関西でもスーパー業界から製配販連携、業態超えた「物流協業化」にも挑戦|物流クロスオーバー【スーパーマーケット編】

インタビュー

関西SM物流研究会座長、平和堂・財田部長に聞く

関西SM物流研究会座長、平和堂・財田部長に聞く

連載インタビュー記事「物流クロスオーバー」

 「物流企業と荷主業界の垣根をクロスオーバーして相互理解と問題解決を支援し、産業界全体の発展に寄与する」ことをパーパスに掲げた『物流クロスオーバー』。サプライチェーン先端の着荷主にフォーカスした「小売(SM)物流シリーズ」第2回は、平和堂さんの登場です!
 前回ライフさんに聴いた通り、スーパーマーケット業界では今、業界全体の物流効率化に向け、共同で製配販連携・物流課題解決に立ち向かう「SM物流研究会」が駆動しています。今回はそのうち、関西の企業が集まった「関西SM物流研究会」の座長を務める、平和堂・財田物流部長をゲストにお迎えしました。
 同じく研究会に参加していても、諸条件や困りごとは各社それぞれ。滋賀を中心に関西・東海・北陸に166 店舗を展開する平和堂・エールでは、どこに焦点を当て、同業者や川上側との連携をどう進めようとしているのか? 研究会活動と合わせ詳しく伺ったので、ぜひご一読下さい!
(インタビュー・企画構成/エルテックラボ 菊田一郎)

今回のゲスト 株式会社平和堂
物流部長 財田 晃氏
(関西SM物流研究会 座長)  株式会社平和堂

関西・東海・北陸に166店舗をドミナント展開

株式会社平和堂
物流部長 財田 晃氏

株式会社平和堂
物流部長 財田 晃氏

今回は、前半で貴社の事業概要や取り組み状況を伺ったあと、後半にSM物流研究会の活動と今後についてお聞かせいただければと思います。まずは貴社事業の現況と物流課題からお願いできますか?

財田氏 当社は本社を滋賀県彦根市に置き、滋賀を中心に京都・大阪・兵庫の関西、愛知・岐阜の東海、福井・石川・富山の北陸と各地域に166店舗(エール2店舗含む)をドミナント展開しています(図表1)。滋賀県内では圧倒的な知名度を持ち、地域に愛される会社になっています。業態としてはSM(スーパーマーケット)というより、衣料品・住居関連品も扱うGMS(ゼネラルマーチャンダイズストア)であり、グループ会社(国内13社・海外1社)を含めた連結売上高は4,254億円(2024年2月期)になります。
 そんな当社の物流プロセスと物流課題・解決の方向性を一覧にして示したのが(図表2)です。下端に7つの課題とありますが、プロセスを辿ってから説明していきます。
 図の左上、「メーカー」から幹線輸送を経て届くのはドライの加工食品や衣料品・住居関連品で、以下チルド日配品・生鮮品、市場から仕入れる生鮮品と続きます。在庫型センター(DC)は図表1の写真にもある滋賀県の多賀と京都の久御山(くみやま)の2か所で、両所とも通過型センター(TC)を併設しています。彦根もDCとありますが、多賀の保管容量不足を補うための補完倉庫です。多賀・久御山・京都には生鮮・チルドセンターが、京都にはアイスセンターもありますが、スーパー業界で自ら専用冷凍倉庫を持つ例は少ないと思います(運営は委託)。北陸や東海の拠点はTCです。

 こうした当社の物流拠点運営の特色の1つは、早い時期から在庫を預託方式によるベンダー在庫とし、出荷時点で平和堂の在庫になる仕組みにしていることです。1995年に、まだ成長途中の当社としてはかなり大規模な多賀センターを建てた時に、2代目の社長が決断し、業界で初めて導入しました。当時としては非常に先進的な取り組みだったと思います。

図表1 平和堂の店舗展開とDC(在庫型物流センター)
図表1 平和堂の店舗展開とDC(在庫型物流センター)
図表2 平和堂の物流プロセスと課題・解決の方向性
図表2 平和堂の物流プロセスと課題・解決の方向性

老朽化・複雑化・在庫分散…多くの物流課題

預託在庫とは、製造業などでは従来行われていたVMI(Vendor Managed Inventory、ベンダーが顧客企業に代わり在庫を所有・管理し必要な補充や発注を行う)方式ですね? 

