CREフォーラム レポート
オルビス株式会社

(レポート)サステナブルなロジスティクスの構築を目指して オルビス流DX推進の取組み

(レポート)サステナブルなロジスティクスの構築を目指して オルビス流DX推進の取組み

オルビス株式会社
SCM部 ロジスティクス管理グループ
グループマネジャー
柳田 和宏 氏

オルビスについて

オルビスはスキンケアを中心としたビューティーブランドで、化粧品や健康食品、ボディウェアなどを販売しています。ポーラ・オルビスグループのひとつであり、ポーラとともに基幹ブランドに位置付けられています。

当社はCXを提供していくために、プロダクト以外にも力を入れています。例えば、「パーソナルAIメイクアドバイザー」や「AI未来肌シミュレーション」などAIを活用したサービス、また無人店舗の出店などにも取り組んでいます。

当社の物流におけるDXの目的は、「顧客体験で一番重要となる商品を安定して提供し続けられるよう、サステナブルな物流体制を構築する」ことです。

機械学習を活用した梱包サイズ最適化について

「コスト低減」と「物流負荷軽減策」のひとつである、機械学習を活用した梱包サイズ最適化についてお話しします。

この取り組みの背景には「2024年問題」があります。2024年問題の影響は、ドライバー不足から来る賃上げや配送コストの増加、稼働時間減少により、「今までのように荷物が運べなくなる」ことなどが考えられ、荷主企業としては増加するコストの削減と、ドライバーの負荷削減に取り組む必要があります。

今回、私たちは、3つの手順でコスト削減案を検討しました。

1. 物流費の内訳を改めて精査する
2. インパクトの大きいものを把握する
3. それぞれの物流費を構成する要素に分解する 

そして分解したものに対して削減案を検討。例えば「配送費」は下記のように検討しました。

配送費の単価については、例えば「配送会社に持ち込む荷物については、引き取りに来てもらうのではなく、こちらから持ち込む」や「こちらで事前に仕分けをする」など、今まで委託していた部分を荷主側で対応することで単価の交渉をしました。

また、配送費を分解した中に「配送サイズ」があります。オルビスは現在、サイズの異なる9種類の箱/封筒を採用していますが、この箱のサイズを落とすことができれば、配送費の削減と配送効率の向上が期待できます。

そこで当社は、データサイエンスに強い会社と組み、出荷判定ロジックを見直しました。具体的にはまず、1ヶ月分の出荷データを渡して試算してもらい、実証実験をスタート。狙いとしては、本来ならもっと小さな配送箱で送れるはずなのにも関わらず、余分な空間を含んだ1サイズ上の配送箱で送っているケースを少しでも減らすことです。注文情報をもとに商品の詰め方を考慮した機械学習モデルで最適な梱包サイズを判定し、精度・効率の向上を狙いました。

そして現場検証を繰り返し、アルゴリズムに改良を重ねた結果、2023年1月から4月までの実出荷と計算の比較で、約10%の荷物のサイズダウンに成功。配送費を年間で2000万円以上削減できることがわかりました。現在はこの実証実験の内容をもとに、2024年中の本番実装を目指して取り組んでいます。

小型AGV330台を導入した出荷システムについて

次に、自動省人化の取り組みについて紹介します。

こちらが出荷システム「Tキャリーシステム」です。小型AGVを330台導入しており、1台につき1人のお客様のご注文が割り当てられ、群制御しながらエンドレスで走り回ります。

右側の横長のサークルが商品のピックゾーンで、22ヶ所のピックゾーンがあり、出荷頻度の高い商品は手前に、低い商品は奥に配置するなどしつつ、全アイテムがこの棚に並べられています。

左側は検査・梱包ゾーンで、バーコード検品・箱詰めを行う検査台が34台、封緘・送り状貼り付けを行う自動封緘機が2台、透明別仕分けを行うソーター1台で構成されています。

出荷件数は、1センターにつき平均1万件です。商品のSKUは約1100で、ピック点数は1オーダーあたり平均8点です。

当社の流通センターは、埼玉県加須市と兵庫県西宮市にあります。今回、出荷体制を見直すうえで、以下の4つの課題がありました。

1. 出荷数増への対応

今後の成長を見据え、倉庫の出荷能力を上げる必要がありました

2. 人手不足

物流危機によるドライバーの人手不足だけでなく、倉庫の現場作業員の雇用にも苦戦していました

3. 宅配運賃の高騰

2017年に配送運賃の大幅値上げがあり、物流全体でコスト削減をし、値上げ分を吸収する必要がありました

4. ラインの老朽化

東西の流通センターはともに2012年開設で、部品交換の頻度が増加していました


そして「Tキャリーシステム」による新出荷ラインを導入した結果、下記の成果を得ることができました。

AMR活用について

もうひとつの自動省人化の取り組みである、店舗BtoB出荷のAMR活用について紹介します。

AGV(Automatic Guides Vehicle)は走行ステージのマス目をベースに、管理システムからの指示に従ったルートを走行しますが、 AMR(Autonomous Mobile Robot)はガイドが不要で、AIが判断した最適なルートを自律走行し、センサーが障害物を検知して回避しながら走行します。

当社のセンターにおいては、以前はピックゾーンまで作業者がカートを押しながら商品を順番にピックし出荷を行っていましたが、これを20台のAMRに集品させる方式に変更し、人員削減と作業者の負担軽減を図りました。

出荷件数は、1日あたり8万点です。商品のSKUは約500で、ピック点数は1ケースあたり約45点です。

ラインの俯瞰図は以下のとおりです。AMRは待機ステーションから出発し、各ピックゾーンにて必要な商品をピックした後、発送ステーションに向かいます。

AMRを導入した結果、下記の成果を得ることができました。

AMRはAIで自律走行するため、BtoB事業の拡大や月の出荷量に応じて棚を増減するなど、柔軟に運用していけるのも大きなメリットだと考えています。

以上が、オルビス流DX推進の取組みです。

DXは目的ではなく、サステナブルな物流体制を構築するための手段のひとつです。どんなに良い商品をつくっても、お客様に届かなければ意味がありません。
これからも目的を見誤らず、サステナブルな仕組みを追求していきます。

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■講師
オルビス株式会社
SCM部 ロジスティクス管理グループ
グループマネジャー 柳田 和宏 氏

募集要項

日時 2024年6月13日(木) 16:00~17:00
会場 オンライン受講(Zoom)
参加対象者 荷主企業・物流部門 、物流企業 様
参加費/定員 参加費無料 / 定員100名

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティンググループ
担当:
浅沼(アサヌマ)
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5570-8048

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