倉庫のスペックとは?基本用語や自社に合う条件の見つけ方を解説
倉庫を選ぶ際に欠かせないのが「倉庫スペック」の理解です。倉庫スペックとは、延床面積や天井高、床耐荷重などの建物性能に加え、トラックバース、電力容量、温度管理機能といった設備条件を総合的に示すものです。本記事では、物流分野に強みを持つシーアールイーが、倉庫スペックの基本要素を整理しつつ、自社に合う条件をどのように見極めればよいかを分かりやすく解説します。
倉庫スペックとは
倉庫スペックとは、倉庫の物流機能を客観的に示す指標です。建物そのものの性能(延床面積、天井高、床耐荷重など)に加え、トラックバースの数や形式、電力容量、温度管理機能といった設備条件までを総合的に含みます。これらの要素は単なる数値やスペックではなく、「どのような荷物を扱えるか」「どの程度効率的に処理できるか」を左右する基盤です。したがって倉庫スペックは、施設の比較・検討を行う際の出発点となる重要な基準といえます。
倉庫スペックを理解することの重要性
倉庫の選定においては、理想的な賃料や立地条件が整っているかどうかだけで判断してしまいがちです。しかし、スペックや設備が自社の物流オペレーションに適していなければ、稼働後に保管効率の低下や作業動線の悪化、さらには想定外の人件費増加といったリスクを招きかねません。
例えば、倉庫スペックの代表的な要素である「有効天井高」を見落とした場合、容積効率が大きく損なわれる可能性があります。同じ300坪の平屋建て倉庫でも、天井高が5.5m未満か6.5m程度かによって、パレット保管容量で考えると、最大で約33%の差が生じることもあります。わずかなスペックの違いが、日々のオペレーションや長期的なコストに大きな影響を及ぼします。
だからこそ倉庫選定では、立地や賃料の条件に加えて、各スペックが自社の事業特性にどのようなインパクトを与えるかを事前に把握し、慎重に見極めることが不可欠です。
倉庫の基本用語と代表的な設備を解説
倉庫スペックを理解するためには、まず基本用語と代表的な設備を押さえておくことが不可欠です。ここでは、押さえておきたい基本用語と代表的な設備を12個紹介いたします。
大型通行可
大型通行可とは、大型トラック(8t以上)やトレーラーが敷地内に出入りできるよう設計された物件を指します。具体的には、前面道路の幅員が十分に確保されていることに加え、交差点の曲がり角や倉庫入口の間口、構内の回転半径や待機スペースなども十分に整備されていることで、大型車両の利用が可能となります。
トラックバース
トラックバースとは、トラックが倉庫に接車し、荷物の積み下ろしを行うためのスペースを指します。大型通行可の条件と同様に、道路幅や間口、構内スペースの確保が重要であり、円滑な入出庫作業を支える要素となります。
高床式
高床式倉庫とは、床の高さが地面から1m程度に設定されている倉庫を指します。トラックの荷台と同程度の高さ(およそ1m~1.2m)に床を設けることで、荷物の積み下ろし作業を効率化できます。低床式と比較して、地面からのほこりや湿気、害虫の侵入を抑制しやすく、衛生的な保管環境を維持しやすい点が特徴です。このため、食品・医薬品・精密機器など、厳格な衛生管理が求められる荷物の保管に適しています。
低床式
低床式倉庫とは、床が地面とほぼ同じ高さにある倉庫を指します。トラックやフォークリフト、重機などが出入りしやすい点が特徴です。道路や敷地と倉庫の床が同じ高さであるため車両が直接乗り入れ可能ですが、雨天時の水害や湿気、ほこりの侵入といった環境リスクがある場合もあります。低床式倉庫は、構造的に床荷重に余裕があることが多く、重量物の取り扱いや大型機器の設置に適しています。
床荷重(積載荷重)
床荷重とは、倉庫の床が1㎡あたりで支えられる重量を示します。単位は「t/㎡(トン毎平方メートル)」です。新築大型倉庫では1.5t/㎡が標準スペックとなっていますが、平成初期までに建てられた倉庫では1.0t/㎡未満のものもあり、500kg/㎡程度しかないケースもあります。1階と2階で床荷重が異なる場合も多いため、特に築年数が古い物件では構造や補強状況を事前に確認することが重要です。
床仕上げ(防塵塗装・帯電防止塗装など)
倉庫の床仕上げとして代表的なものに、防塵塗装と帯電防止塗装があります。防塵塗装はコンクリート床から発生する粉塵を抑制し、製品や機械への悪影響を防ぐ効果があります。帯電防止塗装は床面の静電気帯電を防ぎ、放電によるトラブルを回避するための処理です。特に電子部品や精密機器を扱う倉庫・工場において採用されるケースが多く見られます。
空調設備
