貸倉庫の坪単価の相場は?月額賃料の算出方法も解説
貸倉庫の坪単価とは、倉庫の賃料を1坪(約3.3平方メートル)あたりで算出した月額の金額であり、その金額は立地、設備、階層などによって異なります。
貸倉庫の利用を検討する際に、費用面、特に坪単価の相場感が掴めずお困りではないでしょうか。相場を把握していないことで、不要なコスト増大や最適な条件の倉庫を見逃すリスクがあります。検討段階の早期から費用相場を把握しておくことが、時間と資産を無駄にせず、最適な選択を行う決め手となります。
本記事では、シーアールイーの独自調査による全国の坪単価の相場や、貸倉庫を借りる際にかかる賃料以外の諸費用、倉庫の選び方を解説します。
貸倉庫の坪単価とは
貸倉庫の坪単価とは、倉庫の賃料を1坪(約3.3平方メートル)あたりで算出した月額の金額です。倉庫を借りる場合、坪単価を比較することで、コストパフォーマンスを適切に見極めることができます。坪単価のわずかな差が、長期的に見ると大きな費用差となり、経営判断に影響を与えるため、正確なコスト感を把握しましょう。
敷地面積と延床面積の違い
倉庫を建物として捉える場合、契約時には敷地面積と延床面積を区別して確認しましょう。敷地面積は土地の広さを示し、延床面積は建物全体の床面積の合計を表します。
延床面積を基準にする場合、倉庫内の作業スペースや付帯設備の有無によって実質的な使用可能面積が変化します。例えば、天井が高く上部空間にもラックを増設できる物件であれば、同じ敷地でも保管効率が向上します。
そのため、貸倉庫を検討する際には、坪単価だけではなく、物件の実際の使い勝手とのバランスを見極めることが大切です。
シーアールイー独自調査|全国の貸倉庫の坪単価

出所:株式会社シーアールイー|「倉庫・物流不動産 マーケットレポート(β版) Ver.202503」
貸倉庫の坪単価は、そのエリアや施設の条件によって大きく異なります。最適な物件を見つけるためには、まずエリアの相場感を把握することが重要です。ここでは、より具体的な相場感を、シーアールイーが独自に調査した全国主要エリアの貸倉庫(物流倉庫)の坪単価データからご紹介します。(2025年3月末時点、テナント募集を行っている10000㎡以上の倉庫の募集賃料をもとに算出)
図表1は、全国の主要エリアを細分化し、それぞれの地域における貸倉庫の募集賃料について「最小坪単価」「最大坪単価」「平均坪単価」を示したものです。このデータはあくまで一般的な相場を示すものですが、具体的なエリアごとの価格帯をイメージする上で参考として活用ください。
全国的な傾向として、都心部や主要都市の坪単価は高めに設定されていることが多く、特に湾岸地域や工業団地などが集積する地域では、交通アクセスや利便性の高さから需要が高く、賃料が上昇しやすい傾向にあります。
一方、地方都市や郊外エリアでは需要が比較的落ち着いているため、坪単価が低めに設定されている場合があります。エリアによっては、物件数が限られ、ご希望の条件や設備要件に合う物件を見つけるのに苦労する可能性もあります。費用面だけでなく、自社のビジネスに必要な設備環境が整っているかどうかも含め、慎重に検討することが大切です。
また、坪単価はエリアだけでなく、倉庫の形態や仕様によっても大きく上下します。例えば、最新の免震構造、温度・湿度管理が可能な空調設備、24時間監視システムなど、付帯サービスが充実している高機能な倉庫ほど坪単価は高めになります。自社のビジネスモデルに合ったサービス内容と費用感をバランスよく見極めることが、結果的にコストを最適化し、事業効率を高めるポイントとなります。
募集賃料と実質賃料の違い
貸倉庫を借りる際、提示される募集賃料と実際に支払う実質賃料は異なるケースが多く、この違いを理解することがコストを正確に把握し、最適な貸倉庫を選ぶ上で非常に重要です。
募集賃料は、不動産会社や貸主が広告などで提示している「希望の賃料」です。これは物件の立地、広さ、築年数、設備などに基づいて設定される、いわば基準となる価格です。
