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(レポート)2023年に実行マスト!物流持続可能化への具体策!! ~2024+アフターコロナ物流危機を勝ち残るSDGsへのGX×DX~

(レポート)2023年に実行マスト!物流持続可能化への具体策!!  ~2024+アフターコロナ物流危機を勝ち残るSDGsへのGX×DX~

まだ課題満載の物流SDGs

SDGsには、「貧困をなくそう」「気候変動に具体的な対策を」といった17のゴールと169のターゲットがあります。これらのゴールは「環境」「社会」「経済」の3カテゴリに分類でき、経済は健全な社会があってこそ、社会は健全な地球環境があってこそ持続可能になる、という関係にあります。

SDGsは人類と産業界が最優先すべき最高位目標であり、日本政府も「地球の環境保全=グリーン物流」「働く人の環境保全=ホワイト物流」として施策を進めています。しかしその動きだけでは足りません。環境保全と経済成長は両立しながら進めていく必要があります。

SDGsとセットで語られるのが「ESG経営」(Environment/環境、Social/社会、Governance/企業統治)です。その本質は「社会課題の解決」という、非財務的価値を考慮した投資活動、または経営・事業活動を行うことにあります。投資家はESG評価の高い企業に積極投資し、評価の低い企業への投資を回避することで、SDGsの進捗を支援していきます。

「気候変動を回避する環境保全は、自社だけでなく、上流・下流のサプライチェーン全般にわたる活動も総合的に評価すべき」と主張しているのが「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」です。TCFDは各国の中央銀行総裁と財務大臣からなる金融安定理事会の作業部会で、「気候関連の情報開示基準」を提示しており、サプライチェーン全般における温室効果ガス排出量を「3つのスコープ」で報告することを企業に求めています。

<3つのスコープ>

Scope1 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス) 
Scope2 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出 
Scope3 Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出) 

この動きはすでに具体的に始まっており、2021年6月に金融庁はサステナビリティ・TCFDに言及するコーポレートガバナンス・コードを改訂しました。また2022年4月、東京証券取引所は最上位のプライム市場に上場する企業に、TCFDを基本とした気候リスク情報の開示を義務付けました。

大企業の気候関連情報開示がマストになったことで、中小物流/非上場企業にも影響が波及しています。

物流GXの具体策

物流GX(グリーントランスフォーメーション)の核心である「脱炭素EX」(エネルギー革命)に向けて私たちができることをご紹介します。

地球の気温上昇度合いは、CO2の累積排出量にほぼ比例しています。温暖化を抑制し、気温上昇を1.5℃以下に抑えるためには、累積総排出量を2兆8000億トン余に抑える必要があります。

しかし累積CO2排出量は2019年時点ですでに2兆4000億トンに達し、排出上限まで残された「炭素予算」は 約4000億トンしかありません。今も毎年400億トンが排出されており、このままではあと8年、2029年までに炭素予算は枯渇し、気温は1.5℃を超えて上昇する恐れがあるのです。

地球の気温上昇により、陸地における極端な高温や、1~1.75mに達する海面上昇、干ばつなどの発生が懸念されます。CO2の排出を抑えることは急務で、そのためにも再エネへのEXに取り組まなければいけません。

WWF(世界自然保護基金)ジャパンは、石炭火力全廃、原発を現状維持したうえで「2030年には再エネで電源の48%を確保できる」「2050年には100%にすることも可能」と提言しています。それを実現するためには、「再生可能エネルギー供給力の爆速拡大」しかありません。

再エネEXで必要になるインフラが「スマートグリッド/マイクログリッド」です。スマートグリッドは、太陽光発電等の供給システム、送配電ネットワーク、IoT機器、蓄電設備、データ保存装置、機器保守管理システム、これらを管理するエネルギーマネジメントシステム(EMS)等から構成され、再エネの送配電・共有を行います。

これを特定地域内で地産地消のネットワークとするのが、マイクログリッドです。まずは太陽光の小規模分散発電から始めるのが早いでしょう。折しも東京都は、2025年4月以降の新築戸建て住宅に太陽光発電の設置義務付けを決定しました。太陽光発電のソーラーパネルは100万円以下になり、2030年時点のコストが1kWhあたり8.2~11.8円と、原子力(11.7円以上)やLNG火力(10.7~14.3円)より安価な最安電源になると予想されています。

それでは、物流GX/EXの具体策をご紹介します。

<物流GX/EXの具体策>

①【初めの一歩】自社のGHG排出量を算定し、削減目標を決める……まずは自覚から。自分で計算する/CO2排出量見える化サービスを活用する
・CO2排出量測定サービス事例:「ハコベルコネクト」「SustainaLink」など

②【Scope2】電力契約を再エネ電力に切り替える……事務所・事業所・倉庫/物流センターの電力契約を、新電力会社や既存電力会社の「再エネ電力100%プラン」などに切り替える

③【Scope2】自前で、または「PPAサービス」を利用して再エネ発電設備を導入、電気を割安利用する
・PPA(Power Purchase Agreement)サービス:「オンサイトPPA」と「オフサイトPPA」の2種類。倉庫・運輸事業者も「投資ゼロ」でScope2を脱炭素・再エネ転換で激減させることが可能

