CLO(物流統括管理者)とは?2026年の義務化背景も解説

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CLO(物流統括管理者)とは?2026年の義務化背景も解説

CLO(Chief Logistics Officer)とは、物流を経営資源として最大限に活用するための最高責任者を意味します。AIや省人化、ESG対応、国際物流の複雑化など、物流を取り巻く環境は日々変化しています。本記事では、物流分野においても多様なサービスとハブを持つシーアールイーが、CLOの概要や義務化の背景などを分かりやすく解説します。

CLO(物流統括管理者)とは

物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)は、企業の物流戦略を経営視点で統括し、サプライチェーン全体の効率化・最適化を推進する責任者です。「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」の改正により、特定荷主企業においては必ず選任することが義務付けられた役職とされました。CLOは、従来の物流部門やSCM担当者のように現場業務だけに限定されず、調達・生産・販売など全社横断的に物流改革をリードし、企業戦略と連動させる役割を担います。

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特定荷主とは

特定荷主とは、一定規模以上の物流取扱量を持ち、物流の効率化や環境負荷低減に対して特別な責務を負う企業を指します。具体的には、年間の貨物取扱量や輸送委託金額が国の定める基準を超える事業者であり、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」に基づき指定されます。特定荷主に指定された企業は、自社物流の効率化に加え、取引先や物流事業者と連携した改善を行う義務を負い、その推進役としてCLOの選任が求められます。

物流業界における課題とCLO義務化の背景

物流業界が直面する構造的課題

日本の物流業界は慢性的なドライバー不足や長時間労働、多重下請構造といった構造的な課題を抱えています。国土交通省が行った2021年の調査によると、荷待ち時間の平均は1運行あたり1時間34分とされており、非効率な運用が輸送コストや納期遅延につながっています。この問題は企業単独の努力だけでは解決が難しく、サプライチェーン全体の見直しが急務となっています。

引用 国土交通省 トラック輸送状況の実態調査(概要版)

CLO導入の狙い

このような背景を踏まえ、政府は物流改革を推進し、特定荷主にも物流効率化の責任を課す制度としてCLO(Chief Logistics Officer:物流統括管理者)を導入しました。CLOは企業内で物流戦略を統括し、荷待ち・荷役時間の削減や積載率向上などの具体的な施策を中長期計画として策定・実行する役割を担います。CLOを設置することで、単なる現場管理を超え、経営レベルでの意思決定や部門間調整を通じてサプライチェーン全体の最適化を実現することが期待されています。

引用 国土交通省:改正の施行・関係省令の説明(CLO選任や指定手続きの公表)

法改正による義務化の流れ

物流業界の課題解決を制度的に後押しするため、2025年4月に「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」が改正され、名称も「物資の流通の効率化に関する法律」となりました。ただし、施行は段階的であり、特定荷主の指定やCLO選任義務などの主要部分は2026年4月1日から施行されます。
特定荷主の基準は「前年度の取扱貨物重量が9万トン以上」とされています。算定方法や対象貨物の範囲は省令で定められており、自社が該当するかは実務的な確認が必要です。対象企業は、所定の様式で指定届出を行い、CLOを選任する義務があります。
また、中長期計画の初回提出は2026年10月末が想定されており、単なる形式提出ではなく、進捗報告・更新を伴う実効性ある取り組みが求められます。CLOの未選任や届出怠慢に対しては、勧告・命令・企業名公表のほか、100万円以下の罰金や20万円以下の過料といった罰則も定められています。

引用 国土交通省 物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)の専任

CLOの役割と業務範囲

中長期計画の作成

CLO(物流統括管理者)が担う主な業務内容の一つは、中長期的な物流効率化計画の策定です。特定荷主企業は、年間9万トン以上の貨物を自社契約で輸送した場合、2026年4月までにCLOを選任し、国に計画を提出する義務があります。
この計画は形式的な提出書類ではなく、企業の物流戦略の指針として機能します。具体的には、トラック運行の効率化、在庫拠点の最適化、共同配送やモーダルシフトの導入などが盛り込まれ、策定後も定期的に進捗報告・評価・更新を行う必要があります。CLOはこのプロセスをリードし、企業全体の物流効率化とコスト削減を継続的に実現していきます。

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トラックドライバーの負荷低減と輸送集中の是正

ドライバーの過重労働軽減と輸送の集中是正も、CLOが担う業務の一つです。現在、ドライバーは年間125時間以上の荷待ち・荷役に従事しており、人手不足の深刻化を招いています。
CLOは、発荷主・着荷主・物流事業者の間で調整を行い、荷役作業のパレット化、事前情報共有、ピーク時の荷量分散などを計画に反映します。さらに、調達・生産・販売・在庫など社内各部門を横断的に連携させることで、発注量や発送タイミングの最適化を図り、物流全体の効率化を推進します。

