倉庫における用途地域のポイントを解説

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倉庫における用途地域のポイントを解説

倉庫を建設する際、用途地域によって建設可能な場所や規模・構造上の選択肢が大きく左右されます。目的に合わない地域で建設を進めると、規制や許認可の問題で計画が滞ってしまう可能性があります。
用途地域は都市計画法によって、大きく住居系、商業系、工業系に分けられ、それぞれの地域ごとに認められる建築物やその規制内容が異なっています。
本記事では、倉庫における用途地域について基礎的な知識から具体的な制限事項、建築時や借りる際に気にすべき点までを包括的に解説します。

用途地域とは

用途地域は、住環境や街並みを保護するための都市計画の根幹をなす仕組みです。地域によっては騒音や振動、日影の規制などが定められ、住民の生活を守ると同時に企業・産業の発展をバランスよく促進します。
倉庫の場合、用途地域によって建築可能かどうかのみならず、建物規模や耐火性能などの制限も変化します。大規模物流倉庫を計画する際は、用途地域の制限によって立地や構造設計の自由度に差が生じるため、早めの検討が重要になります。

13種類の用途地域の概要

用途地域は大きく住居系、商業系、工業系の3つに分類され、合計13種類に細分化されています。住居系は第一種低層住居専用地域など住環境を守ることを目的とした地域が多く、商業系は商業活動を促進するための近隣商業地域や商業地域があります。工業系は準工業地域、工業地域、工業専用地域に分かれ、大規模な工場や倉庫にも対応しやすい特徴があります。
住居系は住環境を重視するため規制が厳しい一方、商業系や工業系は事業活動向けに規制が比較的緩やかとされています。ただし、商業系・工業系でも、一部住民が居住しているケースがある地域では騒音や排気ガスへの対策を求められるなど、地域特性による追加規制を考慮する必要があります。

倉庫建築に影響する用途地域の種類と特徴

数ある用途地域のうち、倉庫は工業系の地域ならばほとんどの場合において建築が可能です。ただし、危険物を扱う倉庫や大規模な施設となる場合は、建築基準法や消防法などの追加要件を満たす必要があります。
一方、住居系でも小規模な自家用倉庫などは地域住民の理解が得られる範囲で可能な場合があります。計画の初期段階で区分ごとの特徴を理解し、検討を進めることが重要です。
また、倉庫は一般的に「自家用倉庫」と「営業倉庫」に分けられ、用途地域の種別ごとに建築できる倉庫が異なります。

住居系用途地域

住居系用途地域は、低層または中高層の住宅を中心としたエリアを守るために指定されており、基本的には騒音や振動の少ない建物に適しています。住宅地としての落ち着いた環境を保つことが優先されるため、大規模な倉庫が建設されるケースは稀です。ただし、事業所に併設した小規模な自家用倉庫であれば条件付きで認められる可能性があります。
<建築可能な地域>
・第二種中高層住居専用地域
・第一種住居地域
・第二種住居地域
・準住居地域
・田園住居地域

商業系用途地域

商業系用途地域は、店舗やオフィスなど商業活動を推進するために比較的自由な建築が認められる傾向があります。倉庫を建てる際も比較的規制が緩やかですが、地価や建設コストが高いことも多いため、事業計画とのバランスを取る必要があります。
<建築可能な地域>
・近隣商業地域
・商業地域

工業系用途地域

工場や物流施設などが集積しやすい地域で、騒音・振動に関わる規制が比較的緩やかです。倉庫を建設する際には、最も自由度が高い分類とされることが多く、特に危険物を扱う倉庫や大規模施設を建設する際には工業系用途地域での計画が一般的です。
ただし工業系でも準工業地域は住居が所在するケースもあり、その場合は安全対策や騒音・排気ガス対策などが求められるので、地域住民への影響を考慮した計画が不可欠です。
<建築可能な地域>
・準工業地域
・工業地域
・工業専用地域

関連記事 危険物倉庫の市場と関わる基準と規制|危険物の定義までわかりやすく解説

用途地域ごとの倉庫建築制限

用途地域による具体的な建築制限の違いを確認することで、計画段階から許容範囲を把握できます。
用途地域の制限を十分に理解していないと、後から建築確認申請で引っかかったり、近隣住民によるクレームなどトラブルを招いたりするリスクがあります。ここでは代表的な制限例として、建ぺい率・容積率や高さ制限、防災関連の規定について解説します。
これらの制限は地域特性や建物の用途によって大きく変わります。特に大規模倉庫を計画する場合、消防法や建築基準法、環境関連の法律まで含めた総合的な検討が欠かせません。

