CREフォーラム レポート
郵船ロジスティクス株式会社 ほか

(レポート)ASEANメコン地域から欧州への鉄道一貫輸送サービスの取り組み ~サプライチェーンにおけるBCP対策としてのご提案~

(レポート)ASEANメコン地域から欧州への鉄道一貫輸送サービスの取り組み ~サプライチェーンにおけるBCP対策としてのご提案~

第1部 第三の輸送手段! ベトナムと欧州を繋ぐ鉄道輸送サービス

第1部では、当社・郵船ロジスティクスの実績に基づいたベトナム発、欧州向けの輸送サービスについてご紹介します。

郵船ロジスティクスとは

郵船ロジスティクスは、NYKグループのライナー&ロジスティクス事業統括本部・物流グループに属しており、海上、航空、ロジスティクス、サプライチェーンソリューションなど物流に関わるさまざまなサービスを提供しています。

連結営業収益は約6710億円。地域・事業ともにバランスの取れた収益構造が特徴で、375都市・46の国と地域にグローバルネットワークを展開しています。

ベトナムと欧州をつなぐ鉄道輸送サービス

本サービスは、2023年から始まったイスラエル・パレスチナ紛争において、自動車船が拿捕されたり、コンテナ船が攻撃されたことを受けて、2024年3月から開始しました。

ルートはベトナム、中国、カザフスタン、ロシア、ベラルーシ、ポーランド、ドイツを通り、その先のオランダ、ベルギーまでで、コンテナの中身を詰め替えることなく輸送できます。途中の中国・重慶と、ドイツ・デュイスブルクには当社の倉庫があり、スタッフも常駐しています。

またベトナム国内には、北南ともに貨物ターミナルが存在しており、当社はハノイにあるドンアンターミナルを使用しています。

当社独自のサービスとしては、各コンテナへのGPSと鉄道プラットフォーマーのシールに加え当社独自のシールの標準搭載があります。これにより当社から提供するURLにアクセスいただくことで、リアルタイムに荷物をトラッキングでき、セキュリティ面でも安心してお使いいただくことができます。実際、サービス開始以降、輸送中の盗難は発生していません。

海上輸送では通常、コンテナの搬入期限がETD(Estimated Time of Departure)の3~4日前に設定されますが、鉄道輸送の場合はETDの1日前でよく、その分、スケジュール手配を引きつけられるのがメリットです。

本サービスのリードタイムで見てみると、航空と海上の中間を実現しており、海上輸送の約半分の日数で輸送することが可能です。

運賃も、航空輸送の約3割程度とリーズナブルなのが特徴で、マーケットによる振れ幅が非常に小さいため、安定して輸送を継続することができます。

鉄道輸送はグリーンソリューションの観点からも有効な輸送手段といえます。当社の温室効果ガス排出計算ツールを用いて算出したところ、鉄道輸送のCO2排出量は、対航空輸送で99%削減、対海上輸送で67%削減することがわかりました。

鉄道輸送の課題

鉄道輸送には課題もあります。それぞれの課題と当社の対応策は以下のとおりです。

・基本的にキャンセルできない
キャンセルになった場合は、当社が別案件などで穴埋めを行い、キャンセル料を最小限に抑えられるよう努めます。3月以降、キャンセル料金が発生したケースはありません。

・国境での税関検査リスクがある
当社にはジェネラルサービスのほかにエクスプレスサービスがあり、こちらをご利用いただくことで、税関検査時の国境での待機時間を短縮することができます。

・バンニングルールが海上と比較して厳格
当社のCFS(Container Freight Station)に貨物を入れていただいた後は、当社がバンニング作業およびラッシングを適切に行い、欧州まで届けます。

・輸送可能な品目が限られる
当社は、貨物特性に合わせて鉄道や鉄道以外のサービスもご提案します。 

鉄道輸送は、リードタイム・費用ともに海上・航空の中間であり、グリーンソリューションズとしても有効な輸送手段です。まずは郵船ロジスティクスにご相談ください。

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■講師
郵船ロジスティクス株式会社
日本地域サプライチェーン・ソリューション本部 産業第二部 特定顧客営業三課
樺澤 卓也(かばさわ たくや)氏

