EC物流倉庫の運営における数値指標の重要性、省人化機器導入時のポイントを解説

CREコラム

EC物流倉庫の運営における数値指標の重要性、省人化機器導入時のポイントを解説

この記事では、EC物流倉庫の効率的な運営管理を行うにあたって、着目すべき数値指標と昨今の人手不足や人件費上昇を補う自動化機器の導入のポイントについて解説します。

現在、既にセンター長や物流管理者に携わっている方やこれからその役割に就く方、また、運営管理する立場を目指している方は、ぜひ参考にしてください。

EC物流運営における数字の重要性

EC物流の運営において、数字を管理し、分析することは効率的な運営と利益の確保に直結します。ECの販売には予約、キャンペーン、クリスマスや母の日などのイベント日、マーケットプレイスが実施する販促イベントなどがあり、これに対応する物流倉庫は物流品質を確保しつつ、物量の波動にいかに対応するかが重要な要素になってきます。波動に対応できなければ、繁忙期には出荷が遅れ、顧客満足度の低下につながります。
そのため、物流倉庫は物流品質を確保しつつ、物量の波動に柔軟に対応する能力が求められます。

同時に、ECにおける物流コストの責任を担う役割として、日々の業務改善活動も欠かせません。物流品質の確保、物量の波動への柔軟な対応、日々の業務改善活動などの取り組みを効果的に行うためには、適切な数値指標の設定とその分析が不可欠です。
ここでは、センター長や物流管理者が特に注目すべきいくつかの重要な数値指標について解説します。

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EC物流運営における数字とは

EC物流倉庫の運営には、多岐にわたる数値指標が存在します。これらの指標は、安全性、品質管理、生産性といった基本的な要素から、減価償却費などの会計的側面まで、幅広い分野と様々な粒度で構成されています。

ここでは、製造業で培われた工業簿記の概念を応用した数値管理手法について詳細に解説します。

損益分岐点

損益分岐点

損益分岐点は、売上が固定費と変動費をカバーし、収益がゼロとなる水準を示すものです。物流業務では、保管コストや入荷・出荷作業にかかる人件費、倉庫賃料などの固定費や運送費や荷役作業費、梱包費・加工費などの変動費が発生します。EC物流の業務量は季節や販促の影響を受けやすいため、損益分岐点を把握していれば、業務の増減による収益への影響を予測しやすくなります。損益分岐点を把握することで損益分岐点を下回らないための施策や分岐点自体を下げる施策を講じるなど、経営視点で倉庫運営を行うことが出来ます。

また、副次的効果として経営視点で運営を行うことは自社の経営層との倉庫運営におけるコミュニケーションも円滑にすることができるでしょう。
在庫量、入出荷の作業量、倉庫で働く人数も日によって変動している物流倉庫であるからこそ物流管理において何がどう作用しているのかを把握することが大切です。

直接作業工数と間接作業工数とその比率

直接作業工数と間接作業工数とその比率

直接作業工数とは、物流作業において直接的な作業に要した時間を指します。直接的な作業には、入荷時の商品検品作業や出荷時のピッキング作業、梱包作業などが挙げられます。一方で、間接作業工数は直接作業と異なる間接的な作業を指します。倉庫現場によって定義は異なりますが、管理業務や在庫調整や商品の棚移動、休憩時間、倉庫内の清掃や後片付けなどが挙げられます。 直接作業工数、間接作業工数を合わせてここでは“直間工数”と呼びます。

直間工数の把握は、物流現場の効率化や人件費の最適化に直結します。この2つの工数比率を定期的に分析することで、作業の効率性や業務改善点が見えてきます。例えば、間接作業工数が増加している場合、非効率な管理や無駄な手続きが増えている可能性があります。間接作業工数は作業を行う上で補助となるものなので、完全にゼロにすることは直接作業の非効率化を招きます。 倉庫現場や構成する作業によって適切な工数比率を把握することで管理者としての次のアクションがみえてくるでしょう。

操業度

操業度は、施設やリソースがどの程度の効率で稼働しているかを表す指標です。製造業においては生産に用いる機械の稼働指標に使用されていることかと思います。
業務量の変動の多い倉庫運営においては、操業度を把握することで自身の倉庫運営状況が適正であるかどうかの判断が容易になるとともに、予定コストに対する差異に対して適切に対処していくことができるでしょう。
また、物流倉庫においては自動化機械や、設計上保管として定義している床の稼働率とすると利用しやすい指標となるでしょう。

