企業成長の裏側:物流不動産の専門性への深化と顧客価値の創造(第1部)

インタビュー

ー業務分析から庫内人員供給まで、ワンストップで倉庫活用の課題解決を実現ー

ー業務分析から庫内人員供給まで、ワンストップで倉庫活用の課題解決を実現ー

少子高齢化による人材不足や2024年問題など、物流を取り巻く環境は大きく変化している。そうした中、物流不動産を主軸に、物流業界が直面する様々な課題に対して解決案を提供するのがCREグループだ。同グループでは、物流不動産に特化した事業に加え、物流の上流から下流までをワンストップでカバーする物流インフラプラットフォーム(LIP)構想を展開している。今回は同社取締役に、CREが目指すLIP構想について話を聞いた。

<今回お話をお聞きした方>
株式会社シーアールイー
 取締役(Chief Alliance Officer) 山本 岳至氏
 取締役執行役員 経営企画本部長  後藤 信秀氏

<目次>
 ・CREブランドストーリー
 ・物流不動産における専門性の深化
 ・顧客インサイトに応える市場洞察力の向上
 ・実績に基づく信頼性・顧客への価値提供の進化
 ・まとめ

CREのブランドストーリー

後藤取締役

後藤取締役

CREの沿革を教えていただけますか。

後藤 当社 は、2009年に公共ロジスティックス株式会社として設立、その後2011年に公共シィー・アール・イー株式会社へ社名変更をおこない、2011年には、物流不動産に特化し神奈川県を中心に展開してきた天幸総建と経営統合を行いました。その天幸総建は設立が1964年ですから、神奈川県を中心に約60年にわたってマスターリース事業やプロパティ・マネジメント業(PM)を展開してきました。経営統合後、現社名である株式会社シーアールイーへ変更されたのは2014年です。

どのような事業を行っているのでしょうか。

後藤 私たちは物流不動産に特化した事業を展開してきました。現在は「物流不動産」と「+αの利用価値」の同時提供を実現し、物流サービスすべての基盤となる仕組みである「物流インフラプラットフォーム(LIP)」構想を推進しています。専門的なノウハウを有する多様なグループ会社によって、倉庫施設の物件選択や活用、施設オープン後の倉庫スタッフの手配まで、上流から下流に至る物流の課題にワンストップで対応できる体制を整えています。

CREのビジョンについて教えてください。

山本 2018年以前のビジョンは、物流不動産に特化した不動産サービスのワンストップ化でした。転換点になったのは、テナント誘致の過程で、物流会社や製造業・卸売業の会社から自動化への取り組みや倉庫の人材確保の方法について相談を受けるケースが増えてきたことです。

物流アウトソースが進む中、荷主企業側に物流の専門知識を持つ人材が不足し、自動化などの相談先も限られているため、適切な支援を得られないケースが増えていたのです。当初、私たちからは単にケーススタディや事例の紹介を行っていただけでしたが、お客様との関係を深めるためには、物流不動産以外の領域への相談に対応できる体制が不可欠でした。

こうした気付きが「物流インフラプラットフォーム」という現在のビジョンに結実しました。お客様の物流課題や、荷主企業のサプライチェーン・ロジスティクスの問題点に耳を傾け対応する「マーケットイン」の発想は、私たちにとって非常に大きな進化になったと思います。

環境変化に対応しながら、お客様に伴走することが大切なのですね。

後藤 物流施設の機能は物の保管ですが、現代ではコスト、品質、スピードといったビジネス上の差別化要素がより重要になっています。また、テクノロジーの進歩や我が国の人口減少、環境負荷低減といった社会課題は、施設利用者だけでは解決できません。さらに物流業界は依然として中小企業が多数を占めています。

私たちは施設供給者としてお客様と同じ課題意識を持ち、解決策を模索してきました。例えば物流DXと呼ばれる自動化やデジタル化の推進、車両や人材のシェアリング、さらには物流コンサルティングやCRE戦略といったサービスの提供に取り組んでいます。こうした取り組みが「物流インフラプラットフォーム構想」であり、様々なサービスの標準化や、より良質で安価なサービス提供の実現が、業界全体の底上げにつながると考えています。

CREが展開する倉庫施設と事業内容、強みについてお聞かせください。

山本 当社が展開する物流不動産では、延床面積1,000m2程度の小規模倉庫、約15,000m2程度の中規模倉庫、さらに約100,000m2程度の大規模マルチテナント型物流施設まで、多種多様かつ幅広い施設を展開しています。立地についても市中や街中でラストワンマイルを担う様な小規模の倉庫だけでなく、ランプウェイと各フロアにトラックバースがある郊外の大型施設も揃っています。