財田氏 そうです。当時は渋る会社もある中、一部の大手食品卸会社が協力してくれたので、他社にも了解が取れ、進められたようです。
 それから30年が経ち、多賀の施設も老朽化して<課題(c)>と同時に、運営体制も立上当時の体制を維持している事が課題としてあがっています。これが<課題(a)>の「多重構造」で、例えば配送と庫内荷役の委託先が異なる、ドライ、生鮮・チルド、冷凍の温度帯ごとに委託先が異なる、といった入り組んだ状態になっていることです。

 これまで長年月にわたってその時代の最適化を積み上げてきた結果なのですが、運営管理に相当の工数と人員がかかる、改善・改革の取り組みも足並みが揃えられないなどの悩みがあり、何とか改善したいという思いがあります。
 また、生鮮センターについては多賀・久御山以外にも、福井・金沢・京都と点在しています。それぞれ近傍の生鮮市場から調達するためなのですが、<課題(b)拠点分散>で非効率な横持ち輸送が必要になっており、これをシンプル化・整流化したいという思いがあります。
拠点集約を検討したのですが、配送距離が伸びてしまう問題<課題(e)配送距離>と、北陸は現時点では15店舗と新拠点を設けるまでの規模がない<課題(f)低積載>ことから、当面、北陸はセンター拡張で対応しようと考えています。

 これらの物流課題に直面しているのですが、当社の組織は非常にフラットで、社長も専務も何かあれば私たち物流部の席に直接やってきて、指示を受けたり相談したりしています。上司も部下も皆、「さん」付けで呼び合っているんですよ。

そうなんですか!今回の改正物流効率化法で特定荷主には、物流統括管理者(CLO:最高ロジスティクス責任者を志向するとされる)の選任が、2026年度義務付けられます。貴社は特定荷主になられるかと思いますが、物流統括管理者の選任は進んでいますか?

財田氏 ちょうど先日、上司とその話をしたところで…まだ決めてはいませんが、私と上司で考えていくことになりそうです。

なるほど。では物流課題の続きをお願いします。

財田氏 そこで、私が入社し物流部長に着任した2022年以前から、青果の一部をお昼前の生鮮2便に移す取り組みを始めていました。それでも比率は1便:2便が7:3ぐらいだったので、私としては更に2便に比重を移そうと考えました。地方都市である彦根・多賀近辺は、都会と違って呼べる車が本当に少なく、集中を回避しないと車の確保が厳しくなっています。それに最近は運送会社からの運賃アップの要求がある中で、お店への配送時間を変えてでもコスト抑制対策を考えざるを得なくなっています。例えば土ものの大根や白菜等の様な持ちがいい物を2便に移すなど、選択を進めています。

「LT3=翌々々日」納品化を断行

残る課題は<(g)品切れ・波動…SKU削減、EDLP化>ですね。貴社では既に、業界で論点になっている、翌日納品から翌々日納品への「加工食品のリードタイム延長」には対応されているのですか?

財田氏 ちょうど当社では2024年から2025年にかけて、加工食品のリードタイムを「LT3」に変更したところなんです(LTはリードタイム)。

ええっ? 翌日=LT1でも、翌々日=LT2でもなく、翌々々日=LT3、ですか?(※店舗側から見た場合)

財田氏 そうです。発注から納品の間が2日、空きます(図表3)。

そこまでやっているスーパーは、他にあるんですか?

