倉庫レイアウトの考え方|最適化に必要な3つの分析軸を紹介

CREコラム

倉庫レイアウトの考え方|最適化に必要な3つの分析軸を紹介

倉庫のレイアウトは、倉庫の運営効率の向上や安全性を維持するために欠かせない要素です。
近年物流を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。人件費やエネルギー価格の高騰、労働人口の減少に伴う人手不足、サービスの多様化やサービス間の競争激化など、物流コストへの圧迫が続いています。

とりわけ3PL(3rd Party Logistics)事業者では、多くの環境変化がコストサイドに直接影響を及ぼしています。売上増が取扱い物量の増加に連動する事業構造でありながら、価格転嫁やコスト連動型の価格改定が容易ではないためです。
本記事では、このような状況の中で倉庫運営の改善策として効果の大きい「レイアウト最適化」に焦点を当てます。
倉庫レイアウトの最適化について、拠点の立ち上げや物流サービスの新規構築、複数拠点の運営統括など3PL事業者側と荷主側、両者の物流業務に携わった経験を持つ筆者が、自身の見解も交えながら、考え方や分析手法についてご紹介します。

コスト高騰時代における、倉庫レイアウト最適化のメリット

上記のグラフは倉庫運営費用の推移を表しています。倉庫地代の変動幅と比較して、人件費およびその他費用が大きく上昇しているのが確認できます。倉庫運営コストを抑える第一の手段として、生産性向上による省人化施策が挙げられますが、これは日々の改善活動として手順や動線の改変をするなどして既に実施しているかと思います。
一方で、倉庫レイアウト全体の改変については改善規模も大きい、一定額の投資が発生するため社内の関係各所の承認を得なければならない等の理由から着手できていないケースもあるのではないでしょうか?
倉庫レイアウト変更の検討は、財務諸表上の数字だけでは捉えられない倉庫内の収益構造の現況、強み、課題を明らかにできる有効な手段です。

倉庫レイアウトの分析プロセスを基に、倉庫内のスペース配分を見直すことで収益バランスの改善が期待できます。特に、コスト高騰の時代では、こうしたレイアウト最適化が売上拡大に向けた重要な施策の一つとなります。
以下では、倉庫の収益を最大化するために筆者が現場で実践してきた現状把握と3つの分析軸を紹介します。

倉庫レイアウト最適化に向けた現状把握

現状把握:倉庫のエリア別収益性とバランス

倉庫のどこでどれくらいの収益を上げているのか、全体から見てどこに課題があるのかを可視化することで、現況の収支バランスを分析する土台を整えます。また、同時に目標に対する差異がどこにあるのかを把握します。
これは、倉庫内を機能別にゾーニングし、エリア別に使用率から出された理論値と実態のコストを算出し、収益性を可視化する現状把握の手法です。保管エリア、入荷エリア、出荷エリアごとに簡易P/Lを作成することで、収益構造とスペース配分のミスマッチを発見できます。


■分析からわかること
・エリア別の収益性とバランス(収益源エリア、赤字エリアの分布)
・理論値 vs 現況のギャップ(使用率、未活用スペースの割合)

上記を把握することで、課題が可視化され倉庫レイアウトにおける改善施策の方向性を見出すことができます。

倉庫レイアウト最適化における3つの分析軸

分析軸1:保管効率とデッドスペースの機会損失分析

この分析手法は、「スペース=コスト」と捉え、活用されていない空間がどれだけの損失を生んでいるのか、倉庫内のデッドスペースを平面図と実地調査で特定し、容積率や坪単価を基に機会損失額を金額化するものです。


■分析からわかること
・デッドスペースの容積と分布
・機会損失の金額的影響

未活用スペースによる機会損失額を把握することで、収益エリア化させる施策を講じるための共通認識を形成することができます。

分析軸2:商品別収益性×保管・荷役コストのクロス分析

この分析手法は、どの商品が利益を生んでいるのかを正確に把握するために、商品単位で「1個あたりの売上」と「保管/荷役コスト」※とクロスして商品の収益貢献度を算出するものです。

※3PL事業者の場合は、商品の入出荷タイミングをコントロールできないため、従来のABC分析と掛け合わせます。


■分析からわかること
・商品別の収益性
・商品の保管における課題

在庫全体の数量でのコスト管理では把握できない個別商品ごとの滞留コストを、保管期間のバランスを持って把握することができます。この分析結果から、倉庫の特性も考慮しつつ、個別商品ごとの保管期間に合わせレイアウトや保管場所の改善を行うことで、コスト構造の最適化につながります。

分析軸3:作業動線と人件費の費用対効果分析

この分析手法は、倉庫運営における最大のコストである人件費が、作業員の移動や作業にどれだけのリソースが投下されているのか、倉庫内の作業動線をスパゲッティマップやサンプル計測で可視化して人件費に換算するものです。


■分析からわかること
・動線の問題点
・収益を上げない動作への人件費の投下

動線を可視化することで、倉庫レイアウトの作業プロセスへの適合性を判別可能となり、非効率な動線による作業員が費やしていた無駄な時間をコストとして定量的に捉えられます。
この分析結果から、レイアウトを最適化し、これまで費やしていた無駄な時間を収益を生む動作に転換すれば、全体のスループット向上を実現し、売上拡大に向けた運用キャパシティを創出できます。

倉庫レイアウトに関するよくある疑問

ここまで、既存倉庫のレイアウト最適化に必要な考え方について解説しました。以下では、レイアウト検討を実際に進める際によく生まれる疑問をQ&A形式でまとめています。既存拠点のレイアウト改善と新規拠点の立ち上げ、両方のケースを想定して記載していますので、実務でお役立てください。

Q1)レイアウトの分析と改定はどこから着手すべきでしょうか?

A)まずは取扱う荷主の規模や数、求められるサービスレベル、指揮命令する作業人数単位を整理することから始めましょう。また、レイアウト策定では「人は空いているスペースがあれば使ってしまう。それが常態化し削ることができない必須スペースと化してしまうことがある」という点を念頭に置くと、想定の生産性に合致しやすくなります。

Q2)倉庫の天井高をうまく使うにはどのようなやり方がありますか?

A)これは棚形式の場合における天井高と棚の間の中空スペース活用の課題ですが、棚を高く設計しても商品の格納やピックが困難になり、2mを超える部分が十分に活用しきれないというのがよくあるケースです。近年、高層対応の棚やピッキング機器の現場導入が進んでいます。さらに、動きの少ない商品でバラ単位で動きがある商品を上部に配置することで、上部空間も上手に活用できるようになります。

関連記事 倉庫の上部空間の活用とは?活用事例も紹介

まとめ

人件費やエネルギー価格の急騰が続く近年において、現状維持では倉庫の収益率悪化は避けられません。しかし、適切な分析に基づく倉庫レイアウト最適化により、大幅なコスト削減と売上向上の両立を実現することが可能です。
最も重要な点は、財務諸表だけでは見えない倉庫内の収益構造を可視化し、データに基づいた戦略的な改善に取り組むことです。本記事でご紹介した現状把握および3つの分析軸を活用し、貴社倉庫の潜在的な改善ポイントの発見にお役立てください。

本記事で紹介したコスト判断や投資対効果の算出において不明点が生じることもあるかと思います。
シーアールイーでは、物流インフラプラットフォームを基盤に、物流課題の解決に向けた支援を行っております。倉庫のエリア別収益性の詳細分析手法など、倉庫レイアウトの最適化に関してご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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