第2部 中国~ラオス鉄道サービス概況のご案内

第2部では、当社・郵船ロジスティクスによる、中国~ラオス鉄道を活用した複合一貫輸送サービスについてご紹介します。

中国~ラオス鉄道概況

中国~ラオス鉄道は「一帯一路」構想の旗艦プロジェクトのひとつで、中国側の起点は雲南省昆明市、ラオス側の起点はビエンチャンです。

2021年12月に開通し、運航本数は1日17本、貨物列車の車両編成は40~50両、2024年9月までの累計貨物取扱量は1000万トン超、取引額は407億7000万中国元(約57億6,000万米ドル)です。また2027年ごろまでにタイまで延伸を予定しています。

取扱品目は、開通当初の10種類から3000種類以上に拡大し、中国からはおもに機械設備や家電製品、野菜、生花などを輸出し、果物や金属鉱石、キャッサバ、真珠など輸入しています。

中国~ラオス鉄道の計画と実績は以下のとおりです。

総貨物量は、2024年は8月までで、前年同期比22.8%増の358万トン。価値は17.5億ドル(約123億8000万元)で56%増加しています。

こちらは中国鉄道のコンテナです。中国~ラオス鉄道、中国~ベトナム鉄道、中国~中央アジア鉄道、中国~欧州鉄道すべての路線で40フィートコンテナを使用することができます。また中国~ラオス鉄道、並びに中国~ベトナム鉄道ではリーファーコンテナの使用も可能です。

こちらは中国鉄道の引き受け基準概要です。中国~ラオス鉄道においては、オーバーサイズカーゴ、液体、オイル、化学品、バッテリー(EVの新車に搭載されたもの以外)が引き受け付加品目で、食品の取り扱いは可能となっています。

郵船ロジスティクス 複合一貫輸送サービス概要

当社の中国ラオス鉄道を活用した複合一貫輸送サービスについてご紹介します。サービス対象エリアは下記のとおりです。

昆明・ビエンチャンをハブ・ステーションとし、南のメコン地域はトラックで、北の中国エリアは鉄道とトラックで輸送ポイントを結んでいます。1部でも申し上げましたが、コンテナの詰め替えの必要なく、中国の重慶を経由して欧州に鉄道輸送することも可能です。

運賃およびリードタイムについては以下のとおりです。

鉄道+トラックは運賃およびリードタイムともに、航空と海上の中間程度です。1部でも申し上げたように、CO2排出量の削減が可能で、対航空輸送で99%削減、対海上輸送で79%削減、対トラック陸送で96%削減することができます。

中国とアジアは今、鉄道でつながりつつあります。中国とシンガポール、さらに東南アジアの大陸諸国を結ぶ鉄道が計画・建設中で、2024年7月にはマレーシア国鉄KTMBの主導により、タイ・ラオスを経由し、マレーシアと中国間で往復で利用が可能な鉄道貨物輸送サービスが開始されました。ASEAN諸国~中国・欧州間で、鉄道+トラックを利用した複合一貫輸送を検討されている場合は、当社担当営業窓口までご連絡下さい。

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■講師
Yusen Logistics (SAO Region) Co., Ltd.
Ocean Freight Forwarding Department
Global Headquarters, South Asia and Oceania
Director
鈴村 崇(すずむら たかし)氏

第3部(パネルディスカッション) 荷主にとってメコン・欧州間一貫鉄道輸送サービス活用のポイントとは?

魚住氏:アセアンのメコン地域に生産・輸出拠点を構えている日系企業は非常に多いですが、現在、スエズ運河を通行できないという問題が発生しており、輸送リードタイムが3週間以上延びてしまっています。

この状況を受けて現在、第1部・第2部で紹介された中国~ラオスをつなぐ中老班列や、ベトナム~欧州をつなぐ中越班列、そして中国~欧州をつなぐ中欧班列といった鉄道一貫輸送が有力な選択肢になると目されています。

そこで今回は、これらの鉄道輸送サービスを活用するにあたって、どのようなことがポイントになるかを解き明かしたいと思います。

まずコストの視点から、鉄道一貫輸送は海上輸送の約2.5倍程度高くなりますが、荷主企業はどの部分を重視して鉄道輸送利用に踏み切っているのでしょうか?

