CREフォーラム レポート

(レポート)インドネシア、躍動する2.7億人の市場、その魅力を探る

(レポート)インドネシア、躍動する2.7億人の市場、その魅力を探る

基調講演「人口と都市から見たインドネシア経済のポテンシャル」

【講師】亜細亜大学 アジア研究所 教授 大泉 啓一郎 氏

世界の中のインドネシア

インドネシアは世界第4位の人口大国です。人口は日本の2倍を超え、人口増加が続き、2035年には3億人を超えるといわれています。

インドネシアの国土面積は日本の5倍以上あります。東西に5100km伸びており、アメリカ合衆国の陸地がすっぽり入るほどです。

インドネシアは2000年以降、比較的高成長を維持しています。1人当たりGDPは4500ドル(2022年)といまだ低水準ですが、「消費財が売れる」とされる3000ドルを超えたので、今後急速に拡大していくと思われます。

経済規模は日本の1/4ほどですが、世界ではすでに17位の位置にあり、経済大国への道を進んでいます。ASEANにおいては群を抜いて経済規模が大きく、35%を占めます。

インドネシアの経済成長潜在力

インドネシアの成長率は5.3%(2022年)で、今後も5%近く成長していくとIMFは予測しています。

経済成長を予測するうえで重要な「生産年齢人口」(人口ボーナス)の推移を見ても、インドネシアは2030年代までピークを維持しており、今後も経済成長を維持していくと思われます。

中国と比べた場合、生産年齢人口の推移はなだらかです。これは「中国のような10%を超える急成長は見込めないが、5%台の成長が長期的に続く」ことを意味します。

一方で、中国は急成長を糧に国内貯蓄率が一時45%を超え、旺盛な投資につながりましたが、インドネシアは貯蓄率もなだらかに進み、おそらく35%程度に留まるため、中国ほど投資は活性化しないでしょう。そのため、いまインドネシアで計画されている首都移転計画における、インフラ整備の資金調達が課題になると思われます。

大都市を中心としたインドネシアの市場規模

次に、セミマクロの視点からインドネシア経済を見てみましょう。

インドネシアの首都ジャカルタとその他の地域では、景観がまったく異なります。ジャカルタ周辺は、すでに先進国地域になっており、高所得層が想像以上に多く存在しています。

先ほど「1人当たりGDPは平均4500ドル」と述べましたが、インドネシアは所得格差がすでに広がっており、上位10%(2700万人)の所得は全体の30%を占め、大まかにいって平均の3倍の所得(1万3000ドル)を有しています。

したがってインドネシアでビシネスを行う際は、まずは都市部(ジャカルタ、ボゴール、デポック、タンゲラン、ブカシ)に住む彼らをターゲットにするべきでしょう。

特にジャカルタに注目してみると、人口は1064万人。生産年齢人口は71.5%を占め、1人当たりGDPは1万9200ドルに達します。ジャカルタは若い高所得地域といえます。

持続的成長への課題

最後に、インドネシアにおける持続的成長への課題を、貿易投資の面からお話しします。

インドネシアの主要な貿易相手国・地域は、中国とASEANです。貿易は順調に成長していますが、ASEANの中で見ると成長率は低めです。その理由は工業製品の輸出が少なく、50%程度に留まるためと考えられます。

主要な輸出品目は、植物性油脂(パームオイル)、天然ガス、石炭などの資源です。中でもパームオイルは2000年以降、急速に伸びており、インドネシアの地方経済を支えています。都市部ほどではありませんが、地方も自動車販売台数が増え、携帯電話が急速に普及するなど、購買力が伸びています。

インドネシアの直接投資受け入れは盛んですが、その内訳は資源開発や内需拡大に偏っており、アジアの生産ネットワークの中にはまだ入っていません。インドネシアが今後も持続的に成長していくためには、経済成長と雇用拡大の好循環を生み出す必要があり、そのためには工業化を進め、生産ネットワークの中に入っていく必要があるでしょう。

