企業成長の裏側:物流不動産の専門性への深化と顧客価値の創造の具体例(第2部)

インタビュー

ーCREグループの総合力でビジネスの拡大と課題解決を実現ー

ーCREグループの総合力でビジネスの拡大と課題解決を実現ー

物流不動産に特化して事業を展開する株式会社シーアールイー(以下、CRE)。小型から大型までの物流倉庫を提供するだけでなく、顧客の物流プロセス全体をカバーする包括的なソリューションを提供している。同社は物流インフラプラットフォームを通じて、物流の上流から下流までをワンストップでサポートし、グループ各社との連携によって顧客が直面する多様な課題解決に取り組む。本記事では、CREの価値提供と課題解決の事例について、同社取締役へのインタビューを通じて詳しく掘り下げていく。

<今回お話をお聞きした方>
株式会社シーアールイー
 取締役(Chief Alliance Officer) 山本 岳至氏
 取締役執行役員 経営企画本部長  後藤 信秀氏

<目次>
 ・不動産事業:物流不動産で顧客生涯価値(LTV)を提供した成功事例
 ・ククレブ・アドバイザーズと資本業務提携による CRE 戦略構築と実行支援サービス
 ・物流インフラプラットフォーム3社協業(SSA×APT×CRE):東京硝子器械様の課題背景と解決プロセス

物流不動産で顧客生涯価値(LTV:Life Time Value)を提供した成功事例

山本取締役

山本取締役

CREのLTVに対する考え方を教えていただけますでしょうか。

山本 当社では、物流不動産におけるLTVに加えて、「物流ソリューションと関わりのあるLTVを厚くすること」を志向しています。

具体的なLTV提供の事例について教えていただけますでしょうか。

山本 ネットショップの物流業務などを請け負う株式会社ユーディーエル様(以下、ユーディーエル)は、当社の倉庫をご利用いただいている中で、更新のタイミングを迎えていました。そこで将来的な事業の成長と取引拡大を視野に入れ、より専用性を持った開発物件を提案させて頂いたところ、ロジスクエア厚木南へ移転されました。

当社のユーザーの中には他にも、マスターリースと呼ばれる200坪〜300坪の倉庫から事業をスタートされた企業が多くあります。こうした企業は事業領域の拡大に伴い、倉庫の規模は拡大していきます。例えば、設立当初は300坪で足りていたスペースも500坪が必要となり、1,000坪、2,000坪へと拡張していきます。

当社ではスペースが固定された施設を提供するのではなく、企業の成長カーブに応じて、物量が増えた時にも対応できる施設を供給しています。ユーディーエル社だけでなく、その他多くの企業が当社の倉庫をご利用頂くことでマーケットに柔軟に対応できる事業成長に貢献できていると感じています。

山九株式会社とCREグループで基本協定を締結したと聞いています。提携の内容について教えてください。

山本 プラントエンジニアリングや物流事業を展開する山九株式会社は、物流アセットの最適化について課題を抱えられていました。もともと、製鉄会社でのエンジニアリング事業や港湾エリアでの物流事業に強みを持つ会社ですが、内陸部にも多数の倉庫を保有していました。物流事業の中で、効率的な施設活用を行う必要性がありました。

物流アセットの最適化とは、具体的にどのようなことか、教えていただけますか。

山本 現在、日本の上場企業の約半数がPBR1倍割れの状態にあるといわれています。PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回るということは、企業の市場評価が解散価値(純資産)よりも低いことを意味しています。株主の視点では、企業が資産を有効活用できておらず、経営効率が悪く、十分な利益を生み出せていないと判断されてしまいます。企業のみならず資本市場全体の健全性にも関わる課題として、多くの上場企業にとって取り組むべき課題となっています。

資産の有効活用のためにも、物流施設の最適化が必要なのですね。

山本 山九社では、事業の軸に合わない保有物件を整理する希望を持たれていたのです。そこで、山九社、当社、CREのグループ企業であるストラテジック・パートナーズの3社で基本協定書を2021年に締結しました。この協定では、山九社が国内外に保有・運営する物流施設の有効活用や、倉庫へのテナントの誘致を目指しました。また、新たに物流施設を建設する際の資金調達の方法や、拠点再編について検討しました。

また、山九社が保有していた複数の施設を当社で購入させていただいたり、開発事業の検討にも取り組んでいます。

ククレブ・アドバイザーズと資本業務提携によるCRE戦略構築と実行支援サービス

2024年5月に資本業務提携を行なった、ククレブ・アドバイザーズ株式会社(以下、ククレブ・アドバイザーズ)とは、どのような会社なのでしょうか。

山本 商業不動産や物流不動産、産業用不動産に特化し、多種多様な企業不動産ニーズに対して独自の不動産テックシステムを活用してワンストップで課題解決を提供しています。
具体的には、商業不動産等のアドバイザリー、プロジェクトマネジメント、不動産投資や賃貸、仲介業等を行っています。また不動産テックの企画・開発、DX支援、サイト運営やデータを活用したマーケティングを行っています。

ククレブ・アドバイザーズが企業不動産に関わるコンサルティングや戦略策定を行う中、物流不動産について相談を受けたことが当社との接点になりました。

提携の背景について教えていただけますでしょうか。

山本 2023年から当社の顧客である大手卸売企業と協業し、「CRE戦略検討に関するコンサルティングサービス」の提供などを進めてきました。ククレブ・アドバイザーズとは、今後、当社の顧客基盤の共有やグループ企業との事業連携をより深化させるため、資本業務提携契約を締結しました。

