EC物流倉庫の立ち上げに必須!効率的な人材確保のコツとは?
EC事業の成長に伴い、効率的な倉庫運営と確実な人材確保は、企業の競争力に大きな影響を及ぼします。倉庫の効率的な運営は、ECサイトの迅速な配送と顧客満足度の向上に直結しており、企業のブランドイメージにも大きな影響を与えるため、慎重な立ち上げ計画が求められる場合が多いでしょう。立ち上げには全体の計画や設計をはじめ、物流システム選定やレイアウト設計など重要なポイントは数多くあり、頭を悩まされる方も多いのではないのでしょうか。
今回は、倉庫の立ち上げ時の重要なポイントの一つでもある「人材確保」に焦点を当て、倉庫立ち上げ時のステップと効果的な人材確保のポイントを解説します。ぜひ、ご一読ください。
物流倉庫の立ち上げ時の流れ
まず初めに、物流倉庫の立ち上げにあたっての大まかな流れを解説します。
1.計画・設計
最初に、新たに設けるEC物流倉庫の役割を明確にします。例えば、保管と発送がメインの拠点、輸送やラストワンマイル配送がメインの拠点、流通加工の拠点など一言に物流倉庫といっても用途は様々です。自社の物流の流れを整理し、新たに立ち上げる物流倉庫へ求める役割を明確化しましょう。
役割を明確にした後、次は立地を選定します。雇用確保の優位性や、高速道路へのアクセスの良さや配送の拠点となる運送会社との距離などが選定基準に挙げられます。
倉庫の立地が決定したら、物流要件に基づいて倉庫内のレイアウトの概略設計を行います。どのような作業を、どのような手順で行うのか、保管場所や作業場所はどのくらい必要で、どのように配置するのかなどの効率を鑑みながら計画を練っていきましょう。例として、理化学機器の物流倉庫では、スペースを最適配分するため、保管エリアに高さを活用した高層中量ラックを設置しました。また、頻繁にピッキングされる小物部品については別途小型ピッキングエリアを設け、将来的に保管物が増えても保管エリアが混雑しないように設計をしたケースもあります。
ここで行う概略設計によって、どれだけの設備が必要になるか、作業導線はどうするかなどの大枠が固まります。
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2.作業計画の策定
全体の計画が決まると、次のステップとして倉庫内の作業計画を定めます。入荷から出荷までの各工程の具体的な手順を定め、標準作業手順書(SOP:Standard Operating Procedures)を作成します。各作業の標準手順を文書化し、従業員に共有できるようにします。
3.物流設備とシステムの選定
次に、どのような設備導入をするか、作業計画に合わせて必要な仕様などから選定していきます。作業内容や頻度、負荷をもとに最適な仕様を選定する必要があります。高頻度・小型商品のピッキングが多いEC物流倉庫では、商品サイズや出荷頻度、出荷形態を考慮してピッキングカートや自動化機器を工夫、組み合わせることが必要となるでしょう。 また、EC物流倉庫では品目数も多いため、WMSのピッキング指示機能を活用し、ピッキング作業の指示をデジタル化することで、作業者が効率的に商品をピッキングすることができるようになります。
4.運営プロセスの確立
先に検討した作業手順や、システムや設備を問題なく使用できるよう、従業員へのトレーニングも必要です。 それぞれの工程や作業の役割に応じて、どのような指導・トレーニングが必要になるかも確認しましょう。
例として、委託倉庫では、物流のプロによる運営が最初から一定の水準で行われる場合が多いです。一方で、自社運営を選ぶ場合は、事前にスタッフの採用やトレーニングを進める必要があります。人材確保に時間がかかる可能性もあるため、余裕を持った採用計画を立てることが重要です。さらに、ロボットやマテハン機器を導入する際には、操作を担当するスタッフへの研修が不可欠です。研修期間としては1~2か月程度を見込むとスムーズに稼働を開始できます。
5.試運転と調整
おおよそ準備ができたら、稼働前に必ず行うのが試運転と調整です。OT(operational testing)や運用テストなどと呼ぶこともあります。 各工程において想定される運用を実践形式で行い、問題なく稼働できるかを評価します。
不具合や課題、調整が必要な部分を稼働前に解決しておくことで、稼働後のトラブルを回避することができます。
並行して行う、「人材確保」の重要性