一方、実質賃料は、この募集賃料に加えて、毎月発生する追加費用を考慮した、テナントが実際に負担する総額を指します。これには、共有部分の維持管理にかかる共益費や管理費、賃料の未払いや原状回復費用に充当される敷金・保証金(償却の有無も確認が必要です)、貸主へ支払う礼金、契約を更新する際に発生する更新料などが含まれます。また、万が一に備える保険料、さらには警備費用や駐車場代といったその他の費用が別途発生することもあります。
募集賃料だけを見て契約を進めてしまうと、後から予想外の費用が発生し、当初の見込みよりもコストがかさんでしまう可能性があります。実質賃料を正確に把握することで、正確な予算計画を立て、複数の物件を比較する際の精度を高め、予期せぬ出費を防ぐことができます。
月額賃料の算出方法と計算時の注意点
実際に月額賃料を算出する際の具体的な計算方法や注意すべきポイントを解説します。
倉庫の月額コストを理解するには、契約面積と賃料、その他の費用をどのように合算するかが重要です。
最もシンプルな計算方法は、契約面積(坪数)に坪単価を掛け合わせるやり方です。例えば10坪の倉庫を月額5,000円の坪単価で借りる場合、「10坪×5,000円=50,000円」が基本的な賃料となります。これに管理費や共益費、別途サービスの費用を足して最終的な月額コストを算出します。
この計算で注意したいのは、契約書で定められる面積が実際に使用できる面積とイコールではない可能性がある点です。廊下や共用部が含まれている場合もあり、実質的に使用できるスペースが思ったよりも狭いことがあります。見積もりや内覧で確認してから契約に進みましょう。
出荷頻度の高いアイテムが多い企業は、坪単価、月額賃料だけでなく作業効率に対する負担賃料の概念も検討ポイントの一つです。
たとえば、月間1万件以上の出荷があり、月額賃料が100万円の場合、1件辺りに占める地代は100円になります。もし月間5000件の場合は200円と1件辺りのコストが倍にもなり得ます。このように坪単価が安いほうが良いと思う一方で、賃借する床の回転率が見合うのかという観点、加えて連動する作業生産性の観点でみることが適切な賃料を図ることとなり、実質的なコストパフォーマンスが変わります。坪単価のみならず、運用上のメリットとデメリットを総合的に評価して契約することがポイントです。
貸倉庫を選ぶ時に押さえるべきポイント
貸倉庫を選ぶ際は、坪単価の相場を知っておくのはもちろん大切です。しかし、その他にも賃料に大きく影響する契約形態や建物の構造、専門用語を理解しておくことで、最適な物件選定や賃料交渉に役立ちます。
貸倉庫の契約形態と費用に関する用語
共込み
共込みとは、共益費込みの略で、賃料に共用部分の管理費や維持費が含まれている契約形態のことです。エレベーターや廊下、駐車場などの共用施設の清掃費、電気代、修繕費などが賃料に含まれています。契約前に何が共益費に含まれているかを確認し、他物件との比較時にはそれらの総額で比較しましょう。
フリーレント
フリーレントとは、定められた期間の賃料が免除となる特約のことです。家賃が免除になる期間は物件によって異なり、数日の場合もあれば数カ月の場合もあります。賃借初期の費用が抑えられることがメリットです。ただし、期間中の管理費や共益費は対象外となるなどすべてが免除対象とは限らないので、何が免除対象で何が対象外であるかを確認することが重要です。
分割貸し
分割貸しとは、一つの倉庫や建物を複数の区画に分けて、それぞれを別々の借主に貸し出す方法です。倉庫の一部のみを借りることができ、必要な面積に応じて契約できます。
定借・普通借
定期借家契約(定借)は、一般的な住居とルールは同じで、契約期間満了時に確実に契約が終了する契約です。契約更新はなく、基本的に中途解約もできないため注意しましょう。普通借家契約(普通借)は、正当な理由がなければ契約更新となる一般的な賃貸契約です。
