(レポート)デジタルフォワーディングの今 ~国際物流と貿易プロセスの可視化の重要性~
株式会社NX総合研究所
リサーチフェロー
田阪 幹雄 氏
株式会社Shippio
エバンジェリスト
川嶋 章義 氏
郵船ロジスティクス株式会社
SCS事業本部 SCS事業部 部長
冨地 暁 氏
基調講演/フォーワーダーのデジタル化動向(株式会社NX総合研究所 田阪 幹雄 氏)
●フォワーディングビジネスを取り巻くデジタリゼーションの現状
フォワーディングビジネスは、おもに「ロジスティクスSaaS」「ロジスティクスマーケットプレイス」「デジタルフレイトフォワーダー」の3種類に分けられます。

●ロジスティクスSaaS
ロジスティクスSaaSは、「コンテナが今どこにいるか」などを追うことができる、おもに貨物の動静管理を行うサービスです。
1980年代の米国において、コンテナやトレーラーの番号をカメラで取り込んでデジタルデータ化したのが始まりで、データベースにはコンテナ・トレーラーの出発地や目的地、現在置、所要時間などの情報が含まれていました。その後、1984年に海事法が発効されて米国発着の国際間貨物輸送が規制緩和され、1990年代以降にはそれまで各社が個別に開発していた動静管理システムが統合され、ロジスティクスSaaSが本格的に広まりました。
ロジスティクスSaaSの代表例としては、陸上と空の70%、海上では95%に相当する貨物を取り扱う企業群が参加する、国際コマースプラットフォーム「Infor Nexus」(旧:GT-Nexus)や、先進的なサプライチェーン可視化ソリューションとして市場での地位を獲得している「Project44」などがあります。
●ロジスティクスマーケットプレイス
ロジスティクスマーケットプレイスは、ひとつの画面上に複数の業者のサービスや金額を表示し、比較し、ブッキングできるサービスです。1999年に米国改正海事法が発行され、それまで紙媒体で連邦海事委員会に届出されていた船社やNVOCCのタリフ(運賃・料金・適用ルール表)をデジタルで公表するようになったことが始まりです。
ロジスティクスマーケットプレイスの代表例には、小規模EC事業者から大口荷主まで幅広い層を想定したソリューションを提供する「FREIGHTOS」などがあります。
●デジタルフレイトフォワーダー
デジタルフレイトフォワーダーは、キャリアの代理としてフォワーダーや荷主に輸送サービスを販売したり、売買を仲介するサービスです。
彼らが登場した背景には、船社およびNVOCCに対して「米国向け本船に積載されるすべての貨物に関する24項目にわたるデータを、船積みの24時間前までに米国税関に電送する」ことを義務付けた「24時間マニフェスト・ルール」(AMS)があります。
デジタルフレイトフォワーダーの代表例には、カスタマーエクスペリエンスの高いプラットフォームの提供により、顧客の支持を獲得し、 投資家からの期待値も高い。「Flexport」があります。
●プラットフォームとデジタル化
フォワーディング事業がデジタル化していくにあたっては、「プラットフォーム」の概念が重要です。
プラットフォームを直訳すると「演壇、舞台」を意味します。つまり何かの「場」を提供するのがプラットフォームであり、ビジネス領域でのプラットフォームは、ビジネスが行える環境や仕組みが用意されている、大勢の人が集まる場といえます。そのキーワードは「協業」「共通」「人が集まる」などであり、標準化が大前提となります。
●世界と日本におけるフォワーディングのデジタル化の展望
フォワーディングのデジタル化の根本には、荷主(ユーザー)の不満があります。

不満の解消には、フロントエンドの機能を充実させ、ユーザーエクスペリエンスを向上させることが重要。しかしそのためには、フォワーダーが業務プロセスのデジタル化・自動化を行い、すべての取引情報をデジタルデータ化し、バックエンドの機能を充実させることが不可欠です。
ただし、フォワーダーのデジタル化には、「既存ビジネスに依存し過ぎているため、新しいビジネスへ進むための意思決定ができない」「デジタル化は、機械化・自動化・省人化のみであると考えている」「変革(DX化)に対するきっかけの見極めができない」など、さまざまな阻害要因があります。

また日本においては特に以下のような阻害要因があります。これらをどのように変えていくかを考える必要があるでしょう。

株式会社NX総合研究所 リサーチフェロー 田阪 幹雄 氏
プレゼンテーション①/株式会社Shippio 川嶋 章義 氏
●会社概要
Shippioは、「Shippio Forwarding」および「Shippio Cargo」「Shippio Works」という3つの事業を展開しています。

当社のシステムには、「貿易管理に特化したコミュニケーション手段となり、情報の一元管理によって業務効率化を実現できる」という特徴があります。「貿易管理ができる」こと。これが既存の受発注・在庫管理システムとの違いです。
Shippioをお使いいただいている荷主企業さまの特徴は多岐に渡り、業種は製造業や商社、小売業、物流事業者など、企業規模は従業員数10名から1万名以上とさまざまです。

