(レポート)異業種混載による共同配送の可能性 ~持続可能な物流の探求~
株式会社朝日新聞社
メディア事業本部・ビジネス開発部
見山 遼 氏
新聞輸送ネットワークの紹介
朝日新聞社には、全国に25ヶ所の製造拠点(印刷工場)があります。ただ、すべて自社工場というわけではなく、他紙様の印刷工場に委託し、発行しているケースもあります。

当社のサプライチェーンは、印刷工場で印刷した後、トラックで新聞販売店(ASA:Asahishimbun Service Anchor)まで運び、ASAの方々がバイクや自転車で購読者様のポストまで運ぶというものです。
新聞の印刷や輸送に関しては、協調領域であると考えています。
トラックは基本的に自社でチャーターしていますが、過疎地域などにおいては他紙様との共同輸送を行う場合もあります。輸送トラックは、おもに「2トン・3トンアルミパネル車」や「4トンアルミパネル・ウイング車」「2トン・3トン幌車」などを採用しています。
新聞輸送網の例として、東京本社の輸送プロセスをご紹介します。
①新聞の輸送プロセス……各工場の印刷開始30分前までにトラックが工場に着車。印刷時間内(0時30分~2時)に工場を出発し、新聞販売店に納品(2時30分ごろ) ②協力紙や出版物の輸送プロセス……前日20時までに本社に持ち込み。そこから各工場への連絡便に搭載し、ASAの新聞コースに搭載し、新聞との混載で販売店まで輸送 |
新聞輸送には、以下の特徴があります。
①定常輸送……国内全域を配送エリアとしてカバー。事業者は専業が多く、稼働率は低い ②平均45km……製造拠点から放射状に固定ルート化。平均輸送距離は45kmと短い ③偏差5min……時間最優先の運行。納品指定時刻に対する年間のばらつきは、約5分程度 |
また、新聞輸送は稼働時間にも特徴があります。一般貨物が概ね夕方に集荷して翌日の午前中に納品するのに対し、新聞輸送には23時から翌2時ごろまでの朝刊輸送と、12時から15時ごろまでの夕刊輸送があり、一般貨物が動いていない時間帯に輸送を行っています。

新聞をベースカーゴとした物流事業
当社は、「新聞輸送車両の発着地点・積載量を見える化する」ことでベースカーゴとし、一般貨物と組み合わせた仕組み化を目指しています。

現状は、運送会社様と運送契約を締結し、距離制で運賃をお支払いしています。ここに一般貨物を組み合わせることでトラックの利用効率を上げ、荷主様、運送会社様、当社のそれぞれに経済的メリットをもたらすと考えています。新聞と一般貨物の組み合わせ方法としては、「朝夕刊との混載」や「朝刊後の時間活用」を想定しています。
前述したように、新聞輸送は一般貨物が動いていない時間帯に輸送を行っています。新聞輸送を活用すれば配送を2回転化することができ、輸送効率の向上を図ることができます。

たとえば「貨物を明日届けなければいけない。しかし集荷時間には間に合わない」ときなどに当サービスを利用すれば、一般貨物よりも遅い集荷時間で翌日早朝に納品(非対面)することができます。
当社が混載を進めるにあたっての取り組みをご紹介します。
懸念されているのは、「新聞の積み込み前に集荷する場合、新聞の着車時間に間に合わない可能性があるのでは?」という点です。この懸念を解消するために、当社では以下の方法を検討しています。
新聞輸送は一般貨物が動いていない時間帯に輸送を行っているため、走行時間を30~70%程度短縮する(※)ことができ、二酸化炭素排出量の低減にも役立ちます。当社はこれに加えて、輸送トラックをEV車に切り替えていくことで、より一層の環境負荷軽減にも取り組みたいと考えています。
※朝刊、夕刊同ルートの実走行時間比較より
事例ご紹介
当社の新聞輸送車両をベースカーゴとする共同配送の事例をご紹介します。
①介護施設向け調剤医薬品配送
複数の介護施設を運営する企業から委託を受け、介護施設向けに調剤医薬品を配送しています。以前は内製で輸送を行っていましたが、外注することで「作業時間の短縮や、輸送のための時間をほかの業務に充てられるようになった」と伺っています。

②アパレル用品の配送
新聞輸送の終了後、午前3時ごろにセンターに着車し、店舗向けの段ボールを積み込み、店舗に向けて配送しています。

このほか、加工食品や出版物、ドライアイス、生花、自動車部品・カーナビ製品など、さまざまな業界と取り引きを行っています。また、冷蔵品の配送についても実証実験をはじめるべく準備をしており、今後もいろいろな一般貨物の実績を増やしていきたいと考えています。
当社のサービスをご利用いただいたお客様からは、以下のような声をいただいています。

コロナ禍を経て、日本ではリモートワークの普及やECの市場規模拡大、置き配の普及など、働き方や暮らし方が大きく変化しました。そして物流業界は2024年問題を迎え、持続可能な輸送を実現するためには、積載効率を高め、環境に配慮しながら共同配送を行っていく必要があります。
新聞輸送網は、特定業種の商慣行の色がついていないホワイトな状態にあります。当社は、ご紹介した異業種混載を進め、オープンネットワークとすることで、2024年問題に対応するきっかけとなり、日本のインフラの一部として役立っていきたいと考えています。
株式会社朝日新聞社 メディア事業本部・ビジネス開発部 見山 遼 氏
募集要項
日時 | 2025年3月19日(水) 15:30~16:30 |
---|---|
会場 | 虎ノ門ツインビルディング 西棟 地下1階 カンファレンスホール |
参加対象者 | 荷主・物流企業・運送会社 様 |
参加費/定員 | 参加費無料 / 定員100名 |
本件に関するお問合せ
- お問合せ先:
- 株式会社シーアールイー マーケティング部
- 担当:
- 杉本(スギモト)
- メール:
- leasing_mail@cre-jpn.com
- 電話:
- 03-5570-8048