PSIとは?在庫を適正化する管理手法を解説
PSIとは、生産(Production)・販売(Sales)・在庫(Inventory)の3要素を統合的に管理して、精度の高い生産計画や在庫の最適化を実現する手法です。需要の変動が激しい現代では、必要なタイミングに必要な数量を準備し、提供することが企業の大きな課題となっています。
本記事では、倉庫だけでなく物流分野における様々なソリューションを展開するシーアールイーグループより、市場環境の変化を背景にPSI管理の必要性、基本プロセス、メリット・デメリットなどを多角的な視点から解説します。
PSI管理が注目される背景
市場環境の変化と従来の部門別計画のリスク
近年、市場環境は急速に変化しています。消費者ニーズの多様化などにより、需要が予測しにくく、サプライチェーンは複雑化しています。従来の部門別計画では、販売・生産・在庫がバラバラに管理され、不整合が生じやすいのが課題として顕在化してきています。
たとえば、販売部門が需要を過大に見積もると、生産部門が過剰に製造し、在庫が積み上がります。これにより、保管コストの増加や商品の陳腐化が発生し、無駄なコストがかかります。一方、需要を過小評価すると欠品が生じ、販売機会を逃すリスクが高まります。こうした対応の遅れは、機会損失や資金の固定化を招き、企業の競争力を低下させます。こうした市場環境において、リスクを回避するために、各部門が連携して適正な在庫を維持するための手法である、「PSI管理」が注目されています。
PSI管理の基本プロセス
PSI管理の基本は、需要予測を起点に販売・生産・在庫を連動させることです。ここでは基本的な流れをステップに分けて解説します。

Step1:需要予測
過去の販売データや市場のトレンド、季節要因や競合状況など多方面の情報を収集し、統計的な手法や分析ツールを用いて検証を重ねます。精度が高い需要予測ほど過剰在庫を抑制し販売機会を逃さない計画を組みやすくなります。
Step2:販売計画
需要予測で得られた数値に基づき、どのタイミングでどれだけ販売するかを詰めていく段階です。需要がピークを迎える時期に合わせてプロモーションを強化するかどうかなど、マーケティング施策と連動させるケースがあります。販売計画が曖昧だと適正な生産量を見極めにくいため、精緻な検討が重要です。
Step3:生産計画
販売計画をもとに生産能力や稼働率を考慮して、生産ラインを効率よく運用するためのスケジュールを作成します。過剰生産が続けば在庫は膨れ上がり、逆に過少生産だと需要を取りこぼすリスクが高まります。そこで需要予測と生産資源をバランスよく組み合わせることで、最適な生産量を導き出していきます。
Step4:在庫計画・在庫管理
生産計画と実際の販売動向を勘案しながら、在庫水準を設定します。適正在庫量を維持することで、過剰在庫によるコスト増大と欠品リスクの両方を抑えることが可能になります。定期的に実績をチェックし、過不足が発覚した場合は迅速に修正を行います。
このサイクル回すことで、計画の精度が向上し、適正在庫を維持できるようになっていきます。
PSI管理を行うメリット
適正な生産と仕入れで無駄なコストを削減
需要の精度を高く捉えたうえで生産や仕入れをコントロールし、無駄を最小化するのがPSI管理の大きなメリットです。特に過剰在庫を保持しないよう調整することで、在庫管理における人件費や保管にかかるその他費用を抑えられるため、全体的なコスト削減につながります。
販売機会ロスの回避で顧客満足度を維持
PSI管理によって、需要に合わせて適正な在庫を確保できるため、注文が殺到して欠品するリスクを下げられます。欠品が続くとブランドイメージや顧客満足度に悪影響を与え、その後の購買意欲にまで影響を及ぼしかねません。需要に合わせた適正在庫を保持することで、顧客からの信頼やリピート購入の獲得に繋げられます。
キャッシュフローの改善と企業経営の安定
過剰に在庫を抱えないことで資金が在庫に固定されることを防ぎ、キャッシュフローをより健全に維持できます。資金に余力があれば、新たな設備投資や販促予算の確保など未来への投資がしやすくなり、企業の安定経営につながります。PSI管理はこうした財務的な安定をもたらす点でも大きな意義を持っています。
