（レポート）オイシックス・ラ・大地の物流変遷と戦略について

オイシックス・ラ・大地は、有機や特別栽培野菜など安全性に配慮した食品の宅配販売を行っています。「これからの食卓、これからの畑」をフィロソフィーに掲げており、食に関する社会課題をビジネスで解決することを重視しています。

オイシックス・ラ・大地は、おもに「Oisix」「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」の3ブランドを展開しています。それぞれの提供価値と会員数は以下のとおりです。

3ブランドの合計会員数は約50万人で、売上高は約1152億円です。
※2023年3月期 実績

当社の強みは、「生産者とのダイレクトネットワーク」「サブスクリプション・マーケティング」「食×サブスクの国内最大級の物流センター・ミールキット製造工場」にあります。生産者の方々から商品を直接調達し、製造拠点でミールキットをつくり、消費者の方々に定期宅配を行っています。

当社の物流拠点ですが、「Oisix」は神奈川県海老名市、「大地を守る会」は千葉県習志野市、「らでぃっしゅぼーや」は全国4箇所に拠点を配置しています。

また2024年2月から、神奈川厚木市でOisixの冷凍ステーションを稼働開始しています。これにより出荷キャパシティが前年度比で約3倍に拡張されました。

オイシックス・ラ・大地は、3ブランドごとに異なった物流戦略を展開しています。

それぞれの基本戦略は以下のとおりです。

Oisix……事業成長に合わせた拠点投資により自動化・省人化を推進。委託先配送会社に合わせてセンターのオペレーションを設計

大地を守る会／らでぃっしゅぼーや……既存拠点を最大活用し、外部と協業しながら市場環境に対応

Oisixに関していうと、マーケットの拡大に合わせて事業成長しており、投資原資を確保しています。また事業成長とともに、センターを増設するのではなく移転することで、キャパシティ拡大と自動化を推進しています。

Oisixが扱う「生鮮品」は、EC化率が現在4%で、まだまだ成長余地のある業界です。しかし一方で、「JANがない」「調達量が不確実」など生鮮品特有の課題を抱えており、他産業に比べてデジタル化・自動化がしづらい業界です。

こういったマーケットの状況の中でOisixは、以下のアプローチを行っています。

Oisixは、コロナ禍を機に会員数が増えました。

その際の急激な物流増加に対応するために物流施設を増設したのですが、旧冷蔵センター（海老名ステーション）で保管した商品を出荷するために他の倉庫に商品を移すなど、かなり煩雑な作業を行っていました。

当時の冷蔵センターにおける課題には「倉庫が分散している」「保管スペースが不足している」「配送仕分け作業の効率が悪い」「集品ライン能力が不足している」「在庫管理が非効率」などがありました。

そしてこれらの課題を、以下の3つの方法で解決してきました。

簡単にいうと、「倉庫を大きくし、1ヶ所に集約した」「倉庫に生産性の高いマテハンを導入した」「商品検索ができるようシステムを構築した」の3点です。これらを2019年から2021年にかけて行いました。

そして2022年に冷蔵センターが稼働開始しました。センターを移転することで、物流費比率は一時的に悪化しましたが、デジタル化・省人化を導入した生産性向上により、収益良化フェーズへ移行することができました。

2024年からは冷凍センターも稼働開始しました。これらの冷蔵／冷凍センターのキャパシティにまだ余裕はありますが、これらもいつかはキャパシティ不足になる可能性があります。

今後は、Oisixの成長スピードとキャパシティを見ながら、次のセンターの新設を検討していきます。その際の基本戦略は「将来の物量予測をもとに、過剰投資にならないように投資判断を行う」ことが重要だと考えています。

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

■講師
オイシックス・ラ・大地株式会社
ロジスティクス本部 本部長 水間 健介 氏