インドネシア最新トピックス「急成長するインドネシア消費市場」

【講師】SCMソリューションデザイン 代表 魚住 和宏 氏

急成長するインドネシア経済

インドネシア経済が急成長しています。購買力平価GDP(※)を見てみると、1990年は世界13位でしたが、2021年は世界7位までランクアップしました。ルピア安が進行しているので名目GDPは低くなりますが、名目GDPだけを見ているとインドネシアの購買力を見誤ることになります。
※購買力平価GDP=自国通貨ベースのGDPを、購買力平価を用いてドル換算したもの

高い日本語教育熱

インドネシアでは日本語教育が盛んに行われています。日本語学習者は中国に次いで2番目に多く、2018年は約70万人います。

小売市場の概況

2020年は、ASEAN各国とも小売市場が縮小、しかしその後は緩やかな回復基調にあります。

一方でネット通販市場は急拡大しています。特にインドネシアの伸びが驚異的で、2022年にはネット通販比率は31%まで伸長しました。インドネシアで活躍するECプラットフォーマーには「Tokopedia」「Shopee」「Lazada」「BukaLapak」があり、4社合計で97%を占めています。

加工食品市場の概況

加工食品市場は、コロナ禍においても堅調に推移してきました。インドネシアのマーケット規模は401億ドル(2022年)で、ASEAN全体の4割に相当します。

インドネシアを含むASEAN諸国は冷凍冷蔵品の消費量がまだ少ないため、今後も大きな伸びが期待できます。

外食市場の概況

外食産業は、コロナでもっとも大きな打撃を受けました。現在は幾分回復基調にあり、インドネシアの市場規模は290億ドルです。

独立系外食店とチェーン外食店を比較すると、持ち帰りのあるチェーン外食店の方が回復は早く、チェーン外食比率の上昇につながっています。

プレゼンテーション「インドネシアの物流事情 とその最新動向」

【講師】郵船ロジスティクス株式会社 日本地域事業・営業推進本部 海上貨物部事業企画課 課長 白岩 英晃 氏

インドネシアの物流とそれを取り巻く環境

インドネシアの物流は日本の物流に比べて、いくつかの点で特殊な事情があります。

①道路網の整備レベルが低く、国としての計画性が乏しい
ジャカルタ首都圏において、特に道路が渋滞しています。コロナ禍初期は一時的に解消しましたが、現在はコロナ以前よりも悪化し、ジャカルタ首都圏(20~30km圏)の移動に3時間以上かかることもしばしばです。

②いまだに原本主義で運用している
基本的に書類の原本(サイン入り)が求められます。特に通関書類審査や税関検査発生時には必須で、通関申告時に用いる書類間の表記の相違があると、通関は認められません。BL/AWBや原産地証明書上の文言の誤記には細心の注意が必要です。

③輸出入時のライセンス制度と許認可プロセスが難解
ライセンス制度が煩雑で、標準化されておらず、非効率に運用されています。1ヶ月前にできていたことが急にできなくなるなど、ビジネスの混乱も起きややすい環境にあります。

④労働従事環境が不安定
政府施策により、情勢が不安定になるとストライキが頻発します。労働者保護の考えが強く、労働組合によるストライキも少なくありません。また、長期連休明けはドライバーが帰郷して都市部へ戻ってこず、ドライバー不足により輸配送に影響が出ることもあります。

⑤ジャカルタ近郊に経済活動が一極集中しすぎている
企業の地方への分散、ジャワ島以外の島を含めた地方への誘致が必要です。これに関しては、政府主導による東カリマンタン州への首都移転計画があります。2024年8月の独立記念式典は新首都予定であるヌサンタラで行うという噂もあります。

⑥国内物流費用が高額
港湾、トラック、国内海運など、島嶼間物流における輸送費が高額で、国内需要の拡大を阻害しています。

物流で失敗しないためのキーポイント

インドネシアにおいては、以下のような物流トラブル事例があります。

①輸入ライセンスの不備による莫大な労力とコストの発生
インドネシアの荷受人側が、輸入に関する商品ライセンスを準備できていないため輸入できず、最悪の場合は貨物の積戻しを余儀なくされます。特に新しい商材をインドネシアへ送り込む際は注意が必要です。

②通関や船積関連の書類不備による追加コストの発生
記載内容の不一致がある場合、通関手続きがストップし、不必要な保管料などが発生する場合があります。原産地証明書関連の不備に関しては、関税額にも影響します。