PSI管理を行わない場合に起こり得るリスク
過剰在庫や在庫切れの増加
需要量を適切に把握していない場合、倉庫に商品が滞ってしまい、保管スペースや資金を圧迫します。一方で需要が予想外に伸びたときには欠品を引き起こして、せっかくの販売機会を逃すリスクも高まります。
顧客満足度の低下と生産性の停滞
欠品状態が続けば顧客の信頼を損ない、競合他社に顧客が流出する可能性が高まります。また、生産計画の調整が遅れることで設備稼働率も下がり、無駄な固定費が発生し、生産コストの上昇やコスト効率の悪化が懸念されます。
PSI管理における注意点や成功のためのポイント
正確なデータ収集と需要予測の精度向上
需要予測の精度を上げるには、販売チャネルや顧客層ごとの実績やトレンド情報を精緻に追うことが必要です。特に大きなイベントや天候の影響、経済情勢など外部要因の考慮も避けては通れません。高精度のデータに基づく予測が、在庫を最適化させる基盤となります。
複数拠点・多品種在庫の一元管理
拠点が複数あると在庫管理が煩雑化し、また多品種の在庫を扱う場合はさらなる複雑性が加わります。こうした状況を見える化し、一カ所のデータベースで統合管理できるシステムが必要になります。一元管理システムにより、どの拠点にどのくらい在庫があるかを正確に確認し、最適な出荷や移動指示を行えるようにすることが大切です。
システム導入時の連携と運用フローの整備
新たなシステムを導入しても、現場のオペレーションフローが複雑化すれば逆効果になりかねません。販売部門、生産部門、経理部門など各部署の役割とデータ連携のタイミングを明確にし、運用ルールをしっかりと定めることがポイントです。全社員が同じ認識を持ってシステムを扱うことで、PSI管理の効果を最大限に引き出せます。
需給バランスを可視化するツールの活用
在庫残高や生産ライン情報、予測データを一元的に表示できるソフトウェアを導入すると、経営判断のスピードアップに寄与します。最適なタイミングでの仕入れや生産指示を行うための指標となり、各部署間のコミュニケーションも円滑になります。
分析・検証を繰り返し、継続的に改善する
計画と実績の差異が生じるのは避けられないため、そのズレをいかに最小化していくかがポイントです。定期的にデータを振り返り、需要予測の方法や生産スケジュールの組み方を見直すことで、改善策を生み出すことができます。
PSI管理にまつわるよくある質問(FAQ)
ここではPSI管理に関して、特に多く寄せられる質問とその回答を紹介します。
PSIとS&OPはどう違うのですか?
PSIは生産・販売・在庫に焦点を当てた管理手法で、在庫水準を適正に保つことが主眼となります。一方、S&OP(Sales and Operations Planning)は需要と供給の全体計画を統合的に扱う手法で、マーケティング戦略や財務計画なども含め、企業の全体的なビジネス戦略を一致させることで、サプライチェーンを最適化させていくプロセスです。PSIはS&OPの一部に組み込まれることも多く、両者は相互補完的な関係にあります。
小規模事業者でもPSI管理を導入すべき?
企業の規模を問わず在庫問題は発生し得るため、小規模事業者でもPSI管理の考え方は有効です。特にリソースが限られている分、利益を圧迫する在庫過多は大きなリスクとなります。需要と供給を丁寧に見極め、必要量を的確に計画することで、キャッシュフローを安定させながら継続的に事業を成長させられます。
まとめ
PSI管理は、生産・販売・在庫を統合的に管理することでコスト削減と顧客満足度の向上を目指す手法です。
PSI管理を実践するには、正確な需要予測と各部門の連携が不可欠です。計画と実績の差異を分析し、自社の商品特性や市場動向を加味しながら継続的に改善していくことで、最適な在庫水準を保てます。
企業規模を問わず、在庫過多や欠品は大きな経営リスクにつながります。全体最適の視点からPSI管理を導入し、適正な在庫と効率的な事業運営を実現していきましょう。
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