施設規模に応じて中小企業から大企業、さらにBtoBやECが中心となるBtoCまで、様々な物流ニーズにお応えすることが可能です。また、自社ブランドの「ロジスクエア」では、汎用性に加えて業界専用性も考慮した施設開発を行っています。こうした施設では、カフェテリアや洗面所の充実など、テナント様や働き手の視点を重視し、雇用の確保や維持につながるような設計を行っています。

シーアールイーグループの幅広い施設規模と物流不動産に特化した事業の深さ

物流不動産における専門性の深化

物流不動産に特化した事業内容について、具体的に教えてください。

後藤 当社の物流不動産サービスは高い専門性を持ち、さまざまなサービスがあることが大きな魅力です。創業当初は不動産管理事業から始まり、土地の有効活用の一環として土地所有者の方に小型倉庫を建設してもらい、それを長期借り上げて転貸するビジネスモデルで事業を開始しました。

その後、中型・大型施設の開発へと事業を拡大し、現在では大規模な物流センターから、ラストワンマイル配送を支える小型倉庫まで、幅広い物流施設を取り揃えています。このような多様な施設ラインナップを持つ企業は他にはないと思います。

多様な施設に加えて、コア事業であるマスターリース事業を筆頭に、多様な物流不動産サービスを提供しています。主な事業の内容ですが、まず、マスターリース事業では、不動産オーナー様から物流施設や商業施設などの事業用物件を一括して借り上げし、空室保証・運営等のサービスをご提供しながら不動産の安定運用と資産価値の向上を図っています。

次にリーシング事業ですが、業界随一のネットワークを駆使し、空室予定の物流施設にテナントを誘致し、賃貸業務や施設価値の向上を図ります。プロパティマネジメント事業においては、物流施設(倉庫)を中心とした事業系不動産に特化した受託不動産の資産活用や経営をサポートし、不動産価値を最大化するため、物件の特性に合わせたプロパティマネジメントを展開しています。

その他、アセットマネジメント事業では、上場REIT、私募ファンド等の不動産ファンドへの投資機会のご提案と不動産ファイナンス・証券化まで幅広いサポートを行なっています。

資産活用事業では、遊休地の有効活用や相続・節税対策など最適な土地活用計画をご提案します。また、綿密な分析に基づいて、資産を守り、収益を⽣み出すための計画を立案します。

開発事業では物流不動産に特化し、機能性・汎用性の高い施設を開発しています。リーシングやマーケティングから得た豊富な情報や、数多くの物流施設開発と管理運⽤実績に基づいたノウハウをもとに、物流施設開発を行なっています。

さらに海外事業でもASEAN(アセアン)を中心に物流施設の開発や投資を行っていますし、子会社や資本業務提携先を通じて、土壌汚染関連事業、太陽光発電や水等の自然エネルギー事業、CRE(コーポレートリアルエステート)戦略の実行支援、自動化やデジタル化等の物流DX、物流車両のシェアリングや冷凍冷蔵車を中心としたレンタル事業、物流業界に特化した人材採用支援等、幅広いソリューションを提供しています。

同業他社との事業内容の違いについて教えてください。

山本 当社の物流不動産の開発事業は、総合不動産デベロッパーが行う開発スタイルとは明確な違いがあります。例えば、総合不動産デベロッパーは施設を建設し、収益物件化した後は売り切りで終了しますが、我々は開発物件のテナント誘致や売却後もアセットマネジメント・プロパティマネジメントまで内製化しています。

さらに施設としてハードを提供するだけでなく、WMS(倉庫管理システム)やマテハンの導入、倉庫スタッフの採用支援など、ソフトも含めた一貫したサービスの提供が可能です。また、他社は自社開発物件に対するリーシングの営業部隊を内製化している点が特徴ですが、当社は自社物件のみならず他社様の物件にもテナントを誘致しています。

開発面における競合他社が、テナント誘致面においては仕入れ先になることも発生するのです。加えてプロパティマネジメントや、リーシングのサービスを提供できる点は、他社と比較しても特筆すべき強みと言えます。

後藤 CREグループは土壌汚染対策においても強みがあります。工場跡地などを開発する場合、土地の「完全浄化」が当然と認識され、高い土壌汚染対策コストによって、所有企業が汚染地を手放せない状況を見てきました。しかし、当社の出資先である株式会社エンバイオ・ホールディングスグループには、揮発性有機化合物の汚染を化学酸化剤や微生物分解促進剤で無害化する技術があります。

こうしたノウハウの活用で、適正に土壌汚染対策費用を見積もれることにより、他社では手を出せないような土地でも、所有者は土地を売却でき、我々は有利に土地を仕入れることができることが強みの1つです。