③HSコード(関税率)の適用は正しく、かつ慎重に
通関許可後であっても、事後的に「輸入申告時に適用したHSコードが相応しくない」と税関が判断した場合、税金を追加徴収されることがあります。また定められた期限内にその税金を納めないと、一定期間輸入手続きがブロックされることもあり、ビジネスに甚大な影響が出てしまいます。

以上のような失敗をしないためには、以下の対策が必要です。

①事前準備を入念に行う
輸出入手続きなど物流を取り巻く制度や仕組みが非常に煩雑です。時間にゆとりを持ち、「イレギュラーが起こることは当たり前」と心得ることが重要です。

②経験豊富なパートナーを持つ
意見をできるだけ多く聞いたうえで準備を進めることが大切です。特に適切にアドバイスできる現地事情に精通した経験豊富な物流パートナーは必須です。

③優秀なローカル人材を確保する
一般社会レベルにおける英語の浸透度合いは高くありません。各種法令もすべてインドネシア語がベースとなっています。日本人駐在員であっても現地語を勉強しましょう。

郵船ロジ・インドネシア3会社のご紹介

わたしたちは、以下の3社をインドネシアで運営しています。

①PT. Yusen Logistics Indonesia(YLID)……国際輸送業務(輸出入通関・航空/海上輸送など)
ジャカルタに本社機能、スラバヤ・スマラン・バタムなど、おもだった都市に支店があります。2012年、PT. Yusen Air & Sea Service Indonesia/PT. New Wave Logistics Indonesiaとの合併により設立、合併前の会社は30年以上の歴史があります。

②PT. Yusen Logistics Solutions Indonesia(YSID)……倉庫業
MM2100工業団地内に自社倉庫を2箇所(計4万9500m2)所有しています。またジャカルタ地区以外にも契約倉庫を14箇所配置しています。設立年は1996年で、2012年に社名を変更しました。

③PT. Puninar Yusen Logistics Indonesia(PYID)……倉庫業
ジャカルタ地区に3箇所(計15万2000m2)オープンヤード、コンテナデポ機能も保持しています。設立年は1991年で、2014年に社名を変更しました。

プレゼンテーション「インドネシアにおける食品リテールのサプライチェーン」

【講師】味の素株式会社 甘味料部加工用グループ グループ長 杉山 嘉 氏

インドネシア味の素 紹介

インドネシア味の素の創立は1969年で、50年以上の歴史があります。従業員数は約3500名で、グループ売上高は約500億円。ジャカルタに本社があり、ジャカルタ、スラバヤ、メダン、マカッサルの4箇所に支店が、モジョケルト、カラワンの2箇所に工場があります。

この東西2工場内の物流センターから製品を配送し、200箇所の在庫拠点、370万軒の小売店を経由して、2億7000万人のインドネシア国民に製品を届けています。製品は直販(現金直売)と販売代理店を通して供給しています。

当社の取り扱い製品は以下のとおりです。

新しい生活様式・流通形態への対応

インドネシアは、2021年7月のコロナ第2波と2022年2月のコロナ第3波を経て、生活様式が変化しました。

生活様式は、 外出自粛による身近なお店での買い回りと、EC決済が増えました。ただ、キャッシュレス決済にはあまり移行せず、代引きなどの現金決済が根強く残っています。これは、金融機関口座所有率やクレジットカード所有率がまだ低いからだと推測されます。

<インドネシアにおける各種所有率>
・携帯電話所有率 ・・・・ 66.2%(2018)
・金融機関口座所有率 ・・・・ 51%(2021)
・クレジットカード所有率 ・・・・ 2%(2021)
・電子決済(支払い)経験率 ・・・・ 12%(2021)

流通形態においては、「消費者向けEC」「小売店向け卸型EC」という新たなプレーヤーが台頭しました。

特にインドネシアは女性店主がワンオペで営む小売店が多いのですが、小売店向け卸型ECがこの5年間で、これらインドネシアの全小売店(約370万軒)の3割近くをカバーしました。ユーザーはオンラインでオーダーすれば、小売店が決まった日付に商品を届けてくれるので、需要が伸びています。

