取引の推進」「人材の確保・育成」など運送事業者の自助努力や、荷主・消費者の理解が必要です。

また、約1200万人もいる日本のアンダークラス(非正規雇用労働者、失業者、無業者)への対策も急務です。最低賃金の1500円程度への引き上げを目指して賃金格差を縮小し、所得を再分配しなければならないでしょう。

さらに待遇だけでなく、UX(顧客体験)とEX(従業員体験)を直結し、物流ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を実現することも必要です。

物流SDGsと物流DX

DX(Digital Transformation)という手段で企業が目指すべき目標は、UX(顧客体験)・EX(従業員体験)・収益の向上だとかつて私は訴えていました。しかし今や、それらを通じた「SDGs達成」こそを最終目標に掲げるべきだと確信するに至りました。物流に係るSDGsをマッピングすると、以下のようになります。

政府も係る物流DXへのチャレンジ事例としては、モノの動きと商品情報を見える化し、個社・業界の垣根を超えてデータを蓄積・解析・共有する内閣府他主導の「SIPスマート物流サービス」や、最近経済産業省が実現会議を立ち上げた、インターネット通信の考え方を物流に適用する「フィジカルインターネット」構想などがあります。

個々の企業による物流センターのDXチャレンジ事例としては、PALTAC・埼玉RDCの「AIケースパレタイズロボット」やロボット自動倉庫「オートストア」、三菱商事の「Roboware」、Home Delivery Serviceの「生鮮食品フルフィルメント自動化システム」などがあります。

本講演全体の結論として、物流・サプライチェーンに係る私たちは、「地球の環境保全」と「働く人の環境保全」で、地球と産業社会が持続可能な倫理的(エシカル)ロジスティクスを共創し、SDGsの達成を通じて、「新たな物流危機」を乗り越えていこう、と私は訴えたい。そして、これらを支える技術とサービスを生み出すことが、物流DX/ロジスティクス・イノベーションの使命であると考えています。

講師紹介

エルテックラボ L-Tech Lab 
代表 菊田 一郎 氏

エルテックラボ L-Tech Lab 
代表 菊田 一郎 氏

1982年、名古屋大学経済学部卒業。流通研究社で90年より月刊「マテリアルフロー」編集長、2012年より「アジア・シームレス物流フォーラム」企画・実行統括、2017年より代表取締役社長。2016年より大田花き㈱ 社外取締役(現任)。

2020年6月に独立、L-Tech Lab(エルテックラボ、物流テック研究室)代表として著述、取材、講演、アドバイザリー業務を軸に活動開始。同6月より㈱日本海事新聞社顧問、同後期より流通経済大学非常勤講師。
著書に「先進事例に学ぶ ロジスティクスが会社を変える―メーカー・卸売業・小売業・物流業 18社のケース」(白桃書房、共著)、「物流センターシステム事例集Ⅰ~Ⅵ」(流通研究社)、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」(中央職業能力開発協会、11年・17年改訂版、共著)など。

募集要項

日時 2021年12月22日(水) 16:00~17:30
会場 オンライン受講(Zoom) 
参加対象者 荷主・物流企業 様
参加費/定員 参加費無料 / 定員100名

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティングチーム
担当:
立原(タチハラ)
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5570-8048

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