オンサイトPPA ・倉庫や店舗の施設所有者が、建物の屋根や駐車場などのスペースを無償で提供
・発電設備を所有・管理するPPA事業者が、そこに再エネ発電設備を無償で設置
・発電した電力は、必要分だけ施設所有者がPPA事業者から割安で購入利用できる 
オフサイトPPA ・会社から離れた場所に太陽光、風力などの発電施設をPPA事業者が設置し優先利用 

④【Scope1】トラック車両をEV/FCVに切り替える……まずは軽トラから。佐川急便は2021年4月、配送用の電気軽自動車のプロトタイプを公開。現在の約7200台を2030年度までにすべてEVに転換する予定

⑤【Scope3】委託先の物流会社にも以上の推進を要請……排出量の報告を求め「サプライチェーン排出量」を算定

再生可能エネルギーへのEX/GXによって日本は、年間20兆円前後(2022年は化石資源価格の高騰で30兆円以上になると予測)におよぶ化石資源の輸入費用を大幅に削減し、再エネ発電システムの構築に必要な投資額をまかなうことが可能になります。毎年1兆円ずつ削減できれば10年で累計55兆円削減できる計算です。

これにより、産業社会の基盤を外国に頼る不安定な現状を脱し、エネルギー安全保障、政治的安全保障のレベルを劇的に向上させ、再エネ新産業に撤退産業の雇用を吸収し、経済成長と環境保全を両立できるようになるはずです。

働く人の環境改革はなぜ必要か

1998年ごろまで、大型トラックドライバーの所得は全国平均よりも上でした。しかし度重なる規制緩和の結果、現在の所得は全産業平均よりも1割(大型)~2割(中小型)ほど下回っています。

NX総研の調査報告によると、2024年問題の影響で輸送能力は14.2%不足、営業用トラックの輸送トン数は4.0億トン不足し、そのまま対策を打たないと2030年度には輸送能力の34.1%(9.4億トン)が不足し、営業用トラック運転者は21万4086人足らなくなる見込みです。

全ト協「トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン」によると、2024危機回避に向けて、運送事業者は「労働生産性の向上」「運送事業者の経営改善」「適正取引の推進」「人材の確保・育成」に取り組む必要があります。

またその動きにともない「荷主企業は運賃適正化を受け入れる」「消費者は『配送料無料/当日配送』などの過剰サービスに対価を負担する」など、荷主と消費者の理解と行動が必要になります。

加えて、働く人(ドライバー+現場作業者)の労務環境改革も必要です。労務経営施策の改革で人材確保・定着率向上を図り、働く人の環境をサステナブルにしていきましょう。改革具体策としては、以下の3つが考えられます。

①サービス・プロフィット・チェーン(SPC)……「従業員満足」によって生産性とサービス品質が向上することを通じて「顧客満足」が向上し、その結果「企業収益の向上」へと連鎖させていく

②心理的安全性の確立……チームの誰もが非難される不安を感じることなく、自分の考えや気持ちを率直に発言でき、それを行動に移せる環境を構築する

③「物流ディーセント・ワーク」でやりがい確立……「顧客体験」と「従業員体験」を直結し、ともに向上させる仕組みをつくる

連携・協働で物流の未来へ

物流の未来は、共同物流プラットフォームからフィジカルインターネットの夢へと進んでいきます。

フィジカルインターネットとは、インターネット通信の考え方を物流に適用したシステムです。RFIDに代表されるIoTやAI技術を活用することで物資や倉庫、車両の空き情報を見える化し、規格化された容器に詰められた貨物を複数企業の物流資産(倉庫、トラックなど)をシェアしたネットワークで共同輸配送を行います。

フィジカルインターネットは、経済産業省主導で2040年の実現を目指して取り組みが進められています。また民間でも独自に、さまざまな荷主企業と物流事業者が連携する取り組みが進んでおり、中でも「NEXT Logistics Japan」は「幹線物流協働プラットフォーム」の確立を目指してチャレンジを続けています。

今後は共同物流プラットフォームに皆で参加し、磨いて広げ、フィジカルインターネットの「夢を・現実に」していくことが必要であると考えます。

講師紹介

菊田 一郎 氏
L-Tech Lab(エルテックラボ)代表、物流ジャーナリスト
(㈱大田花き 社外取締役、㈱日本海事新聞社 顧問、
流通経済大学 非常勤講師、ハコベル㈱ 顧問)

菊田 一郎 氏
L-Tech Lab(エルテックラボ)代表、物流ジャーナリスト
(㈱大田花き 社外取締役、㈱日本海事新聞社 顧問、
流通経済大学 非常勤講師、ハコベル㈱ 顧問)

1982年、名古屋大学経済学部卒業。物流専門出版社に37年勤務し月刊誌編集長、代表取締役社長、関連団体理事等を兼務歴任。
2020年6月に独立し現職。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のデジタル化・自動化、SDGs/ESG対応等のテーマにフォーカスした著述、取材、講演、アドバイザリー業務等を展開中。17年6月より㈱大田花き 社外取締役、20年6月より㈱日本海事新聞社 顧問、同年後期より流通経済大学非常勤講師。21年1月よりハコベル㈱顧問。

著書に「先進事例に学ぶ ロジスティクスが会社を変える」(白桃書房、共著)、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」(中央職業能力開発協会、11年・17年改訂版、共著)など。

募集要項

日時 2022年12月23日(金) 16:00~17:00
会場 オンライン受講(Zoom)
参加対象者 荷主・物流企業 様
参加費/定員 参加費無料 / 定員100名

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティングチーム
担当:
立原(タチハラ)
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5570-8048

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