滞留在庫とは?発生要因から具体的な解消方法まで解説
滞留在庫は企業の収益やキャッシュフローに大きな影響を与える要因のひとつです。本記事では、滞留在庫の基本知識から、影響や原因、具体的な対策までを網羅的に解説します。
滞留在庫の正しい理解と管理手法を身につけることで、将来的なリスクの軽減につなげましょう。
滞留在庫とは?
滞留在庫とは、企業が仕入れ・生産したものの、販路や活用先が見込めずに長期保管されている在庫を指します。具体的には、商品が市場ニーズと合わなくなってしまったり、販売機会を逃してしまったりしたケースがこれに該当します。その結果、企業にとって負担となる保管スペースの確保や資金の固定化が発生します。経営資源が在庫に縛られてしまうと、企業のキャッシュフローや収益構造に深刻な影響をもたらすため、早期に対処できる仕組みづくりが大切です。
余剰在庫・不良在庫との違い
在庫にはさまざまな分類がありますが、中でも余剰在庫や不良在庫は滞留在庫と混同されやすい概念です。それぞれの違いを正しく認識しておきましょう。
余剰在庫との違い
余剰在庫は、在庫として抱えている商品の量が需要を大きく上回っている状態を指します。需要以上に保有している在庫であっても、今後のセールや販促活動によって売り切る見込みが残されている点で滞留在庫と異なります。企業としては、一定の余剰在庫を抱えることも戦略の一環ですが、限度を超えると資金の固定化につながります。もし余剰在庫が長期化してしまえば、滞留在庫と同様に企業へ負担をかけはじめます。したがって、余剰在庫も定期的にチェックし、滞留化を防ぐ動きを続けることが求められます。
不良在庫との違い
不良在庫とは、品質に問題が生じたり、破損などの物理的な障害によって売却や出荷が不可能となった在庫を指します。滞留在庫は品質には問題がありませんが、売れる見込みが少ないことや、需要が限られている点で不良在庫とは大きく異なります。不良在庫の場合、早急に廃棄や返品などの処理を行わないと、保管スペースのみならず企業イメージにも影響を与える恐れがあります。一方、滞留在庫は商品としての品質は保たれているため、販路再検討や値下げ販売などでまだ活かせる可能性が残っています。ただし、商品によっては時間の経過とともに品質劣化等により不良在庫に移行してしまうリスクもあるため、積極的な対応が肝要です。
滞留在庫が発生する原因
なぜ滞留在庫が発生してしまうのか、主な要因を把握することで、問題の根本的な解決策を検討することが可能になります。
発注・仕入数が需要に見合っていない
需要予測の精度が低いと、想定以上に商品が余ってしまい滞留在庫を招きます。過去の販売データや市場動向を分析しきれていないことが原因となるケースが多いです。また、セールやキャンペーン需要を過大に見込んだ結果、在庫が大量に残ってしまう事態も少なくありません。重要なのは、定量的なデータを基にこまめに発注計画を修正する運用体制を整備することです。
在庫管理が不十分
棚卸しの頻度が少ない、あるいは在庫管理システムが導入されていない企業では、在庫データの正確性が欠けている可能性があります。データの不正確さは潜在的な過剰仕入れや、在庫が余っているのに気づかない状況が発生する事態も少なくありません。在庫の出入りを正確に把握できなければ、他部門が間違った情報をもとに仕入れや生産を行う恐れがあります。その結果、滞留在庫の増加につながります。在庫管理が十分に行われていない企業は、まずは状態把握と定期的な棚卸しから始める必要があります。
部門同士の連携不足
販売部門が予測した需要を生産部門へ正しく伝達できていないと、仕入れや生産量が過剰になる恐れが発生します。このような場合、部門間で情報共有を図ることで、需要予測の精度向上や在庫ロスの早期察知を行うと良いでしょう。互いの状況を把握し合わないまま業務を進めると、滞留在庫の発生リスクが急増してしまう恐れがあります。本来の需要と販売計画がずれているケースでは、経営層が部門統合の視点で調整を実施し、資源の最適配分に注力することで、滞留在庫発生の抑制につなげることができます。
滞留在庫が与える企業への影響
滞留在庫を抱えることで、企業の収益や運営に具体的にどのような影響が及ぶのかを確認します。次では、滞留在庫がもたらす具体的な悪影響についてさらに掘り下げていきましょう。
キャッシュフローおよび利益への悪影響
滞留在庫の最大の問題は、資金が長期的に在庫へ固定化されてしまう点です。通常は売り上げによって回収されるはずの投下資本が回らないため、キャッシュフローが悪化し、中長期的には新規事業や開発投資などの機会を失いかねません。また、売れ残り在庫の価値が下落することで、企業の利益率も低下します。価値が下がり切る前に適切な在庫処分を行わなければ、最終的には帳簿上の損失処理が増える結果となるでしょう。
