(レポート)取引先と共創する物流イノベーション ~デジタル化と配送効率化の成功事例~

CREフォーラム レポート
資生堂ジャパン株式会社

(レポート)取引先と共創する物流イノベーション ~デジタル化と配送効率化の成功事例~

資生堂ジャパン株式会社
SJロジスティクス部 グループマネージャー
川村 修 氏

SJロジスティクス部
小笠原 歩美 氏

SJロジスティクス部
吉田 霞 氏

資生堂ジャパンのビジネス・物流の規模と特徴

資生堂ジャパンは「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」を企業ミッションとする、日本発のグローバルビューティーカンパニーです。1872年の創業以来、美の可能性を広げ、新たな価値の発見と創造を行うことで、社会と地球が美しく健やかに持続することに貢献しています。

当社の売上高は全世界で約1兆円、その内30%程が国内になります。店舗数は3万7500店。取り扱いアイテム数はおよそ3500skuあり、3割の製品を当日中に、残り7割を翌日中に配送しています。

その中でも物流は、当社製品を店舗に届ける重要な工程を担っています。物流工程においては、生産から保管まで「オリコン」に入れて管理しています。荷姿が統一されているため、作業の標準化や自動化を行いやすいのが特徴です。また化粧品を運ぶ物流の歴史が長く、作業効率化の取り組みを常に行ってきているため、無駄をなくした作業になり生産性が良いのも特徴です。

当社は日本国内に工場を5ヶ所、物流センターを2拠点、商品センターを7拠点構えています。物流フローはおもに東西で分けており、それぞれの物流センターから商品センター、そしてデパートやドラッグストアなど得意先に向けて製品を配送しています。

取引先と共創した取り組み成功事例① : 取引先への納品における1梱包あたりの商品入数拡大に向けた取り組み

国内の環境や意識の変化を「改善のチャンス」と捉え、物流領域を超えて共創・協働した事例をご紹介します。始めにご紹介するのは、取引先への納品における1梱包あたりの商品入数拡大に向けた取り組み事例です。

当社は、アイテムごとに「函(はこ)」という受注単位を設定しています。物流センターでは、この「函」単位でピッキングし、店舗からの注文ごとに商品混載で段ボール「梱(こうり)」に梱包しています。

そこで本取り組みでは、梱に入る函の数に着目し、なるべく積載効率を上げることを目的とし、さまざまな分析を行いました。

具体的施策の検討にあたり、チャネル別の配送効率の違いを調査したところ、ドラッグストアと化粧品専門店の梱当たり函数は、他チャネルを含めた平均を下回っていると判明しました。ドラッグストア・化粧品専門店は店数と売上の大部分を占めるため、このふたつを改善活動のターゲットに決定。そのうえで、より詳細に分析と対策を行いました。

■ドラッグストアの分析と対策

ドラッグストア主要企業について、「配送頻度」と「梱あたり函数」の関係性を調査したところ、週2回配送している取引先と比較すると、週4回配送している取引先では、年間平均梱当たり函数が32.8%低い結果となりました。そこで配送頻度が多い取引先に、発注回数の低減を提案することにしました。

提案を進めるうえでは、①取引先の理解を得ることと、②発注回数の制御において店舗に負担をかけないことが課題でした。

①については、分析を進め、注文量の50%以上が月曜日に集中していると判明したため、週5日配送から週3日配送への切り替えをすることで、各配送日の物量を平準化し、月曜日の配送量を低減、店舗在庫も保管スペース内で対応可能であることも確認して進めました。
また当社営業サイドへも数字を示すことで理解を得ることができました。

②については、取引先の発注システムと、当社の受注システム間で、発注/受注をまとめて処理するシステムサポートを実施することで、店舗に負荷をかけることなく、業務効率化を実現しました。
これらの対策の結果、梱あたり函数が約40%、出荷梱数が約27%改善しました。

また、同一店舗内の売場ごとに梱を分けて納品を行う「カテゴリー納品」の廃止を提案することにし、梱あたり函数が約44%、出荷梱数が約34%改善しました。

■化粧品専門店の分析と対策

化粧品専門店への配送は、売上額が基準以上の店舗へは「毎日配送」(週5~6回)を行い、それ以外は「隔日配送」(週2~3回)でした。コロナ禍で売上額が基準を超えない店舗も出てきたので、配送頻度を整理し、隔日配送を増やしました。また化粧品専門店とデパートを対象に、土曜日の出荷を実施していましたが、他曜日に比べて出荷数量が少ないため、これを廃止しました。