財田氏 いえ、ないと思います。加工食品については自信を持って、平和堂の取り組みが一番だと思います。ある食品メーカーの役員の方にも「本当にやるの?」とビックリされました。実は私自身、最初は平和堂だけのことを考えて、社長に「翌々日納品にしたい」と提案したんです。すると社長は、「これからはサプライチェーン全体で物流の最適化を考えなさい。平和堂だけの話じゃない。ベンダーさんのさらに手前には、メーカーさんがいるじゃないか」と言うのです。当時、主要なベンダー(卸企業)各社は、メーカーからの調達をLT1からLT2に移行しつつありました。「それに連動させるためには、(一番下流に位置する)当社はLT3にしなければいけないだろう?」と。

図表3 LT1からLT3へ/加工食品のリードタイム延長
図表3 LT1からLT3へ/加工食品のリードタイム延長

製・配・販の連携、サプライチェーンの全体最適化まで考えておられたのですね!
働き方改革、環境負荷低減といった社会課題の解決に対する意識も高い?

財田氏 はい。以前はLT1で当日売れたものを翌日に納品していました。お店にしてみれば万々歳ではあったのですが、メーカーもベンダーもこれに対応するには、すべて予測で商品や配送便を準備しなければなりません。実際には確定発注数とズレが生じ、様々な不都合を生む温床になっていました。
 実は我々自身のセンターも、予測で車両を確保していたんです。何がどれだけ売れたか判明するのは翌朝です。それがまだ分からない前日に予測で車両を確保していたので、実態とは乖離してしまう。だから朝になって「車が足りない!」と大慌てすることも少なくありませんでした。自分で自分の首を締めていたんです。
 そこで、「LT3」への改革の取り組みを社内で始めたのですが…商品部や店舗営業部門から、当初はなかなか理解を得られませんでした。導入にあたっては、各部署の理解を得るため、繰り返し説明の機会を設け、どうにか2023年からテスト開始に漕ぎつけました。1年間の実証実験で、店舗には問題が起きないことを示し、理解を深めていきました。

同時に商品SKUの削減で品切れ抑止

このLT3改革と同時に進められたことがあれば、教えてください。

財田氏 このLT3改革の過程で、私は「SKUの削減」も同時に進めなければダメだと考えていました。平和堂は特売型の企業であると同時に、お客様の要望に応える「豊富な品揃え」を基本方針としていました。このため当時の品目は合計で8,000~9,000SKU程度ありました。それも大型店から小型店まで同じ考えで棚にそれだけの商品を並べていたので、小型店では陳列棚のフェイスが当然狭くしか取れない。ポテトチップスとか、すごく売れる商品も小型店では多く置けないので、すぐ品切れが起きてしまう。お菓子のほか、RTD(Ready To Drink)の焼酎系などのドリンクはものすごく種類が多く、売れ筋商品でも2~3列しか取れないためすぐに品切れ、午後にはこれらの棚がスカスカになっていました。

 こうした事例を挙げて問題提起し、商品部に品揃えの見直しを提案しました。「売れるものを十分に置けず、品切れしてお客様にご迷惑をお掛けする。売れ筋品の品切れを防ぐため、フェイスを広くして量を確保するべき」と提案し、LT延長と同時に、商品部にはSKUの絞り込みを進めてもらいました。
 特売は継続していますが、個人的にはこれもEDLP(Everyday Low Price、商品・サービスを日時や店舗を問わず=特売ではなく、いつでも低価格で提供する販売戦略)に振っていく必要があると考えています。そうしないと品切れや波動に対して完全な対応はできませんから。

SKUの絞り込みもLT3改革と同時に、というところがミソですね。どうせやるなら一気呵成の勢いで、と。

財田氏 はい。このLT3化は丸2年かけて完了、SKU削減は、順次進めている途中です。
LT3化は北陸、東海、関西と地域ごとに順次導入していき、最後に2025年3月に滋賀の店舗に展開し、これにて全店舗の展開を終えたところです。SKU削減については、何をどうカットするのかは商品部の仕事ですので商品部主導で対応してもらいました。物流が口を挟む部分ではありませんので。

実際にSKU数はどのぐらい絞り込んだのですか?

