九州地方の物流特性と展望:九州北部の物流集積地を解説

CREコラム

本レポートでは、九州地方の物流特性と今後の展望について解説する。従来、九州地方は地理的特性から島内消費を中心とした物流モデルに加え、近年では成長する物流需要に対応する新たな開発計画を背景に進化を遂げている。本レポートでは、国内の主要経済圏と比較した九州地方の物流特性から、物流網の特性や今後の計画、九州北部を中心とした各物流エリアの特性や課題を通じて、九州地方の物流ネットワークの未来を探る。

九州地方の物流特性と展望:九州北部の物流集積地を解説

目次

九州地方の物流事情
 首都圏・関西圏と比較してみる、九州地方の物流の特性
 九州地方の物流網
 物流施設の供給状況
九州北部の各物流エリアの特性
 福岡エリア
 福岡港エリア
 鳥栖エリア
九州北部における物流の今後
 TSMC熊本進出の影響:倉庫需要増加による物流集積地の拡大
2026年10月竣工予定 ロジスクエア鳥栖Ⅱについて

九州地方の物流事情

首都圏・関西圏と比較してみる、九州地方の物流の特性

九州地方は地理的に本州から隔てられており、主要経済圏である首都圏や関西圏への輸送距離が長いため、輸送効率が低下しやすい。
この背景には、リードタイムの問題が含まれている。この問題は、首都圏や関西圏から九州へ物資を運ぶ際に特に顕著であり、ドライバーの人件費を含む高額な輸送コストや時間的な制約に加え、渋滞などによる配送遅延リスクが複合的に影響している。このような輸送上の問題があるため、九州に集積する荷物は主に九州内や近接する山口県に分配されることが多く、結果として島内消費が中心となる傾向が強くなっている。
さらに、首都圏や関西圏と比較すると、分配先の地域全体の消費力は相対的に小さく、それに応じて物流規模も小さいという特徴がある。これらの要素から、九州地方の物流は地域内で完結する割合が高く、広域分配よりも効率的な島内消費を中心とした物流モデルが形成されている。

九州地方の物流網

九州地方の物流網
九州地方の主要道路事業(案)|九州地方整備局

九州の道路交通ネットワークは、南北を結ぶ「九州自動車道」(福岡~鹿児島)と、東西を横断する「九州横断自動車道長崎大分線」(長崎~大分)、2026年度完成予定の「中九州横断道路」(熊本~宮崎)が交差して構成されている。また、「九州地方新広域交通ビジョン・計画」が策定され、今後20年〜30年の間で九州を周遊する「九州リングネットワーク」と呼ばれる広域道路ネットワークの構築が計画され、中長期的に物流効率化に向けた物流ネットワークが進んでいくと考えられる。

鉄道貨物輸送は、本州との主要な接続点である福岡貨物ターミナル駅を中心に、門司・鳥栖・熊本などの主要貨物駅を結ぶ鹿児島本線によって支えられている。関門トンネルを経由し、本州と直結する福岡県は、鉄道コンテナ利用貨物の背後圏発着の80%以上(※1)を占めており、九州の物流の中心が福岡に集中していることがわかる。近年は、産業構造の変化や道路整備が進んだことによって、トラック輸送の割合が高まり、鉄道貨物の輸送割合が減少傾向にある。

九州管内の港湾に目を向けると、北九州港、博多港、長崎港、鹿児島港、大分港など九州を取り囲むように港湾が点在している。九州からソウルと大阪、上海と東京がほぼ同じ距離に位置していることから、北九州港や博多港では国際貿易拠点としての役割が大きく、韓国・中国との輸送が盛んである。また、道路ネットワークにおいても、コンテナ輸送の支援を目的に大型コンテナトラックに対応した道路交通機能の強化を図る計画がされている。

また、航空貨物の拠点は各県に存在しており、北九州空港・佐賀空港では滑走路延長計画が進行、予定されている。滑走路を延長することで、大型機による長距離国際貨物便の搭載容量が拡大するなど就航の利便性を高め、国際貨物需要を取り込むべく機能を強化する動きをみせている。

九州の物流ネットワークの状況を踏まえると、福岡県が鉄道貨物輸送の主要拠点である福岡貨物ターミナル駅を中心に九州全域の鉄道コンテナ利用貨物の80%以上を占めていることや、北九州港・博多港などが国際貿易拠点として機能し、中国・韓国との輸送が盛んであることから、九州北部へのモノの集積が顕著であることがわかる。
また、令和4年度の九州運輸局によって算出された1~3類倉庫の庫腹量(※2)の推移においても福岡県が九州全域の約62%、佐賀県が約14%を占めており、物流施設の7割以上が九州北部に偏っている。このような物流施設の集積は、九州北部の主要拠点を通じて九州全域を効率的にカバーできる地理的利便性が要因として挙げられる。

物流施設の供給状況

物流施設の供給状況
九州エリアにおける物流施設の需要と供給
出所:倉庫・物流不動産 マーケットレポート(β版) Ver.202412

弊社の調査によると、福岡県・佐賀県を中心とする九州エリアにおける総賃貸面積1万㎡以上の物流施設の供給は、これまでBTS倉庫(入居企業のニーズに合わせて設計・建設される専用型物流施設)が中心であり、供給と需要がほぼ均衡していたため、空室率は0.0%に近い状態が長く続いていた。しかし、2022年以降、毎年9万坪を超える新規供給や大型マルチテナント型倉庫の竣工が相次ぎ、物流市場に大きな変化をもたらした。
特に2024年には、新規供給量と総需要が調査開始以来最大となり、それぞれ10万坪を超える規模に達した。新規供給は増加しているものの、総需要も着実に拡大しており、九州エリアの物流市場は成長期にあると言える。
九州エリアのストック量(総賃貸面積)は首都圏や関西圏と比較して少ないため、新規供給による空室率への影響が大きいという特徴がある。2025年は約6.7万坪の新規供給が計画され、新規供給量は落ち着く見込み。年間約9万坪の堅調な需要が継続していることから空室率も落ち着き、市場全体としては安定した成長を維持すると推測される。