●貿易業務の現状とShippio導入の効果
当社から500社以上の企業さまにアンケートを取ったところ、「本船動静確認のシステム化を行えている」と答えた企業は5%。「案件管理をシステム化できている」企業は10%。「輸送状況をリアルタイムに把握できている」企業は7%でした。
これは、多くの企業がアナログな運用で国際輸送を管理しており、輸送状況をリアルタイムに把握できていないことを意味しており、サプライチェーンで「ムダムラムリ」が生じている可能性が高いといえます。
情報共有の方法はメールや電話で、データは紙やPDF、エクセルなど多岐に渡ります。そして社内外のコミュニケーションのハブである貿易業務担当者に負荷が集中しています。
この点、Shippioを導入すれば、外部FWDや海貨業者もクラウドサービスを利用することが可能になります。貿易に関わるすべての関係者とのハブとなり、コミュニケーションを一元管理でき、属人化を防ぐことができます。

Shippioには、おもに以下の特徴があります。
①輸送ステータスの確認……1日2回、複数の情報ソースから自動更新される ②案件ステータスの確認……案件ごとに輸送状況や書類を一元管理できる ③社内外のコミュニケーション……案件ごとにチャットでコミュニケーションを図れる ④貿易書類の管理・確認……案件ごとにWEB上で書類の管理や確認が可能 |
アナログ業務およびツール(Excelやメールなど)をクラウドサービスにリプレイスすることで、無駄な業務や時間を削減し、創出した時間でさらなる物流費効率化施策を実施していくことができます。
●これから求められるサプライチェーンの在り方
■緊迫する中東情勢
イランによるホルムズ海峡封鎖の可能性が話題になっていますが、イランにホルムズ海峡を封鎖する能力はあるものの、物理的な封鎖によるメリットよりも、「イラン自身が生活物資や輸出入に大きな打撃を受ける」などデメリットの方が大きいといえます。

「イランにとって最大原油輸出先である中国が強く反対しており、経済的な抑止力が働いている」「米第5艦隊がバーレーンに常駐しており、軍事的な抑止力が機能している」といった状況もあり、現時点での封鎖の可能性は低いと考えられます。
しかしながら、現在、ホルムズ海峡一帯に電波妨害(ジャミング)が起きており、一部の船社・船主がホルムズ海峡航行を回避し始めています。どこまでこの動きが広まるかを注視していく必要があります。
■不確実性時代における業務の在り方
第二次トランプ政権が誕生して以降、不確実性が高まっています。遡れば、パンデミック以降の「変化が前提となる時代」において、従来型の業務体制では変化に即応できず、企業リスクを高める要因になることは明らかです。

関税や安全保障政策への対応、突然のルール変更への対応策策定など、従来の業務では対応しきれません。自社でプラットフォームを作り、状況に即座に対応していくことが求められます。
またトランプ新政権が誕生し、中国を切り離すデカップリングが進行する中、
これまで以上にコーポレートガバナンスの強化が求められます。某国にて「現地調達率を満たしていない」と判断され、巨額の追徴課税が発生した事例もあります。「見えていない」ということがリスクであると認識し、過去書類ややり取りなどに関係者がシームレスにアクセスできる体制を構築しく必要があるでしょう。
これからの物流部門は、特に単なる業務部門、運び屋ではありません。
・社内外へ「インテリジェンス」を発信し、経営戦略の判断材料を提供 ・サプライチェーン全体のリスク把握し、シナリオ提示・判断支援を担う ・単なる調整役ではなく、価値創造の起点へ |
上記を満たす存在になり、企業競争力の中核を担う存在に変わることが求められています。
株式会社Shippio エバンジェリスト 川嶋 章義 氏
プレゼンテーション②/郵船ロジスティクス 冨地 暁 氏
●サプライチェーンマネージメントとは
【サプライチェーンおよびサプライチェーン管理について】
「サプライチェーン」という言葉は、さまざまな場面で使用されており、その定義やスコープは人や企業によって異なる場合があります。このような認識の違いが、サプライチェーン管理における障壁となることも少なくありません。
そこで、ここでは改めて「サプライチェーン」および「サプライチェーン管理」についてご案内いたします。
【サプライチェーンとは】
サプライチェーンとは、原材料の調達から製造、流通、販売、そして最終消費者に至るまでの一連のプロセスを指します。企業間の連携によって構成されるこの流れは、製品やサービスが市場に届くまでの「供給の連鎖」を意味します。
【サプライチェーン管理(SCM)とは】
サプライチェーン管理(Supply Chain Management:SCM)は、サプライチェーン全体を最適化し、効率的かつ効果的に運営するための管理手法です。これには、在庫管理、輸送計画、需要予測、供給計画、情報共有などが含まれます。
SCMの目的は、コスト削減、納期短縮、品質向上、環境負荷の軽減など、企業の競争力を高めることにあります。
【定義やスコープの違いによる課題】
サプライチェーンやSCMの定義が統一されていない場合、部門間や企業間での認識のズレが生じ、以下のような課題が発生する可能性があります。
• 業務範囲の誤認による責任の不明確化
• KPIの設定や評価基準の不一致
• 改善施策の方向性の不統一
• コミュニケーションの非効率化
これらの課題を回避するためには、共通の理解を持つことが重要です。
ロジスティクス管理とサプライチェーン管理においても範囲が違いますので、ご紹介します。

