スタッフコラム

間違いだらけの物流DX③ ~2つの事例からDXの本質に迫る~

間違いだらけの物流DX③ ~2つの事例からDXの本質に迫る~

みなさま、こんにちは。ascend株式会社代表取締役の日下です。前回は、DXとは単なるデジタル化ではなく、「業務や製品・サービスのデジタル化による、新しい製品・サービスの実現」を意味するというお話をさせていただきました。本日は、他業界も含めた具体的な事例に触れながら、DXの本質に迫って参りたいと思います。

前回までのおさらい

事例紹介の前に、あらためてDXのポイントを確認しておきましょう。DXには、デジタル技術を活用して実現する「目標」が明確に定められていますが、この目標とは、新しい製品やサービスの実現による経営の革新を意味します。DXの実現のプロセスを計画策定(Planning)から物理データのデジタル化(Digitization)、業務プロセスのデジタル化(Digitalization)、目標の実現(Integration)の4つに区分して事例を読み解いていきたいと思います。

DX事例1: 時間や場所に捉われない、教育サービスの実現 – トライグループ

他業界のわかりやすい事例として、家庭教師派遣等で広く知られる株式会社トライグループのDXをご紹介します。この事例は、物理データのデジタル化からプロセスのデジタル化、そして最後にビジネスモデルの変革にまで繋がる、お手本のようなDXの事例になります。

トライグループのDX

トライグループのDX

出所)公開情報に基づき筆者作成

トライグループは、時間や場所に捉われない質の高い教育サービスの実現を通じて新たな市場を開拓するべく、DXに取り組みました。具体的には、AI技術を活用した教育コンテンツを、原則無料のスマートフォンのアプリケーションで利用できるようにしたのです。

従来の学習管理はアナログな世界が主流でした。教育者と生徒は物理的に同じ場所に存在しなければならず、教育内容や復習に使われるノートの質には当然ばらつきが発生し、時間もかかります。また、単純な回答の採点も教育者が時間を割いて行わなければならず、その後の学習計画も教育者個人の属人的な判断に委ねられることになります。

図1に記載の通り、この取組にはDXの前段となるデジタイゼーション(教育ノウハウや生徒行動のデータ化)及びデジタライゼーション(AIによる学習計画策定の自動化)が含まれています。学習は高品質な映像教材で行い、生徒は必要に応じて何度も繰り返し視聴することができ、わからないことがあれば料金を支払うことで質問をすることもできます。学習効果の診断はアプリケーション上のテストで行い、結果はもちろん自動で採点され、AI(人工知能)による理解度の診断と学習計画の提案が定量的なデータに基づいて行われます。

これにより教育の質は向上し、教育者のみならず生徒が使う時間までも削減されています。つまり、教育サービスの提供者であるトライグループのみならず、顧客である生徒側にも「業務効率化」に相当する効果があり、尚且つ教育サービスの質も向上しているため、「教育の価値」自体が向上していると見ることもできます。「教師の指導時間」に依存する人月工数ベースから、質問の手数料という従量課金型のビジネスモデルへの大転換に成功した事例と考えることができます。

如何でしょうか。目標策定から始まり、課題の抽出及び適切な技術選定、デジタイゼーション、デジタライゼーションを通じて経営の革新を行うイメージを持っていただけたのではないかと思います。それでは、次は物流という文脈におけるDXについて、弊社取組事例を交えたご紹介をさせていただきます。

DX事例2:運送事業者の顧客・案件のポートフォリオ化を通じた収益性改善

弊社が取り組むDXは、顧客・案件情報を、BI(ビジネス・インテリジェンス)技術を用いて自動的に分析し、案件単位での収益性の判断を可能にするものです。日々の運行管理の中には実は非常に有益な情報が含まれており、物理データのデジタル化とそれを自動で収集するための業務プロセスのデジタル化を通じて、経営革新をすることは十分に可能です。

トラック運送業のDX

トラック運送業のDX

出所)筆者作成

運送業界は99.9%が中小企業でありIT投資の体力が十分でないこと、また、荷姿や輸送条件などが多岐に亘るため、汎用的な業務システムの構築が困難であることにより、日常業務のほとんどは手作業で実施されているのが現状です。日常業務が手作業で行われているため、顧客や案件に係る情報は社内で分散し、分析するにも分析対象のデータがない状態にあると言えます。結果として長年の勘や経験によって日々の運行が管理されているのが実態でないでしょうか。

弊社では、まずは受注データをデジタル化することで情報を蓄積し(デジタイゼーション)、運行管理業務のプロセス全体をデジタル化(デジタライゼーション)することで、全ての運行情報全体の可視化を行いました。これらのデータを基に収益性の分析を行い、単価交渉の余地や案件継続性の判断を支援することで、実際の収益改善に貢献することに成功しています。また、このシステムを、買い切りではなく定額制のSaaS(Software as a Service)として提供することで、数百万~数千万円単位でのIT投資を行うことができない中小事業者のDXを推進することができると考えております。

おわりに

DXという言葉が曖昧に使われ、実態を伴わない・効果が持続しない改革をたくさん目にしてきました。しかし、正しい理解に基づくDXのプロセスはシンプルであり、プロセスに則れば必ず効果を出すことが可能です。実現に向けた推進パートナーが必要でしたら、些細な疑問等でも構いませんので、弊社までお問い合わせいただけますと幸いです。

連載コラム:間違いだらけの物流DX

1 間違いだらけの物流DX① ~運送業界を待ち構える3つの悲観シナリオ~
2 間違いだらけの物流DX② ~DX推進における3つの落とし穴~
問合せ先 ascend株式会社
メールでのお問合せはこちら
growth-support@ascendlogi.co.jp 

執筆者 日下瑞貴(くさかみずき) 氏 ご紹介

執筆者 日下瑞貴(くさかみずき) 氏 ご紹介

1990年4月、北海道江別市生まれ。2016年3月早稲田大学政治学研究科修了、PwCコンサルティング、野村総合研究所を経て、2020年3月ascend株式会社を創業 代表取締役社長、現職。論文「フィジカルインターネットによる物流課題の解決」にてヤマトグループ総合研究所 審査員長特別賞受賞。物流ニッポン「物流DXの進め方」を連載中。その他に物流DXに関する講演多数。

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