ドラッグストアと化粧品専門店への対策の結果、全体で梱あたり函数が約11%改善し目標を達成。非常に大きな効果を確認できました。

●取引先と共創した取り組み成功事例② : DXで物流・店舗双方の生産性改善

次に、DXを用いて物流/店舗の双方の生産性を改善した事例をご紹介します。

本取り組みの背景には、物流センターにおいて、「受注、配送にともない、大量の紙伝票出力と仕分け作業を継続して実施している」という課題がありました。具体的には、紙伝票を年間630万枚出力していました。これは全オーダーの約半分に相当します。そしてこの紙伝票を仕分けるために、70名(10拠点×7名)の担当者に稼働してもらう必要がありました。

また、EDI(文書を電子データとしてやり取りするシステム)を導入していない店舗に対して紙伝票を発行する必要があり、店舗は、「紙伝票と納品数量を検品する作業が発生する」「紙伝票の情報の取り扱いに注意が必要」「コストがかかる」などの課題を抱えていました。

これらの課題を解決するため、「紙伝票をなくし物流を改善する」「電子伝票を導入し、店頭検品の作業を効率化する」などの取り組みを開始。店頭と物流を繋ぐ「架け橋」になるため、Webブラウザアプリ「Kakehashi」を開発しました。

「Kakehashi」には、おもに以下の機能が搭載されています。

■検品機能

・各店舗の納品予定データから、検品用データを作成
・商品のバーコードをスキャンして、納品数量の照らし合わせを行う 

■伝票閲覧とダウンロード機能

・納品伝票と返品伝票のデジタル化
・伝票はPDF形式でダウンロード、保存、印刷が可能 

展開スピードを最速にするために、店頭での実態調査を進めつつ、アプリ開発を実質4ヶ月で実施。2024年6月より一部店舗で先行リリースを行いながら、店頭スタッフや営業からフィードバックを受け、アプリの改修を行っていきました。

導入を開始し、物流面の効果だけではなく、店舗からは「検品作業を効率化でき、その分接客時間を増やすことができた」
「接客時間の増加により、売上向上への効果が出ている」などの声をいただけました。

現在、Kakehashiアプリは、商品の品切れ情報や店舗へのご案内が掲載可能な「お知らせ機能」を新機能として追加しています。また今後は「発注・棚卸」の機能や、「効率良く返品回収を行う」ための補助機能の追加を視野に入れ、さらなる開発を進めていきます。

●今後の取り組みに向けて

取り組み事例①には、「しっかりとした数字をもとに説明していけば、関係者と課題を共有し、協議を有意義に進められる」という学びがあり、取り組み事例②には、「物流が持つ情報を事業全体で活用することで、企業や社内部門の垣根を越えて効率化を行うことができる」ことが見えた事例であったと思います。

物流は競争の場ではなく「共創・協働の領域」であり、国内の環境や意識の変化は、改善のチャンスと捉えています。
当社は今後も物流領域を越えて、営業や関連部門、店舗と連携して取り組みを続けていきます。

資生堂ジャパン株式会社 SJロジスティクス部 グループマネージャー 川村 修 氏
資生堂ジャパン株式会社 SJロジスティクス部 小笠原 歩美 氏
資生堂ジャパン株式会社 SJロジスティクス部 吉田 霞 氏

募集要項

イベント名 10/3 来場型セミナー:取引先と共創する物流イノベーション ~デジタル化と配送効率化の成功事例~
日時 2025年10月3日(金) 15:30~16:30
会場 虎ノ門ツインビルディング 西棟 地下1階 カンファレンスホール
(東京都港区虎ノ門2-10-1) google map
交通 東京メトロ日比谷線 虎ノ門ヒルズ駅 「A2a出口」より徒歩約3分
参加費/定員 参加費:無料/定員:100名〈先着順〉

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティング部
担当:
杉本(スギモト)
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5570-8048
 
 

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