サプライチェーンとは?バリューチェーンとの違いや具体例を解説
サプライチェーンは、原材料の調達から製品やサービスの最終販売に至るまでの一連のプロセスを指します。企業活動だけでなく、社会全体に大きな影響を及ぼすため、その重要性はますます高まっています。さらに、近年のグローバル化やリスクの多様化に対応するためにも、サプライチェーン全体を視野に入れた戦略的な管理が欠かせません。
本記事では、本記事では、物流分野においても多様なサービスとハブを持つシーアールイーが、サプライチェーンの定義や仕組み、具体例から抱える課題まで幅広く解説します。
サプライチェーンとは

サプライチェーンとは、原材料の調達から部品や製品の加工・組立、流通や販売を経て、最終的に消費者へ商品が届くまでの一連のプロセスを、複数の企業や組織が連携して担う仕組みのことです。
単なる仕入れと販売の流れではなく、各プロセスが密接に結びついている点が特徴で、効率的なサプライチェーンを構築することで、余剰在庫の削減やリードタイムの短縮など、多方面でのコスト削減が可能となります。
一方で、この仕組みは相互依存性が高いため、一部で発生した不具合やトラブルが全体に波及しやすいというリスクもあります。例えば、台風や地震による物流網の停止は、商品の配送遅延や店舗での品切れを引き起こします。こうしたリスクを抑えるためには、サプライチェーン全体でデータを共有し、代替ルートや在庫調整などを迅速に実行できる体制が求められます。
バリューチェーンとの違い
サプライチェーンと混同されやすい概念に「バリューチェーン(Value Chain)」があります。
バリューチェーンは、企業内部の活動を対象とし、マーケティング、製造、販売、物流、労務管理、アフターサービスなど、あらゆる工程で価値(バリュー)を付加していく連鎖を指します。これらの活動は主活動と支援活動に分類され、直接的な生産部門だけでなく、総務や経理といった間接部門も含めて企業全体の価値創造にどう貢献しているかを分析します。
一方、サプライチェーンは原材料の調達先や配送会社など外部のパートナーも含め、製品が消費者に届くまでの一連の流れを最適化する考え方で、企業内にとどまらず広いネットワークを対象としています。
サプライチェーンが注目される背景
サプライチェーンが注目される背景には、グローバル化と市場環境の急速な変化があります。製造や調達が国境を越えて行われるようになり、企業はより複雑で広範囲な供給網を管理する必要が生じました。また、消費者ニーズの多様化や短納期化の要求に応えるため、在庫削減やリードタイム短縮など効率的な運営が不可欠になっています。さらに、自然災害、感染症の流行、地政学的リスクなどにより、一部の供給停止が全体に影響を及ぼす脆弱性も顕在化しました。このため、単なるコスト削減だけでなく、安定供給を確保するためのリスク分散やデータ連携、サプライチェーン全体の可視化といった取り組みが重要視されています。加えて、こうした複雑化・多様化するサプライチェーンを統括し、効率化やリスク管理を推進するCLO(物流統括管理者)も、企業経営においてサプライチェーンと同様に注目される存在となっています。
サプライチェーンが機能する仕組み
サプライチェーンが円滑に機能するためには、供給元から販売先までのプロセスを一連の流れとして捉え、相互に連携させることが重要です。まず調達では、品質・コスト・納期を満たす資材や原材料を最適な取引先から確保し、必要な時期に入手できるよう管理します。次に製造段階では、需要予測をもとに生産計画を立案し、効率的で無駄の少ない生産ラインを構築します。続く流通では、在庫の適正配置や物流手段の選定、配送手配を通じて、必要な商品を必要な場所へタイムリーに届けます。最後に販売では、顧客の購買動向や在庫を常に把握し、需要変動に応じた供給を維持します。これら調達・製造・流通・販売の各段階が有機的に結びつくことで、顧客が商品をスムーズに手に取れる仕組みが実現されます。また、この一連の仕組みを通して、予期せぬトラブルや需要の変化にも柔軟に対応できる強いサプライチェーンを構築することが可能となります。
サプライチェーンの具体例と事例
業界別のサプライチェーンの特徴や、効率化事例を紹介します。
サプライチェーンの形態は業種やビジネスモデルによって大きく異なるため、具体的な事例を知ることは理解を深めるうえで有効です。特に、需要変動が激しい業界では在庫リスクや供給リスクへの対策が重要で、デジタル技術を活用したリアルタイム把握が求められます。ここではアパレルや建築業界など、代表的な分野の具体例を取り上げながら、効率化のポイントを紹介します。
アパレル・日用雑貨
アパレルや日用雑貨業界は、流行や季節要因によって需要が大きく変動する点が特徴です。そのためリアルタイムの売上データや在庫データを連携し、在庫管理や追加生産・仕入れの判断に活かす仕組みが求められます。需要予測が的中すれば、在庫を過剰に抱えずにタイムリーな補充が可能となり、廃棄や値引き販売を減らすことにつながります。
建築・建材