山本 汚染された工場跡地(ブラウンフィールド)を、汚染のない土地(グリーンフィールド)に戻すための掘削には、多額のコストが必要です。さらに掘削した汚染土を別の場所で処理するため、環境面にも影響します。

汚染土をもとの場所でグリーンフィールド化できるエンバイオグループの技術によって、コストを抑えながら資産の有効利用を実現できます。また抑制したコストを活用し、顧客ニーズに沿った施設面の充実を図れます。

顧客インサイトに応える市場洞察力の向上

物流不動産に特化してサービスを提供する中、見えてきた課題について教えていただけますか。

山本 1990年代後半から2000年代前半、物流業界では3PL(サードパーティロジスティクス)の急速な発展がありました。多くのメーカーや卸売業者が物流子会社を設立し、後にそれらが3PL企業に買収されていきました。

一方で荷主企業の物流機能は弱体化し、ノウハウは3PL側に流出しました。また、物流業務委託の契約期間は10〜15年から3〜5年へと短縮し、物流会社は設備投資にリスクを取れなくなっています。結果として、荷主自らが倉庫を借り設備投資を行い、オペレーションのみを外部委託するケースが増えました。

さらに荷主企業側では物流ノウハウを持つ人材の減少が課題となっています。物流企業や荷主にノウハウや知見が不足している状況に対して、当社としても課題解決を行いたいと考え「物流インフラプラットフォーム」構想が生まれたのです。

後藤 山本も話したように、倉庫というハードウェアを提案するだけではお客様の課題は解決しないことがわかりました。「倉庫を準備した後に導入するマテハンは何を選択したらよいのか」「新しくオープンした倉庫のスタッフの募集方法は?」こうした問いに対して、お客様は最適解やノウハウを全て持っているわけではありません。

倉庫をご提案する過程で、お客様の業務内容の分析や課題解決まで踏み込んだ解決策の必要性が、LIP構想のコンセプトになりました。LIP構想では利益を出すよりも、施設をご利用いただくお客様が便利になっていただきたいと考えています。

お客様の課題に対して具体的にどのような取り組みを行ったのでしょうか。

山本 取り組みの一例ですが、施設を提案する際に、川上の業務内容の分析と、川下における各種設備や最適なマテハンの検討を行いました。上流工程の業務分析はグループ会社である株式会社ストラソルアーキテクト(以下SSA)が行います。SSAはSCM・ロジスティクス領域におけるコンサルティングを通じて、お客様の課題を可視化します。

SSAによる業務分析と課題の可視化の結果、最適な設備の選択と設置を担うのが、同じくグループ会社の株式会社 APT(アプト、以下APT)です。APTではWMSや自動倉庫、マテハンやロボティクスの導入、システム開発や自動化、設備メンテナンス等を行っています。

東京硝子器械様の導入事例は、CRE、SSA、APTの3社が協業し三位一体となってお客様にとっての最適解を提案し解決したケースです。

実績に基づく信頼性・顧客への価値提供の進化

多様な企業によって構成されるLIP構想ですが、アライアンス企業の選定面で考慮していることを教えてください。

山本 最も大事にしていることが「事業シナジー」です。単なるキャピタルゲインを狙った企業投資は一切行わず、あくまでもCREグループとしてのサービス力を強化できる投資のみに絞っています。CREとの事業シナジーの可能性が起点になります。たとえ急成長している物流テックであろうとも、CREとのシナジーが期待できなければ、我々は一切投資を行いません。

基本戦略は、当社の既存のお客様や新規のお客様に対して優良なサービスが提供できる企業との提携です。そのためには100%子会社化にこだわることなく、直接的な支配権を持たないマイノリティ出資も行っています。

アライアンス戦略における同業他社との違いについて教えてください。

山本 他社さんは基本的には、本業である不動産業の利益を強化するための投資を行っているのではないでしょうか。一方、当社が考える提携は、必ずしも物流不動産事業に紐づくものでなくても良いと考えています。

様々な企業と手を組みながら、お客様の課題解決につながる提携が実現できれば、我々はハッピーだと考えます。

さらに当社にはグループ会社の経営支援を行う組織があることも特徴です。他社さんでは出資して終わりという提携も多い中、当社では経営面の支援やKPIの管理など提携先に深く入り込んだ経営支援も行っています。当社には様々な取引先があるため、提携先のグループ企業に案件を供給できますが、提携先に受け入れる体力がなければ、仕事に繋がらないからです。

