CREフォーラム レポート
キッコーマン食品株式会社

(レポート)キッコーマン食品株式会社における持続可能な食品物流実現のための取り組み

(レポート)キッコーマン食品株式会社における持続可能な食品物流実現のための取り組み

キッコーマンの物流について

キッコーマン食品株式会社は、キッコーマン、マンジョウ、デルモンテ、マンズワインなどのブランドを抱えています。売上高は海外国内合わせて5,164億円(海外比率70%)、事業利益は523億円です。本日は国内の常温物流(売上高1,000億円)について当社の取り組みをお話しします。

まずキッコーマンの国内物流体制・ネットワークについてご説明します。物流部には社員23名がおり、総元請に総武物流株式会社があり、約80社の物流事業者がキッコーマンの商品をお届けしています。

物流拠点は以下のとおりです。千歳と野田、高砂には当社のしょうゆ等の工場があり、野田と高砂だけで60%近くの在庫を保管しています。

商品は、各在庫拠点からお客様のもとに運ぶ場合と、全国約50カ所のトランスファーセンター(TC)まで運び、他食品メーカーさんと共同配送してお客様のもとに運ぶ場合があります。

次に当社の物流コストの構成比ですが、全体のうち約74%が輸送料となっています。その内訳は、お客様にお届けする分が50%、自社の拠点から拠点への輸送が20%、自社拠点内の輸送が4%となっています。

また輸送モードの内容は以下のとおりです。トラック輸送がほとんどで、お客様への納品の97%、自社の拠点から拠点への輸送の80%を占めています。輸送トンキロは全体の76%となっています。

キッコーマンの取り組み

持続可能な物流を実現するために、キッコーマンが取り組んでいることをご説明します。大きくは以下の2点です。

配送の効率化|付帯作業改善、配送ロット改善、基準外配送廃止
自社拠点改善|TC→DC化、建替え・集約、輸送手段変更

配送の効率化

当社が配送の効率化を必要とした背景にはさまざまな理由がありますが、その中でも大きかったのが年末の配送トラブルです。

2013年末に起きたこのトラブルは、簡潔にいうと「トラックを手配しきれず、配送が1日ずつ遅れていった」という事例でした。

12月25日からトラックの欠車が出始め、28日にピークになり、結果、大型車120台・1,500トン分の納品遅れが発生してしまいました。

トラックの手配ができなかった理由は「想定以上の出荷物量が発生したことによるキャパシティオーバー」です。
またそもそもの原因として、「物量の想定をしていない」「物量をコントロールしていない」「物流事業者をあらかじめ確保できていない」などがありました。

また非効率な物流のために運送会社様から
「納品先で待たされる」「納品時に商品の積み替えがある」「一度に配送する物量が少ない」「非効率な運行と車両に人を割けない」「積み込みに時間がかかる」「運行距離が長い」「効率の良い部分だけ請け負いたい」
などの声が上がるようになりました。

そこで私たちは、物流が非効率になる原因と対策を以下のように考えました。

具体的には、繁忙期には「得意先に対して、発注の前倒しを要請する」「休日配送を行う」「実体調査を行う」などの対策を講じたほか、配送時のルールを以下のように見直しました。

■ルール見直しの目的
 ・1回の配送物量を増やす
 ・配送回数を削減する
 ・必要な車両数を削減する
 ・当日の物量の確定時刻を早める
 ・車両手配の時間を確保する

■配送ロットの向上|配送は30ケースロットから。ロット未達はオーダーを取り消し

■受注締め時間早期化|締め時間を全国10時に統一

■基準外配送ルール作成|受注締め後の配送の手続きを厳格化

■繁忙期のみ配送リードタイム延長|翌日配送から翌々日配送へ

■配送基準の見直し・徹底|基準を満たさない納品先の運び方見直し

■翌々日配送を全国一斉・恒久化|2023年に実施予定

これらのルール見直しを図った結果、納品先数を1万超から6,000件まで抑えることができ、その効果で配送ロットを117%にまで上げ、配送回数を84%に下げることができました。(2018年~2021年度)

自社拠点改善

次にキッコーマンの自社拠点の問題点と改善についてお話しします。

問題点のひとつは「倉庫の分散」です。例えば野田エリア拠点の場合、倉庫が1箇所にまとまっておらず、倉庫分散・多箇所積み込みによる以下のような業務ロスが生じていました。

<倉庫分散・多箇所積み込みによる業務ロスの例>
 ・前の倉庫で積んだパレットを一旦降ろして、積みなおす必要がある
 ・積込長時間化により、待機場で誘導を待つ状況が発生
 ・積込車両の着車順制御困難・必要以上の一時仮置場確保
 ・JRFコンテナ積込場への荷物移動
 ・流通加工倉庫への荷物移動
 ・外部倉庫からの荷物移動

業務ロスにより、トラックが入場から積込終了まで平均3時間33分もかかっていました。

野田エリア拠点における改善は次のように進んでいます。

2023年5月には、流山インター周辺の開発エリアにある約1万6,000坪の倉庫を賃借し、分散している倉庫を集約します。そして作業効率化を図り、ドライバー様の滞留時間を1時間にまで短縮にしたいと考えています。

また、輸送手段の変更として中継輸送にも着手しています。例えば野田から高砂間は約600kmありますが、中部(東海)に中継地を設け、ドライバー様を交代しています。また鉄道輸送やフルトレーラーによる共同輸送なども行い、ドライバー様の負担を減らすことで、持続可能な物流の実現を目指しています。

最後に、当社の未解決の課題と今後の方針についてお話しします。

課題としては「2024年問題対応」「行政指針に則った対応」「サプライチェーンマネジメント不在の製販在計画の解消」などがあります。

またこれらの課題を解決する方針としては、以下を考えています。

物流機能の継続(労働者の安全確保とコンプライアンス遵守)

• 2024年問題への対応、ドライバーの労働時間の短縮等
• 委託先物流事業者のリスク評価、対策の立案と実行
• 物流ルール改定

サプライチェーンの最適化

• SCM、S&OPを目指すことが最善か検討中
• 物流情報の見える化(需給調整、設備投資等における意思決定に必要な情報)
• 製造機能と物流機能の連携(輸送距離の短縮、原価低減)

持続可能な物流を実現するためには、当社の努力だけでなく、物流会社様、運送会社様、現場の皆様と連携しながら行っていかなければいけません。物流は社会のインフラです。ぜひ私たち全員で、物流が続くように力を合わせましょう。

講師紹介

キッコーマン食品株式会社
物流部 物流企画課 課長
田中 潤一 (たなか じゅんいち) 氏

キッコーマン食品株式会社
物流部 物流企画課 課長
田中 潤一 (たなか じゅんいち) 氏

1996年に総武物流(株)入社。フォークマンとしてキッコーマンの物流に出会う。
自動倉庫オペレーター・配送センター長・業務部長と主に倉庫業務に従事し、2012年にグループの物流を検討するプロジェクトに参画するためキッコーマン(株)経営企画部へ出向。
2015年キッコーマン食品(株)物流部物流企画課に出向し物流倉庫の建設計画に携わる。
2018年総武物流(株)からキッコーマン食品(株)に転籍。
2022年5月から物流企画課課長として、持続可能な物流実現のための取り組みを進めている。

募集要項

イベント名 第86回CREフォーラム:キッコーマン食品株式会社における持続可能な食品物流実現のための取り組み
日時 2022年10月28日(金) 16:00~17:00
会場 オンライン受講(Zoom)
参加対象者 荷主・物流企業 様
参加費/定員 参加費無料 / 定員100名

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティングチーム
担当:
立原(タチハラ)
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5570-8048

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