倉庫の設計時や日々の作業計画を立てる上で必要稼働率を設定し、実際に日次や週次、月次などの任意のタイミングで操業度の差異を把握します。
中長期単位で業務量の計画が難しいECにおいて、実際の作業ではサービスレベルを遵守し生産性も規定のレベルに到達しているにも関わらず、P/L上では到達していないということもあるかと思います。

会計上の固定費を管理上においては変動数値としてみることで自身の倉庫の向かうべき姿と現在地とのギャップを正確に捉えることができ、より効率的な倉庫運営の実現に向けた改善策の立案に役立つでしょう。

倉庫内での収益化面積

倉庫内での収益化面積とは、保管エリアや作業スペースの割合、固定設備の設置場所など役割毎の収益を産む面積を指します。収益を最大化するためには、保管スペースと作業スペースのバランスが重要です。例えば、保管スペースが大きすぎると作業スペースが狭くなり効率的な作業がしにくくなるなど、適切な比率を設定することが求められます。

自身の倉庫が保管型か通過型か、または取り扱う商品の回転数などの商品特性によって収益を構成する数値が異なります。最適なスペース配分を実現することが無駄のない効率的な倉庫運営の基盤となるともいえます。

また、緊急時や繁忙期への対応を想定して作業スペースを必要以上に確保していないか確認することも、スペース配分の最適化において重要な観点となります。

施設内管理P/L作成のススメ

EC物流において、施設内での管理専用のP/L(Profit and Loss、損益計算書)を作成することをおすすめします。これは財務会計のP/Lとは異なり、物流施設内での収益とコストを詳細に把握するためのものです。物流施設のP/Lを個別に管理することで、どの業務やエリアが利益を生んでいるか、逆にどこにコストがかかりすぎているかを明確にできます。
さらに前述までの操業度や直間工数などを用いることで改善点を迅速に把握し、適切な対策を講じることが可能になるとともに、現場運営を担うチーム内での意識の向上にも役立つでしょう。

省人化機器導入時のポイント

物流現場での自動化や省人化は人手不足やコスト削減のために重要な戦略です。ここでは機器の導入検討時において機器そのものの能力や効果以外の点で注意すべきポイントを解説します。

施設への影響を与えるものか否か

省人化機器の導入を検討する際、機器が建物や施設にダメージを与えるものかどうかを確認することが重要です。アンカーを床に打ち機器を固定する等の初期設置時の観点もあれば、運営中の観点で重量のある自動搬送ロボットや大型の荷物リフターなどは、頻繁な移動や作業により床や壁に負荷がかかるということもあり得ます。また、導入後に撤去する場合の現状復帰にかかるコスト、復帰に要する期間も考慮するとよいでしょう。

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建物の利用可能期間と機器の利用可能期間のバランス

導入する機器の耐用年数と建物の利用期間とのバランスも重要です。例えば、建物があと10年しか利用できない場合、20年耐用の機器を導入しても、その後の移設コストがかかる可能性があります。逆に建物の方が機器よりも長い場合においては、同じ機器の入替あるいは新たな機器を導入することも想定されます。

したがって、機器の選定にあたっては、施設の利用予定期間に見合った耐用年数の機器を選ぶことはもとより、導入機器単体だけではなく建物期間を考慮して倉庫の全体像を考慮することが求められます。

投資対効果の算出時の留意点(人件費上昇率の考慮)

省人化機器の導入検討には投資対効果を計算すると思います。この際、計算に組み込む費用や効果には時間軸を入れることでより精度の高い計算をすることができます。

例えば機器のメンテナンスコストや人件費です。

メンテナンスコストは車と同じく機器の導入当初は大きく発生するものではありません。ただし使用年数や使用度合いによって部品交換をはじめとして徐々に負担が大きくなってきます。新品を前提としたメンテナンスコストでの算出はこの要素が漏れてしまうので注意が必要です。

人件費についても将来的な人件費の上昇率を考慮することが重要です。時給水準の上昇傾向が今後数年間継続することが見込まれる場合、現時点での投資効果が一見低くても、将来的には十分な投資効果が得られる可能性があります。

これらのように時間の経過によってコストや効果の変動可能性がある要素については、あらかじめ将来予測も含めたROI(投資対効果)を計算することで適切な導入判断が出来るでしょう。

まとめ

今回は物流倉庫の運営管理の視点で重要な数値指標や機器投資の際のポイントを紹介しました。

EC物流倉庫の効率的な運営には、損益分岐点、直間工数、操業度、収益化面積などの数値指標の適切な管理が不可欠です。特に固定費の大きな割合を占める倉庫賃料は、収益性に直接影響を与える重要な要素となります。そのため、事業規模や成長段階に応じて、立地、スペース、設備などを総合的に検討し、最適な倉庫を選定することが重要です。

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