物流における「出庫」の意味や出荷との違いを分かりやすく解説
物流における「出庫」とは、倉庫などの保管拠点から商品や資材を出して出荷先へ搬出する一連の業務を指します。ECの拡大や即日配送のニーズが高まる中、出庫業務の効率化と正確性は、企業の競争力を左右する重要な要素となっています。
本記事では、物流施設の開発・運用に強みを持つシーアールイーが、出庫業務の基本から効率化のポイントまで、業界に精通した視点でわかりやすく解説します。
物流における「出庫」とは
出庫とは、倉庫内で保管されている商品を、出荷や配送のために倉庫の外へ取り出す作業のことです。
倉庫には多種多様な商品が保管されており、正確なロケーション管理と適切なピッキング作業が求められます。出庫作業では、数量や品目の確認だけでなく、ロット番号や消費期限などの情報を照合することも重要です。これらを誤ると、誤出荷や返品対応などのトラブルにつながり、業務全体の信頼性を損なうおそれがあります。そのため出庫は、物流の正確性と品質を左右する重要な工程のひとつといえます。
出庫と入庫の違い
入庫は倉庫で商品や材料を新たに受け入れ、保管場所に格納する工程(棚入れとも呼ばれます。)であり、在庫を増やす工程です。一方、出庫は倉庫にある在庫品を外へ出す作業で、在庫を減らすという側面を持ちます。
適切なデータ管理がされていれば、商品のロスや過剰在庫を防ぐことができます。入庫と出庫がお互いにどのように連動しているのかを理解し、システム管理と現場の作業手順をリンクさせることがポイントです。
出庫と出荷の違い
混同されやすいのが、「出庫」と「出荷」の違いです。出庫は、倉庫内で保管している商品を取り出す作業そのものを指します。一方、出荷は出庫された商品を検品・梱包し、配送業者に引き渡して顧客や取引先へ届けるまでの一連の工程を意味します。つまり、出庫は出荷の前段階にあたる作業であり、出荷という大きな流れの中の一工程です。たとえば、倉庫で商品をピッキングして出庫し、その後梱包・ラベル貼付を経て配送トラックに積み込むまでが「出荷」となります。このように、両者は密接に関係していますが、役割と範囲が異なる点を理解しておくことが重要です。
みなし出庫とは
みなし出庫とは、物理的に倉庫から商品が移動していなくても、在庫管理上は出庫したと見なす処理を行うことです。
機械製品や車など多くの部品を扱う工場などでよく使う管理方法のひとつです。例えば工場の場合、部品が多くあるのにパーツを組み立てるたびに部品の出庫伝票を発行していたら膨大な作業量になることが予想できます。こうしたケースにみなし出庫を行うことで効率化を図るということです。
この方法を活用することで、現場で伝票を都度発行するといった負荷を軽減し、在庫データを分かりやすく整理することが可能です。ただし、みなし出庫のタイミングや記録のルールを明確にしないと、在庫情報にズレが生じ、誤発注や欠品の原因につながります。
出庫業務を効率化させるポイント
みなし出庫のように在庫管理上の効率化を図る方法もありますが、実際の出庫作業そのものをいかにスムーズに行うかも、倉庫運営においては欠かせないポイントです。出庫は、ピッキング・検品・搬出といった複数の工程から成り立っており、ひとつでもミスが起これば後工程の出荷や配送に影響を及ぼします。そのため、作業精度の維持と効率化を両立する仕組みづくりが重要です。
ここでは、実務で役立つ具体的な改善のヒントを紹介します。
ピッキングしやすい保管場所の設置
出庫頻度の高い商品は、短い動線で取り出せる位置に配置するのが基本です。作業者にとって動きやすく、手が届きやすい高さと場所に最も回転の速い在庫を集約しましょう。
この際に注意したいのは、作業者ごとの体格の違いや使用器具によって取りやすい場所が微妙に変わることです。複数の作業者にヒアリングを行い、誰にとっても無理の少ないレイアウトに調整するのがおすすめです。1回1回の作業の積み重ねによって疲労も蓄積し、ミスも誘発してしまうからです。
視認性、作業性が高い場所に商品を置くことで、誤ったものを選んでしまうリスクが低減します。
ロケーション管理の見直し
ロケーション管理とは、倉庫内のどこに何があるのかを一目でわかるように整理・番号付けする仕組みです。適切に設定されたロケーション情報があれば、必要な商品を素早く見つけてピックアップできます。
棚番やエリア分けのルールが曖昧だと、初めて働く作業者も覚えにくく混乱を招きやすくなります。
倉庫管理システム(WMS)の導入
倉庫管理システム(WMS)を導入することによって、入庫から出庫までの全工程をデジタルで一元管理できます。特に出庫工程では、ピッキングリストの自動作成やリアルタイムの在庫管理機能が大いに役立ちます。
システムを介して作業者がピッキングを行い、完了登録をすることで、在庫数や位置情報が即時に更新されるため、作業者間での伝達ミスを防止できます。特に大量の商品を扱う倉庫においては、高い効果が期待できます。
出庫作業の自動化とAI技術の活用
近年では、ロボットによるピッキング作業や自動仕分けシステムなどの導入が進んでおり、人手不足や人為的ミスの削減に大きく寄与しています。画像認識技術やAIを用いた検品も、正確性を高める上で注目されています。たとえば、1966年に冷蔵倉庫事業を開始し、1974年には今日まで続く冷凍食品メーカーの共同配送事業を始めた株式会社ヒューテックノオリンでは、2024年時点、全国13施設に自動倉庫を導入しており、同社の保管パレット数でみて約5割をフォークリフトや人の介在なしで入出庫可能にしています。
ただし、高度なシステムを導入するにはコストや導入期間の問題もあります。自社の物流規模や取り扱い商品の性質に合わせて、段階的にシステムを拡張していくのが現実的な選択肢といえます。
まとめ
近年、物流業界における荷物量は増加の一途を辿っており、物流現場ではより効率的かつ正確に荷物を運ぶことが求められています。出庫業務は物流の流れにおける重要な要素のひとつであり、効率化し、ミスを最小限に抑えることは、自社の物流の品質向上につながります。そのため、倉庫運営においては、適切なルールの策定と最新技術の導入を検討し、継続的な改善を図ることが重要です。
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