(レポート)人材不足に負けない物流事業運営 ― 労務政策の最新成功事例とヒント ―
アドバイスプラス 代表
牧 邦彦 氏
●運送業界の現状
運送業界・倉庫業界は現在、「高齢化によるドライバー人材の減少」や「2024年問題による1人当たり労働時間の減少」「改正物効法の影響(多重下請け構造の是正・基準価格)」「倉庫業務者の高齢化、引退によるプロ人材減少」など頭の痛い課題を数多く抱えています。
また小売業界・製造業界も「高齢化や引退による人手の減少」や「右肩上がりだった時代の商習慣の存続」「改正物効法の影響(CLO設置義務)」などの課題を抱えています。
共通点は「慢性的な人材不足」です。そして私自身の考えでは、以下の3点がこれらの課題を解決するために必要です。
①従来の常識や一般論を疑う
「この課題、本当に自動化ロボットを導入したら解決するのか?」など、まずは一般論を疑いましょう。私は今まで、ロボットを導入したが適切に活かされず、積み残しの問題が解決されていない現場をいくつも見てきました。ロボットを導入する場合は、一気に何十台も導入せず、まず1台か2台入れてみてテストし、上手くいったら増やしましょう。
②低稼働、未活用リソースを探査し活用する
「月曜日の朝、9時にはピッキング作業を始めなければいけないのに、荷主さんからデータが来ない」というような状況は、どの現場でもよく起こっていると思います。私はこういった際には、前日の夜にデータを送ってもらうことを荷主さんに約束してもらいました。このように対処することで人材の低稼働やムダ・ムリ・ムラを減らしていくことができます。
③社会課題の解決に寄与し、業界地位を向上させる
たとえば、荷主と運送事業者とNPO法人が組めば、本来なら食品ロスとなるような場合に、子ども食堂に寄付することができます。そうやって物流業界も社会活動を行い、世の中のため、人のためになることを行っていけば、社会へのPRになるし、働く方々に「ここで働き続けたい」と動機付けできるのではないでしょうか。
●物流職の労働条件・環境の改善事例<ドライバー職>
それでは、物流職の労働条件・環境の改善事例を見てみましょう。まずはドライバー職から。
<ドライバー職>
・完全週休3日制、残業ゼロ、年俸制、副業承認
これらの制度を実施している物流事業者がだんだん増えてきています。
・定年撤廃
70歳の方でも元気であれば働くことは可能です。ただ健康診断を厳しくし、詳細までチェックしながら雇用を継続する必要があります。
・累進型退職金制度(短期間雇用でも支給)
たとえば6ヶ月の勤務で10万円、1年間で70万円、2年間で100万円と、退職金を累進型にし、求人時に告知すれば、就職希望者をより増やすことができるでしょう。
・独身寮や社宅(借上含む)、喫食・奨学金返済・住宅ローン・物価高への補助等の福利厚生
関東・京阪神の居住費が上がってきており、新しい形の寮や社宅を導入する事業者が増えてきています。またオリジナルの福利厚生を考えることで、社員の定着を目指します。
・各社独自の支援策
経験の浅いドライバーのために社内・周辺マップを作成して支給する、無料自販機を導入する、昼食を無償で提供するなど、定着率を高めるために各社さまざまな努力を行っています。
●物流職の労働条件・環境の改善事例<物流センター内オペレーター>
次に、物流センター内オペレーターの労働条件・環境の改善事例を見てみましょう。
<物流センター内オペレーター>
・3LPとの強い連携
物流を業務委託する場合は、「じゃあお願いしますね」と任せるのではなく、荷主サイドから人材教育や人材交流を行い、密に連携を取ることが重要です。
・5時間勤務(10時~15時連続勤務)
子育て世代向けなど、勤務パターンを柔軟に用意する必要があります。
・変形労働時間制
新規の方々に向けて、1週間のうち、もっとも忙しい月・火曜日は8時間労働、水・木曜日は7時間労働、金曜日は5時間労働など、曜日ごとに労働時間を変えた雇用契約を結べば、センターの稼働状況に合わせて適切に人員を配置することができます。
・設備投資の促進
パウダールーム、温水洗浄便座、ロッカー、私物棚、センター内でBGMを放送するなど、動機付けにつながる設備投資を行いましょう。
・社内販売
食品やアパレル、荷主と連携した商品などを販売します。
・柔軟で魅力的なインセンティブ
施設見学や研修、体験といった形で実施し、食事会などを豪華にします。実施後は、視察会レポートという形で感想文を書いてもらい、保管しておけば、課税対象になりません。
●その他、物流現場の改善事例
ここからは私が見聞きしたホットな事例をいくつかご紹介します。
・若者の再雇用
「若年層の学卒の方を雇用したが、1年後には辞めてしまった」という話がよくあります。そして一度辞めたのに「もう一度ここで働かせてください」と再び連絡をしてくるケースもあります。ある会社は、このような場合、昔は断っていましたが、時代も変わってきたので、再び面接して「本気で働きたい」と確認できた場合に再雇用しているそうです。制度でいうと「カムバック制度」です。ただ、「いつでも辞められる」と思われてはいけないので、再入社する際のルールは引き直しましょう。
・配置転換
私は、配置転換はなるべく行わない方がいいと考えています。「あなたの担当はピッキングです。あなたは検品担当です」と決めた方が長く働いてくれる確率が高いと思うからです。特に障害者雇用を考えた場合、彼らの中にはひとつのことをやり続ける集中力に優れた方がたくさんおり、適正なところに入ってもらうと、とても力を発揮してくれます。
・外部コンサルティング
プロのコンサルティング会社に頼んで、働き方改革を実施した会社もあります。私としては外部コンサルを入れるのはあまり賛成しませんが、その会社の場合は、「労働条件が厳しすぎる」とそのコンサル会社から注意され、それまで自分たちは気付いてなかったそうです。そういった会社はなかなか自浄作用が働かないので、外部から人を入れた方がいいかもしれません。
・シングルマザー採用枠
とある会社は、機会があってシングルマザーの方を何人か連続で雇用しました。彼女たちは、ひとりで子どもを育てなければならないため、とてもよく働き、優秀だったそうです。そこでその会社は「シングルマザー採用枠」として枠を儲けることにしました。今ではミドルマネージャー以上に昇格したシングルマザーの方もたくさんいるそうです。
●現場の「本音」を拾い上げる勇気を
最後にお伝えしたいのは、改善のヒントは常に「現場のリーダー」が持っているということです。
会議室で数字だけを見ているのではなく、現場に近いリーダーと腹を割って話してください。「何が一番困っているのか」「どうすれば皆が楽に、誇りを持って働けるのか」。
経営者が現場の声に真摯に耳を傾け、それを具体的な形(設備、制度、報酬)に落とし込んでいく。そのスピード感こそが、物流激動の時代に「選ばれる現場」であり続けるための唯一の正解だと、私は確信しています。
アドバイスプラス 代表
牧 邦彦 氏
募集要項
| 日時 | 2026年5月22日(金) 16:00~17:00 |
|---|---|
| 会場 |
CIVI北梅田研修センター (大阪市北区芝田2-7-18 LUCID SQUARE UMEDA 5階) google map |
| 参加費/定員 | 参加費:無料/定員:50名〈先着順〉 |
本件に関するお問合せ
- お問合せ先:
- 株式会社シーアールイー マーケティング部
- 担当:
- 杉本(スギモト)
- メール:
- leasing_mail@cre-jpn.com
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