CREフォーラム レポート
株式会社キユーソー流通システム

(レポート)「2024年問題」とこれからの物流を考える ~物流業界全体の、より良い事業環境をめざして~

(レポート)「2024年問題」とこれからの物流を考える ~物流業界全体の、より良い事業環境をめざして~

株式会社キユーソー流通システム
代表取締役社長 西尾 秀明 氏

キユーソー流通システムについて

キユーソー流通システムは、1966年、キユーピー株式会社の倉庫部門が分離・独立し、設立されました。

今年で創立58年を迎える食品物流企業で、社是は「楽業偕悦」です。そして社訓は「道義を重んずること。創意工夫に努めること。親を大切にすること」の3つ。グループ経営理念は「わたしたちは、人と食を笑顔で結び、いつも信頼される企業グループです」となっています。

おもな事業内容は倉庫業、各種瓶缶詰類その他一般物品の包装、荷造ならびに配送等の引受業務、貨物利用運送事業などです。1982年に二層式冷凍冷蔵トラックを開発導入し、共同配送を開始。1989年には共同配送便を「キユーソー便」に統一し、全国物流ネットワークを構築してきました。現在の国内拠点数は、グループを含めて約160拠点。車両台数は約7000台です。

次に、当社グループの事業構成をご紹介します。売上約70%を占める「共同物流事業」では、おもに食品の全国共同配送を行っています。売上約20%を占める「専用物流事業」では、コンビニエンスストアやチェーンストアのセンター運営などを請負っています。売上約10%を占める「関連事業」では、国内で車両や燃料の販売、施設工事を、海外で低温物流の総合サービスの提供を行っています。

当社グループの強みは、「内食」「中食」「外食」のすべての食シーンに関わる物流を展開し、「常温」「定温」「冷蔵」「冷凍」という4つの温度帯の品質管理と全国物流ネットワークを有していることです。

また「キユーピーのたまご」というデリケートな食品を扱ってきたことで、多くの冷凍冷蔵技術、品質管理、仕事への姿勢など「物流品質」のノウハウを蓄積してきたことも、当社の強みと考えています。

物流を取り巻く環境

2024年問題の背景となる「物流を取り巻く環境」についてご説明します。

はじめに「トラック運送事業の働き方」の現状ですが、トラックドライバーの年間賃金は、全産業平均に対して約5~10%低い一方で、労働時間は全産業平均より約2割長いといわれています。ドライバー有効求人倍率は常時2~3倍で、物流の人手不足が続いています。

次に「ドライバーの高齢化」についてです。ドライバーの平均年齢は高く、高齢化が進む一方で、65歳以上の就業者の割合は少ないのが現状です。少子高齢化が進むなか、対策を講じなければ「担い手の減少が急速に進んでいく」といわれています。

次に「食品物流を取り巻く環境」です。コロナ禍が一段落し、外食需要に関する荷動きに回復傾向が見られる一方で、内食需要に関する荷動きは食品の値上がり影響なども見られ、底堅い推移となっています。また電気代の上昇や軽油価格の高止まりなど、厳しい状況が続いています。

「2024年問題」とは?

それでは「2024年問題」についてご説明します。

2019年、「働き方改革関連法」で時間外労働時間の上限が定められました。ただ、物流など一部の業界では2024年3月まで猶予期間が設けられました。

2024年4月以降は、トラックドライバーの時間外労働時間の上限が「年間960時間」に規制されます。ただでさえ慢性的な人手不足が続くなか、この労働時間の上限が加わることで、安定輸送がさらに困難になる懸念から、「2024年問題」と呼ばれています。

また「働き方改革関連法」に合わせた厚生労働省の「改善基準告示」により、ドライバー1人の拘束時間・運転時間の制限が以下のように強化されます。
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・1年の拘束時間は原則3300時間。最大3400時間
・1ヶ月の拘束時間は原則284時間。最大320時間
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これは1ヶ月あたり、1~2日分の拘束時間となります。ドライバー50人を抱える拠点の場合、50~100日分、ドライバー100人であれば100~200日分となり、与えるインパクトが大きくなっていきます。

ドライバーの年間拘束時間が3300時間になった場合、不足する輸送能力の割合は14.2%。不足する営業用トラックの輸送トン数は4億トンといわれています。ここに今後のドライバー減少を加味して試算すると、2030年には34.1%、9.4億トンが足りなくなる可能性があります。

「2024年問題」で想定されるリスクは以下のとおりです。
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・時間外労働時間の上限を超過してしまう
・突発的な運行に対応できない
・上限いっぱいの乗務員が年度末に集中してしまう
・拘束時間の長い仕事は、嫌厭される
・繁忙期の車両手配が困難になる
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「2024年問題」で、時間外労働や拘束時間に上限が設けられることで、残業代が減り、さらなる賃金低下が予想されます。これ以上の賃金低下を招けば、離職を選択するドライバーも増加するでしょう。物流業界はこのタイミングを「人材採用・育成・定着を強化させる良い機会」と捉え、労働環境と労働条件の見直しをおこない、魅力ある職場に変えていく必要があるのです。

荷主企業様に要請していること、今後さらに取り組むこと

2023年6月、政府が公表した「2024年問題」対策の政策パッケージの一環として、「物流改善ガイドライン」が公表されました。

ガイドラインには発荷主・着荷主・物流事業者が早急に取り組むべき必要事項や推奨事項が記載されています。ポイントは、新たに「1運行あたりの荷待ちと荷役作業を合計2時間以内とする」と規程されたことです。