共用部分・占有部分
共用部分とは、エレベーターや廊下、駐車場など、すべての借主が共同で使用する部分のことで、専有部分は借主が独占的に使用できる倉庫内のスペースを指します。倉庫を一棟まるごと借りる場合は、管理費を抑える目的で自社が倉庫の管理業務を行う契約を結ぶことも可能ですが、この場合は共用部分も管理対象に含まれるため、契約前に管理範囲や責任範囲の詳細をしっかりと確認することが重要です。
用途地域
用途地域とは、都市計画法に基づいて市街化区域を13種類に分類し、各地域で建築できる建物の用途や規模を定めたルールのことです。営業倉庫が建築できる用途地域は、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域と定められているため、倉庫を探す際には注意しましょう。
また、準工業地域では近隣に住宅が混在している可能性があります。騒音や交通量の増加で近隣住民とのトラブルが発生するリスクがあるため、物件周辺の環境を必ず現地で確認しましょう。特に大型トラックの出入りが想定される場合は、周辺道路の幅員や住宅との距離なども事前に把握することが重要です。
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倉庫の構造が賃料に与える影響
貸倉庫の賃料は「坪単価」で示されることが一般的ですが、実際の金額には建物構造や仕様による違いが大きく影響します。以下に、代表的な構造的要因による賃料の差異を紹介します。
階数による賃料の違いが最も顕著な例です。1階は荷物の搬出入が容易で、フォークリフトも直接乗り入れできるため、高めの賃料設定となることが多いです。反対に、最上階は搬送効率が下がるため、比較的安価に賃料設定されることが多いです。出荷頻度の高い業務では、賃料の差以上に1階の方が作業効率が費用対効果の観点で高く評価される場合があります。
さらに、上階へのアクセス方法によっても賃料が変動します。ランプウェイがある物件では、大型車両が直接上階まで乗り入れできるため、該当フロアは平屋使いできるため1階並みの利便性を持ち、賃料も高く設定されます。これに対し、各階へのアクセス方法がないBOXタイプの構造の物件では、垂直搬送機での移動が必要になるため、作業効率が下がり、賃料も控えめになる傾向があります。
このように、構造的な要因により同一建物内でも坪単価に大きな差が生じるのが一般的です。倉庫選びの際は、賃料の安さだけでなく、物流効率や人件費、作業負荷を総合的に考慮し、運用コスト全体を見極めることが重要です。
専門業者・仲介会社への依頼のメリット
専門業者や仲介会社に依頼する最大のメリットは、広範囲の物件情報を短時間で収集できることです。自力で一から物件を探すよりも効率的で、条件に合う物件をピンポイントで紹介してもらえる可能性があります。
また、賃貸借契約の詳細や用語、交渉術などにも精通しているため、契約条件の調整をスムーズに進めることができます。敷金や礼金の軽減交渉、初期費用の分割払いなど、場合によっては費用負担を抑える交渉が期待できるかもしれません。
委託するコストは発生しますが、それ以上に得られる利便性やリスク管理上のメリットは大きいです。特に初めて倉庫を借りる企業や、複数拠点の倉庫運用を検討している場合には、専門業者のサポートが大いに役立ちます。
まとめ
貸倉庫の坪単価相場を理解し、立地条件や設備仕様を正確に把握しておくことで、最適な倉庫を選定することができます。貸倉庫探しにおいて、坪単価の比較のほかに、契約形態や周辺状況の把握はもちろんのこと、保管効率や設備投資、物流コスト全体と合わせた総合的な視点が重要です。倉庫探しから入居までを効率良く進めるなら、物流不動産に60年以上携わってきたシーアールイーへのご相談がおすすめです。物件探しだけでなく、細かい契約内容など物流不動産に関する豊富な経験から様々なアドバイスを受けることで最適な倉庫選定を実現します。