保管コストの増加と品質劣化リスク
滞留在庫を長期間保管するには、倉庫などの保管スペースや設備が必要であり、その分のコストが継続的にかかります。また、限られたスペースしかない場合は、滞留在庫が場所を専有することで新商品の受け入れや効率的な出荷作業を阻害します。こうしたロスは長期的に見ると大きな損失になりやすいです。
さらに、在庫を長期保管することで、経年劣化や製品の陳腐化リスクも高まります。特に食品や医療機器などは賞味期限や使用期限に左右されるため、滞留期間が長引くほど製品価値が下がりやすくなります。こうした品質劣化によって損失が拡大すると、結果的には企業全体の収益構造に悪影響を及ぼす可能性が高いため、保管期間を最小化できる管理体制が求められます。
税務処理や評価減の必要性
滞留在庫は会計上、棚卸資産として計上されるため、長期的に売却できない場合は簿価の修正が必要となる場合があります。評価減を実施しなければならないほど在庫価値が目減りしてしまうと、企業の財務指標にも大きな影響を及ぼします。早期に滞留在庫を処分または売却するなどの方策を取り、評価減や税務手続きのリスクを軽減することが重要です。
滞留在庫の具体的な対策と解決策
実際に滞留在庫を発見した場合、企業はどのような対策を講じるべきか、具体的に解説します。企業が滞留在庫を抱えたときに重要なのは、まず在庫情報を正確に把握し、どの商品が滞留化しているのかを明確にすることです。定期的な棚卸しや分析を通じて、速やかに問題点を洗い出すことが第一歩となります。ここからは、具体的な解決策を解説します。
在庫状況の定期的な分析と見直し
ABC分析や需要予測のデータを活用することで、商品の動きや売れ行きを継続的にモニタリングできます。これにより、売れ筋商品と滞留在庫の振り分けが容易となり、早期に対処の優先度を定められます。最新の販売データと紐づけながら在庫数を確認すれば、リアルタイムに近い形で現状を把握できるでしょう。社内での在庫会議やレビューなどの場を設け、担当者同士で情報共有を行うことも対策を素早く実行するポイントとなります。
買取による現金化
在庫を持て余している場合、買取業者に売却することで在庫を現金化し、企業のキャッシュフローを改善する方法があります。適正価格で取引できるかがポイントですが、在庫を廃棄するよりも損失を抑える可能性があります。特に、まだ新しさや需要が残っている場合は思った以上の価格で買い取ってもらえるケースもあり、売却によって早期に資金を回収できるメリットがあります。買取業者に依頼する際は、相見積もりを取ってより条件のよい業者を選定し、在庫の価値を最大限に活用することが大切です。
棚卸しの実施と引当金の活用
定期的な棚卸しを実施することで、在庫数量のズレを修正し、滞留在庫の存在を早期に把握できます。これは在庫管理全般の精度を上げる効果もあり、経営の根幹を支える重要な業務です。また、発生が予想される滞留在庫や不良在庫に備えて、会計上で引当金を設定する方法もあります。引当金を計上することで、将来的な損失リスクに備える仕組みが整い、急な評価減に対応しやすくなります。税務面の観点からも、適正な在庫評価や引当金の活用は企業の顕在化されていないリスクの可視化の観点で効果的です。経理部門や監査法人と連携しながら適切に設定しましょう。
ERPやWMSの導入
ERPやWMS(Warehouse Management System)などの管理システムを導入すると、受発注・在庫・物流情報を一元的に管理できます。これによって、部門間での情報共有がスムーズになり、過剰発注や見込み需要のズレを減らす効果が期待できます。システムを活用することで、熟練者の経験や勘だけに頼らず、客観的なデータをもとに経営判断ができるようになります。導入コストや運用面での学習曲線はあるものの、長期的に見れば在庫ロスの削減や効率化につながり、企業の競争力を高める大きな要因となります。
まとめ
滞留在庫の削減は企業収益やキャッシュフローの改善にとって極めて重要です。最適な仕組みを継続的に整えることで、企業の成長と競争力を高めることができます。在庫管理システムの導入や定期的な在庫分析、部門間の連携強化など、具体的な対策を地道に続けることで滞留在庫がもたらすリスクを大幅に軽減できます。
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