建築や建材のサプライチェーンでは、工期とコストの最適化が重要課題になります。大規模な建設プロジェクトでは、資材の調達元から現場までの輸配送計画を正確に組み立てることが必要です。適切なタイミングで資材を供給することで、現場の作業効率が高まり、工期短縮や施工品質の維持にも貢献します。
製薬
製薬業界のサプライチェーンは、品質と規制遵守が最優先事項です。原薬や中間体の調達から製造、検査、物流まで厳格な基準(GMP・GDPなど)が適用されます。さらに製品によっては温度や輸送条件が厳しく管理され、安定供給体制の構築が不可欠です。供給が滞ると医療現場に直結するため、特に強固な仕組みが求められます。
サプライチェーンが抱える代表的な課題
サプライチェーンを運営・管理する上での代表的な課題を紹介します。
自然災害やパンデミックによる供給遮断リスク
地震や台風、感染症の流行によって工場の稼働が停止するなど、突発的に供給が止まるリスクは常に存在します。サプライチェーンの強靭化を図るためには、代替サプライヤーを選定するだけでなく、在庫を一定水準で確保するなどのリスクヘッジが必要です。さらに、BCP(事業継続計画)を整備することで、想定外の事態でも迅速に代替ルートや代替拠点へ切り替えられる体制を構築できます。こうした準備が、企業の競争力を支える重要な要素となります。
サプライヤーとの情報共有不足
需要や在庫の情報が正確につかめないと、過剰在庫や欠品のリスクが高まります。サプライヤーとの情報共有が不十分だと、余計な納期遅延やコスト増につながる場合もあります。EDIやクラウドベースのシステムなどを活用し、リアルタイムでの情報のやり取りを定着させることがポイントです。
卸売業界大手のPALTACでは、「PALTAC VANサービス」としてEDIの仕組みを取引先のメーカーに提供するなど、サプライチェーン全体のDX化推進に貢献しています。
グローバル拠点の最適配置と調整
多国籍企業を中心に、生産や販売拠点を世界各地に置くケースはますます増加しています。しかし、輸送コストや関税、現地の法規制など、国や地域ごとに差異があり、調整は容易ではありません。適切な情報システムと現地スタッフとの連携を通じて、製品の品質や納期、コストのバランスを最適化することが重要です。
サプライチェーン強靭化に向けた取り組み
近年、突発的な外部環境の変化、国際関係の不安定化、消費者ニーズの多様化などにより、企業が直面するリスクはこれまで以上に不透明さを増しています。こうした環境下で、サプライチェーンの強靭化は単なるリスク分散にとどまらず、事業継続の根幹を支える最重要課題となっています。そのためには、リアルタイムでの情報共有や全体の可視化により、需要変動や突発的な供給障害にも迅速に対応できる体制を構築することが欠かせません。さらに、複数の調達先の確保、在庫戦略の最適化、サプライチェーン全体でのデータ連携を通じて、リードタイム短縮と供給リスクの最小化を実現することが求められます。ここでは、需給計画や生産管理、リスクシナリオの策定といった具体的な取り組みを整理し、変化に強いサプライチェーンを実現するためのポイントを確認していきます。
需給計画と在庫最適化
需要予測の精度向上と在庫管理の適正化は、サプライチェーン運営の基本です。AIを活用すれば、従来の販売実績に加えて天候や消費者の嗜好変化といった外部要因も分析に取り込むことが可能です。これにより、過剰在庫によるコスト増や在庫不足による機会損失を抑制し、柔軟かつ効率的な供給体制を実現できます。
資材所要量計画(MRP)のポイント
MRP(Material Requirements Planning)は、生産に必要な資材を適切なタイミングで確保し、効率的にラインを稼働させるための仕組みです。需要予測や受注状況と連動させることで、リードタイム短縮や生産計画の最適化が可能となります。正確な運用のためには、部門間のコミュニケーションやデータの一元管理が欠かせません。
データ共有とプラットフォーム連携
複数の企業や拠点で構成されるサプライチェーンでは、スムーズな情報連携が競争力を左右します。クラウド型プラットフォームやブロックチェーンを活用すれば、受発注や在庫情報をリアルタイムで共有でき、需要変動への即応力が高まります。さらに、データの自動化・標準化によって人為的ミスを削減し、意思決定のスピードも大幅に向上します。
まとめ
サプライチェーンの基本概念から具体例や課題、サプライチェーンを強靭化するポイントまで幅広く解説しました。自社の持続的成長とリスク管理のためにも、サプライチェーン視点の経営戦略が重要となります。
サプライチェーンは、原材料の調達から製品・サービスの最終販売に至るまでの長いプロセスを統合的に捉えることで、コストと品質、顧客満足を同時に追求できるフレームワークとして重要視されています。企業だけでなく社会全体に影響を与える存在であり、自然災害やパンデミックなどのリスクにも対応可能な強靭性が求められます。データの活用や最新技術の導入によって、さらなる最適化を進めることが、今後のビジネスの成功を左右するでしょう。
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