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取引先との協働とサプライチェーン最適化

CLOの役割は自社内にとどまりません。取引先や他の荷主企業とも連携し、サプライチェーン全体の効率化を目指すことが求められています。
国土交通省の指針でも荷主と物流事業者の協働が強調されており、積載率向上、共同配送、モーダルシフトといった取り組みが推奨されています。こうした取り組みは一社単独では困難ですが、サプライチェーン全体を俯瞰するCLOが中心となることで実現可能です。

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CLOと物流部長の違い

物流部長は主に現場運営の責任者として、倉庫管理や輸配送業務の遂行、安全性や日々のKPI管理を担います。一方CLOは、取引適正化や法令遵守といった外部対応の責任を負うだけでなく、企業によっては経営戦略上の物流改革をリードする役割も持ちます。物流部長が「現場の最適化」を重視するのに対し、CLOは「取引の適正化と全社戦略への接続」に重点を置くため、責任の範囲も影響力も大きく異なります。両者が連携することで、現場改善、制度対応、戦略的施策を統合的に推進できる体制が整います。

CLO導入が企業がもたらす効果メリット

CLOを導入することで期待される効果と、企業が直面しうる導入上のハードルを押さえましょう。

物流効率化とコスト可視化

従来、多くの企業において物流コストは「仕入費用や販売費に埋もれたブラックボックス」として扱われ、経営層が正確に把握できないケースが少なくありませんでした。そのため、現場の改善活動が経営指標に直結せず、戦略的な投資判断や業務改革が後回しになる傾向がありました。
CLOを設置することで、企業全体の物流データが一元管理され、輸送費、倉庫費、人件費、荷待ち・荷役コストといった要素を定量的に分析できます。これにより、輸送ルート最適化や積載率改善、在庫配置の合理化といった施策を数値に基づいて意思決定できるようになります。さらに、コスト構造を可視化することで「どこに投資すべきか」「どこを削減すべきか」が明確になり、物流を単なるコストセンターから競争優位を生む戦略領域へと位置づけることが可能になります。

リスク対応力と持続可能性向上

物流は自然災害や地政学リスク、燃料高騰、ドライバー不足など、外部要因による変動リスクに常にさらされています。これまでは各現場や担当部署が個別に対応するケースが多く、全体最適よりも「その場しのぎ」の対応に終始することが課題でした。
CLOは企業全体の物流ネットワークを俯瞰し、輸送ルートの多重化、拠点の分散配置、代替輸送モードの確保など、BCP(事業継続計画)の観点からリスク分散戦略を組み込む役割を担います。加えて、共同配送やモーダルシフトを進めることでCO₂削減や環境負荷低減を実現し、ESG経営やサステナビリティ指標への対応にも直結します。これにより、単なるリスク回避にとどまらず、企業の社会的評価やブランド価値を高める物流体制を構築できるのです。

CLO導入を検討する際の課題と注意点

形式化リスクへの注意

制度に対応するために「名ばかりのCLO」を選任し、形式的な計画書を作成するだけでは、期待される効果は全く得られません。
CLO制度の本質は、物流を経営戦略の一部として位置づけ、継続的な改善サイクルを全社で回すことにあります。そのためには、単に物流部門に任せるのではなく、経営層の関与や全社的な目標設定、KPIに基づくモニタリング体制が不可欠です。形式的な対応にとどまれば、かえって「計画未達による行政勧告や公表リスク」に直面しかねません。

専門人材の確保と育成の難しさ

CLOには、物流の専門知識だけでなく、法令遵守、データ分析、サプライチェーンマネジメント、さらには経営的視点や部門間調整力が求められます。こうした複合的スキルを備えた人材は限られており、単に肩書きを与えただけでは、制度の実効性を担保することはできません。
そのため企業には、社内での人材育成と外部専門人材の活用を組み合わせた戦略的アプローチが求められます。例えば、現場担当者を段階的に育成するための研修プログラムや、外部のコンサルタント・専門企業との協働による実務サポートが有効です。また、CLOが単独で動くのではなく、経営企画・調達・生産・販売部門と一体となった組織的な実行体制を構築することが、実現に不可欠な要素です。結果として、CLOを中核とした人材・組織基盤の整備は、物流改革を超えて企業全体の持続的成長にもつながります。

まとめ

CLOの導入は、自社の物流戦略全体を再構築する絶好の機会です。加えて、特定荷主においてはCLOの選任が法律で義務化されており、早期の対応が求められます。しかし実際には、「何から取り組めばよいのか」「どのように実行に移すべきか」が整理できていない荷主企業も少なくありません。

CRE戦略をご検討される方は、株式会社シーアールイーが構想する物流インフラプラットフォームを構成する企業の一つである、株式会社ストラソルアーキテクトにご相談ください。中長期的な物流効率化の計画立案や、その実行に向けた第一歩をどう踏み出すかなど、まずは現状課題の整理からお気軽にご相談ください。

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