九州北部の各物流エリアの特性

九州北部の物流エリア
九州北部の物流エリア

福岡エリア

福岡エリアは九州最大の消費地であり、人口が集中していることから物流需要が非常に高い地域である。物流施設は福岡インターチェンジ周辺や福岡空港、博多湾など交通の要衝に集積しているが、調整区域が多いため倉庫不足が深刻化している。この状況を受けて、物流施設の開発は徐々に西側へ広がりつつある。

福岡港エリア

福岡港エリアは老朽化した倉庫が多い一方で、再開発が進んでおり、特に人工島「アイランドシティ」の整備が注目されている。2024年には九州最大規模の物流施設が竣工し、2025年には新たなマルチテナント型倉庫が完成予定である。また、2030年には鉄道輸送とトラック輸送を結びつけるレールゲートが操業開始予定であり、モーダルシフトの促進や港湾機能との連携強化が期待される。これにより、アイランドシティを含む福岡港エリアは国際物流拠点としての役割をさらに拡大する見通しである。

鳥栖エリア

鳥栖エリアは、九州自動車道と九州横断自動車道長崎大分線が交わる交通の要衝であり、九州全域への配送拠点として優れた立地を誇る。このエリアには食品や飲料などの製造業に併設された物流センターが多く立地するほか、製薬会社も集積している。これにより、医薬品や化粧品の生産拠点としても重要な役割を果たしている。一方で、開発用地が少ないという課題があり、新たな産業団地「サザン鳥栖クロスパーク」が2030年度の操業開始を目指して開発されている。この団地では物流施設や製造業向け設備の整備が進む予定であり、物流量の増加が期待されている。

物件一覧 福岡県の貸し倉庫・賃貸倉庫

九州北部における物流の今後

TSMC熊本進出の影響:倉庫需要増加による物流集積地の拡大

九州北部の総賃貸面積1万㎡以上の物流施設の分布と変遷
九州北部の総賃貸面積1万㎡以上の物流施設の分布と変遷

半導体関連産業の成長に伴い、これまで保管できていたものが置けなくなり、倉庫利用が押し出されているとの声を地場の物流会社から聞く。
TSMCは2021年11月に熊本への進出を発表し、2022年4月に第1工場の建設を開始した。同工場は2024年12月に量産を開始し、第2工場は2027年末までに稼働予定である。さらに、三菱電機やソニーセミコンダクタなど他の企業も九州各地で設備増強計画を進めており、熊本や福岡、佐賀などで新たな工場建設や既存施設の拡張が行われている。このような動きにより、2024年10月までの半導体製品生産額は13か月連続で前月比増加を記録している(※3)ことから、物流量にも影響していることが示される。
半導体産業の成長と連動して、施設利用面積の増床を検討する物流企業も多い。物流施設利用に関する調査によると、福岡・佐賀エリアの物流事業者の23%が物流施設利用面積を増加させる(※4)と回答しており、この割合は全国でも2番目に高く、このエリアの物流需要は旺盛であることが言える。
一方で、九州北部エリアにおいては新たな開発用地が不足しており、この影響で物流施設は既存の物流集積地から周辺地域へと広がりつつある。
こうした状況に加え、特に道路交通網の発達による地域間輸送網の効率化や、半導体関連製品の輸出拡大が見込まれることによる新たな産業集積地への対応で、九州北部に集中していた物流施設も九州中部・南部へと拡張される動きが進んでいくと見込まれる。

2026年10月竣工予定 ロジスクエア鳥栖Ⅱについて

2026年10月竣工を予定する「(仮称)ロジスクエア鳥栖Ⅱ」は、鳥栖エリアに位置。
小郡鳥栖南スマートインターチェンジに近接し、九州全域への効率的な物流ネットワーク構築が可能。
周辺には大規模な工場や倉庫が立ち並び、24時間稼働が可能な環境が整備されている。
JR鹿児島本線「鳥栖」駅から徒歩圏内にあり、労働力確保にも優れている。
生産・配送拠点としての機能性と労働力確保のしやすさを兼ね備えた本施設は、地域物流の効率化に寄与することが期待される。

物件詳細 募集中:(仮称)ロジスクエア鳥栖Ⅱ

物件概要

所在地 佐賀県鳥栖市藤木町字若桜1-2 ※2025/3/10現在 
交通 長崎自動車道「鳥栖」IC、九州自動車道「小郡鳥栖南」SIC 
建物構造 鉄骨造/地上2階建て(予定)※2024/12/20現在 
敷地面積 約26,000㎡ (約7,921坪)  ※2025/2/21現在 
延床面積 約36,000㎡ (約11,033坪) (予定) ※2025/2/21現在 
主要用途 2025年11月 (着工予定) ※2024/12/20現在 
竣工 2026年10月 (竣工予定) ※2024/12/20現在 

参考文献

 
 

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