●不確実性の時代における物流の在り方
近年、不確実性がますます高まっており、私たちはすでに「確実に不確実な時代」に突入していると感じています。こうした状況下では、“予測する力”に依存するのではなく、“即応できる構造”を前提に思考を巡らせることが求められます。
このような変化に対応する鍵となるのが、デジタル化です。デジタル技術の活用により、物流は従来の“反応型”から、状況に応じて柔軟に対応できる“適応型”へと進化することが可能になります。
“適応型”の物流とは、予測不能な事態にも迅速かつ柔軟に対応できる仕組みを備えた構造であり、企業の競争力を支える重要な基盤となります。

●サプライチェーン上のお客様のロジスティクス管理に関するお悩み
サプライチェーン上のロジスティクス管理に関するお客様の悩みは多岐にわたります。目の前の課題を解決することは重要ですが、それが全体最適や最終的なゴールに繋がるかどうかを常に検証しながら進めることが不可欠です。
「デジタル化」や「DX化」をすれば前進できるという考え方もありますが、まずは業務プロセスの徹底的な見直しを行い、グローバル視点での標準化を検討した上での導入が重要です。
このようなアプローチは、初期段階では時間を要するかもしれません。しかし、結果的には全体最適を実現するための最短ルートとなると考えられます。

●各部門における視座・役割の違いとデータ管理の重要性
デジタル化やDX化を推進するにあたり、業務プロセスの整理と同様に重要なのが、「誰が、どのような視点で、どのように管理するか」を明確にすることです。
「あれもこれも見えると良い」という考え方ではなく、誰が、どの目的で、どのデータを閲覧・管理するのかを整理することが、業務の効率化と情報の有効活用につながります。
部門ごとの役割や視座の違いを踏まえたうえで、必要な情報を必要な人に適切に届ける仕組みづくりが、デジタル化の本質的な価値を引き出す鍵となります。

●サプライチェーンの課題・問題解決に向けて
サプライチェーンマネジメントに関する基本ステップをご紹介します。当社が提供するサプライチェーン管理や課題解決の取り組みも、このステップに基づいて運用されています。 サプライチェーンの流れをグローバルで共通言語により管理することで、全体最適に向けた課題解決をスムーズに進めることが可能になります。また、共通の用語を用いて対応することで、誤認やコミュニケーションの非効率を防ぎ、業務の精度とスピードを向上させることができます。

このステップの中のどこに問題が起きているのかをクリアにし、解決に導く事が重要です。
●SCM可視化ツールご紹介
当社・郵船ロジスティクスは、サプライチェーンの課題・問題を解決するための、輸送可視化ツール
「Yusen Vantage|Performance」を提供しています。
当社の強みは、"可視化ツール"と"コントロールタワー(プロフェッショナルスタッフ)"を組み合わせることで、お客様のサプライチェーン管理および課題解決に向けた包括的なサポートを提供できる点にあります。
可視化ツールにより、サプライチェーン全体の状況をリアルタイムで把握し、課題の早期発見と対応が可能になります。
一方、コントロールタワーでは、専門知識を持つスタッフが状況を分析し、的確な判断と改善提案を行うことで、より高度な運用支援を実現します。
この二つの仕組みを連携させることで、現場の課題に即応しながら、全体最適に向けた持続的な改善を推進することが可能です。

・マニュアルでのエクセル作業を排除し、エンドツーエンドの可視性を実現 ・発注の意思決定をサポートし、倉庫での過剰在庫や不足在庫を回避 ・不要な航空輸送で最小限に抑制 ・将来の在庫不足を予測し、在庫レベルを調整支援を実施 |
Yusen Vantage Performanceはモジュール型のカスタマイズ可能なITソリューションです。調達からラストワンマイル配送にいたるまで、お客さまのシステムの他、サプライチェーンに関わる全ての関係者や外部データソースを連携させることで、単一プラットフォーム上でサプライチェーン全体の情報・書類の一元管理と効率的な管理を実現します。お客さまのニーズごとに必要な機能を組み合わせてご利用いただけます。お客さまのビジネスの拡大に合わせて機能を拡張していくことも可能です。
郵船ロジスティクス株式会社 SCS事業本部 SCS事業部 部長 冨地 暁 氏
募集要項
イベント名 | 6/20 来場型セミナー:デジタルフォワーディングの今 ~国際物流と貿易プロセスの可視化の重要性~ |
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日時 | 2025年6月20日(金) 14:00~17:00 |
会場 |
虎ノ門ツインビルディング 西棟 地下1階 カンファレンスホール (東京都港区虎ノ門2-10-1) google map |
交通 | 東京メトロ日比谷線 虎ノ門ヒルズ駅 「A2a出口」より徒歩約3分 |
参加費/定員 | 参加費:無料/定員:100名〈先着順〉 |
本件に関するお問合せ
- お問合せ先:
- 株式会社シーアールイー マーケティング部
- 担当:
- 杉本(スギモト)
- メール:
- leasing_mail@cre-jpn.com
- 電話:
- 03-5570-8048