財田氏 現時点では15%のカットです。最終的にどこまでカットするかは商品部の判断となりますし、EDLP化についてもどうしていくのかは今後、会社全体としての判断となりますので、現時点ではっきりとした事は申し上げられません。

共配から「SM物流研究会」に参加

さて後半は、SM物流研究会のテーマに移りたいと思います。そもそも研究会への参加を考えたきっかけは何だったのでしょうか?

財田氏 当初は「首都圏SM物流研究会」として活動をスタートされていたので、関西の当社は入れないなと考えていました。ただし平和堂としては以前から、ライフさん、西友さん、万代さんなど業界各社と個別に連携を取って情報交換をしていました。
そんな中、西友さんとの間で配送便を有効に使い合えそうなことが分かり、検討の結果、西友の長浜店から従来は空車で回送していた帰り車を平和堂に回し、多賀・久御山の拠点から平和堂のアル・プラザ城陽までデリカ商品を運んでもらう、という共同配送を始めていたんです(図表4)。

図表4 平和堂と西友で車両を有効活用し開始した共同配送
図表4 平和堂と西友で車両を有効活用し開始した共同配送

互いに空車のムダな回送をなくし、実配送にしたんですね、素晴らしい。

財田氏 そのような活動をしていた中で、SM物流研究会の「首都圏」が消えて「SM物流研究会」になったことを知ったので。それなら当社も入れるかな?と思って、座長のライフ・渋谷さん(本連載前回を参照)に聞いたところ、「入れますよ」と。ちょうど私も副社長から「研究会にいつ入るんだ?」と言われていた矢先でしたので、さっそく参加することにしました。
ただ関西系企業が少なかったので、万代さんとオークワさんにも声を掛けて「一緒にやりませんか?」とお誘いしました。 また社長同士でもそういう話が出ていたので声をかけて頂き、関西にも店舗を持つライフさんと合わせて4社が揃ったので、「関西SM物流研究会」を立ち上げる事に至りました。 日本スーパーマーケット協会(JSA)の活動を共に進めてきた経緯など、我々には下地もありました。

前回の研究会座長・ライフ渋谷さんとのインタビュー記事に、関西立ち上げ記者会見での4社の社長の写真を掲載させてもらいました。それが2024年12月のことで、つい先日の2025年2月に初めて「関西SM物流研究会」の会合が持たれたばかりと聞きました。

財田氏 そうなんです。この4社に加えオブザーバーとして西友さんも参加され、続いてマルアイさんが3月のSM物流研究会で正式に参加が認められました。我々と同じく、SM物流研究会に参加した上で、エリア部会の所属が関西SM物流研究会になるという形です。

SM物流研究会参加の7条件…①加工食品における定番商品の発注時期見直し、②特売品・新商品発注・納品リードタイム確保、③納品期限の緩和(1/2ルール採用)、④流通BMS導入、⑤予約受付システムの導入・活用、⑥バラ積み納品の削減推進、⑦トップのコミットメント…を各社ともクリアされるのですね。

財田氏 当社は②特売品・新商品発注・納品リードタイム確保だけは、酒類について未達成でしたので、商品部に頼んで対応してもらいました。他社でも一部、クリアされていない項目がありましたが、順次対応をされており2025年度中に目途が立つ予定と聞いています。

まずはトラック待機時間の短縮へ

図表5 納品車両の待機時間の実績(平和堂)

図表5 納品車両の待機時間の実績(平和堂)

さて、関西SM物流研究会の座長として特に取り組みたいテーマは何でしょう?