宮本氏:現在、ベトナム発欧州向け鉄道輸送をご利用いただいている荷主企業さまは、海上輸送に比べたリードタイムの短縮やCO2排出の削減などをメリットとし、BCP対策の一環と考えている場合が多いと思います。

魚住氏:輸送コストだけ見るのではなく、輸送リードタイムの短縮による棚卸資産の縮小も考慮に入れた方がいいですね。輸送費の増額と棚卸資産の縮小額を比較して検討するべきでしょう。先ほど、BCP対策の一環と仰られましたが、鉄道輸送に完全に切り替える場合が多いでしょうか。それとも海上輸送との併用が多いでしょうか?

宮本氏:現在は、海上輸送と併用されるお客さまが多いです。

魚住氏:海上と鉄道それぞれのリードタイムが大きく異なるので、管理が難しくなりそうですね。続いて、中老班列の活用に中国の地方政府が補助金を出しているそうですが、これは続きそうですか?

宮本氏:中国の地方政府の財源額やその年の重点政策によっても変わってくるので、続いていくかどうかは一概にはいえません。

魚住氏:わかりました。続いて輸送関連に関して、郵船ロジスティクスさんは、GPSを活用したセキュリティサービスを展開されていますが、位置情報以外に温度情報などもトレースできるのでしょうか?

宮本氏:可能です。ただ、国によっては、メーカーに準ずる機器がある場合があり、都度ふさわしいものをご提供しています。

魚住氏:輸送費は、中国から欧州に運ぶ場合と、欧州から中国に運ぶ場合で異なりますか?

宮本氏:はい、欧州から中国に運ぶ方が安くなる場合が多く、中国から欧州に運ぶ半額くらいになることもあります。

魚住氏:ETD(出発予定日・時刻)やETA(到着予定日・時刻)に対する遅れなどはあるのでしょうか?

宮本氏:ベトナム~中国間は非常に安定しており、遅延は起きていません。ラオス~中国間も私たちが把握する限り、大きな遅延は起きていません。ただ、冬場の中国~欧州間においては、雪や悪天候の影響で遅延が起きることがあります。

魚住氏:中欧班列はロシアをかすめますが、欧州の経済制裁の対象などにはならないのでしょうか?

宮本氏:中欧班列は中国、ドイツ、あと一部ロシアによる合弁会社ですが、欧州、中国、アジア各国との鉄道協定により保護されているので、今まで制裁などは起こっていません。そのリスクは低いと思っていただいて大丈夫です。

魚住氏:では最後の質問です。日本から海上輸送で中国に送り、そこから鉄道で輸送することは可能でしょうか?

宮本氏:可能です。日本を含めたアジア発のSea&Railサービスについては、2024年の春以降、BCPソリューションのひとつとして、お問い合わせが増えています。当社でも日本からSea&Railの手配を行なった実績があり、技術的にもお受けすることができます。

魚住氏:ありがとうございます。アセアンメコン地域から欧州への鉄道一環輸送について知識が深まりました。棚卸資産の縮小という目線を入れ、海上だけでなく、鉄道も検討すると良いと思います。

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■講師(パネリスト)
Yusen Logistics (China) Co., Ltd.
Ocean Freight Forwarding Group, East Asia Region
Regional Head of Ocean Freight Forwarding Group, East Asia
宮本 恭孝(みやもと やすたか)氏

■講師(モデレーター)
SCMソリューションデザイン
代表
魚住 和宏(うおずみ かずひろ)氏

募集要項

イベント名 10/25 オンライン:ASEANメコン地域から欧州への鉄道一貫輸送サービスの取り組み ~サプライチェーンにおけるBCP対策としてのご提案~
日時 2024年10月25日(金) 16:00~17:10
会場 オンライン受講(Zoom)
参加対象者 荷主企業・物流部門 、物流企業 様
参加費/定員 参加費無料 / 定員100名

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティング部
担当:
浅沼(アサヌマ)
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5570-8048

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