建ぺい率と容積率の制限

建ぺい率は敷地面積に対する建築面積の割合、容積率は敷地面積に対する延べ床面積の割合を示します。用途地域によって上限値が特徴的に異なり、住居系は低め、商業系や工業系は高めの設定が多い傾向にあります。
大規模な倉庫を建てる際には敷地を広く確保するか、容積率が高い地域を選ぶかの判断が必要です。都市部で倉庫を計画する場合はこの制限が厳しくなるため、郊外に立地を移すなど柔軟な対応を検討しましょう。

高さ制限や敷地面積に関する規定

周辺住居の日当たりや景観を守るため、高さ制限が設定されている地域も少なくありません。特に住居系地域では高さ制限が厳しく、大型の倉庫を計画しにくい要因となります。
また、最低敷地面積の規定がある地域もあり、敷地を細かく分割できないケースがあります。高度利用をしたい場合は、条件を満たす用途地域を選定しなければなりません。

防災に関わる建築制限

火災や地震などの災害が発生した際に被害を最小限に抑えるため、倉庫建築には耐火構造や防火区画などの厳格なルールが設けられています。特に、多くの荷物や可燃物を扱う倉庫では、防災対策を徹底する必要があります。
また、倉庫内で危険物を取り扱う場合は通常の防火規定以上の基準を課されることもあるため、工業系地域でも事前の調整が重要です。

非常用進入口の設置基準

消防隊の迅速な救助や消火活動を確保するため、一定規模以上の建築物には非常用進入口が必要です。倉庫では積載物が多くなりがちなため、通路や非常口の配置にも注意を払わなければなりません。

内装制限の概要

内装材の燃焼性能や仕上げ材の種類によっては、火災が発生した際の拡大リスクを高める可能性があります。用途地域や建物の規模によって内装制限が課されるため、採用する素材を慎重に選定し、防火対策を怠らないようにしましょう。

用途地域における倉庫建築時の注意点

倉庫の計画段階から慎重に準備を進めておくことで、スムーズに許認可の取得と建設を行うことができます。
用途地域の区分や法規制を把握したとしても、実際の計画・建設には役所や専門家など多方面での確認が不可欠です。
自治体との協議や地域住民への説明など、スムーズに建設を進めるには粘り強いコミュニケーションが重要です。許認可申請の手順を正しく踏むことや、変更点があれば速やかに修正を行うことが、トラブルを防ぐ鍵となります。

役所との事前相談の重要性

用途地域の指定内容や追加規制は自治体ごとで差があります。早期に役所の建築指導課などへ相談し、具体的な建築要件や手続きの流れを確認しておくとスムーズに計画を進められます。
後から設計変更を余儀なくされるとコストや工期に大きな影響が出るため、建築前の段階で丁寧な情報収集を心がけましょう。

違反建築や規制不適合のリスク

用途地域の規定や建築基準法を守らずに建てた場合、後日是正勧告や罰則の対象となるリスクがあります。使い始めてから運用を止めざるを得なくなる状況は事業にとって大きな損失になりかねません。
適切な手続きと書類申請を怠らないことが、長期的な稼働と安定した経営を実現する第一歩です。

用途地域にまつわる制限事項

例えば賃貸倉庫を借りて倉庫業を営む場合、図でいう営業倉庫に該当するため、主に「工業系地域」「商業系地域」と一部の「住居系地域」に建てられています。用途地域には前述した建築時の制限だけでなく、用途地域ごとにどういった建物を建てられるかといった用途制限や騒音規制といった倉庫業の運営に関わる制限もあります。

関連記事 営業倉庫とは|自家用倉庫との違いや注意点について解説

用途制限(危険物)

用途制限の中でも、特に倉庫や工場などの事業用物件に関わりが強いのが、ガスや石油類などの危険物の貯蔵や処理をする場合の用途制限です。これは用途地域によって取り扱いできる量が変わり、特に量が多い場合は「工業地域」と「工業専用地域」のみが対象となります。

騒音規制

用途地域に関連する法律として騒音規制法があります。これは倉庫や工場から発生する騒音の許容限度を用途地域と時間帯ごとに定め、周辺の生活環境を保護することを目的とした法律です。
この法律によって、用途地域次第では夜間は施設の運営ができないなど、稼働時間の制限が発生するケースもあります。

まとめ

用途地域の制限を理解した上で倉庫を建設することで、適法かつ効率的な施設運用が可能になります。
倉庫の建設においては、まず用途地域を正しく理解し、その制約条件や取得すべき許認可を洗い出すことが重要です。
また、営業倉庫を検討する場合は、倉庫が目的に沿った用途地域であるかどうかだけでなく、前述した用途制限や騒音規制など倉庫運営における要件に関わる点も確認しておく必要があります。

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