財田氏 首都圏では4つの分科会活動(生鮮、チルド、共同配送、パレタイズ化)を進めていますが、関西はまだ参加企業も少ないので絞り込む考えです。スーパー同士での共同配送も検討課題ですが、店からの帰り便にはカゴ車、クレートなど回収した什器を積載するので空便ではなく、フルに使えない問題があります。そんな中でも知恵を持ち寄り、困りごとを解決していこうと、まず考えているテーマは、「トラックの荷待ち・荷役時間の短縮」です。

 荷待ちについて、当社ではバース予約システムの導入で待ち時間を「基本ゼロ」にすることを目指しています。待機時間は30分単位で0~30分、31分~60分、61分~90分と集計していて、昨年4月までの実績は(図表5)の通りです。
この時点では予約率がまだ90%で予約なし車両が316台ありましたが、粘り強くお願いを続けた結果、現在(2025年3月)では予約率が96%まで上がり、1時間以上の待ち発生もわずかになりました。これを100%にして“待機ゼロ”にしたい。待ち時間は本当に何にもならないムダな時間で、しかも「1運行2時間以下ルール」に加算されてしまいます。荷役作業の時間を確保するためにも、荷待ちをなくしてしまおうと思います。
 ドライバーさんにとっても待機は一番のストレスです。仲間同士の口コミで「あのセンターに行くと、いつも長時間待たされる」と伝わり、「もうあそこには行きたくない」となってしまう。ある運送会社の社長さんが、「今はもう社長が仕事を選べません。ドライバーが行きたくないと言うなら、走らせられないんです」と話していました。ムリに行かせようとしたら辞めてしまいますから。昔は荷主が運送会社を選んでいたのが、今は運送会社・ドライバーに、荷主が「選んでもらう」時代です。「あのセンターなら、待ちなしにすぐ下ろせるよ」と言われる、ドライバーさんに優しい物流センターにならなければ、平和堂に納品してくれる車がなくなってしまいます。

まさにおっしゃる通りですね! 私も求職と求人の需給逆転が起こった現在の超人手不足時代には、「働き手に選ばれる会社」に、そして「運送会社に選ばれる荷主」にならなければ、事業継続は困難になると訴えてきました。

財田氏 残る問題は、予約よりも早く来てしまう車がよくあることです。多賀センターの場合は敷地が狭いので停めて待ってもらう場所が少ない。周辺にも迷惑になるので、なるべく予約時間に合わせて来てくださいと呼びかけているところです。

パレット納品拡大で荷役時間を削減

株式会社平和堂
物流部長 財田 晃氏

株式会社平和堂
物流部長 財田 晃氏

では、荷役時間についてはどうでしょう。

財田氏 パレタイズされていないバラ積み商品の荷下ろし作業に、長時間かかるのが最大の課題です。特に軽いお菓子類と即席麺では大半がバラ積みで、標準のT11型(1,100×1,100mm)ではない独自規格パレットで納品されるのも困っています。ある大手メーカーは12型(1,100×1,200mm)を使っていて、それはサイズが近いのでまだよいとしても、あるメーカーは1,100×1,400mmの大きなパレットを使っています。この場合はT11型に積み替えての納品にしてもらわなければならないという課題があります。
 即席麺については、まず量がまとまる特売品から、または荷待ち・荷役が2時間を越えている部分からパレット化しようと、対象を絞って始める予定にしています。

加工食品・スーパー業界全体の自主行動計画では、荷待ち・荷役時間を「第1ステップで2時間以内、第2ステップで1時間以内に」としていますね。法律には「1運行(発着合わせ)2時間以内」「1か所では1時間以内」とあるのに、「ウチのセンターでの荷受け時に2時間以内でいいんだ」と誤解している人がまだおられます。

