ミルクランとは?導入メリットや注意点、導入のポイントを解説
ドライバー不足や2024年問題、燃料価格の高騰など、経営を取り巻く課題は多岐にわたります。こうした状況下において、より効率的な物流体制の構築が急務です。
「ミルクラン」という集荷方式を導入することで、配送コストの抑制、集荷業務の効率化が期待できます。本記事では、ミルクランの概要やメリットと注意点、導入のポイントや導入に成功した企業の事例をご紹介いたします。
ミルクランとは
ミルクランとは集荷方式の一種
ミルクランは、「巡回集荷」とも呼ばれている共同配送の一種です。ミルクランとは、発注業者側が回収用の車両を手配し、それぞれのサプライヤーを回って納品物を回収する仕組みの集荷方法のことです。多くの場合、巡回ルートは固定されています。
なお、ミルクラン方式以外では、サプライヤー側がそれぞれ自社で手配した車両を用いて、発注者へ直接納品するケースが一般的です。この場合、発注者側が集荷を行うのではなく、サプライヤーが配送の手配と納品を担う形になります。
ミルクランの語源
巡回集荷がなぜミルクランと呼ばれるのかというと、牛乳の集荷方式が由来となっているからです。
牛乳業者は、酪農家から牛乳を集める際、各酪農家から牛乳を配達してもらうのではなく、牛乳業者が自社の回収車(集乳ローリー)で酪農家を巡回します。「牛乳=ミルク」「定期的に運行=ラン」からこの名前が付けられました。
ミルクラン導入のメリット
配送車両の台数削減ができる
サプライヤー側で配送する場合、納品物の量にかかわらず、サプライヤーの数のトラックが必要です。しかし、ミルクランであれば、納品物の回収に必要な車両を準備して1台で回収できるため、配送車両の台数削減にもなります。
倉庫に着車する車両数を減らすことで、トラックの荷待ち時間の削減につながり、配送車両の台数を減らすことができれば、集荷場や周辺道路の混雑も緩和できるため、交通事故の防止対策にもなるでしょう。
物流コストを削減ができる
ミルクラン方式を導入すれば、自社で配送車両の運行や積載計画を一元的に管理できるため、無駄のないルート設計や積載率の向上が図りやすくなります。これにより、燃料費や車両維持費といった物流コストの削減が見込めます。
また、サプライヤーごとに納品されると納品時間が不規則になり、頻繁な荷受けや検品対応が必要になる場合があります。ミルクランにより納品が集約されれば、受け入れ時間を一定に保ちやすくなり、都度の対応にかかる作業や人件費の負担を軽減することが可能です。
環境への配慮
ミルクラン方式を導入することで、個別の集荷・配送に比べて1車両あたりの積載率効率を大幅に向上させることができます。複数の車両で行っていたものの車両台数を減らすことができることで、二酸化炭素の排出量の削減や燃料使用量の抑制につながり、環境負荷の軽減に貢献します。
このような仕組みは、共同配送にも共通しています。複数の荷主が協力して同一ルートや納品先への配送を一本化することで、効率化と環境配慮の両立を実現しています。
ミルクラン導入の注意点
ミルクランの導入には多くのメリットがある一方で、注意すべき点もいくつかあります。
集荷のスケジューリングが複雑
1台のトラックで、サプライヤーを巡回するため、1箇所での遅延が全体のスケジュールに波及するリスクがあります。たとえば、渋滞や積み込みの人員不足などが発生すると、計画通りに巡回できなくなる可能性があります。
不測の事態に備えて、スケジュールの柔軟性確保や緊急時の代替ルート・連絡体制などを事前に整備しておくことが重要です。
サプライヤーが大型車両に対応していないケースがある
ミルクランでは、1回の運行で多くの荷物を効率よく集荷するため、大型トラックを用いる場合があります。しかし、サプライヤーによっては、敷地が狭く、大型車両の乗り入れができないことも考えられます。
その場合は、別途小型車両を手配するなどして対応しなければならないため、事前に確認しておくことが重要です。
コストが増加する可能性もある
ミルクランは効率的な巡回ルートでの集荷を前提としていますが、ルート設計を誤ると移動距離が長くなり、燃料費やドライバーの拘束時間などが増加する可能性があります。
また、納品物が多くてトラック1台で集荷ができない場合は、追加の車両手配が必要となり、結果的に想定以上のコストがかかることもあります。導入前には、実際の集荷量・サプライヤーの位置関係に応じたルート設計とシミュレーションを行うことが重要です。
ミルクランを効果的に導入するポイント
ミルクランを導入する際、ミルクランの特徴を効果的に取り入れるためには、次のポイントを押さえながら進めていきましょう。
サプライヤーと集荷ルールをすり合わせる
ミルクランはスケジューリングが複雑なため、ひとつの集荷遅延が全体のスケジュールに影響を与える可能性があります。そのため、サプライヤーごとに集荷場所・時間・荷量の目安などをあらかじめ共有し、合意形成しておくことが重要です。
また、トラブルで集荷できない場合の対応フローなども事前に話し合っておくことで運用が安定します。
サプライヤーの出荷作業効率を向上させる
ミルクランの導入により配送業務を改善するためには、自社のルールやシステム改善だけでなく、サプライヤー側の整備も欠かせません。
例えば、出荷作業に必要な体制が整っているか、集荷時間に間に合う準備ができているか、荷姿はどのようになっているかなどを確認します。整備が必要な箇所を発見した場合には、サプライヤーと協力しながら出荷体制や作業手順の改善を進めることで、配送遅延や誤納品といったリスクを未然に防ぐことができます。
管理システムを導入する
複数のサプライヤーと定時でやり取りを行うため、遅延やルート変更への迅速な対応が求められます。これを実現するには、配送管理システムの導入が効果的です。
例えば、リアルタイムで配送車両の位置を確認できるシステムを導入すれば、自社だけでなく、サプライヤーも到着予想時刻を把握でき、作業準備ができるようになります。また、道路の混雑状況に応じて最適なルートを自動で提案する機能を活用すれば、突発的な遅延リスクも軽減できます。
ミルクランの導入に適しているケースとは
現在では、自動車メーカーや家電メーカーを中心とする、多品種の部品を扱う製造業で広く導入されています。これらの企業では、複数のサプライヤーから部品を仕入れる必要があるため、1台の車両で効率的に集荷が行えるミルクランは非常に適した手法といえます。
また、これらの業界以外にも、コンビニエンスストアやスーパーなど小売業でも、店舗への商品配送の最適化や在庫削減を目的に、この手法が取り入れられています。
ミルクランの導入事例
ここからは、ミルクランの導入によって業務改善やコスト削減に成功した事例を紹介します。
日用品卸売企業「株式会社あらた」の事例
日用品卸の株式会社あらたでは、荷量が小さく小ロット・中ロットの入荷のメーカーなどの積載率の低い車両の分散入荷を解消するため、ミルクラン方式を導入しました。日用品メーカーなど複数のサプライヤーまで自社でトラックを運行し集荷することで、入荷のコントロールを図りました。
まとめ
ミルクランは、複数のサプライヤーを巡回して納品物を集荷する方式で、個別配送を一本化することにより配送効率が向上し、結果としてコストの可視化と削減につながります。多くのサプライヤーから発注を行っており、地理的に巡回ルートが組みやすい場合には、導入を検討してみてください。
導入にあたっては、サプライヤーとの集荷ルールのすり合わせや、自社側の受け入れ体制(保管スペースや検品手順)の見直しを丁寧に行うことが重要です。
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