後藤 私たちは他社との差別化を強く意識しているわけではありません。その領域で大きな利益を出すことが目的ではなく、サービスを利用する方々の利便性が向上していくことを願っています。当社のビジネスの特徴は、CREの倉庫利用を無理に勧めない点です。長いお付き合いの中でCREの施設を使っていただければ嬉しいですが、まずはお客様の課題解決を最優先しています。

今後の展望について教えてください。

後藤 物流不動産については、国内市場でも引き続き一定規模の利便性、汎用性に優れた施設供給を目指しますが、今後は海外事業を拡大していく方針です。特に成長を続ける東南アジア市場には積極的な投資を行っています。当社の連結子会社である CRE Asia Pte. Ltd.を通じ、ベトナムとインドネシアへ進出も果たしています。さらに第3の進出国としてインド市場の調査と進出の検討を始めています。こうした海外戦略は、当社の今後の10年から20年という中長期的な重要な取り組みになると考えています。

山本 国内の物流施設の開発や供給を続け、物流不動産の安定性を図っていきたいと考えています。LIP構想におけるアライアンス戦略においてもこれまでとは異なる新たな専門性を提供して行きたいと考えています。2025年からはCLO(Chief Logistics Officer:最高サプライチェーン責任者)の設置も義務化されます。こうした動向に対して新しい取り組みも考えたいと思います。

プロフィール

取締役(Chief Alliance Officer) 山本 岳至 <経歴>
2010年1月 (株)天幸総建取締役
2011年7月 当社入社 執行役員新規事業室長
2012年8月 当社執行役員経営企画本部長
2013年5月 当社執行役員経営企画本部長(現 経 営戦略本部長)兼不動産営業本部長
2016年5月 CRE Asia Pte. Ltd. 取締役
2017年8月 CRE (Thailand) Co., Ltd. 取締役
2018年5月 (株)ブレインウェーブ(現(株)はぴロジ) 代表取締役
2018年10月 当社取締役執行役員
2018年12月 (株)ロジコム取締役
2019年10月 (株)A-TRUCK取締役(現任)
2020年12月 (株)APT取締役
2022年12月 (株)ストラソルアーキテクト代表取締役(現任)
2023年8月 当社取締役(Chief Alliance Officer)(現任)
 
取締役執行役員 経営企画本部長 後藤 信秀 <経歴>
2002年10月 (株)幸洋コーポレーション(旧 (株)コマーシャル・アールイー) 入社
2010年8月 当社入社
2012年8月 当社執行役員不動産管理事業本部長
2017年8月 CRE (Thailand) Co., Ltd. 取締役
2018年8月 (株)ブレインウェーブ (現(株)はぴロジ) 取締役(現任)
2018年10月 当社取締役執行役員(現任)
2018年12月 (株)ロジコム取締役
2019年10月 (株)A-TRUCK取締役(現任)
2021年12月 (株)パルマ取締役(現任)
2022年10月 (株)APT取締役(現任)
 

第2部へ続きます。第2部では「企業成長の裏側:物流不動産の専門性への深化と顧客価値の創造の具体例」と題して、CREの物流インフラプラットフォームの取り組みや事例をご紹介します。

第2部 企業成長の裏側:物流不動産の専門性への深化と顧客価値の創造の具体例

執筆者 蜂巣 稔 氏

執筆者 蜂巣 稔 氏

大学卒業後、外資系IT企業に入社。営業職を経てバックオフィスで輸出入、国内物流を担当。その後、日本コカ・コーラ(株)のSCM(サプライチェーンマネジメント)部門にて一貫して供給計画立案、在庫最適化、物流オペレーション最適化、3PL管理、購買調達などの業務に従事。飲料原料のサプライチェーンの上流から下流まで精通。物流経験は通算21年。2021年に退職し起業。葉山ウインズ合同会社代表。宣伝会議 編集・ライター養成講座43期卒業。上阪徹氏のブックライター塾第9期卒業。物流ライター・ビジネスライターとして物流、DX、生成AI領域で活動中。通関士試験合格。JILSグリーンロジスティクス管理士。

 
 

CRE倉庫検索で物件をお探しの方へ

CRE倉庫検索を運営するシーアールイーでは、業界トップクラスのネットワークを活用し、経験豊かなプロフェッショナルが、お客様のご要望に合わせた物件情報のご提案、物件探しをご支援します。

事業用物件を売りたい・貸したい方へ

事業用物件、倉庫や工場、事務所で売りたい・貸したい方、気軽にマスターリースにご相談ください。状況に合わせてご提案させていただきます。

詳細条件で検索

都道府県・
エリア
賃貸面積
  • 範囲で指定
  • 数値で指定
賃料
用途
取引形態
用途地域
最寄りIC
その他条件