(レポート)持続可能な加工食品物流プラットフォーム構築を目指して ~連携の向こうに見えるもの~
運べなくなる危機 ~加工食品物流を襲うトリプルパンチ~
ご存じのように、物流はいま危機的状況を迎えています。「ドライバー不足」に「2024年問題」、そして加工食品物流は特に「運送業者から嫌われる」要因もあり、トリプルパンチを食らっています。
1つ目の危機……人が減る(ドライバー不足)
道路貨物運送業の運転従事者数は1995年をピークに減少しています。2030年には2015年の76万7000人から3割減少し、51万9000人程度になると予測されています(※)。このほかにも、トラックドライバーの高齢化など、さまざまなデータがドライバー不足を物語っています。
※日本ロジスティクスシステム協会『ロジスティクスコンセプト2030』より
2つ目の危機……2024年問題
働き方改革により、2024年4月以降はドライバーの拘束時間が減ります。このことによる「売上・利益の減少」や「ドライバーの収入減少」など、さまざまな問題が懸念されます。
行政からの働きかけはすでに年々強くなってきており、国土交通省や厚生労働省が荷主に対して、長時間待機を改善するよう要請を行ったり、荷主事業者、物流事業者の取り組みに関するガイドラインを作成しています。
2030年における物流受給ギャップは「ドライバー不足」と「2024年問題」と合わると、34.1%の不足になると試算されています(※)。
※NX総研による試算より
3つ目の危機……嫌われる加工食品物流
上記に加えて、加工食品物流は「納品先での長時間待機(全産業中ワースト1)」「ドライバーの運転以外の作業が多い(附帯作業)」「厳しく、複雑な日付管理・納品期限管理」「短いリードタイム(受注翌日配送、夜間作業)」などの問題があり、物流事業者から嫌厭されています。
以上、3つの危機をまとめると、これからは「これまで100人でやってきた仕事を、50人でやれるように業務を組み立て直さなければならない」と考えています。
持続可能な加工食品物流を構築するために ~製品を確実にお客様にお届けするために~
このように、加工食品物流に危機的状況が起きているなかで、私たち味の素が行ってきたことをご説明します。
まずは、「配送業者に選ばれる荷主」になるために、味の素個社としてモーダルシフトなどの物流改革を行いました。
しかし物流改革を私たち1社だけで進めるのには限界がありました。そこで他メーカーとの共同輸・配送や物流会社を新しく設立し、水平連携を行うことにしました。
具体的には、2015年に味の素、カゴメ、日清オイリオ、日清製粉ウェルナ、ハウス、ミツカン6社による持続可能な物流体制の構築を議論する「F-LINEプロジェクト」という場を設け、2019年に「F-LINE株式会社」を設立。物流企画立案機能を統合し、共同輸送をはじめました。
ただこれでも問題は山積みだったので、製・配・販との垂直連携や、行政当局、業界団体とも斜めに連携をしはじめました。
具体的には2016年に、上記6社にキッコーマン、キユーピーを加えた8社による製・配・販課題解決の討議・実行の場「SBM会議(食品物流未来推進会議)」を発足。長時間待機や附帯作業、納品方法、商慣習などの共通課題を議論し、国交省、経産省、農水省などとも連携しています。
このような取り組みを進めることで商慣習を見直し、 「日本の物流を進化」 させなければならないと考えています。
ちなみに前出の「F-LINEプロジェクト」は2022年から第二期がスタートしました。現在は以下に関する検討・実行を行っています。
前工程(中長距離輸送)
・関東〜関西間のブロックトレイン往復運行
・幹線輸送複線化によるBCP対応強化策として海上トレーラーによる共同輸送
・関東〜九州 レールライナー31ft往復
中心工程(配送、配送拠点)
・中国エリア……味の素、ハウス食品の共同配送
・東北エリア……味の素、日清製粉ウェルナ、ハウス食品の共同保管、共同配送
・首都圏エリア小口配送……EVトラック導入
後工程(製・配・販物流整流化)
・足元課題分科会……長時間待機、附帯作業中止
・標準化分科会……業界標準エコシステム構築(電子納品書、ASN(事前出荷情報データ)活用による検品作業の簡素化、システム乱立による業務負荷増の解決など)
全工程横断(標準化、効率化推進)
・各種フォーマットの統一による作業効率化、作業標準化
・物流改善の取り組みが反映する新しい料金体系(タリフ)の設計と実施
また、上記施策の推進や関係省庁と連携するために、「F-LINE物流未来研究所」を設立しました。
改めて、「持続可能な加工食品物流構築」にむけた当社の取り組みをまとめると、以下のとおりです。
「連携」の向こうに見えるもの ~3つの視点~
最後に、これらの取り組みを振り返り、連携の先に見えた視点についてご説明します。
1. 物流改革を進めるスキーム
加工食品分野における、改革活動の全体連携スキームをやっと作ることができました。経済産業省、農林水産省、国土交通省、厚生労働省など多くの関係省庁がいま、物流に強い関心を持ち、さまざまな打ち手を考えています。
個社での物流改革は限界を迎えています。今後はこのスキームをもとに、「水平・垂直の業界連携」と「行政との斜め連携の進化・深化」を深めて物流改革を進めていく必要があります。
2. 物流改革を担う人財
これまでお話ししてきたような仕事を進めるには、多種多様な人材をそろえる必要があります。私が考える物流改革を担う人材像は以下のとおりです。
・長く物流をやってきたメーカー物流のプロ
・物流会社の現場を熟知している人財 ・物流を全く知らない人(「おかしい!」と素直に言える人)
・6社間契約をまとめられる契約・交渉・社内手続きに明るいコーポレート系人財
・製・配・販三層の取り組みをすすめるためには営業系人財は必須
・プロジェクトマネジメント経験者
・先進性(過去の延長線で考えない人)
・自社最適の枠を超えている人
3. 物流「改善」から物流「改革」、そして物流「革命」へ
今後、持続可能な加工食品物流の構築実現にむけたステップとして、以下を想定しています。
まずは紙や鉛筆を使用した属人的で「アナログな世界」から、個別業務、個社ごとにシステムを導入しデータを可視化した「デジタル化」へと進みます。
その後、個社システムを共有して業界標準とする「エコシステムの構築」を行い、ひとつひとつのデータをつなぎ合わせた「新たなサプライチェーンの構築」、そして食品業界だけでなく、さまざまな業界がデータでつながることで、ゴールである「持続可能な物流の構築」まで進めると考えています。
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■講師
味の素株式会社 上席理事 食品事業本部 物流企画部長 堀尾 仁 氏
募集要項
イベント名 | 持続可能な加工食品物流プラットフォーム構築を目指して ~連携の向こうに見えるもの~ |
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日時 | 2023年6月21日(水) 16:00~17:00 |
会場 | オンライン受講(Zoom) |
参加対象者 | 荷主・物流企業 様 |
参加費/定員 | 参加費無料 / 定員100名 |
本件に関するお問合せ
- お問合せ先:
- 株式会社シーアールイー マーケティンググループ
- 担当:
- 瀧川(タキカワ)
- メール:
- leasing_mail@cre-jpn.com
- 電話:
- 03-5570-8048