上記にて、物流倉庫立ち上げの際に必要な大まかな流れを解説しましたが、並行して行う必要があるのが「人材確保」です。立ち上げ後、安定した稼働には適切な人材の確保が不可欠ですが、人材確保には時間がかかります。また、稼働前には、新人スタッフが問題なく作業を行えるようトレーニングを行う期間も十分に確保しておかなければなりません。そのため、作業計画の策定の時期から並行して行うことが重要です。物流倉庫の規模や作業内容から採用計画を策定し、計画的に採用活動を進めていきましょう。昨今、人手不足の影響で、思っていたより採用ができない等の問題が発生する場合が多いため注意が必要です。
以下では、人材確保について掘り下げ、詳しく解説してきます。
人材確保におけるポイント
物流倉庫の安定稼働に向けた採用を開始するにあたり、抑えておきたいポイントは大きく分けて以下の2つです。
1.人員配置計画と受け入れ体制の整備
まずは、安定稼働に必要なスキルや役割、人数を明確にし、現場がスムーズに運営できる体制の計画を立てておくことが重要です。例えば、フォークリフトの運転技能を有するフォークオペレーターや、入荷検品・棚入れ・ピッキング・梱包といった作業を担当するスタッフが挙げられます。また、各工程を統括して現場の進行を管理する工程リーダーや、倉庫全体の業務管理を担う社員も必要です。
採用計画を立てる際には、稼働開始までの受け入れ準備に加え、OJTやトレーニングの期間も考慮する必要があります。新人スタッフが確実に業務に慣れ、スムーズに現場へと移行できるよう、少なくとも2~3か月のトレーニング期間を設けることが望ましいでしょう。
また、OJTとトレーニングの内容は、フォークリフト運転などの専門技能が必要な作業、入荷検品や棚入れ、ピッキング、梱包といった基本作業など、役割ごとに異なるため、それぞれに合わせたカリキュラムの策定が求められます。このような準備を整えることで、スタッフが確実にスキルを習得し、稼働開始後に現場がスムーズに運営できる体制を構築できます。
2.採用手段の見極め
採用計画を策定した後、雇用形態と求人募集の方法を具体的に定める必要があります。物流での一般的な雇用形態には、正社員、契約社員、パートタイム、アルバイト、派遣社員などがあり、コスト効率に応じて最適な形態を選ぶことが重要です。
派遣社員については、長期派遣と短期派遣の2つがあり、作業計画や物流状況、特に繁忙期や物量が増加する時期に合わせて、柔軟に人数を調整できる利点があります。倉庫立ち上げの際、稼働までの準備期間が限られている場合は、派遣会社と連携して短期的な人材を確保するのも有効です。一方、派遣社員の人件費には福利厚生費や手数料が含まれるため、作業原価に直接反映されやすく、拠点PL上コスト高になります。そのため、各企業のターゲット原価とスケジュールを鑑みて雇用形態のバランスを調整することが必要です。
パートタイム・アルバイト(直接雇用)の採用手段とそれぞれの利点・注意点
物流倉庫の人材確保において、正社員や契約社員などの形態も選択肢としてありますが、パートタイムやアルバイトなどの人材を直接雇用した方が、採用の迅速さやコスト削減の観点から望ましい場合が多いでしょう。以下の表では、直接雇用における採用手段とそれぞれの利点と注意点を記載しています。実際に採用を始める際は、それぞれの特徴をしっかりと把握することが重要です。
パートタイム・アルバイト(直接雇用)の採用における注意点
直接雇用の注意点として、作業原価上は派遣社員の方が割高になりますが、直接雇用の採用においては時給と以外に以下のようなお金がかかることも覚えておかなければなりません。
・求人広告費
・福利厚生費
‐社会保険料
‐交通費など
・その他手当、貸与品
給与、残業代以外でも求人広告費や福利厚生費などの費用と管理が発生します。人員計画においては、これら費用についても考慮しておくことが重要です。また、実費だけでなく、採用に関わる面接官や採用後の労務管理者などが費やす時間も考慮して計画・検討することが望ましいでしょう。
まとめ
EC物流倉庫の立ち上げは、計画・設計から試運転まで多岐にわたるステップが必要となります。中でも、安定稼働の鍵を握る「人材確保」は、計画段階から並行して進めるべき重要なステップです。しかし、超採用難時代においては、求人募集一つをとっても従来の手法では人材採用は進みません。
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