これを受け、当社も「荷主企業さまにお願いしていること」と「今後さらに取り組むこと」を策定しました。

背景としては、以下が挙げられます。
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・輸送品類別で見た場合、当社が取り扱う「加工食品を含む軽工業品」は、ドライバーの労働時間が3番目に長い
・食品流通は、人の手による荷役作業が多く、また小ロット・多頻度輸送が多いため、敬遠される事例がある
・食品物流は荷待ち時間が長い(30分以上の待ち時間が発生した件数がもっとも多い)
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それでは、当社が荷主企業様にお願いしていることをご紹介します。

スマートフォンアプリ「配送カウンター」を用いた待機時間や付帯作業の緩和・料金化

1パレットにつき1アイテムの納品をおこなう「ミルフィーユ納品」やシール貼り・棚入れなどの「付帯作業」、長時間待機など、食品物流はいまだ根深い問題を抱えています。

この状況に対処するために、当社はスマートフォンアプリ「配送カウンター」を開発し、全国約1700台に導入。付帯作業や待機時間の状況を記録し、緩和・料金化を進めています。

「配送カウンター」における「付帯作業」の内訳を見てみると、仕分け作業や棚入れ・先入れ作業がもっとも多い状況となっています。

また1運行あたりの「待機時間」の内訳を見てみると、国のガイドラインによる荷待ち・荷役作業の「2時間以内ルール」に対し、12.6%の車両が2時間を越えています。

これらの状況を受け、当社は荷主企業さまに対し、以下の3つの要請を行いました。
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①受注締め時間の厳守
②待機時間が90分を超えた場合の対応……1納品先あたり、待機時間が90分を越えた場合、荷主さまへご連絡のうえ、納品可否のご相談を行う
③自然災害時の対応……大雪や大型台風などによる自然災害被害が予想される場合、事前に納品日調整や受注分散を依頼させていただく
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また今後、さらに以下の4点について取り組んでいきたいと考えています。
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①隔日配送・定期配送化……出荷物量の少ないエリアへは、納品回数を減らし、納品数量をまとめていく
②前々日受注の推進……出荷物量を事前に把握し、配車ロスを減らす。車両積み込みまでの作業時間に余裕を生むこともできる
③シーズンチャージの検討
④都市部と地方による料金区分
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労働環境改善に向けた当社取り組みの紹介

次に、労働環境改善に向けた当社の取り組みをご紹介します。

職場環境の改善

トイレや休憩室がリラックスできない場所だと、仕事のオン・オフの切り替えができません。したがって2014年に私が取締役に就任した際に、真っ先にトイレ・休憩室の美化に取り組みました。

長距離輸送の取り組み

ドライバーの働き方改革や環境負荷低減を目的とし、トレーラー交換やドライバー交代、モーダルを活用したリレー輸送を行いい、「結ぶ輸送」と呼んでいます。
他社に先駆けて2016年より開始し、国交省や経産省が主催する「グリーン物流パートナーシップ」で3回表彰をいただきました。また昨年は、効率化・省人化を目指した輸送構築を推進するNEXT Logistics Japan社へ出資し、パートナー契約を締結しました。

近距離配送や倉庫における取り組み

スマートフォンアプリ「配送カウンター」のほかに、2016年より1t式バンの全国導入を進めています。また倉庫において、事前出荷データである「ASNデータ」の提供や、スマートフォンアプリを使用した入庫予約を行い、倉庫・車両の効率化を進めています。

求人、採用の取り組み

SNSアカウントの開設、ラジオCMによる求人、バス広告の掲載、また子育てサポート企業として、厚生労働省より「くるみん」認証取得などに取り組んでいります。これらは求人や採用につながるだけではなく、既存従業員のエンゲージメント向上効果も見られています。

キユーソー流通システムが大切にしている考え

最後に、当社が大切にしている考えをご紹介します。

当社は「安全はすべてに優先する」というスローガンを掲げ、全国各拠点にのぼりを掲げています。安全を第一にしたことで、品質も良くなり、生産効率も上がりました。安全を優先することは必ず物流品質向上に結びつきます。

次は「女性の活躍」です。当社の女性管理職の割合は約8.7%で、業界水準を上回って推移しています。現在は課長職ばかりではなく、現場・倉庫の営業所長としても女性が活躍しています。

次に「1人3役運動」です。これは「◯◯さんにしかできない仕事を減らすこと」です。物流の人手不足に対する対応、という意味だけでなく、お互いが仕事の理解を深め、コミュニケーションを活発にすることで、職場ごとに潜む問題点や課題点を浮き彫りにし、お互いを助け合うチームづくりを可能にします。

「作り手」と「使い手」の方々の間に、わたしたち「つなぎ手」が存在します。しかし物流を取り巻く環境は厳しく、このままでは社会にお役立ちできません。当社グループは、事業環境の変化に対応するだけでなく、変化をつくり、物流業界の未来を切り拓いていけるように、しっかりと前に向かい、歩みを進めてまいりたいと考えています。


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■講師
株式会社キユーソー流通システム
代表取締役社長 西尾 秀明 氏

募集要項

イベント名 1/25 オンライン:「2024年問題」とこれからの物流を考える
日時 2024年1月25日(木) 16:00~17:00
会場 オンライン受講(Zoom)
参加対象者 荷主企業・物流部門 、物流企業 様
参加費/定員 参加費無料 / 定員100名

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティンググループ
担当:
浅沼(アサヌマ)
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5570-8048

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