財田氏 はい、最終的に「1時間以内」を目指すという認識で間違いありません。それが第2種特定荷主の義務になりますから、やらなければいけないと思っています。
 加工食品のパレット化を阻むもう1つの理由は、同じパレットには同じSKUの・同じ消費期限の商品しか積んではいけない、という食品業界の特有のルールがあることです。衣料品や雑貨、また私が以前経験した家電業界には、そんな慣習はありません。これは物流を非効率化させてしまっている根源の1つではないかと私は思っています。その解消のためにも、現在、メーカー様は賞味期限から日付を省き年月単位への変更や卸会社と協力してパレタイズの段階で品番、賞味期限、数量の納品情報を連携させる事で検品レス化を進めておられるので、今後、改善されていくことを期待しています。

お菓子についてはどうですか?

財田氏 菓子業界における共同配送の課題は、路線会社が各社の商品を積み合わせるので、10t車でまとめて入荷される点にあります。メーカー1社なら数百ケースなのが、20社以上の商品がまとまると1,000~1,500ケースにもなり、それがバラ積みなのでドライバーさんが2~3時間半もかけて荷下ろししているんです。
 従ってお菓子の場合、メーカーではなく路線会社と協議し、パレット化を依頼する必要がありますが、お金もかかるので簡単にはいきません。その中でも某製菓会社様の場合は、倉庫が久御山センターに近いのでパレットで直納してもらい、20~30分で下ろせるのでトラックを2回転させ、負担とメリットのバランスを取ることで実現できました。

回転率を上げて運行効率を高め、負担をカバーするのがパレット化の王道だと思います。

財田氏 個別に話をして互いに知恵を出し合うと、解決策が出てくることがあるんです。また関西の食品メーカー様との協業では、平和堂の久御山センターの車で食品メーカー様の倉庫に取りに行き、パレットで積んで多賀センターに納品し、降ろし終わったら再度、多賀センターから店舗備品を再度積んで久御山センターへ帰る、という形にしています。
 ただパレット化しても、フォークリフト作業は誰がするかの調整も必要です。日本加工食品卸協会のガイドラインでは、「商品が検品できる状態にするまでがドライバーの仕事」とされていますが、メーカー様によっての解釈や業界としての商慣習等もあるため、一筋縄ではいかないのが現状です。そういう中でも久御山センターでは長時間化している車両への荷降ろし補助等を行って頂いている事例もあります。

改正物流法のガイドラインでは、ドライバーの主業務は輸配送であり、荷待ちや荷役等の付加業務は基本、別料金にすべしとあります。本来はメニュープライシングで倉庫や荷主が料金を負担すべきところですね。

財田氏 別のセンターでは荷役作業をするなら有料化が必要との事で、会社により違います。この点も各社と話し合って解決しないといけない課題です。
 なおパレタイズ納品化については、平和堂とお取引先様・関係先各社様で作っている「ハトの会」の中に「パレタイズ分科会」「作業改善分科会」を設け、各社様の協力を仰いで改善に取り組んでいます。さらにSM物流研究会を通じて、菓子物流改善委員会、日本加工食品卸協会、食品物流未来推進会議などと連携して、業界全体での取り組みにつなげていく考えです(図表6)。

図表6 パレタイズ納品化・課題解決に向けて
図表6 パレタイズ納品化・課題解決に向けて

関連業界で「物流協業化」の推進へ

ところで貴社の場合、物流拠点はベンダーや3PL各社に委託しつつ、物流効率化や出店エリア拡大などに向けた、拠点再編の計画は貴社で進める形ですか。

財田氏 基本的に物流拠点の設置は委託先の投資によっていて、当社と相談しながら進めてもらいます。ただ多賀センターは土地と建物は平和堂の所有です。当社はどちらかと言うと、多くの店舗で土地・建物も自社で所有する形をとっています。ただ現在のドミナント展開エリアを広げる予定は、今のところないため、既存のセンターをベースとしていく考えです。

