(レポート)SM物流研究会の取り組み ~持続可能な物流実現のための効率化~
株式会社東急ストア
執行役員 営業本部 商品統括室長 兼 シン・デリカプロジェクト
川西 秀樹 氏
SM物流研究会とは
東急ストアは、2024年物流問題に向けて、「ドライバー不足」や「物流費高騰への対応」「カーボンニュートラルの実現」など、さまざまな課題解決に向けて取り組んでいます。
そのうえで、「将来に向けた安定供給には、業界内での協力体制を構築することが重要」と考え、2023年10月よりSM物流研究会に参加しています。
SM物流研究会は、現在19社が参加しており、参加企業の合計売上規模は約6.4兆円になります。これは、全国のスーパーマーケットの売上高の40%を超える規模となっています。

研究会の目的は、「2024年問題」をはじめとする物流危機を回避し、地域の生活を支える社会インフラとしての責務を継続して果たすため、物流分野を各企業間の「競争領域」ではなく「協力領域」と捉えて、各社の協力による物流効率化策を研究・検討することです。
現在も積極的に新たな企業の参加を促進していますが、新規参加する企業には、持続可能な食品物流に向けた取り組みとして、以下の7つの取り組みを求めています。
1. 加工食品における定番商品の発注時間見直し 納品日前日の12時までに卸が発注データを受信できる状態であること 2. 特売品・新商品における発注・納品リードタイムの確保 特売・新商品の発注を6営業日前までに行い、リードタイムを確保すること 3. 納品期限の緩和 賞味期間180日以上の加工食品のすべてに、「1/2ルール」を採用すること 4. 流通BMSによる業務効率化 卸売業と小売業間の受発注方式における標準化EDI「流通BMS」を導入・活用すること 5. バース予約システムの導入と活用 6. バラ積み納品の削減推進(パレット納品の推奨) 7. トップのコミットメント |
1~6は実施予定があることを最低限の条件としていますが、7「トップのコミットメント」は必須となります。
研究会はおもに、首都圏と関西に分かれて活動しています。それぞれの目的や参加企業、活動内容は以下のとおりです。


SM物流研究会の成り立ち
SM物流研究会は、サミット(株)、(株)マルエツ、(株)ヤオコー、(株)ライフコーポレーションの4社が、2022年にサプライチェーン全体の最適化に向けた取り組みを検討したことから始まりました。

その後、2023年10月に10社体制で「SM物流研究会」を発足し、2024年10月に19社体制となりました。
現在も参加を希望する企業が増えており、1社でも多くの企業に参加していただき、協力していくことが、より多くの課題解決につながると考えています。
SM物流研究会の活動
下記は、SM物流研究会への参加条件である「7の取り組み」に関して、各社の状況を示した一覧表です。


「2. 特売品・新商品における発注・納品リードタイムの確保」と「3. 納品期限の緩和」は、多くの企業が未達成の状態でしたが、現在は全社、ほとんどの項目で達成しています。
当社・東急ストアも、参加時は「3. 納品期限の緩和」を実施していませんでしたが、2023年12月に1/2ルールを採用しました。1/2ルールを適用したことでDCの鮮度期限切れ商品が減少し、物流改善だけでなく、社会的課題である食品ロス改善にも効果が表れています。

SM物流研究会が2023年度に進めてきた取り組みについてご説明します。
特に注力してきたのは、荷待ち・荷役作業等時間の削減です。2024年3月末までに「全車両の荷待ちを1時間以内」にすることを目標とし、バース予約システムの導入やパレット納品の拡大、ドライバーの荷役作業の明確化に取り組んできました。
荷待ち時間の削減効果は以下のとおりです。

2023年10月時点で、物流事業者10社の1時間超過率は14.8%(3348台)ありましたが、おもに入荷バース予約システムの活用が広がった効果で、2024年10月にはこれが1.2%(345台)まで減少しました。
荷待ち・荷役作業等2時間の超過状況は以下のとおりです。

2023年10月時点で、2時間超過率は11.8%(2740台)でしたが、おもに「バラ積み」から「パレット積み」に移行したことで、2024年10月はこれが1.5%(426台)まで減少しています。
また、東急ストアでは、物流の効率化を進めるため、委託先の配送管理システムを活用し、配送状況をリアルタイムで正確に把握できるようにしました。これにより小売店段階での時間を把握でき、走行距離をデータ化することでCO2排出量も把握できるようになりました。
次に、SM物流研究会が2024年度に進めてきた取り組みについてご説明します。
「パレット納品の拡大」、「共同配送、空きトラックの有効活用」、「生鮮物流における物流課題の解決」、「チルド物流における物流課題の解決」の4つの取り組み項目別に分科会を発足し、検討を開始。製・配・販で全体最適を目指しています。

分科会の今後の取り組みは以下のとおりです。

この中でも、生鮮物流とチルド物流においては、いくつかの共通課題があります。
1つ目は「リードタイムの見直しと発注から配送までの効率化」です。生鮮食品やチルド商品の輸送では、鮮度や品質管理の面でスピードが求められる一方、温暖化による成果物の収穫量の減少や人手不足による製造能力の低下もあり、現状より早いタイミングでの確定数を求める声もあります。
そのため、適切な配送リードタイムを設定し、発注から納品までのフローを見直すことが課題となっています。
2つ目は、輸配送コストの可視化です。生鮮食品やチルド商品の配送は温度管理が必要なため、一般的な商品の輸送よりも高コストになりがちです。
そのため、輸配層にかかるコストを細かく可視化し、コスト削減に向けた具体策を検討しています。
SM物流研究会が目指すのは、「物流問題という大きな課題を、業界全体が一丸となって解決すること」です。
競合関係にある企業同士が協力領域をつくり、ノウハウを共有し合いながら取り組みを進めています。
研究会を通じて、競争ではなく、協力で課題を解決することで、業界全体に新しい可能性を生み出していきたいと考えています。
株式会社東急ストア 執行役員 営業本部 商品統括室長 兼 シン・デリカプロジェクト
川西 秀樹 氏
募集要項
日時 | 2025年1月22日(水) 16:00~17:10 |
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会場 | オンライン受講(Zoom) |
参加対象者 | 小売業・食品卸・メーカー・荷主・物流企業・運送会社 様 |
参加費/定員 | 参加費無料 / 定員100名 |
本件に関するお問合せ
- お問合せ先:
- 株式会社シーアールイー マーケティング部
- 担当:
- 杉本(スギモト)
- メール:
- leasing_mail@cre-jpn.com
- 電話:
- 03-5570-8048