(レポート)花王が挑むサプライチェーン改革 ~ムリ・ムダ・ムラのない持続可能な物流の実現~
花王株式会社
SCM部門ロジスティクスセンター統括部長
山下 太 氏
花王のサプライチェーン概要
花王グループの生産拠点は、東京、川崎、和歌山など国内に10ヶ所あり、それぞれの工場で衣料用・台所用・住居用の洗剤やシャンプー、リンス、紙オムツ、入浴剤、ケミカル製品などを製造しています。
一方で物流拠点は全国に31ヶ所あります。お客さまのご注文に合わせて出荷しており、受注後24時間以内に配送する体制を構築しています。
当社の販売・物流フローは以下のとおりです。

メーカー物流は花王SCM部門が、卸物流は花王グループのカスタマーマーケティングが、小売物流は花王システム物流が担っており、運営は協力会社と花王ロジスティクスが担当しています。
メーカー物流における積送は、トレーラーや貨物鉄道など1日530台規模で行っており、卸物流から小売店にかけては小売共配センターによる配送に加え、1日1000台規模で小型車による配送も行っています。
持続可能なサプライチェーンの深化 ~需要予測による最適化~
花王グループは「よきモノづくり」という考えのもと、顧客・生活者の立場に立って「情報の流れ」をとらえ、商品設計・事業計画を立案し、生産・供給の「モノの流れ」を全体最適でとらえ、サプライチェーンを構築しています。
昨今は、小売店からの受注データだけではなく、SNSなどに溢れる情報も活用して需要予測を行い、生産計画を立てています。この需要予測を精緻化することで、各部門が同期連携しながら計画を立てて進めることができます。

需要予測においては、機械学習モデルを用いて新商品の出荷予測などを行い、データ・サイエンティストが分析しています。当社は、商品製造のための材料発注を発売日の約4ヶ月前に行っていますが、発売日から約3ヶ月間の予測ができれば、この材料発注を最適化することができます。
これらの取り組みを行った結果、新製品の生産量の精度が85%向上し、原材料発注をよりスムーズにすることができました。
また当社は需要予測だけでなく、輸配送のスケジューリングや倉庫内作業最適化、ナレッジの共有など、デジタルサプライチェーンの実現に向けてさまざまな取り組みも行っています。

持続可能なサプライチェーンの深化 ~物流改革への挑戦~
花王グループは「サステナブルなコネクテッドロジスティクスの実現」を目指しています。そのためにもまずは、他メーカーや物流パートナー、他卸売業、販売店といった社外とつながり、次に拠点・在庫・輸配送や技術分野でデジタル空間とつながり、社会とつながって課題を解決していきたいと考えています。

中でもコストインフレ対策や「運べなくなる」などの社会課題の解決に向けては、いかに「共創型輸送ネットワーク」を構築するかが重要です。
そこで当社は「商流・物流におけるコード体系の標準化」「物流資材の標準化および運用」「取引透明化に向けた商慣習改革」「企業間データ共有による物流効率化」など、共創型ネットワーク実現に向けてアプローチすることで、2030年までにエリアごとに共同倉庫・配送を行い、積載率の向上を目指しています。

共創型輸送ネットワークを実現するためには、コスト構造の見える化と標準化・デジタル化の推進が重要なポイントです。現場とコミュニケーションを図りつつ、以下の取り組みを始めています。
・データ可視化による荷待ち、荷役時間の削減 ・納品データ連携による共同配送、検品レス ・物流サービス基準の導入(納品条件、付帯業務など) ・労働力不足に対応した自動化設備の導入 ・搬送容器の共同利用、回収によるCO2削減 |
中でも「荷待ち、荷役時間の削減」には力を入れており、「積込み・荷下ろし時刻の指定」「入出庫能力増強」「営業時間の周知」「積込み前日のオーダー発行・ピッキング・荷揃え」などを行うことで、1時間超の待機台数を1%未満とする目標を立てています。

持続可能なサプライチェーンの実現に向けては、生産・物流機能一体型拠点へ変革することも重要です。
2023年、当社は豊橋工場内に「製品の入庫から出庫までを完全自動化」「工場・卸機能物流拠点との一体運営」「場内トラック運行のスマート化」などの特長を備えた次世代倉庫を新設し、生活者までのサプライチェーンを最適化しました。

持続可能なサプライチェーンの深化 ~循環型社会を目指した活動~
花王グループはリサイクル技術の開発や使用時の環境配慮など、循環型社会に向けてさまざま取り組みを行っています。

特に当社はプラスチックを多く使用した製品をつくっているので、製品開発から流通、回収のサイクルをつくり、再資源化することを心がけています。
たとえば回収に関しては、自社の配送ネットワークを活用しつつ、自治体と協働し、静脈物流を活用した循環型物流を確立。プラスチックの回収・選別コストとCO2削減を実現しています。

政府は、2040年までにフィジカルインターネットを実現すべく、取り組みを開始しています。花王グループもさまざまな社会課題の解決に向けて、イノベーションを活用し、多様な企業とコラボレーションしながら、フィジカルインターネットの実現に向けてチャレンジしていきたいと考えています。
花王株式会社 SCM部門ロジスティクスセンター統括部長 山下 太 氏
募集要項
イベント名 | 8/6 来場型セミナー:花王が挑むサプライチェーン改革 ~ムリ・ムダ・ムラのない持続可能な物流の実現~ |
---|---|
日時 | 2025年8月6日(水) 16:00~17:00 |
会場 |
虎ノ門ツインビルディング 西棟 地下1階 カンファレンスホール (東京都港区虎ノ門2-10-1) google map |
交通 | 東京メトロ日比谷線 虎ノ門ヒルズ駅 「A2a出口」より徒歩約3分 |
参加費/定員 | 参加費:無料/定員:100名〈限定│先着順〉 |
本件に関するお問合せ
- お問合せ先:
- 株式会社シーアールイー マーケティング部
- 担当:
- 杉本(スギモト)
- メール:
- leasing_mail@cre-jpn.com
- 電話:
- 03-5570-8048