空調設備とは、庫内に冷暖房機器を設置し、温度環境を一定に保つための設備を指します。夏季の高温対策として導入されることが多く、作業環境を改善し、人材の確保や定着率向上にも寄与します。初期設備として備わっている倉庫は少なく、多くの場合はテナント側で設置を行います。設備には広範囲を冷却できる吊り下げ型や、移動・増設が容易な置き型などがあり、規模や用途に応じて選択されます。
事務所
事務所とは、倉庫の建物内または併設部分に設けられる執務スペースを指します。荷物の管理や従業員の休憩・打ち合わせなどを倉庫内で完結できる点が利便性です。OAフロア(二重床構造で床下に配線スペースを確保)を備えた事務所も多く、柔軟な執務環境を実現できます。荷物の流通規模が大きい倉庫などでは必須とされる場合が多いですが、小規模倉庫や単なる保管用途の倉庫では不要とされる場合もあります。
照明設備
倉庫の照明設備は、庫内作業の視認性を確保するために必要な設備です。新築倉庫では300ルクス以上が標準ですが、古い倉庫では50ルクス程度にとどまり、水銀灯が使用されている場合もあります。近年はLEDが主流となり、水銀灯と比較して電気代を半分以下、場合によっては3分の1程度にまで削減できるケースもあります。
有効天井高
有効天井高とは、床面から天井までの高さを指します。新築倉庫では5.5m程度が一般的です。平成初期以前の倉庫では4〜5mから7〜8m程度の高さの物件も見られます。10mを超える場合、一般的なフォークリフトでは届かない空間が生じる可能性があり、設計上の注意が必要です。実務的には5.5〜7m程度が使いやすい水準とされ、ラックや荷物の種類に応じたバランスの取れた設計が求められます。
昇降設備
多層階倉庫(2階建て、3階建てなど)では、荷物をフロア間で移動させるために昇降設備が欠かせません。代表的な設備には「垂直搬送機」と「貨物用エレベーター」があります。垂直搬送機はパレット単位の荷物を上下させることに特化しており、荷姿が固定化された現場に適しています。一方、貨物用エレベーターはパレット以外にもケース品や長尺物、大型荷物など多様な荷物を運搬できる点が特徴です。
営業倉庫登録可
営業倉庫登録可とは、その倉庫が国土交通省の定める営業倉庫(倉庫業)の登録要件を満たしていることを指します。登録には構造基準や保管設備などの条件を満たす必要があり、加えて建設地も用途地域は、工業系・商業系・一部の住居系地域に原則として限られます。
運用形態別に見る倉庫スペックの考え方
倉庫スペックを検討するうえで重要なのは「どのように運用するか」という視点です。保管主体か通過主体か、人作業中心か自動化前提かによって必要な設備は大きく変わります。自社の荷物特性や出荷頻度、ピーク時の作業負荷を踏まえて優先すべきスペックを選定することが、効果的な倉庫運用につながります。
DC型とTC型
まず大きな区分として、倉庫は「DC型(Distribution Center)」と「TC型(Transfer Center)」に分けて考えることができます。DC型は在庫を持ちながら多品種小ロットの商品を効率的に保管することを主眼とした倉庫です。そのためには、床が高床式であることや、有効天井高が5.5メートル以上確保されていること、さらに十分な柱スパンがあることが望ましいといえます。これによりラックを比較的に自由に配置でき、将来的な保管効率の最適化にも柔軟に対応できます。
一方のTC型は、商品の通過処理を迅速に行うことを目的とする倉庫です。短時間で入荷から出荷までを完結させるため、多数のトラックが同時に接車できる十分なバース数が不可欠です。両面バースのように効率的にトラックをさばけるスペックであれば、小口配送の大量処理にも適応しやすく、輸配送ネットワーク全体の効率を高めることにつながります。
人作業中心と機械作業中心
次に注目すべきは、人作業を中心とするのか、それとも自動化を前提にするのかという観点です。人作業を中心に据える倉庫では、作業員が動きやすいように荷捌きスペースや通路を十分に確保する必要があります。柱スパンが広く取られていればレイアウトの自由度が高まり、手作業やハンドリフトによる運搬でも効率的に作業を進められます。また、人作業が多い現場では作業負荷に応じた休憩スペースの整備も重要です。
一方で、機械作業中心の倉庫ではマテハン機器の使用が前提となります。ここではまず十分な電気容量の確保が欠かせません。さらに、大量かつ大ロットの荷役を効率化するためには、高耐荷重の床構造や荷役動線の最適化が必要となります。自動搬送機器やパレット搬送システムを導入する場合には、建物構造と設備スペックがそれを受け入れられる設計になっているかをあらかじめ確認しておくことが求められます。
荷物別に見る倉庫スペックの考え方