またインドネシアには「Alfamart」「Indomaret」という2大ミニマートチェーンがあります。

Alfamartは、競合である伝統的な小売店への卸売り・配送機能ももっており、戦略的に展開しています。

以上を踏まえ、インドネシアでは、ECと近場小売店(ミニマートチェーン含む)のハイブリッドの流通形態確立が、早期の配荷実現につながると考えられます。

パネルディスカッション「成長著しいインドネシア事業成功の鍵」

<ディスカッション資料>
1. インドネシアの名目GDPは1.1兆ドルで、ASEAN合計の約1/3を占める。また人口は2億7000万人で、ASEAN合計の約半数を占める
2. 首都ジャカルタが水没の危機にあり、カリマンタン島・ヌサンタラへの首都機能移転が計画されている
3. インドネシアの財政収支は、コロナでやや悪化しているが、ほぼ均衡。財政規律はしっかりしている
4. インドネシアはエネルギー自給率が191%であり資源国。産業用電力コストも比較的安い
5. インドネシア・ジャカルタエリアでは、急ピッチで交通インフラの整備が進んでいる
6. インドネシアでは冷蔵庫の普及率が急上昇中。一方、乗用車の普及率はまだまだ低い
7. インドネシアは他国に比べて、小売店によるトラディショナルトレード(TT)比率がかなり高く、7割を占める
8. インドネシアの消費者物価上昇率は2016年以降、5%以下に抑えられている
9. インドネシアの失業率は4%とかなり低い
10. インドネシアはASEANの中で「政治の民主化度」が高く、「政治的安定度」「政治の腐敗抑制度」も改善している


魚住氏:コロナの影響で、インドネシアの物流業界のオンライン化・ペーパーレス化はどれくらい進みましたか?

白岩氏:コミュニケーションにおいてはオンライン化が進みました。しかしペーパーレス化は一部でしか進んでおらず、原本主義がまだ残っています。

魚住氏:コロナを経て、日本企業のインドネシア進出に何か変化はありましたか?

大泉氏:コロナ以前から伸びていた自動車関連の投資が進んでいますね。日本以外では中国による資源開発が進んでいます。

魚住氏:日本企業としてインドネシアの従業員をマネジメントするうえで、どのようなことに気をつけていますか?

杉山氏:インドネシア人は上下関係を非常に重んじます。日本人同士だと強い言い方になるような場合でも、インドネシアでは、むしろそのような言い方が期待されるケースがあります。上司が自信をもって指示する姿勢が期待されていると思います。

白岩氏:インドネシアは個人主義ではなく、チームワークを重んじます。マネジメントとしてはチームに対してKPIを与え、達成すると褒めることが重要です。ただ、チームの前で個人を叱ることは絶対にNGです。

魚住氏:ジョブホッピングに関してはどうでしょうか?

杉山氏:集団主義なので、チームをしっかり固めると転職率は抑えられると思います。

白岩氏:マネジメント層は引き抜きなどもありますが、コミュニケーションをしっかり取り、動機付けを行うと、しっかり根付いてくれます。

魚住氏:コミュニケーションとモチベーションが大事ですね。しっかりとした人事評価制度、職能等級制度をもつことがモチベーションを上げるのに重要です。ストライキ対策についてはいかがでしょうか?

白岩氏:インドネシアは組合が強く、ストライキが起こります。対策としてはやはり対話ですね。コミュニケーションをベースにマネジメントしていく必要があります。

魚住氏:インドネシアは労働者保護の意識が強く、懲戒解雇の場合でも従業員の同意が必要で、退職金を支払わなければいけません。今後、インドネシアへの進出を目指す日本企業はこの点に注意し、正社員の採用は慎重に行った方がよいでしょう。

募集要項

イベント名 インドネシア、躍動する2.7億人の市場、その魅力を探る
日時 2023年3月15日(水) 13:45受付開始 14:00開始 17:00終了 ※日本時間となります
会場 オンライン受講(Zoom) 
参加対象者 インドネシアへ進出済みの企業様、インドネシアへの進出を検討中の企業様
参加費/定員 無料/100名限定(1社複数名ご参加の場合、参加者様全員のお申込みが必要です)

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティンググループ
担当:
瀧川(タキカワ)
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5570-8048

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