提携によって、どのような効果が期待できるのでしょうか。

山本 ククレブ・アドバイザーズは当社の豊富な顧客基盤に対して「アセットタイプに拘らないCRE戦略構築・実行支援サービス」を提供できるようになり、課題解決の幅が広がります。さらに、ククレブ・アドバイザーズの不動産テックと、シーアールイーグループの物流コンサルティングやDXサービスを掛け合わせることで、物流不動産の分野の事業拡大が期待できます。

物流インフラプラットフォーム 3社協業(SSA×APT×CRE):東京硝子器械様の課題背景と解決プロセス

東京硝子器械様の事例の概要を教えていただけますでしょうか。

山本 東京硝子器械様の事例では、CREの物流インフラプラットフォームを構成する3社が協業して課題解決を実現しました。同社は、研究所や大学などで使用する理化学機器を取り扱う卸会社で、取り扱い量やSKUの増加によって物流リソースの増強が必要でした。加えて、自社センターの自動倉庫は、老朽化によるトラブルで出荷に影響する問題を抱えていました。当初は既存施設の活用や設備の更新を想定していましたが、ゼロベースで最適な物流施設を構築しました。

CREグループでは、SSA社の物流エンジニアリングによる業務分析、APT社のマテハン設計・導入、そしてCRE社による最適な施設選定を通じて一気通貫の解決策を提案しました。その結果、自動倉庫に依存せず「人の手でも対応可能」なDASシステムと平置き棚を組み合わせた半自動化システムを新センターに導入しました。

東京硝子器械様の課題について具体的に教えてください。

山本 最大の課題は、江戸川区平井の物流センターに2005年に導入された、シャトル型自動倉庫仕分システムの老朽化でした。約20年経過したシステムは頻繁にトラブルが発生し、生産性が著しく低下していました。

保守切れによって原因特定が困難だったトラブルは、業務効率の低下を招くのみならず、営業部門のモチベーション低下や顧客からの信頼毀損にもつながっていました。また、WMSも現在の業務に適合せず、設備に合わせてオペレーションを最適化するような、いわば主客転倒の状態にありました。前回の倉庫移転時には商品移動を円滑に行うことができず、出荷に影響を来していました。そのため、今回は新旧拠点間の在庫移動を円滑且つ正確に行える仕組みが不可欠でした。

LIP構想による協業体制について教えていただけますでしょうか。

山本 課題解決のため、私たちはAPT社、SSA社、CRE社のグループ3社で連携し、複数のプランを提案しました。SSA社が業務分析と業務内容のコンサルティングを行い、小ロット多品種という商品特性に合わせて、マテハンが止まっても人手で出荷継続できる半自動システム(平置き棚とDAS)の導入をAPT社が行いました。

また、物流拠点についてはCRE社の移転案が採用されました。また、前回の倉庫移転時には商品移動を円滑に行うことができず、出荷に影響をきたしていました。そのため、今回は新旧拠点間の在庫移動を円滑且つ正確に行える仕組みが不可欠でした。

今回のプロジェクトでは倉庫移転時における商品移動を正確に実行できる仕組みを開発・提供し、遅滞なく倉庫移転を完了することができました。

東京硝子器械社におけるプロジェクトマネジメント体制

課題解決の最適解について教えていただけますか。

山本 SSA社による業務分析の結果から、必ずしも全自動化の提案がベストではないことがわかりました。万が一、トラブルが発生した際も、人手によって出荷を継続することが優先事項でした。

物流波動についてもスタッフの柔軟な配置で吸収する方法を選択し、移転先の倉庫も輸送ネットワークの最適地の視点から同業他社の拠点を紹介しました。これは自社の施設にこだわらず、顧客視点でベンダーフリーの提案を実現した事例だと考えています。

後藤 今後、自動化や省人化を進めるにあたって、業務の標準化も大切なポイントだと思います。SSAでは物流コンサルティングを通して、業務の標準化をサポートしています。その上で、自動化や省人化のあるべき姿を、お客様と一緒に描くことが必要だと思います。

山本 東京硝子器械様の事例でもあったように、当社は自社の施設に紐付ける提案にはこだわっていません、顧客視点で、お客様に本当に有益な提案を行うようにしています。これは全社員に共通する考え方でもあります。物流の課題を解決したいと考えている企業様がいらっしゃいましたら、是非当社にご相談ください。

第1部 企業成長の裏側:物流不動産の専門性への深化と顧客価値の創造

執筆者 蜂巣 稔 氏

執筆者 蜂巣 稔 氏

大学卒業後、外資系IT企業に入社。営業職を経てバックオフィスで輸出入、国内物流を担当。その後、日本コカ・コーラ(株)のSCM(サプライチェーンマネジメント)部門にて一貫して供給計画立案、在庫最適化、物流オペレーション最適化、3PL管理、購買調達などの業務に従事。飲料原料のサプライチェーンの上流から下流まで精通。物流経験は通算21年。2021年に退職し起業。葉山ウインズ合同会社代表。宣伝会議 編集・ライター養成講座43期卒業。上阪徹氏のブックライター塾第9期卒業。物流ライター・ビジネスライターとして物流、DX、生成AI領域で活動中。通関士試験合格。JILSグリーンロジスティクス管理士。

 
 

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