倉庫スペックを検討する際には、「荷物別」、すなわち荷物の性質を起点に考える視点も欠かせません。アパレルや食品、重量物など、扱う荷物ごとに必要となる設備や環境条件は大きく異なります。例えば、アパレルは湿度管理や吊り下げ保管、食品は冷蔵・冷凍設備、重量物は床荷重やクレーン設備など、荷物そのものがスペック要件を規定します。
「運用形態別」がオペレーション起点のアプローチであるのに対し、「荷物別」は荷物の品質を守る視点です。両者を組み合わせることで、現場運用にも適した倉庫運用が可能になります。
アパレル商品
湿度40〜60%を維持できる空調や、防塵仕上げの床、吊り下げ保管対応の天井構造が推奨されます。生地の劣化や型崩れを防ぐため、環境維持と特殊な保管形態への対応が不可欠です。
食品
0〜5℃の冷蔵、-18℃以下の冷凍といった温度帯に対応できる設備に加え、断熱パネル構造、抗菌スペックの床・壁面、ドックシェルターが必要です。食品などの消費期限管理が必要な商品では、品質劣化を防ぐための適切な温度環境の維持と、安全性確保のための異物混入防止するスペックの倉庫が前提となります。
印刷・パッケージ資材
湿度40〜60%を安定して維持できる空調、防カビ塗装、防塵スペックの床仕上げ、高床式が望まれます。湿気や温度変化に非常に敏感なため、保管環境の安定性が最重要ポイントです。
重量物(建材資材、大型機械など)
床荷重2t/㎡以上を確保し、クレーン設備や十分な柱スパンを備えることが推奨されます。建築資材や大型機械部品など重量のある商品では、沈下や破損リスクを避けられる構造が必須です。
医薬品
1~30℃の室温保管や1~15℃の冷所保管などの温度管理に加え、高度なセキュリティ設備が求められます。法規制も厳格なため、温度・衛生・セキュリティを高いレベルで維持できるスペックが前提です。
自社に合うスペックを見つけるには、まずは「自社要件の整理」から
倉庫選定では、立地や賃料に目が向きがちですが、荷物や運用形態に適した倉庫を見極めるためには「自社要件の整理」が欠かせません。どれだけ好条件に見える物件であっても、自社のオペレーションに合致しなければ、運用効率の低下やコスト増といったリスクにつながります。
倉庫スペックを検討する際には、まず「必須条件」と「望ましい条件」を分けて優先順位をつけることが重要です。そのうえで、扱う荷物の種類や入出荷の頻度、ピーク時の作業量に合わせて、必要なスペックを具体的に検討していく必要があります。整理が不十分なまま物件探しを始めると、スペック過多な物件を選んで無駄なコストを抱えたり、逆に条件不足で業務に支障が出たりする恐れがあります。
また、希望条件を満たす倉庫が必ずしも入居希望時期に空いているとは限らないため、早めに自社要件を明文化し、それに基づいて候補物件を探し始めることが、スムーズな移転や業務立ち上げを実現するうえで不可欠です。
「自社要件の整理」で重要なこと
自社要件を整理する際に大切なのは、「オペレーションに直結する条件」を漏れなく把握することです。例えば、配送先や仕入れ先との位置関係、トラックバースの数、荷物特性に合った設備スペックなどは業務効率を左右します。また、繁閑差による必要スペースの変動や、24時間稼働に伴う周辺環境への適合性も見逃せません。
さらに、人材確保や定着に関わる要素も重要です。労働人口や通勤アクセス、地域の人件費水準といった外部要因が倉庫運営の安定性に直結するため、倉庫そのもののスペックと合わせて検討する必要があります。
自社要件を整理するためのチェック項目
ここまで解説してきたポイントを整理するために、以下に「自社条件のチェックシート」をご用意しました。実際の倉庫検討の前に、自社の物流特性や必要スペックを棚卸しするツールとしてご活用ください。
自社条件の整理は専門家の知見を活用するのもおすすめ
自社内で物流特性を整理することは有効ですが、実務に落とし込む段階では専門的な知識が不可欠です。例えば床耐荷重や有効天井高といった建築スペックがマテハン導入の制約になるケースや、用途地域・消防法など法規制によって業務範囲が限定されるケースは少なくありません。また、拡張性を考慮する場合も「単純な延床面積の余裕」だけでなく、トラックバースの処理能力や電力容量の拡張余地など、専門的な視点から検証する必要があります。
物流倉庫の専門事業者であるシーアールイーは、こうしたスペック適合性の評価や将来計画を見据えた条件整理を支援し、最適な物件の選定につなげます。社内検討だけでは判断が難しい部分を客観的な視点から補完することで、長期的な運営コストを抑制し、事業成長に適した倉庫選びを可能にします。ぜひご相談ください。