最後に、残る課題と今後の展望についてお願いします。

財田氏 そうですね、平和堂としては日配品のリードタイム延長で遅れを取っているので、その延長が当面の課題です。洋日配品はまだしも、和日配品は消費期限が短く、商品部でも難しいと頭を悩ませています。
 また将来的にはスーパー同士での共同配送、あるいは共同物流センターの構築などを考えていきたいですね。特に店舗数が限られ、積載効率が高めにくい東海や北陸に関して。可能性をあれこれ探っていますが、メーカーの共配は比較的やり易いのに比べ、スーパーの共配はハードルが高いんです。店舗納品時間が決まっているので、互いに納品時間をずらして1つの便で順次納品できればいいのですが、この場合、費用等の按分も難しい課題となります。
 もう1つ強化したいのが、「物流協業化」の推進です。これは「ハトの会」会員各社様に呼びかけているのですが、ベンダー各社が多数走らせている平和堂車両を、メーカー・卸会社や他のスーパー、またドラッグストアなどの配送にも活用してもらい、互いにメリットを生み出していければと考えています(図表7)。
 多賀・久御山・福井・東海の4センターで331車両(10t×98台、4t×233台) 、他にも冷凍86台・生鮮54台があり、全てパワーゲートリフターを装着しています。当社は2023年に第1種貨物利用運送事業の許可も取っているので、どんどん利用してもらい、協業の輪をさらに広げられればと思っています。

図表7 「ハトの会」会員企業との物流協業化取り組み
図表7 「ハトの会」会員企業との物流協業化取り組み

なるほど、小売物流にはなお様々な可能性があることがよく分かりました。さらなる進捗に期待しています。本日はありがとうございました! 

 

執筆者 菊田 一郎 氏 ご紹介

執筆者 菊田 一郎 氏 ご紹介
L-Tech Lab(エルテックラボ)代表、物流ジャーナリスト

㈱大田花き 社外取締役、流通経済大学 非常勤講師、ハコベル㈱ 顧問

1982年、名古屋大学経済学部卒業。物流専門出版社に37年勤務し月刊誌編集長、代表取締役社長、関連団体理事等を兼務歴任。2020年6月に独立し現職。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のデジタル化・自動化、SDGs/ESG対応等のテーマにフォーカスした著述、取材、講演、アドバイザリー業務等を展開中。17年6月より㈱大田花き 社外取締役、20年6月より㈱日本海事新聞社 顧問(20年6月~23年5月)、同年後期より流通経済大学非常勤講師。21年1月よりハコベル㈱顧問。

著書に「先進事例に学ぶ ロジスティクスが会社を変える」(白桃書房、共著)、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」(中央職業能力開発協会、11年・17年改訂版、共著)など。

CREの開発物件【ロジスクエア】

ロジスクエア京田辺B

ロジスクエア京田辺B
ロジスクエア京田辺B(全景イメージ)

ロジスクエア京田辺Bは、2026年8月末の竣工を予定しております。
本物流施設が位置する「京田辺エリア」は、人口集積地である大阪北摂エリアや京都中心部へのアクセスにも優れ、物流拠点立地として優位性を備えています。
また、将来的には新名神高速道路の全線開通(八幡京田辺ジャンクション-高槻ジャンクション間(2027年度予定)、城陽ジャンクション-大津ジャンクション間(2028年度以降))により、神戸から名古屋までがつながり、新名神高速道路を軸とした新たな広域物流ネットワークが構築され、更なる利便性向上が期待されます。

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ロジスクエアふじみ野C

ロジスクエアふじみ野C

ロジスクエアふじみ野C棟は埼玉県ふじみ野市にて開発予定のBTS型物件です。
ふじみ野市は埼玉県の南部に位置しており、都心部へのアクセスにも優れ、物流拠点立地として県内でも有数のニーズの高いエリアです。開発予定地は道路ネットワークの活用により広域物流拠点立地としても優位性を備えています。

物件詳細 ロジスクエアふじみ野Cの物件詳細ページはこちらから
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